ようこそ龍園至上主義の教室へ   作:仮令

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清濁併せ呑む龍園君。


龍園翔という男
CHAPTER1 龍の門出


-高度育成高等学校-

 

卒業生は希望する進路にほぼ100%進むことができると言われている。学生にとってそれは甘美のような響きであり、誰しもが目指す動機となるのは想像にかたくない。

また、生徒たちは学校行事を除いた敷地外への外出および外部との連絡を禁じられているというおまけ付き。そんな所へバスが1台向かっている。もちろんこのバスの中には学生が乗っており、その周辺で就労をしているであろう人もちらほらいる。

 

「…チッ、何から何まで胡散臭すぎる。」

 

窓側の席に座ったその男は、窓の外を見ながら、トンネルを抜け、段々と見えてきた景色に対してそうごちる。

 

「(入学さえすればほぼ100%。まあそれは退学も含まれているからだろうが、それにしてもおかしい。俺からすればこのバスに乗っている学生全員が圧倒的な一芸等に秀でているとは思えない。見た目ではわからんが、にしてもある程度強者というのもは滲み出す何かがあるもんだ。)」

 

彼は心の中でそう言い、隣の席、その周辺に座っている学生に目を向ける。彼がそう言うのも無理は無い。実際入学にあたって緊張している者や、ちらほら談笑の声は聞こえるものの、どこかぎこちない。余裕というものがあまり感じられない。

 

「これは何か裏があると考えていた方がいいな…。」

 

彼のつぶやきはバスのエンジン音や、会話とともに流れていった。

 

 

 

 

 

「Cクラスか。」

 

学校へと着き校門をくぐり、校舎へと向かう道に大きな掲示板があり、その前で彼はそう言った。

1クラス40人の4クラス。A~Dまで書かれており、160名の名前がそれぞれ各クラスに分かれていた。Cと書かれたクラスに【龍園 翔】という文字が書かれている。

 

「…ほお、Dにはあいつらがいるのか。」

 

Cクラスから目を離し、隣のDクラスの名前にとある女子生徒の名前を2つ見つけた。それを目にした龍園は少し口角を上げ、自分のクラスへと向かうため踵を返した所であった。

 

「…っと悪ぃな。」

 

誰かとぶつかり、そう反射的に言い顔を上げた。その相手の顔を見た時、龍園に武者震いのような何かが起こった。

 

「(…!?なんだこいつは?…本当に人か?)」

 

その相手から放たれているプレッシャーというべきか、威圧感というべきものを肌で感じとり、警戒レベルを高める龍園。その相手は、龍園がそう感じているとは露知らず、

 

「気にしていない…。こちらにも非がある。」

 

そう言って龍園のことを見た。

 

「お前、名前は?」

「綾小路清隆だ。Dクラスらしい。」

 

龍園の言葉にそう返した綾小路。Dクラスと聞いて、龍園は目を細める。

 

「俺は龍園。Cクラスだ、機会があればよろしくしてくれ。」

 

そう言い残し、龍園は綾小路の反応を確認せず、校舎への中へと向かった。

 

「(楽しくなりそうだなあ…クク。)」

 

龍園は先程より更に口角を上げ、自分の教室へと向かっていった。

 

 

 

 

廊下を抜け、教室へと足を踏み入れた龍園。思いの外遅かったらしく、中には39人既揃っていた。龍園が入って来たことに気づいたクラスメイトが一斉に龍園を見た。そして全員の視線が突き刺さる。それもそのはずである。龍園はスタイルがよく、制服の着こなしはさながらホストにしか見えず、それを助長するかのようなサラサラのロングヘアである。目つきも常人よりは悪いが顔が良く、嫌でも目につくのであった。

 

「あん?」

 

その一言が放たれるや否や、皆が見て見ぬふりを一斉に行う。ある者は隣の席へ話しかけ、ある者はおどおどとする。ドスの効いたその声は皆を威圧するには充分過ぎるほどであった。しかし全員ではなく、龍園の立ち振る舞いに嫌悪する者や、睨みつける者もいた。龍園はそんなことを一切気に留めず、自分の名前が書かれた立て札が置いてある机見つけ、その椅子に腰を下ろした。

 

「(何だこのクラスは?どう見てもお坊ちゃまの集まりには見えねえ、自分で言っても世話ねえが、喧嘩に覚えがあるやつらが多すぎる。それにあの外人。デカすぎだろ。)」

 

龍園は周辺を見渡しそう心の中で言った。明らかに不良と呼べる生徒が多すぎるのだ。それを決定づけるかのように、身長はゆうに2mはありそうな外人がいるのだ。

 

「(もしかして、クラスによってそれぞれ個性があるのか?そういった個性を伸ばすからこそ、ほぼ100%を実現できるのか?Aは理系、Bは文系といったように。)」

 

龍園は様々なことを考えながらこの学校の思惑についてふける。そういった警戒や注意を行った結果、とあるものを天井で見つけた。

 

「監視カメラ…?」

 

龍園がそう呟いたと同時にとある男がCクラスへと入ってきた。

 

「…Cクラスの生徒の皆さん、入学おめでとうございます。私はこのクラスの担任を務めさせていただきます。坂上数馬と申します。」

 

目の前に立つ男はそう言った。

 

 

 

 

「…あなたに従います。龍園さん。」

 

ここは特別棟廊下。校舎棟とは違い、人通りもなく少し古臭い。そして、監視カメラがない。そんなところに男が2人。1人は顔が腫れ、片膝を付き、まるで従者のような体制をしており、もう1人は壁にもたれ掛かり腕を組んでいた。

 

「足りなさすぎるなあ、石崎。腕も頭も。こうなる前に…いや俺に呼び出された段階でそう言うんだったな。」

 

龍園はそう言い、石崎の前まで行きしゃがんで目を合わせた。

 

「…坂上のあの説明、お前はなんか感じたか?石崎。」

「毎月10万ってやつ…っすよね!まじでこの学校に入ってラッキーって思ったっす!」

 

龍園の言葉にそう返す石崎。石崎のその返しを聞いて呆れるように龍園は言った。

 

「お前毎月10万貰えると思ってんのか?」

「え…ち、違うんすか?だって実際俺たちに10万くれてるじゃないっすか!」

 

そう言って学校支給の携帯端末を見せる石崎。まだ使った形跡はなく10万という記載がされている。

 

「毎月貰えるのは確実だ。だか毎月10万って意味ではないんだぜ?」

 

そんな龍園の言葉に首を傾げる石崎。

 

「…はあ、もういい。お前には説明してもわからねえみたいだな。とりあえず石崎、今月最低でも5万は残せ。…わかったな?」

 

「も、もちろんっす!龍園さんの言いたいことはわからないっすけど、言う通りにはします!」

 

そう言い軍隊のように敬礼をする石崎。

 

「そしてだ、もし授業中に騒いでるやつや寝てるやつがいれば注意しろ。授業中ではなく、授業が終わってからな。始まる前でもいい。とりあえずお前には俺の忠実な部下として仕事を与える。この意味が分かるな?」

「は、はいっす!やらせてもらいます!」

 

龍園の言葉にそう答える石崎。

 

「よくわかってんじゃねえか。素直に聞き入れなかったやつが居れば俺に教えろ。お前にメアドを教えておく。ここに名前を送ってこい。」

 

そう言い石崎とメアド交換する龍園。

 

「行っていいぞ。俺はまだやることがあるからな。」

 

龍園のその言葉を聞き、石崎は一礼してから特別棟廊下を駆け足で去っていった。

 

「(とりあえず芽のありそうなやつを従えることができたが、ああいう奴には暴力が1番いい。こっちの力を示せれば素直に言うことを聞く忠犬となる。使い勝手も悪くないが…頭が足らねえ。)」

 

そう心の中で言い、龍園は再び壁へともたれかかり腕を組み思慮する。

 

「(もし俺が出張れねえ時に代理を立てられるようなやつがいねえとなあ。…チッ先が思いやられるぜ…。)」

 

この先をどう戦っていくかを思慮する龍園は、このクラスに参謀…つまり頭のキレる者が極端に少ないことを憂いていた。しかしそんなマイナスなことばかり考えても仕方ないと、龍園はすぐに切り替えた。

ちょうどその時、特別棟廊下に龍園以外の気配、そして足音が聞こえてくる。

 

「…やっと来たのか。チビっちまって来ねえのかと思ったぜ?」

 

龍園のその言葉に何も返さない相手。

 

「まあいい。石崎とそう変わらねえ。お前みたいなやつはこういった方が得意だろ?」

 

そう言ってファイティングポーズを取る龍園。相手も龍園の行動を見るや、同じくポーズを取った。

 

「…come and get it」

「あ?聞こえねえなあ…?母ちゃんにチクってやろうって?可愛いとこあるじゃねえか…クク。」

 

龍園の返しが馬鹿にされていると気づいた彼は、そのまま龍園へと向かう。

 

「お前は楽しませてくれよ?山田アルベルト。」

 

その言葉と共に2つの拳が交じりあった。

 

 

 

 

 

生徒会室。

そこには生徒会としての仕事に取り組む2人がいた。1人は棚に入っている書類を取り出しそれを机の上に置く者。1人はその机の書類を手に取り眺める者。夕陽を浴びたその教室は明るくも暗く、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。そんな静寂な場所に全くもって似つかわしくない音が響き渡る。

 

「…ほう。久しぶりだな龍園。」

 

その音を出した者を咎めるようなことはせず、淡々と答える。

 

「やっぱりここに居やがったのか。」

 

乱暴に扉を開けた張本人がそう返す。

 

「いやこう言った方がいいのか。堀北生徒会長様。」

 

堀北生徒会長様と呼ばれたその男はメガネを整え書類を置き、龍園へと向き直った。




続きたい。
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