異界ダンジョンに行こう! ~神隠しにあったけど、このダンジョンのすべてを知り尽くして幸せになります~   作:名無しの権兵衛

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呪いの先

「くっ! 『暴風来』!!」

 

 目の前に固まった『夢猿』たちを『暴風来』で一掃したアタルは、彼らが灰になったのを見届けてから周囲を確認する。他のメンバーたちも戦闘を終え、汗をぬぐっている。

 

「みんな、大丈夫…… 痛っ」

 

 怪我の確認の途中で、痛みに思わず呻いてしまうアタル。アドレナリンのおかげか、先ほどの戦闘で『夢猿』の攻撃を受け腕を怪我してしまっていたことに今気づいたのだ。

 

「レインコートさん大丈夫!? すぐ治すね…… 『治療』」

 

「ありがとうフランシーヌ、助かるよ」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

 アタルがお礼を言うと、フランシーヌは嬉しそうに返事をした。昨晩の約束から、年が近いこともあってか二人は打ち解けはじめ、タメ口で話すようになっていた。

 

「……フレイム君、なんかあの二人仲良くなってない?」

 

「えっ、そうか? でも仲良くなることはいいことじゃねぇか」

 

「いや、そういう意味じゃなくて……」

 

「わかるわ、あれはきっとアレよ、アレ」

 

「や、やっぱりアレですか!?」

 

「いや、アレってなんだよ……」

 

 その変化は周囲にも伝わっているようで、女性陣は色めきあっていた。このような閉塞感のある陰気な場所で色めきだった話題などまったくないところに突如降ってわいたそれっぽい話題に、二人は思わず興奮していたのだ。

 

 しかし、なんだか二人のテンションについていけなくて寂しくなったフレイムは、ギタリストたちの方へ向かった。

 

「ねぇギタリストさん、アレって何だと思う?」

 

「気にしなくていいと思うよ、彼女たちが勝手に言ってるだけだから」

 

「こういうのは周りがどうこう言うもんじゃねぇ、余計なことしたら変にこじれるもんだからな」

 

 一方男性陣の反応はほとんどなかった、と言うかあまり興味がないのかもしれない。

 

「それで、レインコートくん、これからどうしようか?」

 

「あぁ、ええっと…… とりあえずまだみんな元気そうだから、もうちょっと探索しようかな?」

 

「……うん、そうだね。みんなにも伝えるよ」

 

 ギタリストはアタルの言葉遣いが変わっていることに少し目を見張るも、彼なりの信愛を感じて嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 そして鼻唄でも歌い出しそうなニコニコ笑顔で他のメンバーに伝えにいく。

 

「ふふっ、レインコートさん、みんなにも普通に話すことにしたんだね」

 

「ま、まぁ…… 君一人だけっていうのも変だしね」

 

「そっか、私だけ特別でもよかったんだけどなぁ……」

 

 アタルは彼女がぼそりと呟いた言葉は聞かなかったことにした。彼女からの好意は感じているが、おそらくはこのような閉鎖空間における命のやり取りでのつり橋効果、少なくともここから出るまでは考えるべきではないと思っていた。

 

「さて、それじゃあそろそろ移動しようか」

 

 

 

 

 

「そういえば、あの結晶はどうなってるの?」

 

「あぁ、ちょっと待ってて」

 

 大きめの通路を移動中、ローリエから聞かれたためアタルポケットから呪い結晶を取り出す。この呪い結晶が大きくなってきていることについては全員に説明済みだ。説明して不安を煽るより、説明せずに危機が訪れたほうが危ないと判断してのことだった。

 

「あぁ、やっぱりちょっと大きくなってる」

 

 『夢猿の凝縮呪い結晶』

 

 呪いの結晶は戦闘を行うたびに大きくなっていく。すでに今日だけで『夢猿』との戦闘は3回目、その分呪いが蓄積されているのかもしれない。

 

「まったく、勝手に襲ってきて勝手に恨むなんざ、迷惑な猿どもだ」

 

「だよなぁ、まっ! 俺たちの『土克水』で楽に倒せるし、呪いの奴も大丈夫だろ!」

 

「フレイム君、調子に乗ってたら痛い目見るよ?」

 

「うっ、わかってるよ……」

 

 少し天狗になっているフレイムに少女が釘をさす。ここで素直に反省できるのは彼の長所だ。

 

「それにしてもさ、この呪いってどうすればなくなるんだ? その呪いの怪異を倒せばいいんだよな?」

 

「えぇっと、俺の時はある人…… 人? に手伝ってもらって、呪われてから戦ったら消えたな」

 

「うへぇ、一回呪われなきゃいけないのかよ」

 

「まぁ、呪いと言うか、挑戦状って書いてたけど……」

 

「今回はその方法は無理なのかな?」

 

「その人? に会えないか試してみたけど会えなくてさ、さすがにこれを使って呪われる気にはなれなくて……」

 

 呪いについてフレイムやギタリストたちと話すも、解決策は特に見つからなかった。

 

 現状としては、この徐々に大きくなっていく結晶を見ていることしかできず、ならそれまでに強くなろうとみんなで前向きに考えていた。

 

「そういえば…… うっ!?」

 

 話に夢中になっていたせいか、曲がり角から突然飛び出してきた『腐った歯車』への対処が遅れてしまい、腕をかまれてしまうアタル。その衝撃で、手に持っていた『夢猿の凝縮呪い結晶』が床に転がり落ちてしまった。

 

「くっ、離れろ!」

 

「レインコート、動くな!」

 

 親方が素早く『腐った歯車』の頭を打ち砕いたおかげで、アタルの腕の肉は何とか食いちぎられずに済んだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、二人ともありがとう……」

 

 すぐに少女がアタルの腕の治療をしたおかげで、すぐに復帰することができた。腕の感触を確かめると、アタルは『腐った歯車』が飛び出してきた方向に目を向ける。

 

「まずいね、結構いっぱいいるよ」

 

「みんな、すぐに戦闘態勢について!」

 

「……あれ、あの結晶は?」

 

「今はそんなこと…… あっ」

 

 フレイムの声につられて思わず周囲を見渡したアタルは、そこで恐ろしいものを見てしまう。

 

 先ほどアタルが落として転がっていった『夢猿の凝縮呪い結晶』は、正面からいつの間にかやってきていた『夢猿』の集団の一匹が手に持っていた。

 

「まずっ」

 

 アタルは直感でかなり危険な状況だと感じて『雨宿り』をその『夢猿』に向けようとするも、それよりも早く『夢猿』が呪い結晶を口に入れてしまう。

 

「やばい…… みんな逃げるぞ!」

 

 アタルはすぐに叫ぶも、先ほどの『夢猿』の方から放たれた衝撃波を受けて体のバランスを崩してしまう。

 

 その猿は口元を抑えながら呻き、体をがくがくと振るさせていた。小さな体はぼこぼこと膨れ上がっていき、周りのサルたちを巻き込みながら膨張していく。

 

 やがてそれは横に細長く広がり、四角く、複数に分かれて形作られていく。

 

「キーキーウキキーキー キーキーキー?」

 

「キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーウキウキ ウキウキ?」

 

 正面にデフォルメされた醜い猿の顔面の張り付けられた、遊園地の子ども用アトラクションのような、チープなトロッコ。それはトロッコの内部からいくつもの細長い腕を出しながら、こちらに手を伸ばしている。

 

「キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーウキウキ ウキウキ!!」

 

 正面のサルの額に埋め込まれたプレートの内部がくるくる回ったかと思うと、それが止まり『活け造り』と表示される。

 

「なんだよこいつは……!?」

 

 アタルの呟きに、『夢電車』と表示されたウィンドウが出現する。

 

 高らかに汽笛を鳴らしながら、恐怖の電車が出発する。

 

 

 

 

 

 『レインコート』(雨野 中)

 

 HP27/31 MP4/18

 

 術式 『霊術:霊傘』『霊術:雨乞い』『霊術:雨上がり』

 

 状態 『川の主の寵愛』『救済対象』『赤い雨の呪い』『御使い狐の約束』『糸の呪い』

 

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