2章入りです。
CHAPTER6 龍のサバイバル
―――生徒会室
Cクラスの訴えの元、暴力事件として審議会の進行を行っていた生徒会。その審議会がCクラスによる訴えの取り下げにより、一応は解決となっていた。その事後処理として龍園は生徒会室に訪れていた。
「まさか、お前直々に訴えを取り下げるとは思っていなかったぞ。」
今この生徒会室には2人の男がいる。1人は言わずと知れた生徒会長堀北学。もう1人は訴えを取り下げた張本人の龍園であった。
「よく言うぜ、ある程度は見越してたんじゃないのか?」
堀北の言葉にそう返した龍園。
「まぁな、だがこういった形で終結するとは思っていなかっただけだ。……お前は生徒会がどこまで介入し、どういった裁定を下すのかを試していたわけだ。」
「まぁそういうこった。ちゃんと諸経費も払ったじゃねえか。……まだ文句でもあるのか?」
堀北の言葉に不服そうにそう返す龍園。
「……生徒会に興味はないか?」
「ねぇな、メリットが感じられねぇ。」
「ふむ……お前もか。」
堀北は龍園を生徒会に勧誘したが、龍園からの返答は想定内であったみたいだ。しかし、龍園はある言葉に引っ掛かりを覚えた。
「……お前も?…クク、なるほど、綾小路にも断られたのか。」
龍園の言葉に少し目を見開いた堀北。
「ほぅ、お前も知っていたのか。」
「あいつが動いていたのは知っていた。恐らくダミーカメラの進言もあいつだろう。……しかし腑に落ちねえ。あいつはDクラスを導こうとしていない。にも関わらず、裏では見え見えの暗躍をしている。大方、鈴音……あぁ、アンタの妹や桔梗を隠れ蓑にでもしようとしているんだろう。―――なにか知っているのか?」
龍園のその言葉を聞いた堀北はメガネを整えた。
「入試問題全教科50点、確か小テストも50点だったな。」
「……はぁ?なんだそりゃ、普通は平均を取るならバラバラにするだろ。きっちり50点に揃える能力もあるのか。……ますます分からねえ。」
堀北のカミングアウトに驚きを隠せない龍園。それもそのはず、いくら配点が決まっているとは言え、正確に50点を取るのはほぼ不可能だ。…いや、全て100点を取れる能力があるのであれば、不可能ではない、と龍園は結論づける。
「今年の1年は豊作だ。それはもちろんお前も含まれている。……楽しみにしているぞ。」
堀北はそう言って自分の作業へと戻って行った。それを見た龍園は違和感を抱えながらも生徒会室を後にした。
生徒会室を後にした龍園は、廊下を歩いていた。すると、生徒指導室から出てきた綾小路と茶柱を見つけた。生徒指導室からわざわざ出てきた綾小路が気になり、バレないよう後をつけた。
そのまま曲がり角を曲がった綾小路を追いかけるため、龍園も同じ角を曲がったが、そこにはこちらを向いている綾小路がいた。
「何の用だ龍園。」
「…ちっ、気づいてやがったのか。」
全く感情のこもっていない声でそう言われた龍園は、不満げながらもそう答えた。
「……聞いたぜ、入試問題も、この前の小テストも50点だったらしいな。」
「たまたまだ。」
「んなわけあるかよ。お前は50点が普通の人…つまり平均を出せる平凡か何かと勘違いしてんのか?うまくやるならもっとバラけさせ、自分に関心を向けないようにするのが定石だろ。だがお前はそれをしない。いや、知らなかった、が正解か?お前の育ってきた環境に興味は無いが、ずっと1番を取るように教育されてきたんじゃないか?だからお前は平凡というものを知らない。」
龍園の言葉になんの反応も示さない綾小路。龍園はそんな綾小路を気にせず、さらに言葉を続けた。
「今も茶柱と2人で生徒指導室から出てきたこともおかしい。普通を装っているやつが問題を起こすわけもない。……お前は何か茶柱に弱みでも握られてんじゃないのか?」
「……お前は何か茶柱に弱みでも握られてんじゃないのか?」
俺は龍園のその言葉に驚きを隠せなかった。俺がどういう環境で育ってきたかはわかっていないようだが、本質はついてきている。…やはりコイツはおもしろい。龍園であれば、この俺を…あの施設の理念を打ち倒せるのかもしれない。
俺は自分でも口角が上がったことを理解していた。……俺にもこんな感情がまだ残っていたのか、と変な気持ちになった。
「一生徒の弱みを握ったところで、茶柱になんのメリットがあるんだ?今回の暴力事件についての詳細を聞かれていただけだ。」
「……ふん、そうかい。だがな、万全じゃないDクラスを潰してもつまらねぇ。必ずお前を引きずり出してやるよ。」
俺は龍園の言葉を聞いても何も答えなかった。龍園はそんな俺の反応に満足したのか、それ以上追求してすることはなく、その場を去って行った。―――俺だってお前と戦うことを楽しみに思っているぞ、龍園。
夏休み
照りつける太陽、打ち寄せる波。それを何と豪華客船で味わうことができている。テストを乗り越えたご褒美だという話だが、まさかこんなバカンスが用意されているとは誰も思っていなかった。皆各々に船内で過ごし、満喫をしている。だが、学校側がこんな贅沢をさせるには裏があると考えている男がいた。
「…ちっ。せっかくのバカンスだってのに、気分が乗らねぇな。間違いなく学校側は何かさせようとしてやがる。」
「何言ってんすか龍園さん!先生もご褒美って言ってたじゃないですか!楽しみましょうよ!」
龍園の言葉にそう返した石崎。石崎はそう言うが、龍園はこの後行われるであろうクラス闘争に目を向けていた。
「まぁ考えても今は仕方ねえか。おい、アルベルト、コーラ持ってこい。」
「Yes.Boss」
そう言ってコーラを取りに行ったアルベルト。
ここは船内のオープンテラス。構造的には海の家に似た構造となっており、席に着いているのは龍園、石崎、コーラを取りに行ったアルベルト、伊吹、ひよりであった。
「こんなとこまで来て読書かお前は。たまにははっちゃけてこいよ。」
「……いえ、私にとってはこれが至福の時間です。」
龍園の言葉に業務的に返すひより。
「椎名、こんなやつの言うことなんか無視でいいんだからね。」
「あ?呼んでねぇやつがなんでいるんだ?大人しく部屋にでも戻ってろよ、ほら、ハウス。」
伊吹がひよりにそう言ったが、龍園は伊吹を見ながら、船内に設けられた部屋へと指を指し、そう言った。
「……アンタねぇ!」
伊吹がそう言って龍園へと掴みかかろうとしたその時、船内アナウンスが鳴り響いた。
「―――有意義な景色が見られると思います。みなさん是非、展望デッキへお集まりください。」
「おい、石崎、伊吹。」
そのアナウンスを聞いた龍園の行動は早かった。石崎と伊吹にそう言うと、それを聞いた石崎は真っ先に展望デッキへと向かい、伊吹も龍園から不満げに目を逸らし、石崎の後に続いた。
ちょうどそのとき、アルベルトがコーラを持ってやってきた。
「行くぞ、アルベルト。……ひより、お前はここにいろ。」
龍園はアルベルトにそう言い、ひよりの反応も見ずに展望デッキへと向かった。
「有意義な景色ねえ…。」
展望デッキの手すりに持たれかけながら、アルベルトから受け取ったコーラを飲みそう言った。
「……あの島か。サバイバルでもさせる気か?」
そう呟いた龍園の言葉は遠からずとも、当たっていた。
「今から島へ上陸するにあたり、諸注意事項があります。」
とある島へと船は着き、各クラスは学校側からの指示で体操服に着替えていた。その後、クラスごとに集まり、坂上がそう言った。
「まず始めに、学生証と携帯を預かります。みなさん提出してください。」
坂上の言葉に不満げながらも、どちらも差し出すCクラス。他クラスも同じように回収されていた。
「そして、この時計をつけてください。この時計は、心拍数等みなさんの体調管理ができるものとなっております。また、非常時のSOSも兼ね備えており、完全防水となっております。故意に外すとペナルティが課されるので、ご注意ください。」
そう言いながら時計を一人一人に配っていく坂上。
「みなさん無事装着しましたね?では、Aクラスの担任、真嶋先生より説明がありますので、それまでお待ちください。」
そう言って坂上は、持ち場を離れた。
少し時間が経過した後、真嶋らしき人物がマイクを持って登場した。
「Aクラス担任の真嶋だ。今日この場に無事につけたことを嬉しく思う。だが、1名ではあるが、病欠により参加出来ない者がいることは、残念でならない。―――ではこれより、本年度最初の特別試験を行う。」
ここは森の奥。
木々が生い茂り、日陰が多く作り出されており、とても過ごしやすい環境である。そんなところに男が二人いた。片方は龍園。石崎とアルベルトに、砂浜を拠点にし、ポイントに一切手をつけるなと忠告してきた。その後、この場所へ1人で移動し、もう片方の男と面会をしていた。
「どうやら生徒会に入部できなかったみたいだな。噂になってんぜ、葛城よ。まだ坂柳との派閥争いに決着がついてないんだってな。……だが安心しろ。この契約を呑めば、お前も派閥も一気に有利になる。」
葛城と呼ばれた男は、苦虫を噛み潰したような顔をして龍園の言葉を聞いていた。
「……なんだその顔は?お前に選択肢など残されていないと思うけどな。んで、どうすんだ?」
龍園の言葉を聞いた葛城は手元にあるとある用紙を見つめる。そこにはこう書かれていた。
契約書
一、Cクラスは200ポイント相当の物資をAクラスに支援する。200ポイントの物資はAクラスが決めてよい。
一、AクラスはCクラスへの対価として、Aクラスの全員から毎月2万プライベートポイントを龍園翔へと振り込む。なお、ポイントは毎月1日に振り込むものとする。
一、もし振込が一日でも遅れれば、龍園翔によってAクラスへペナルティを課すことが可能である。ただし、常識の範囲内とする。
一、各クラスのリーダー捜索をCクラスが行う。このとき、証拠となるものを渡す。(写真やクラスのリーダーが書かれたカード等)
一、もし証拠を提出出来れば、Aクラスの全員から毎月5000プライベートポイントを追加で龍園翔へ振り込む。こちらも毎月1日とする。
一、以上の契約はAクラスを代表した葛城康平、Cクラスを代表とした龍園翔との間で締結され、Aクラス、Cクラスともに了承したものとする。
一、本契約は龍園翔が退学となるまで、効力を発揮するものとする。
「……わかった、この契約を飲もう。」
「話がわかるじゃねぇか。…クク、契約は成立だ。末永く仲良くしようぜ葛城。」
葛城の言葉に口角を上げながらそう答えた龍園。龍園はそのまま葛城の反応を確認せず、Cクラスが集まっているであろう砂浜へ向けて歩き出した。
「この試験は、勝ったも同然だな。」
そのつぶやきは、木々のざわめきによって掻き消されていった。
Cクラスの生徒は、ちょうどいい砂浜を見つけたらしく、そこに集まっていた。
「龍園さん!おかりなさい!ここどうですか?」
「よし、悪くねぇな。リーダーは俺がする。石崎、アルベルト、金田、伊吹、ひより、着いてこい。」
石崎の言葉にそう答えながら、Cクラスの幹部を引き連れて坂上の元へ向かう龍園。坂上から、龍園翔と書かれたキーカードを受け取った龍園は再び、砂浜に集まるCクラスの元へ行く。
「お前ら、今日1日、ひたすら遊べ。夜になれば全員リタイアだ。わざわざひもじい生活をする必要は無い。」
龍園の言葉に驚きを隠せないCクラス。それもそのはずである、この特別試験のポイントをみすみすドブに捨てようと言うのだ。
「この試験、せいぜい150クラスポイント程度しか手に入らない。1週間無人島生活をして、だ。割に合わない。だが、俺にもちゃんと考えがある。だからお前らは遊ぶことだけに集中しろ。せっかくのビーチなんだ。楽しまなきゃ損だろ?……いいな?」
龍園の言葉に渋々ながらも了承するCクラス。だが、龍園にも考えがあると聞いて、遊ぶことに気持ちを切り替えた。
契約内容不備あるかも。