ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ゼノンとダイパーティの初遭遇は実はかなり最悪な形でした。
 時期はバランに記憶を消されて、バランが竜騎衆を連れて襲撃してくる少し前(ダイを閉じ込めた辺り)。
 ゼノンは記憶喪失のダイを見て、こんなガキの為にアバンは死んだのかと不快そうな態度をとり(ホルキンスの死で余裕がなかったのもある)、レオナはその敵意を敏感に感じ取り、クロコダインはザボエラとの関係をしっており、メルルはゼノンの憤怒に怯えたからです。
 その場で殺し合いにならなかったのはポップのおかげで、「アンタが来てくれたら安心だ」とホッとしました(それでもバラン達へ戦力減らす為に特攻した)。
 そんなポップを見たから、仕方ない竜騎将を倒すついでに守ってやるか、とゼノンはなりました(負けたけど)。
 その後ポップのメガンテに脳を焼かれ、ダイの覚醒時に自分で造ったドラゴンスレイヤーを託しました(だから鎧の魔剣は無事)。

 



第103話

 

 ベートがМ七号ことレナ・タリーというアマゾネスにまとわりつかれ店から出ていったのを見送った後、俺もアイシャ達を連れて歓楽街へと向かった(代金はベートがきちんと払っていた)。

 そして一晩中ハッスルしてホームへと朝帰りし(なぜか玄関で仁王立ちするヘスティアが居たがスルー)、いつもの日常へと戻っていった。

 レナ・タリー。

 イシュタル・ファミリア所属のアマゾネスの一人でメレンでの騒動時に応援に来たベートから腹に重い拳を叩きこまれたらしい。

 それがきっかけでアマゾネス特有の生態が発動し(負けた男に惚れる女は割といるがアマゾネスは劇的過ぎる)、以来ずっと探していたそうだ。

 

「これでベートもフィンのお仲間だ」

 

 現在高ランク冒険者アマゾネス二人に追い回されている小人族の勇者とベートは同類になったようだ。

 幸いなのはレナ・タリーのレベルがさほど高くないことだろう。

 フィンほどに貞操の危機に陥らないのは不幸中の幸いなのかもしれない。

 ・・・・・・アマゾネスなんて抱いてやれば大人しく惚れるだけなのになんでそこまで嫌がるのか俺にはあんまり理解できないのだが。

 

(それよりファミリアの仲間と仲直りすれば良いのに)

 

 あんな扱いを受けてもベート・ローガはロキ・ファミリアを自らの群れであると認識し離れる気はない。酒宴の席での語り合いからそんな彼の本音を俺は感じ取っていた。

 

(かといって弱いヤツの気持ちなんてわかんねえし)

 

 ラウル達を説得、も考えはした。

 今までの付き合いから話を聞いてもらえるぐらいの付き合いはあるからだ。

 しかし俺と彼ら、ベートに罵られる者達には決定的な違いがある。

 俺はどこまでいっても強者側でしかないということだ。

 ラウル達の主張に対して、弱者と罵られるのが嫌なら強くなれば良いだろうとしか俺は思えないのだ。

 特にラウルに関しては無理だ。俺には努力が実らないという感覚が実感できない。

 

(関係ないっちゃないけどよ)

 

 ファミリア内の不和。

 これの解決は主神であるロキか団長であるフィンの役目である。

 他所の者である俺が気にすることではない。

 けれど気にはなる。

 なんとかしたくもなる。

 そう、なんだかんだいって、

 

「ベートは俺の教え子だしな」

 

 トンテンカンとガネーシャ像を彫りながら俺はそんな思いをいだいていた。

 

「えーっとあとは二十体か」

 

 都市の憲兵ガネーシャ・ファミリアから依頼された動くガネーシャ像。

 都市の見回りとして動くガネーシャ像がオラリオを闊歩する未来は間近に迫っていた。

 ちなみにこの本神直々の依頼だが、実は団長には話を通してなかったらしく、主神であるガネーシャが正座した膝の上にガネーシャ像を乗せる東方伝来の仕置を受ける未来も同時に迫っていた。

 善神の代表格であるガネーシャ。

 しかしホームの件といい、神らしくやらかす時はやらかすのである。

 

 

 

 ベート・ローガ修行から数日たち、たまっていた仕事を続ける俺を訪ねてくる者達がいた。

 

「わだじをづよぐじでぐだざい〜〜」

 

「教え子の募集とかしてないんだけど」

 

 えぐえぐと泣きながら弟子入りを志願してくる者の名はリーネ・アルシェ。

 ロキ・ファミリアの後衛である治療師の少女だ。

 彼女は大きな眼鏡の向こう側の瞳をぷるぷる震わせ涙を零しながら強くなりたいと言う。

 どんな状況?と付き添っているロキ・ファミリアのエルフであるレフィーヤとロキ・ファミリア幹部のティオナに目を向ければ彼女達は気まずそうに語りだした。

 

「えっと、私達ロキ・ファミリアは現在闇派閥と戦ってる途中で」

 

「拠点である人造迷宮の扉が開かれていたので攻め入ったのですが、闇派閥を打ち破ることができずに撤退したのです」

 

「それで再度攻める為にその扉を見張っていたけど固く閉められちゃって入れなくなって」

 

「現在はファミリア総出で扉を開ける方法と別の侵入口を調べているのです」

 

 なるほどそんなことをしていたのか。

 しかしファミリア総出、か。

 その手の情報は戦闘に特化してるロキ・ファミリアの団員よりもヘルメス・ファミリアなんかに依頼したほうが良いんじゃねえかな?

 ロキ・ファミリアの団員達は色々な理由があるがとにかく目立つ。

 そんな目立つ連中が聞き込みなんてやり方で調べ回っていたら、闇派閥の拠点である人造迷宮の鍵と別の侵入口を調べているという、闇派閥に知られたら対処されてしまうやばい情報が向こうに筒抜けじゃねえか。

 二大派閥の片割れロキ・ファミリア。

 俺が相手をしていた大魔王軍や王国の貴族に比べたら組織として拙いとこは拙いよな。

 

(貴族なんか酷いのになると聞きこみに応じた連中すら口封じと見せしめに始末するってのに大丈夫かねえ)

 

 民を勝手に生えてくる雑草と認識している大概の貴族共は始末に躊躇いがない。

 調査活動、それそのものが関わる者達全員の命に関わることなのだ。

 

「それで調べている最中でね」

 

「ベートさんがアマゾネスの女の子と一緒に、まるでデートしてるみたいに仲良く歩いているのを私達は目撃してしまったんです」

 

「ホームを追い出されたら女のトコに転がりこむのは普通じゃねえか?」

 

 と、思考が明後日の方向に飛んだか。

 ふむふむ、どうやら酒宴の時にベートに飛びついていたレナ・タリーは上手いこと関係を深めているらしい。惚れたらひたすら纏わりつくアマゾネスをベートが引き剥がせないだけだろうが。

 

「あー、宿代も馬鹿になんないしねえ」

 

「そ、そんな追い出したなんて」

 

 ベートの宿泊先ではと指摘すればテルスキュラから長旅を経験したティオナは理解を示し、そんなつもりはないとレフィーヤは言い淀む。

 

「それで、そこのリーネってのがショックを受けて強くなりたいって言い出してきたわけか。なんでだよ?」

 

「だっで、づよぐなればベートざんのよごにいれるので〜」

 

 ショックなのはわかったからとにかく泣き止んでくれねえかな、ほれタオル貸すから。

 しかし、強くねえ。

 

「・・・・・・他を当たって欲しいんだが」

 

 この道十五年のアバン先生なら勇者育成以外にも魔法使い、僧侶、賢者を育てあげ超一流の戦士に導けるんだが。

 あと忙しいし。

 えーっと次はストレス発散もとい鍛錬の的用の神ヘルメス像を五十体。出来る限り本神に似せてできれば色も塗ってと、動く石像化しないだけマシだな。

 

「ぞごをなんどが〜」

 

「あ、あのお願いできませんか?」

 

「このままじゃ押しの強いアマゾネスの娘にベートが取られちゃうからさ〜」

 

 ・・・・・・そう簡単にはベートは落ちないと思うけどな。アイツは過去からして恋人とかトラウマあるだろうし。

 

「あ〜、一概に強くなる。と言っても先ず方向性と目標がある」

 

 ぶっちゃけただ強くなるだけなら俺は筋トレを勧める。筋トレで身体能力を倍にして今までより重い武器を自在に振り回せるようになるだけで鍛錬前より強くなっているからだ。

 だがそれは『戦士』の強さだ。

 リーネ・アルシェはロキ・ファミリアで後衛であり希少な治癒魔法を発現した存在。

 特にロキ・ファミリアは集団として前衛、中衛、後衛と役割分担をきっちりしている。

 ならばそんな強さは求められてはいないだろう。

 

「強くなる、ではなく治療師としての実力を高めるべきじゃねえか?」

 

 契約すれば使えるようになる呪文以上に神の恩恵で発現する魔法は本人の適性を示している。

 治癒魔法が発現した者が無理に戦闘できるようになろうとするのではなく、適性ある役割を磨きあげるべきだろう。

 

「そ、そうですね」

 

「適切なアドバイスです」

 

「ほえ〜ゼノン凄い」

 

 まあ役割分担の結果戦闘力に欠いて、前回の闇派閥との戦いのように後衛を狙われた時に対処できないって問題もあるが、それは集団を指揮する団長がそれを踏まえて部隊運用すれば良いだけだ。

 

「それではその、治療師として技能を上げる方法とか何かありますか?」

 

「ひたすら治癒魔法を使い続けろ」

 

 んなもん回数こなすしかないだろ。

 

「「「脳筋っ?!」」」

 

「オラリオを代表する治療師はお前さんの千倍は治癒魔法を使っているだろう。ならば先ずはそこまでやってからだ」

 

 ディアンケヒト・ファミリアの聖女とフレイヤ・ファミリアの魔女。

 オラリオ最大の治療院とフレイヤ・ファミリアの戦いの野。

 治癒魔法を際限なく使い続けられる環境が本人の才能に合わさり、今日の実力を得たのだ。

 つまりとにかく治癒魔法を使いまくれば良い。

 

「「「なるほど」」」

 

 俺の言葉に三人はそう頷いた。

 そして治癒魔法を使う機会だが先の両方の場で働けばいくらでもあるだろう。

 常に人手不足だろうそれらなら歓迎される筈だ。

 

「まあそれでも戦闘力が欲しいなら、ほら」

 

 作業場の奥へ行き一本の杖を引っ張り出して投げ渡す。

 

「えっと、これは?」

 

「理力の杖。

 込めた魔力を打撃力に変換する武器だよ。

 とりあえずそれを使いこなせるようになるんだな」

 

 魔力の修行にうってつけな魔法使いの自衛武器。戦闘で使うならば最後の手段になるだろうがないよりはマシだろう。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 受け取ったリーネはそう言って頭を下げた。

 

 

 

「なんだかんだ言って色々やってくれるんですね」

 

「ゼノンって世話焼きなトコあるよね」

 

 断った筈なのに出来ることをしてくれるゼノンをレフィーヤとティオナはそんなことを呟きながら見るのであった。

 

 

 

「あ、あとベートさんと付き合う為に何かアドバイスとかは・・・・・・・・・」

 

「迫り倒して既成事実作れ」

 

「それができたら苦労しないって」

 

 





 補足・説明。

 今話はベートとの酒宴が終わってからのゼノンサイドとなります。
 ベート・ローガはレナと遭遇後は原作のように纏わりつかれまくり、必死に跳ね除けようとしたり、過去を振り返ったり、アマゾネスにドン引きしたりしています。
 原作と異なるのはリーネの回想がないくらいです(アイズの行動はほぼ同じ)。
 ただレナとのデート(笑)を見てリーネがダメージを受けました。
 確か同じくらいのレベルでしたが、アマゾネスのレナに比べたらヒューマンで治療師のリーネは弱いので。
 結果多忙なゼノンに弟子入り志願をします。

 ロキ・ファミリアの調査。
 抗争中に聞き込み調査とか状況モロバレで危なくね?と作者は思いました。こういった行動が闇派閥に遅れをとった原因かと思います。

 ゼノンの拒否。  
 忙しいのもありますが、多分強くするのは無理だと思いました。
 ただリーネの件からロキ・ファミリアの面々が弟子入り志願してくるだろうと推測し手を打つ予定です(またやることが増えた)。

 治療師として向上。
 とりあえず数をこなすべきかと。例とした両者は過酷な環境があそこまで至らせたのかなと思いまして。

 理力の杖。
 この世界基準ではかなりの逸品です。
 ライトシャムシール作りのついでに作りました。

 
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