ブルアカ短編集   作:Altarego

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イチカと先生の日常回です。実は私はブルアカでいわゆる「推し」というのが複数いまして……その一人がイチカです。
かわいいよね、若干カマチョで好きな人振り回したい願望がある後輩属性モリモリ女子

イチカが被っているニットキャップは、見方によっては小さな角のように見えるデザインを思い描いています。先生を誘う小悪魔的な印象を受けて被せてみました。
反対に、最後のイチカの行動は、シーンを想像した時にイチカが黒い羽の天使のようになったら良いな……と思いつつ挿し込みました。実はこの行動も先生が密かに焚き付けているとしたら……?罪作りな人です、蘭先生。こんな人ですが決して猫にはなりません


お休みの日

「あ、来た来た。こんにちは、先生。お待ちしてたっす」

 

〝やあイチカ。待ち合わせ時間には10分くらい余裕があるけど、もしかして私の時計が遅れてたのかな〟

 

「いやいや、そんなこと無いっすよ。いい時計は遅れるようにはできてないって言うし、それに私がここに来たの、1,2分前っすから」

 

 後半は嘘。なぜなら私は先生が来る30分前からここにいたから。このキヴォトスという土地の特色上、「生徒」の多くは制服を着て日常生活を送る。トリニティで私服らしき服装で過ごしている生徒はあまりおらず、かくいう私もほとんど制服で過ごす派だ。だから、あまり着慣れない私服で先生と会うのは結構、いやかなり緊張するものがある。

 

〝イチカの私服姿はなんだか新鮮だね。黒のニット帽、よく似合ってるよ〟

 

「へへっ、ありがとうっす。先生もそのロングコート、よくお似合いですよ。背が高くて手足も長いの羨ましいっす」

 

〝いざこうなると持て余すと思うよ? 私は持て余してる〟

 

「あはは、先生の冗談はやっぱり面白いっす」

 

 ちなみに私はそれが本当に冗談なのを知っている。先生には何度か正実の体術指導に来てくださっているのだが、徒手空拳のツルギ先輩に対して同じく徒手空拳で肉薄するどころか若干優位に立つのだから恐ろしい。

 

 今日は久々にお休みの日。そのことをさりげなく伝えてみたら、先生もたまたま休日だということで、私をちょっとした散歩に連れて行ってくれることになった。

 

「まずはどこに行くんすか? 今日のプランは先生に全部お願いしたけど、何も教えてくれなかったじゃないっすか」

 

〝それは当日のお楽しみってこと。今日は非番だよね?〟

 

「そうっすよ。先生が聞いてくるたび当番表確認したから、今月分の私以外の当番まで覚えることになったっす」

 

〝それはご迷惑をおかけしました……お詫びにと言ったらなんだけど、この前気になってるって言ってたお店に行ってみよっか〟

 

 そう言って先生は私の手を取り、トリニティ自治区のちょっとお高いショッピング街の方へと引っ張って行った。連れてこられたお店は私がたまにウィンドウショッピングに来る高級コスメの販売店で、ずっと欲しいと思っていたもののその値段の高さゆえに手を出せなかった化粧品がズラリと並んでいる。

 

「おぉ……やっぱりここのお店のは高いっすね。でもいつも使ってるヤツよりずっと良いんだろうなぁ……」

 

〝確か、キャッチコピーは『お値段通りの高品質をあなたに』だったっけ。本当にそうか試してみたくない?〟

 

「そうっすねえ。ちょっと気になるっす」

 

〝おっけ、それじゃあ買っちゃおう〟

 

 ちょっと待った、今なんて言った?

 

〝せっかくだし、他にも何か気になるものはあるなら言ってね〟

 

「いやいやいや、ちょ、ちょっと待つっす先生。こんな高いものをそんな……申し訳ないっす」

 

〝なんで? こんな機会次いつあるか分からないじゃん。それに私も気になるんだよね〟

 

「それなら先生が使えばいいじゃないっすか」

 

〝イチカと一緒に使いたいんだ。私だけ使うのも少し心細いから〟

 

 だから私に買わせて、と先生は言って、手を合わせてお願いしてきた。なんで買ってもらうほうがお願いされているんだか……頼むから上目遣いはやめて。なぜか後輩ちゃんたちと似た空気を感じてなんでも聞いてあげたくなってしまう。

 

「……しょーがないっすね。わかりました、それじゃあ先生と私で一緒に使うっすよ」

 

〝うん、お互いに使用感とか教え合おうか。他に気になるものとかある? 言ってくれたらなんでも買ってあげるよ〟

 

「良いんすか? 遠慮しないっすよ」

 

 先生は〝どうぞ〟と言わんばかりに微笑んだ。

_____________________

 

〝たくさん買ったねぇ〟

 

「先生が焚き付けるからっす。それにしても……」

 

 先生が持っている袋に少し目を向ける。それほど大きな袋ではないが、中身は口紅やチーク、化粧水なんかも入っているので見た目以上に重かったりする。

 

「遠慮しないって言った手前アレっすけど、なんか申し訳ないっす」

 

〝私も使うから良いの。それにお金に余裕はあるからね〟

 

 先生は紙袋を少し持ち上げ、どうってこと無いよと付け加えた。今はファッションブティック的なお店が立ち並ぶ通りを2人で歩いている。いわゆるウィンドウショッピングと言うやつだ。

 

「先生はこういう服も似合いそうっす」

 

〝そうかな? あまり自分の服に頓着したことないからなぁ……あ、そうだ〟

 

 不意に先生は立ち止まり、少し腰を落として私と目線を合わせてこう言った。

 

〝私を着せ替え人形にしてみないかい?〟

 

「えっ、ええっ! あんまりにも突然過ぎないっすか!?」

 

〝そうかな? 今のイチカの目、「ちょっと興味ある……」って感じだったから〟

 

 それで服装を生徒に委ねるなんてガード緩すぎませんかね先生? てことはあれっすか? もしかして先生って天然ジゴロかなんかだったりします?

 

「そりゃあ確かに興味あるけど……本当に良いんすか?」

 

〝勿論。あの列車のとき、私とイチカはそういう意味でもあの約束をしたと思ってるんだけど〟

 

 ……そう言われては仕方ない。本気で先生に似合うコーディネートを見繕ってやるっす。

_____________________

 

「いやー、こうしてみると先生って本当に手足長いっすね。生徒かロボか動物基準の服しか置いてないから、ほとんどの服着せても八分丈にしかならないっす」

 

 そうは言ったが実際見てみると、タイトなスキニージーンズとピンヒールの間に見える細く白い足首がとても艶めかしく見えるし、左手首に巻かれた女性らしいシンプルなデザインの腕時計が常に見えるくらいの袖の長さも、どことなくフェティッシュな魅力を感じさせるのだからこの人は不思議だ。

 

 私はきっとこうはなれない。すくなくともハスミ副委員長くらいの背丈がないとこんな魅力を出そうと思えないし、そもそもハスミ副委員長と蘭先生とでは体つきが全く違う。

 

 副委員長は豊満な体つきがそのまま魅力になるので、実は足し算のコーデをしても元の魅力が薄れない。しかし蘭先生は……こう言うと悪いが胸は薄く、ヒップラインも相当控えめだ。それでいて手足が細くて長く、肌の色が白い。だからこそ、先生の場合は「着飾る」という印象を持たせる服は似合わない。体の特性を「浮き彫りにする」服が良い。

 

〝なんだかすごく真剣に考えてくれるね〟

 

「当たり前っす。せっかくお人形になってくれるんだから、全力で着せ替え遊びするっす」

 

 話している間に大まかな方向性は決まった。

 

 あとは試着してもらって、似合えば買うだけだ。

 

 最終的には極シンプルな服装に決まった。深い紺色のスキニージーンズに、白い無地の長袖のシャツ。選んだシャツには少し特徴があり、袖の部分に捲ったような縫製を施してあって、カジュアルな雰囲気を出しつつ、先生の魅力である細くしなやかな身体を自然に、かつ強く主張できる。羽織りものとして、下のシャツが透けて見えるくらい生地の薄い黒のカーディガンも追加した。

 

 お値段は聞いてない。先生の表情はとても嬉しそうな笑顔から全く動かないが、その理由はちょっと怖くて聞けない。

_____________________

 

 その後も色々ショッピングをしたり、スイーツを食べたりして一日を過ごし、気づけば日が沈みそうな時間帯になっていた。

 

「今日は本当にありがとうっす。先生のおかげで凄く楽しい一日になったっす」

 

〝それは良かったよ。私もイチカのお陰で色々楽しい思いができたし、お互い様だね〟

 

 先生は、私が選んだ服を着たままその後ずっと歩いていた。肩に羽織ったカーディガンが風にたなびき、斜め後ろを歩いていた私へふわりと先生の匂いを運んでくれる。それだけでなんだか不思議と気分が高揚していた。

 

「先生と一緒に買った化粧品、今日さっそく使ってみるっす。モモトークで送るっすよ」

 

〝私も送るね。なんだか今日一日でイチカと色んな接点を持てて嬉しいな〟

 

「私も先生と色々繋がりができて嬉しいっす。先生、またこんなお出かけしてもいいっすか?」

 

〝もちろん。次はもっと段取りをしっかり決めておくよ。「デート」みたいな感じでね〟

 

「でっ、でででデート!? そっ、そんな言葉あんまり簡単に言っちゃだめっすよ〜!」

 

 慌てて答える私の反応がおかしかったのか、先生は口元に手を当てて笑いをこらえている。今日一日ずっと情緒を振り回されっぱなしだったのに、別れ際までこんなに振り回されるなんて……

 

「一回くらい私主導で先生を振り回してみたかったっす」

 

〝それは残念。私、人を動かすことにかけては誰よりも得意なつもりでいるからね〟

 

「もー!!」

 

〝あっはは、それじゃあねイチカ。また今度の当番のときに会おうね〟

 

 そう言って先生は私から離れていく。

 

 今日一日楽しかったなぁ……後輩ちゃん達とワイワイ過ごすことはまた違った充足感を感じる。こういう日がたまにあっても良い、私の心に強く強く刻まれている。

 

 でも……

 

「先生! ちょっと待つっす!」

 

〝ん? なに、イチ……〟

 

 気づいたときには私は羽を使って低めに飛び上がり、先生との距離を詰めていた。そして、そのまま先生の額にキスをした。

 

「…………先生を振り回すっていう今日のノルマ、これで達成っす」

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