デクの上位者アカデミア   作:ヤマカワ

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 雄英入試Here we go
 もうちょっと勿体ぶるつもりだったけど、普通にめんどくさいテンポが悪くなるのでさっさと入試いきます

 前話で明かした主人公の所業が非難囂々でウケる。読者の皆さんが正常なようで何よりです。
 例の所業、かっちゃんは「襲うくらいしてみせろとは言ったけどそーゆー意味じゃねぇよ」とか言って許してます。そういう女を目指しているらしいですよ。かわいいね♡
 ただ、実際のところ「貸しイチ」などと結構根に持っています。だいぶ穏当な方ですけどね。




レッツゴー入試

 

 

 

 僕は冬が好きだ。

 

 理由はいろいろ。何か一つ特別な理由があるわけじゃない。

 

 だけど―――――

 

「朝焼け、綺麗だね。かっちゃん」

 

「……そーだな」

 

 いま、この時ばかりは、この光景をこそ理由としたい。

 

 

 つい最近、ようやく元の美しさを取り戻した砂浜が、朝日に照らされてまっかに燃えている。

 

 2月26日の早朝。

 朝のランニングで多古場海浜公園に立ち寄った僕らは、休憩ついでに朝焼けを眺めていた。

 この光景が見れるのが、冬場の早朝ランニングの醍醐味だ。寒い中早起きした甲斐があるね。

 

「……イズク、どんなもんだ」

 

「体調は万全。コンディションは最高。落ちる理由がないね」

 

「そーかよ」

 

「かっちゃんは?」

 

「オメーが万全でアタシが万全じゃないワケねーだろ」

 

「そりゃそうだ。……かっちゃん」

 

「んだよ」

 

「今日は頑張ろうね」

 

「フン。……約束、忘れてねーだろーな」

 

「主席を取った方が、ってやつだね。もちろん覚えてるとも」

 

「ならいい。反故にすんじゃねーぞ」

 

「そっちこそ」

 

「誰に言ってんだクソナード」

 

「それもそうだね。……そろそろいこっか」

 

「おう」

 

 

 いよいよ入試当日。

 

 浮つく心を抱えたまま、あえて僕らはいつも通りに駆け出した。

 

 

 

 〇

 

 

 

 国立 雄英高等学校 ヒーロー科。

 誰もが認めるトップヒーロー、オールマイトをはじめ、数々のトップヒーローを輩出してきた名門中の名門。

 倍率は例年300を超え、偏差値は今年79。

 

 紛うことなき、日本トップクラスのヒーロー科である。

 

 家から地下鉄を乗り継いで約40分。

 

 今日、僕は雄英一般入試実技試験に挑む。

 

「大きいね、かっちゃん。……かっちゃん?」

 

「突っ立ってんじゃねーよデク。こんなもんすぐに見慣れる」

 

「……それもそうか。さすがだねかっちゃん」

 

「別に。緊張してんのか、イズク」

 

「少しね。でもまぁ、頑張るよ。かっちゃんと一緒だしね」

 

「……さっさと行くぞ」

 

「あっ、うん。あんまり早歩きすると躓いちゃうよかっちゃん」

 

「うるせー」

 

 見慣れない巨大な校舎を、今後見飽きるくらいに目にするために。

 躓くことの無いよう、足を進めた。

 

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー‼‼ エヴィバディセイヘイ‼‼」

 

 ――――シ~ン……

 

「こいつはシヴィー‼‼ 受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ‼ アーユーレディ!?」

 

 誰もが沈黙を守る中、「YEAHH」と自分で言っちゃうプレゼントマイクは、なんというか原作やラジオよりも奇矯に見えた。

 真面目な場であのノリを貫けるのは、異常っちゃ異常だけどすごいことでもある。

 今は単なる変な人に見えるけど、災害現場とかで暗い雰囲気を吹き飛ばす能力があるとも言い換えられるからね。やっぱりプロヒーローはさすがだ。

 

 説明の内容に原作との差異はない。

 十分間ヴィランロボットを倒しまくって、他より多くのポイントを獲得する。

 試験会場を()()()()暴れまわる0ptのお邪魔虫もいて、そういうのは避けながら他を蹴落としていく。

 

 ……と見せかけて、実は素行も見られていて、ヒーローっぽい行動をとればそれはそれでポイントが付く。しかも審査制で。

 事前調査だと確定的な情報は得られなかったんだけど、「ヒーローらしからぬ行動はとらない方がいい」程度の情報はたくさんあった。

 まぁ、情報統制が布かれているんだろうね。この世界のヒーロー公安ってかなり強い権限持ってるし。

 

 それにしても飯田君ツンツンしてるなぁ。原作には描写されてなかったけど、推薦入試に落ちてイラついてたりするのだろうか。

 ま、僕には関係ない。できる事をやるだけさ。

 

 

「俺からは以上だ‼ 最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう」

 

「かの英雄、ナポレオン=ボナパルトは言った!」

 

「真の英雄とは人生の不幸を塗り替えていく者 と‼」

 

「“Plus Ultra”!!」

 

「それでは皆 良い受難を‼」

 

 

 さあ、いよいよだ。

 

 

 

 〇

 

 

 

 バスを降りれば、目の前には市街地。

 ……のように見える、模擬演習場があった。

 

 いやぁ、知ってはいたけど、改めてとんでもないな。

 こんなのがいくつも敷地内にあるんでしょ?しかも自律行動できるような高度なロボットを壊される前提で、0ptの巨大ロボも含め何千台と……。

 ホント、どこからお金が出てくるんだろう。現地人特権で色々調べてみたんだけど、結局お金の出処よくわからなかったんだよね。

 

 周囲を見回せば、A組メンバーの障子君や飯田君、麗日さんに青山君などが見える。あ、障子君と目が合った。

 彼らはちゃんと合格できるだろうか。特に青山君。人の心配してる場合じゃないんだけど、やっぱり原作との相違点がたくさんある現状どうしても不安が拭えないというk

 

「ハイスタートー!」

 

 おっと、もうか。

 本当に突然だなぁ、マジで心の準備とかさせてくれないじゃん。

 

「どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ‼ 走れ走れぇ‼」

 

 さてさて、こう来ると分かっていたから、準備はとっくに済んでいる。

 本来内臓のあるべき位置には脳がたっぷり詰まっているし、頭部は人間らしい形を一旦捨て置いて目と耳を十個ずつ付けている。頭部を六面体に見立てて、接続部を除いた五面に各二つずつの計算だね。もちろん鼻も口も無しだ。話す必要はないから喉や肺も今回ナシ。

 完全にバケモノだけど、これが僕の本気フォームだ。僕は機動力と戦闘力には自信があるけど、索敵能力はあんまりないから仕方ない。

 

「賽は投げられてんぞ‼?」

 

 限界ギリギリまで身体強化を施して、斥力場で大きく体を吹き飛ばす。

 

 強化した体が千切れ飛びそうになる強烈な衝撃と、錐揉み回転してグルングルンに回る視界がちょっと楽しい。

 

 空高く吹き飛ばされてお星様になりそうなのを何とか耐えつつ、会場全体を上から俯瞰する。

 すると早速、頭部の全周に設置した十の眼球がビルの隙間に仮想敵を発見した。

 当然ながらこちらには気づかれていない。チャンスだね。

 複数の眼球の視覚情報から彼我の距離を算出し、同時に相対速度も計算。

 斥力場を展開するべき座標を割り出して、仮想敵を真っ二つに割断するようにして斥力場を発生させる。

 

 突然体の内部に斥力場が生じたロボットは、その金属の体の持つ結合力が与えられた斥力に負け、為す術なく分割されて爆発する。

 

 これで1pt。この程度の演算処理なら十でも百でもどんと来いだ。嘘、ちょっと盛った。さすがに百辺りが限界だ。

 

 とはいえ今の僕なら、これくらいの距離は目視で確認すればどこにでも斥力場を展開できる。

 つまり、視界に収めるだけで数十体の仮想敵を同時に破壊できる。……我ながらチート臭いなぁ。

 

 ビル群の上を斥力場で飛びながら……というより吹き飛びながら、一応横取りとかはしないように気を付けつつも、どんどんロボットを破壊していく。

 さすがに仮想敵を僕一人で殲滅してしまうと原作崩壊が起きてしまうだろうから、あくまで程々だ。目安は100ptくらいかな。

 

 ……これ、手足要るかなぁ。身体強化の都合上骨と筋肉は全身揃ってる方が望ましいんだけど、今のところ身体強化あんまり役立ってないし、手足も要らないかもしれない。

 単に衝撃に耐えるだけなら骨・筋肉ナシの身体強化でも十分だし、爆発四散するんでなければ自己治癒でどうとでもなる。

 ……マジで手足要らないかもしれない。以前から、手足には骨と筋肉しか搭載できなくて汎用性に欠くと思っていたのだ。

 

 今、僕の頭部は異形のソレになっているんだけど、元々は全身に目や耳を配置して、頭部は排除するつもりだった。その方が動きやすいと思ったんだ。

 ただ実際やってみると、手足に目や耳を配置すれば筋肉の動きを阻害するし、神経の情報の整理がめんどくさくて全然効率的じゃなかったんだよね。胴体に至っては普通に服が邪魔だった。さすがにマッパになるわけにはいかないし……。

 そういうわけで、少し大きめに設定した頭部に目二つ・耳二つ・脳一つの組を5セット配置し、頭部の脳には視覚情報と聴覚情報の処理に集中させてメインの演算は胴体でやることで決着した。

 こうやって考えると、ロボットアニメとかで頭部にセンサー類が集中してたのって合理的だったんだなぁ。「弱点集中させてんじゃん」とか考えててごめんなさい。

 

 ……まぁ、さすがに冗談だ。ヒトの形を失うと外見から避けられやすくなっちゃうし、それはヒーロー的によろしくない。

 多少見た目が気持ち悪くなるだけならコスチュームで覆い隠せるけれど、さすがに手足がないのはバレちゃうからね。

 ヒーローは自分の存在を誇示して人々を安心させ、犯罪を抑圧するのもまた仕事。見た目だって大事なのだ。そのためにかっちゃんに美容とかも教わってるんだしね。

 原作よりも個性や体格、顔立ちなどの点で優れる僕は、原作の僕よりもいいヒーローになれる。ならなければならない。

 いいヒーローになるためには、手間も犠牲も惜しんでいちゃいけないんだ。“将来”のためにもね。

 

 ちなみに、すごく余談なんだけど、人体って(僕の体を人体と呼んでいいのかは置いといて)謎で、よくわからない現象が多々起きる。

 例えば、僕の胴体にはほとんど脳みそばかりが詰まっていて、大抵の内臓は脳に置き換わってしまっているんだけど、心臓はそのまま配置している。

 これは心臓の有る無しで全然運動能力が変わってしまうからで、身体強化を掛ければ尚更違いが出る。さすがに無視できない差が生じるので、筋肉と骨を生成するときには心臓と血管もセットで生成するようにしているのだ。

 ただ面白いことに、肺を取り除いて心臓と血管だけにしても身体能力がほとんど変わらないんだよね。

 心臓がないと身体能力が下がっちゃう原因として、普通の人間に照らし、「酸素の供給が減るから」だと考えていた。

 だけど肺がなくてもあんまり身体能力が下がらないってことは、単に酸素不足が原因ってわけでもないことを意味して……。

 

 ……まぁ、我が体ながらなかなかに謎なんだよね。まだまだ実験が必要だ。

 

 あ、あの子危ない。一旦斥力場で囲んで保護して、仮想敵は切って……一応開けたところに移動させてから解放しよう。

 あの子は、瓦礫に潰されて身動き取れなくなってるね。瓦礫を排除して、同じく開けた、瓦礫の落ちてこなさそうな場所に避難させる。

 お、あそこ瓦礫が落ちそうになってる。取り除いておこう。……ついでにちょっと補給。

 

 現在僕は、全力で身体強化をかけている。

 この“全力”というのは、「自己再生と同じ速さで自己破壊する強度での身体強化」を意味する。

 【液化】を手に入れてから、僕の自己治癒能力は「自己再生能力」と称して何ら遜色ないような代物になっている。

 そして、自己治癒能力が高まるということはその分自己破壊ができるということ。

 一応少しはマージン残してあるけど、自己治癒能力を100として、98くらいまでの自己破壊を許容して身体強化をかけている。

 

 その効果はというと、

 

 ――――CRASH!!

 

「お兄さん、大丈夫?獲物を横取りする形になっちゃってごめんね。ちょっと困ってそうに見えたから、つい」

 

「あ、あぁ。助かったよ。実際困ってたから、横取りとかは気にしないでくれ。……えっと、その、あー……それどうなってるの?」

 

「これ?この中に肺と声帯が入ってて、ここに口と舌があって、こうやって話すことができるんだ。名付けて『外付け型会話ユニット』。って、まんまだけどね。……怪我とかはない?」

 

「ああ、うん、無事だよ。おかげさまで」

 

「そっか、よかった。お互い頑張ろうね!」

 

 着地ついでに叩き潰した仮想敵が、まぁまぁグチャグチャになる程度。

 非増強系個性でこれだけの身体能力強化ができるなら、まぁ及第点じゃないかな。

 

 さすがにここまでの強度の身体強化とほぼ全開の自己治癒を掛け続けていれば消耗も激しくて、無補給だとたぶん十分も保たない。

 とはいえ僕の個性なら、宇宙空間にでも放り出されない限りはいつでもどこでもお手軽にエネルギー補給ができるし、補給しながらであれば無補給よりは長く戦える。さすがに消耗速度に消化速度が追い付かなくてずっとは無理なんだけど、それでも十数分程度はこの本気モードで戦っていられる。

 

 というわけで、ポイントもある程度稼いだし。

 

 

 ――――THOOM

 

 

 0ptロボ討伐、やってみますか。

 

 

 

 0ptロボは、本来の性能はもっと高いんはずなんだけど、たぶん受験用にデチューンされてるんだろう、今のところでっかい鉄の塊でしかない。動きも鈍重だし、対空防御兵器的なものもない。というか飛び道具全般搭載されてない。

 もちろんでっかい鉄の塊が暴れまわるってだけで十分な脅威ではあるんだけど、これじゃあ工事現場のデカめの重機と変わらない。

 ……というか、本当に重機として使われることもあるらしい。なんでも、機動要塞兼災害用支援ロボとかなんとか。

 調べた限りだと結構シャレにならない金額するんだけど、アレ本当に壊して大丈夫なのかな……?

 

 0ptロボが撒き散らかす大量の落下物を受け止めて他の受験生の逃走を補助しつつ、益体もないことを考える。

 ……あっ、麗日さん(原作ヒロイン)とのイベント無くなっちゃった。まぁいいけど、正門でのイベントも起きなかったし。

 さて、大体逃げ終わったかな? 十の耳を総動員するけど、アレの周囲に取り残された人はいなさそう。これなら暴れ放題だね。

 

 とはいえ、無闇に建造物に被害を出すのはNG。ヒーローは被害者を出してはいけないけど、被害者ゼロの高い高い壁を乗り越えた先には物損ゼロのさらに高い壁が待ち受けているのだ。

 というわけで、なるべく被害を拡大しないように、まずは斥力場でロボットの四肢を拘束する。もう動けないね。

 で、やることは簡単だ。基本的には動物の解体と同じ要領で、まずは息の根を止める。

 多くの仮想敵と同じように、中心線に沿って0ptロボを縦真っ二つにする。小規模な爆発がいくつか起きて機能が停止し、自立していられなくなる巨大ロボットの全体重を僕の斥力場で支える。

 モツ抜きは必要ないので、ざっくばらんに解体していく。部位とかも考える必要はないから楽でいいね。

 まずは手と頭を落とし、道路にそっと置く。胴体はちょっと大きいので、適当に輪切りにして同じく道路に並べる。

 足は……どうしようかな。そっとしておくか。何を支えることもない巨大なばかりの足をその場に横たえて、解体は完了だ。

 ロボの残骸を並べた道路は所々ちょっと陥没しちゃってるけど、もともと0ptロボに破壊されてた所だからだいじょーぶ。

 改めて音で周囲を探るけど、たぶん巻き込まれて怪我をした人はいない。被害者ゼロは達成できたんじゃないかな。

 

 うーん、我ながら上出来。……こんなんでいいのかな?ちょっと拍子抜けな感じもする。

 

 

 「 終 了~~‼‼ 」

 

 

 まいっか、たぶん入試は突破できたはずだし、あとのことは後で考えよう。

 

 人間の見た目に戻り【液化】を解除しつつ、襲い来る疲労感に身を委ねる。

 

 今日は久しぶりにゆっくり寝ようかな。早めの合格祝いってことで。

 

 

 

 〇

 

 

 

「いやぁ、今年はなかなか豊作だったねぇ」

 

「そうですね、特にトップ二人。まだ暫定ですけど、同郷の男女でワンツーっていうのはなんだかドラマチックに感じます」

 

「トップの彼、どんな個性なんだい?」

 

「おいおい、まだトップって決まったわけじゃねぇぜ?救助(レスキュー)ポイントの審査がまだだ。地獄の審査祭りはまだまだこれからなんだよオラァ!」

 

「いやぁ、彼なら救助ポイントも高いでしょ。ちらっと見ただけだけど何人も救助していたし、対処も的確だった。なんというか、実力が頭一つ抜けてたよね。推薦の子たちと比べても彼がトップじゃないかな?」

 

「その点でいうと、彼と同郷の二位の子は惜しいね。仮想敵を歯牙にもかけない戦闘力と最後まで戦い続けられるタフネスは特筆すべきものだけど、利他的な行動がほとんど見受けられなかった。一応全くなかったわけじゃないけど、救助ポイントは低くせざるを得ないだろうね。ま、それでもたぶん次席の座は彼女のものだろうけど」

 

「典型的なエンデヴァーさんタイプですもんね、彼女。雄英でどう化けるかしら。女性ヒーローの先達としていろいろ教えてあげたいわ」

 

「ああ、それで、個性だよ個性。トップの子の資料ある?」

 

「これですね。……個性【吸食】、熱や電気、物質などを吸収・消化して独自のエネルギーのようなものを生み出し、これを活用して発熱・発電・身体強化に自己治癒、それから不可視の斥力場を展開し操作するなどできる個性です。最近、他者の体組織を取り込むことで相手の個性を取り込むことができると発覚したそうですが、こちらはまだ調査中と」

 

「かなりの万能型だね。教え甲斐がありそうだ」

 

「オールマイトさん、彼とは面識があるんですよね?」

 

「ああ、ほら、ヘドロヴィランの件でね。一時期騒がれてたじゃん、『オールマイト大失態!?』ってさ」

 

「ああ、あれ……。もしかして、その時の襲われた中学生っていうのが?」

 

「そう、彼。メディアに頼んで彼に関する報道は控えてもらって、代わりに私が矢面に立ったんだ。彼、当時既に結構強くてさ。襲われて咄嗟に個性を使って対抗しちゃったみたいで、私が駆けつけた時にはもうほぼヴィランを撃退しかけてたんだよね」

 

「自己判断で個性を用い、ヴィランを撃退しかける……。なるほど、それで」

 

「他者の個性を取り込むことができるって、その時に発覚したらしい。あの特異な見た目もたぶんヘドロヴィランの個性によるものだね」

 

「ヘドロヴィラン……そいつはあんな見た目だったんですか?」

 

「いや、そういうわけでもない。ヘドロヴィランの個性を用いてはいるんだろうけど、あの外見はたぶん本人の意志だ」

 

「なるほど……。大丈夫なんですかね? 他者の個性を取り込めるのは結構ですが、個性と一緒にヴィランの人格まで取り込んでしまうんじゃ問題だ。……こう言っちゃなんですが、普通の人間は異形になることを避けようとします。試験のためとはいえ、あの外見を許容できるってのはちょっと普通じゃない。その辺どうなんです、オールマイトさん」

 

「う~ん、私も少し話しただけなんだけど……。初対面の印象は、ごく普通の好青年だったよ。どこにでもいそうな感じの、ヒーローが好きな普通の少年って感じだった。実際、悪人ではないと思う。少なくともヴィランの人格を取り込んでしまったようには見受けられなかった。ただ……そうだね、少し不安定な印象を受けたかな」

 

「不安定?」

 

「普通にしてると分かりにくいけど、彼、たぶんものすごく意志の強いタイプだよ。目的のためなら全てを擲つことも辞さない、ある種破滅的な人間……のように見えた。こう言っちゃなんだけど、下手をすればものすごい思想犯とかになっちゃうんじゃないかな。ステインみたいな」

 

「では、彼は危険だと?」

 

「まさか。意志の強さはヒーローの資質さ。さっきのは下手をすればって話で、うまくすればトップヒーローになれる人材だと思うよ。私も若い頃はあんな感じだったしね。ですよね、校長?」

 

「そうだね、確かに若い頃の君はどこか危うい所があった。まぁなんにせよ、現状材料が足りていない。どうあれ僕らは、彼が立派なヒーローになれるよう導くだけさ。彼ならきっと素晴らしいヒーローになれる。その素質があると私は確信しているのさ。それと、彼の人格面についてだけど……。この資料を見てごらん」

 

「ふむ……他者の個性を取り込む能力については現在調査中で、現状【液化】の個性のみ獲得済み。……なるほど、個性がコピーできる条件や時間などについて、かなり丁寧に纏めてある。まるで実験レポートだ。……一部、どうやって調べたのか気になる項目がありますが」

 

「HAHAHA、好奇心の強い子なんだろうね。“実験”に熱心な……そう、熱心な子供なんだろう。倫理観の部分にちょっと疑念があるけれど、それこそ教育の領分さ。僕ら教師の仕事は生徒を導くこと。高い実力を持った精神的に不安定な生徒であろうとも、正しく導いて見せようじゃないか。……もっとも、現場で実際に彼ら生徒と対峙するのは君たちさ。どうしてもと言うなら考えるけれど……」

 

「いえ、大丈夫です。おかげさまで、問題児の相手は慣れてるんで。……特に今年は、()()()()()がありますからね。今更大した違いはないでしょう」

 

「そう言ってくれて嬉しいよ。それじゃ、そろそろ採点作業を始めようか」

 

 

 

 〇

 

 

 

「あっ、かっちゃーん!」

 

「おう、イズク。良し、ちゃんと先に着いてたな」

 

「あはは、まぁ男だし。……かっちゃん、試験どうだった?」

 

「まあまあだ。……オメーはどうなんだよ。何点獲った」

 

「たぶん102ポイント。数え間違いがなければだけど」

 

「チッ……帰るぞ」

 

「あっ、かっちゃん。……帰り、マック寄っていい?合格の前祝いってことで」

 

「気ぃはえーよイヤミかそりゃ」

 

「かっちゃんは受かってるからね。それにほら、もうずいぶん外食とかしてないじゃん?」

 

「……イズクの奢りな」

 

「もちろん!」

 

 

 

 






 ヒロアカ二次小説界隈における第一の壁、「こいつら毎年こんなドッキリ仕掛けてんの?」問題。
 本作では、強大な権力を持つヒーロー公安による情報統制と雄英の弛まぬ努力が合わさった複合技ということに。
 ヒーロー一家の坊ちゃんである飯田君がこれら入試の仕組みについて知らなかったのは、本人の気質的に事前情報を避けていたからではないかと予想しました。

 ウンチクが長くて申し訳ねぇ。オリ設定生やすとどうしても話が長くなりますね。

 前話に批判が多くて正直ビビりました。
 読者の皆様に不快な思いをさせるつもりは全然あったんですが、本当はもうちょっとマイルドな感じにするつもりだったので、ちょっと加減を間違えたみたいです。下ネタ難しいね。



Q:筆者変態なの?馬鹿なの?死ぬの?
A:否定はしません。が……まぁエタらなければいずれわかります。応援よろしくぅ!


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