ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
ラナ系、だけの説明で予定していた呪文がバレて作者は驚いています。
ベート・ローガの修行を終えた翌日。
「ありがとうございました」と深く頭を下げたベートは本人のやらかしのせいでまだロキ・ファミリアホームへは帰宅できず、しばらくは適当な宿屋に泊まるそうだ。
ならうちに来るか?と訊ねたのだが闇派閥との抗争真っ最中だからと断られた。
やっぱり律儀なヤツだよなコイツと思い、報酬である飲みの約束をしてから俺も帰宅した(一日三回帰ってたけど)。
帰宅した瞬間飛びついてくるヘスティアをはたき落とし、駆け寄るファミリアメンバーに何をしていたのかを説明。
アバン流の短期習得カリキュラムのじっけ·······実践。ベルだけではなく他の皆にもできないかを、オラリオに存在する上位冒険者で試したのだ。
「それで結果はどうなんだ?」
本職は鍛冶師ながらもベルとパーティを組む際には前衛を担うヴェルフが興味があるようでそう訊いてきた。
ロン・ベルクのような思想は抱いておらずとも強くなる必要性を感じているのだろう。
「俺がつきっきりなら教えられないわけではないが、ベートレベルのステイタス(身体能力)とセンスがないと習得は難しいだろうな」
術理のみを教えることは可能だがアバン流を極めるにはやはり相応の実力と才能がいるようだ(アバン先生ならば教えれるかもしれないが)。
「そいつは残念だ」
ベルというステイタスとセンスの足りない例外は存在する。けど本来は不可能な習得を本人のスキルのにより成し遂げているのだ。
だからベルができたから自分もできる。
そう思うのは無謀というわけだ。
まあヘスティア・ファミリアの団員達は伸びしろがまだまだある。
何度か冒険を繰り返せば身につけることもできるようになるだろう。
そしてもう一つ。
ベートでこの世界の存在でも呪文契約が可能だったと証明された。
ならばリリルカ達にもいくつか契約させても良いのかもしれない。
「それでどんな修行だったんですか?!」
目をキラキラさせて訊いてくるベル。
「ああ、それはな」
だから俺は教えてやった。
俺がどんな風にベートにアバン流を叩きこんだのかを。
・・・・・・・・・・・・話し終えた頃には明るいワクワクとした表情だった皆は青褪めドン引きしベートに同情していた。
なんでだ?
夜。
オラリオ第五区画に存在する酒場『焔蜂亭』。紅玉を煮詰めたかのような真っ赤な蜂蜜酒が名物のベートの行きつけの店。
報酬である飲み会はここですることになったのだが、
「なんでボロボロなんだお前?」
朝オラリオで別れたベート・ローガはまるで何者かに追い回されたかのように傷だらけだった。
闇派閥に襲撃された、わけではないようだ。
それにしては血の匂いがしないし、損傷も殺しにかかるというよりはまるで子供の癇癪に付き合ったかのような具合だった。
「アイズのヤツがな」
げっそりとした表情でベートは語る。
やったのはアイズらしい。
ベートが俺に修行をつけられてると知った彼女は混ぜてもらおうとオラリオ内とダンジョンを探し回ったが見つけることができなかった(高位冒険者は普通はオラリオから出れない)。
そんな一週間を過ごしたところベートを見つけたのでズルいズルいと襲いかかってきたそうだ。
「あの娘は身体だけ成長した子供だからなあ」
ぶっちゃけダイよりガキじゃねえか?
基本的に無表情で固定されてるから誤解されがちだがその内面は俺が初めて会った時のダイ(バランにより記憶喪失)と大差ない。
その後のダイはポップが心配するくらい急に大人びてきてしまったのだ(竜の紋章の覚醒が影響を与えているとマトリフ師は推測していた)。
「ああ、今ならそう思えるわ」
神秘性がロキ・ファミリア内でも剥がれつつあるアイズ・ヴァレンシュタイン。
そんな中身子供にお前は交尾とかツガイとか言ってたけど今どんな気持ち?
と煽りたくなるが、ベートはその問題発言後に尻スプラッシュしたのだから勘弁してやろう(元凶)。
本人もそのことを思い出してやらかしたという気分に陥っているようだしな。
二人がけのテーブル。
過去のやらかしに頭を抱える狼人を肴に、名物の酒とツマミを楽しむ。
こんな飲みも悪くはないもんだ。
周囲も現在の闇派閥暗躍を知らないので存分に平和な日常を謳歌している。
元の世界、大魔王軍侵攻による恐怖を誤魔化す為のヤケクソ気味な喧騒とは異なるひと時。
俺が見ることができなかった平和がここに存在していた。
(なんつう目をしてやがる)
そんな憧憬とも寂寥にも見える眼差しにベートが気づいていることを俺は知らない。
だがそんな酒宴をそっちのけでこちらを見てくる者達もいる。
【ロキ・ファミリア】の【凶狼】と【ヘスティア・ファミリア】の俺。
前者は第一級冒険者であることから(あとスプラッシュ)、俺は先日の戦争遊戯で有名になってしまったからだ。
そんな不躾な視線を向ける連中にベートはジロリと睨みを利かせ威嚇、そうするだけで二度とこちらを見ることはなかった。
「しかし良いのか?」
「何がだよ」
空のジョッキがいくつかテーブルに並びだしたところで俺はベートに言う。
「まだ仲間と揉めたまんまだろ?」
一週間オラリオから修行のために離れていたが、ベート・ローガのおかれた状況は何も変わっていない(むしろ修行つけられた分アイズから妬まれている)。
「テメェが気にすることじゃねえよ」
そう吐き捨てるベート。
自身の在り方を俺に理解されてることをベート・ローガは察している。
けれど変える気は一切ない。
「強く在り続ければ、俺達はそれでいい」
「強いだけ、じゃなく騒乱の最前線に立って戦うだろお前」
強いヤツは何をしたって許される、そう続けようとしたベートの発言を遮る。
強いからって弱者を見下す嫌な存在。
そう認識してる連中に実は俺は呆れ果てていたりする。
ベート・ローガは偶々才能があって強い存在になったわけではない。
誰よりも理不尽に挑んだから強くなったのだ。
かつての暗黒期、今の闇派閥との抗争。
その最前線に立つ戦士をなぜ扱き下ろせるのか。救ってきたのだから言う権利はあるだろうと俺は思っている。
「・・・・・・知ったようなことを言いやがって」
「俺はお前より性格が悪いからな。本当のクズは見ればわかる」
対面に座るのがアイズならばさらに露悪的な態度で周りの冒険者を煽っただろう。
だがここにいるのは俺。
窘められるのが目に見えてるのにやらかすほどベートは馬鹿ではなかった。
「ゼノンじゃないか」
そんな酒宴が続き、どこまで飲むんだよと俺のアルコール摂取量にベートが青褪めてきだしたところで艶のある声が聞こえてきた。
「アイシャか」
【麗傑】アイシャ・ベルカ。
先日レベル五にランクアップしたイシュタル・ファミリアの幹部にして戦闘娼婦のまとめ役だ。どうやら本日は仲間うちで酒宴を開いていたらしい。
「まったく一週間も来てくれなくって寂しかったんだよ?」
自然な動作でスッと俺の横に座り甘えるようにしなだれかかる。
「悪いな忙しくてよ」
一週間娼館に行かないのは頻度として普通ではないのか?アイシャのつける如何にも娼婦らしい甘い香水の匂いに顔を顰めながらベート・ローガは思った。
ベタベタと甘え身体を擦り付けるアイシャに続き他の戦闘娼婦に囲まれだしこの後に行くからとゼノンが言い出したの見て、もうお開きだなと腰を上げたところで、
「いたぁーーーっ!!
ベート・ローガぁ!」
喜色に塗れた明るい声がベートへと叩きつけられた。
「・・・・・・あぁん?」
「「「「М七号!!」」」」
「そのネタ止めて!!」
さり気なくイシュタル・ファミリア内で定着しつつあるコードネーム(原因はフリュネ)にまだ幼いアマゾネスは否定の叫びを上げた。
「一緒に行くか?歓楽街」
「行かねえよ」
相手も来たから丁度良いだろと色々察したゼノンに優しく肩を叩かれ、ベート・ローガはげんなりと拒否を示した。
これはベート・ローガが二人の少女に取り合われる日常が定着する、そのきっかけとなる夜のこと。
補足・説明。
この話でベート・ローガ修行からソード・オラトリア8に戻ります。
ただイシュタル・ファミリアが原作とは大分違うので色々変わります。
ゼノンの帰宅。
子供たち(違う)に囲まれました、お土産は狩った獲物とカリキュラムです。
ベート・ローガの帰還(生還?)
アイズに追いかけ回されました。
酒場の一幕。
ゼノンからしたらベートは自分より遥かにマシで、ゼノンの場合は弱いくせになんで生きてるのかと一時期ガチで考えていたので責めたりもしません。
そんなゼノンをなんとなくわかったのでベートの嫌なヤツムーブは控えめとなります。
戦闘娼婦達。
普通に飲み会と男狩りの前のエネルギーチャージでした。ゼノンがいなかったら店の客はピンチでした。
コードネーム。
フリュネをバケモノカエルと呼びたいから結構つかわれてます。下手したら二つ名に用いられかねないので控えめに。
歓楽街へGO。
ベートは拒否。飲みに付き合うけど連れ娼館は嫌がるタイプです(ラウル達との飲みでも娼館に行くタイミングで別れてた)。