ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 思いつき作品です。



第1話

 

 英雄になりたかった。

 全てが欲しかった。

 食いきれないほどの食い物が欲しかった。

 見渡す限りの金銀財宝が欲しかった。

 城のような家が欲しかった。

 お姫様のような女が欲しかった。 

 誰にも負けない力が欲しかった。

 なんでも解き明かせる頭脳が欲しかった。

 誰もがひれ伏す権力が欲しかった。

 誰もが称える尊敬が欲しかった。

 無償の愛が欲しかった。

 貧しさと飢えと暴力だけの世界に生まれた俺はこの世の全てが、目に付くもの全てが欲しかった。

 

(あと少しだったんだけどな)

 

 幸運があった。

 襲いかかった獲物がお人好し極めた勇者で、そいつからありとあらゆるものを学べたのだから。

 力をつける度に更に増す欲望を隠しながら、成り上がる為の力を全て身につけてやった。

 渡された卒業の証だって、単なる道具にしか思えなかった。

 

「貴方にもいつかわかる時がきますよ。真に満たされるということが、本当に欲しているものが何なのか」

 

 そんな諭すような言葉だって、欲望のままに生きれない腰抜けの戯言だと思っていた。

 でも、

 

「俺の名はダイ!!勇者ダイです!!」

 

 俺の成り上がりには邪魔だと敵視していた最後の弟弟子の進む姿を見ているうちに、

 

「後は頼んだぜ、兄貴!!」

 

 能無しだと見下していた鍛冶師の息子の成長の様を目で追ううちに、

 

「皆を守ってくれてありがとう、君は私の自慢の教え子です」

 

 死んだと聞いていた師と再会できたその時に、なんとなく理解できたんだ。

 

「英雄になりたかったんだけどな」

 

 俺の本当に欲しいものが。

 

「なんで!?」

 

「おい!!アンタは!!」

 

 死神キルバーンの最後にして最悪の一手。大陸一つ消し飛ばす、かつてダイの父である伝説の竜の騎士バランの命を奪った伝説の超破壊爆弾・黒のコアの爆破。発動の瞬間にキルバーンの本体であるひとつめピエロを討ったがそれでも止まらぬ爆弾を抱えて地上に被害が及ばないように天空へと飛び立った勇者と大魔道士。

 その二人の弟弟子に追いついた俺は黒のコアを奪い、自身の唯一のオリジナル技を発動させる。

 

「頼んだぜエクセリオンブレード」

 

 世界最高の鍛冶師ロン・ベルクにより才牙と名付けられた技。闘気と魂を具現化した鳳のような大剣を伝説の不死鳥ラーミアのような光り輝く鳥へと変えて、二人を皆が待つ地上へと送り届かせる。

 

「待ってよ!!」

 

「アンタは英雄になりたかったんだろ!!」

 

 俺がどうなるか理解している二人が、自分達のことを棚に上げて引き止めようと必死に手を伸ばす。

 同じことをしようとしたくせに誰かにやられるのは我慢がならない。ダイとポップはそんな、誰よりも優しい少年達だった。

 だからこそ、自分の決断に満足した。

 

「アイツらの未来」

 

 自分が本当に欲しかったモノ。

 それはきっと、これから先も彼らが笑いながら生きていくことなのだろう。

 

「ああ、満足だ」

 

 底の抜けたツボのように溜まらぬ心。

 砂漠のように乾いた魂。

 何を手に入れても、どれだけ強くなっても、常に感じていた飢えに似たその衝動は、

 今この瞬間に、生まれてはじめて消え去った。

 満ちたりた幸せを感じながら、平和になった世界に生きる、大切だったと理解できた仲間達の笑いあふれる未来を想像し笑みを浮かべたまま、熱と光に包まれて俺の意識は溶けるように消えていった。

 

 

 

 

「強くなるにはどうしたら良いですか?」

 

「才能と信念と最高の指導者と才能」

 

「なんで才能を二回言うんですかっ!?」

 

 迷宮都市オラリオ。

『ダンジョン』と称される地下迷宮を保有する、いや迷宮の上に築き上げられた巨大都市。

 そのあらゆる種族ひしめく元の世界では見たことのない大都市の片隅にある食堂にて、俺がこの都市に来るきっかけとなった白兎のような外見の少年がカウンター席から仕事中の俺の返事に叫びをあげた。

 

「なんだかんだで才能って全てだろ」

 

「身も蓋もなさ過ぎる」

 

 うなだれる少年ベル・クラネルを見ながら俺はこことは違う世界で共に戦った仲間達を思い出す。血筋とは言わないのはポップとヒュンケルや自分自身という例を知るがゆえ、けれども伸ばす機会という幸運に恵まれてはいたが他者より優れた才能があったのは誰の目にも明らかだった。

 ちなみに自身を過小評価していたポップだが、アレは世界中を見て回った俺から言わせれば魔法使いとして一万人に一人の天才だ。そもそもいくらアバン先生作の杖を装備したからとはいえ、ただの鍛冶屋の息子がメラゾーマなんて発動できるわけがないのだ。

 

「で、どうしたんだよ?」

 

「強くなってモテたいんです」

 

「飯食って帰れ」

 

 かつて同じ夢を追った身。だからその気持ちはわからないでもないが普通に仕事の邪魔だ。

 店長にどやされる前にアバン先生仕込みの調理技術で本日のおすすめ定食を拵え、ダンジョンに出会いを求める少年の前に置く。

 

「ゼノンさんってなんでもできますよね」

 

 目をパチクリとしながらベルは言う。

 

「まあな」

 

 なんでもできるのは、アバン先生がなんでも教えてくれたからだ。

 あの人は当時は無駄に感じた戦い以外のこともいっぱい教えてくれたんだ。

 

「一緒にダンジョン潜りましょうよー」

 

「興味ねえ」

 

 オラリオに来る途中に出会い、同じ神に恩恵を授けられた【神の眷属】同士。だが元の世界の破邪の迷宮で懲りている俺は、ベルが神ヘスティアに拾われるまでの期間(なんでもファミリアに入団するのは伝手やら金がないと厳しいらしい)に雇ってもらった食堂で、ベルのついでに眷属となった今も働き続けていた。

 ちなみにヘスティアファミリアは主神自ら屋台で働くレベルの零細ファミリア。ベルのダンジョンに潜った収入より、俺の食堂での賃金+余ったまかない飯の方が稼ぎが良いらしい。

 ダンジョンは一攫千金がかなう場所。尽きることなく湧き出るモンスターを殺せば魔石というあらゆることに利用できる石と運が良ければドロップアイテムなる価値あるアイテムを入手できる。

 モンスター討伐は得意だ。

 だてに豪魔軍師ガルヴァスとその配下である6大将軍と数千の魔物を蹴散らしていない。

 ダンジョンに潜って戦う方が食堂で働くよりよっぽど実入りはいいだろう。

 だが今はそんな気にはならない。

 愛用の武器の再生がまだすんでないし、ダンジョンに潜らなければ襲いかかってこないならわざわざ行くのもめんどうだ。

 そういえば、

 

(あのサソリ型のモンスターの魔石はいったいいくらになったんだろうな?)

 

 この世界ではじめて目を覚ました場所で遭遇し討伐したモンスター。アルテミスファミリアとか名乗った連中がアンタレスとか呼んでいたが、この都市で見かける冒険者の大半より強い存在だった気がする。

 なにせ、寝起き病み上がりとはいえ俺が奥の手を使う羽目になった相手なのだから。

 

(あと俺のステイタスってのは相当おかしいらしいから目立たない方が良いってヘスティアも言ってたしな)

 

 露出多めな衣装を着た胸のデカい黒髪の美少女の姿をしたヒトでもモンスターでもない神という存在。その姿を思い浮かべ自身のステイタスを思い出す。

 

 ゼノン

 

 Lv.1

 力︰〜 耐久︰〜 器用︰〜 敏捷︰〜 魔力︰〜

 

《魔法》

【異世界呪文】

 元の世界で覚えた全ての呪文の使用可能。

《スキル》

【アバン流殺法】

 勇者アバンの作り上げた殺法。基本は剣だがあらゆる武具にその道理は通じる。

【武神流】

 人の身でありながら神の頂に手をかけた拳聖ブロキーナが流派。

【ロン・ベルク流鍛冶術】

 神器に匹敵しうる武具を作成可能。

【才牙】

 闘気術の極み。自身の魂を用いて最強の形・己の理想を具現化する。

【不神心】

 神力による影響を受けない。

 

 ヘスティアには伝えた(アルテミスにも言ったか?)自身の素性。

 明らかにその影響を受けたステイタスはこの世界にとっては劇物に等しいらしい。

 しかし不神心か。

 生まれから助けてくれない神に悪態ついてたし、竜の騎士に与えられた宿命を知って嫌悪感を抱いたし、大魔王バーンの理想を聞いた時に神が元凶だろと思ったからなあ。

 この世界に降りてきた神もロクデナシがチラホラいるとのことだから敬うとか無理だろう。

 いやまあヘスティアは良いヤツだから養うことに抵抗はないのだが。

 

(とりあえず鈍らない程度に鍛錬して、暮らせる程度に金を稼いで、この世界のことをもっと知るべきだな)

 

 生き延びたからと元の世界に戻りたいとは思わない。それは不可能だと理由はわからないが理解しているのだから。

 仲間達に会いたい気持ちはあるが、あの瞬間に自身の終わりを受け入れたからか踏ん切りはついている。

 

「強くなりたいよー、稼げるようになりたい、出会いが、ハーレムがあ」

 

 弱音を吐かれるくらいベルと親しくはある。だから強くしてやる為に鍛えてやっても良いのだが、

 

(コイツに一週間で勇者になれるスペシャルハードコースは無理だろうしなあ)

 

 そもそも一週間も鍛練にのみ費やしたら収入が無くなって生活できない。

 生活と鍛練の両立自体が大都市で暮らす上で中々に厳しいのだ。

 

 魔王軍という脅威の無い平和な世界。

 日常生活に悩む、そんな贅沢を勇者を救った英雄は堪能していた。

 なお、この世界が黒龍という厄災を抱え、人類存亡の危機に陥っている事実を、この迷宮都市にも闇派閥という厄介事がある事を、彼はまだ知らない。

 





 主人公設定。
 
 主人公名 ゼノン。

 某冒険王ビィトの伝説のバスターと同名、同才牙だが外見は肩までの黒髪ストレートの目つきの鋭い容姿。
 スラム出身者であり、内面は殆ど某スクライドの無常矜侍。ただ世界がドラクエ的ファンタジーだった為、謀略やら暗躍にそこまで手を出すことはなかった。
 勇者アバンはその内面を理解しつつも、ヒュンケルの件(ヒュンケル行方不明直前)もありアバン流殺法を極め(空の技をなぜ体得できたかは謎)、自立できるまで面倒をみてその才覚が良い形に芽吹くと信じて卒業の証を授けた。
 出世欲、所有欲、などに囚われていたがそれを大半の人に悟られぬ程度の擬態はできたいた。
 ダイの大冒険の原作開始時前は魔物退治で名を挙げ、原作開始後はダイ達の手の及ばぬ場所で活躍していた。
 勇者ダイが氷炎将軍フレイザードを倒すまでは世間一般ではアバンの使徒とは彼を指していた。
 ダイの大冒険世界の世界樹防衛、エルフ族救済、豪魔軍師ガルヴァス一派撃退などの手柄を挙げる。
 実力は最強に届かない二番手。
 貪欲に力を求め、あらゆることに手を出すが、
 剣と武器制作ではロン・ベルクに届かず。
 魔法力では大魔道士マトリフに劣り。
 体技では拳聖ブロギーナの域に達せない。
 才能ゆえに教えは授けられるが、頂点には至れないそんな存在。
 事実戦闘において、ロン・ベルク、竜騎将バラン、大魔王バーン、真大魔王バーンに敗北した。
 
 ダイの記憶喪失時にダイ達と合流し、竜騎将バランに敗北したこと、ポップのメガンテを目撃したことにより少しずつ内面を変化させていった。
 なお表向きは高潔な英雄を演じていた為、恋愛などは一切していない。

 彼の生涯は英雄譚として語り継がれている。彼の内面を知るものが聞くたび顔を引き攣らせてしまっていたが(あるいは爆笑)。
 
 
 続くかどうかは未定です。
 なおベル・クラネル君がオラリオに到着する途中で知り合ったので、闇派閥関連、アストレアファミリア関連の改変はありません。
 そして作者が数字が苦手な為、ステイタスの数値は表記しない予定です。
 主人公の強さは、ラーハルト、ヒム、ヒュンケルより上ぐらいです。
 そして才牙ですが、この作品では主人公オリジナルであり、技としては凄まじいが武器としては落第だとロン・ベルクさんに言われております。
 
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