ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ある日のヘルメスさん家。

「お届けものでーす!!」

「おや?何かな」

「来ましたか」

 配送業者に届けられた梱包された複数の石像。
 ヘルメス・ファミリア団長ことヘルメスの被害者筆頭であるアスフィは包装を剥がして中身を確認する。

「ありがとうございましたー!!」

「塗装された俺の石像?
 そんなモノをわざわざ注文したのかい?
 いやー眷属に愛されているなあ俺」

「さて、
 総員構えーー!!」

「「「「「おう!!」」」」」

「え?」

「改良ボウガンの試し撃ち実験。皆、しっかり狙いなさい。特に股間を集中的に」

「えっ、ちょ、」

「撃てえ!!」

「おりゃー!!」

「くたばれー!!」

「確信犯トラブルメーカーが!!」

「三枚目優男が!!」

「オッタルと掛け算希望ー!!」


「ナニコレ?」

 一分の一自分フィギュアに喜々として鬼気として矢を打ち込む眷属達に脚本家気取りの旅神は呆然とするのであった。でもすこし興奮した(委員長キャラに罵倒され撃たれるのは性癖にささる)。




第104話

 

「なんか騒がしいな」

 

 オラリオの夜。

 歓楽街の第三区画【イシュタル・ファミリア】の領域に俺は足を踏み入れていた。

 目的は夜遊びではなく納品。

 インテリアとして注文された女神を模した石像を納めに来たのだ。

 担当者に届けた俺は女を抱く気分ではなかったので一杯ひっかけてから帰るかとイシュタル・ファミリアホームから出ようとして、その騒然とした空気に気がついた。

 

「争いか?」

 

 歓楽街の支配者イシュタルと戦争をする存在はごく一部。

 元よりオラリオの一角を支配していたこともあるが、総戦力としてフレイヤ・ファミリア、ロキ・ファミリア、ガネーシャ・ファミリアに次ぐ規模を持っているからだ。

 さらに俺がアレコレやらかし、加えてイシュタルの変化によりその戦力をさらに増している。

 もはやフレイヤ・ファミリア、ロキ・ファミリアの二大派閥でなくば単独で打ち勝てない存在となっている(例外=俺はいるが)。

 ゆえにイシュタルがベルにちょっかいをかけてフレイヤをブチギレさせる。

 そんなことでもしない限りはこの歓楽街で戦争なんておきない筈なのだが。

 

「なにがあったのかね」

 

 一杯やる空気じゃねえ。

 知らん仲ではないから手を貸そうかと調べようとした所で、

 

「ウチが闇派閥と決別したのさ」

 

 その答えが向こうからやってきた。

 

「アイシャ」

 

 滑らかな黒の長髪を揺らして現れる麗しきアマゾネス。イシュタル・ファミリアで三番手と目される実力者にして指揮官【麗傑】アイシャ・ベルカ。

 

「どういうことだ?」

 

 オラリオ内で誰よりも早く闇派閥の暗躍に気づいた神であるイシュタルは、ギルドや他のファミリアとの不仲から闇派閥と取引相手として関係を持っていた。

 それはいずれギルドが歓楽街の利益を根こそぎ奪おうと画策すると確信していたからだ。

 また気に入らなかった女神であるフレイヤを下す為の手段を得る為でもあった(ロキは女神として眼中に一切ない、どころか女神認識してるかも微妙)。

 あくまで取引相手であり、闇派閥の仲間ではないそんな関係。

 それはギルドと闇派閥の戦争でどちらが勝っても問題ないような立ち回りだった。

 しかし俺のやらかし(フレイヤの変身ライフバラシ)によりフレイヤへの敵愾心が消失したイシュタルは、時機(恩を一番高く売れるタイミング)を見て闇派閥をギルドに売る予定だった筈なのだが、なぜ唐突に決別をしたのか。

 

「レナがね、惚れた雄である【凶狼】の為にクノッソスの鍵を持ち出したのさ」

 

 ベートに最近纏わりついているアマゾネスの少女レナ・タリー。

 彼女の存在によりベート・ローガのロキ・ファミリア放逐ライフは喜劇寄りの騒動に彩られていたのだが、どうやら彼女は惚れた雄の為にそこまでやらかすレベルだったらしい。

 

「そいつはまた」

 

 そこまで尽くすアマゾネスの生態に呆れるべきなのか、クノッソスの鍵を欲していると零してしまったベートの迂闊さに呆れるべきなのか悩むところではある。

 

「主神様が闇派閥と会談中に発覚してね」

 

 さらに最悪のタイミングでレナ・タリーによる持ち出し(盗難)が発覚してしまった。

 それにより、闇派閥側は裏切り者であるレナの抹殺と鍵の奪還を要求してきたらしい。

 当然とはいえ当然の要求だが、元々闇派閥との取引が歓楽街と眷属達を守る為でもあるイシュタルはその要求をどう躱すか悩みだしたらしい。

 レナ・タリーのやらかしに関しては自身の宝物庫を荒らされた訳だが別に怒りはしなかった。

 アマゾネスが惚れた雄の為になんでもするのは当たり前のことだからだ。

 つまりこの段階ではまだ闇派閥との決別は無かったのだ。

 だが連中はやらかした。

 余計な一言を告げたのだ。

 

「ロキ・ファミリア幹部であるベート・ローガを狩るのに都合がよいな」

 

 と。

 実力者であろうと足手まといがいれば実力を発揮できない。

 ゆえに元より周囲の住民を巻き込んで襲撃する予定だった。

 そこにレベル2という闇派閥にとって狩りやすい存在がいるならば、レベル6の【凶狼】とて討ち取れるだろうと。

 その発言にイシュタルはキレた。

 イシュタルは善神ではない。

 ガネーシャのように人々全てを愛し守る気などはない。

 だが徒に民に害為す気もない。

 なにせオラリオの住民とは歓楽街のお客様。

 彼ら彼女らの存在あってこその歓楽街とは成り立つのだから。

 そしてレナ・タリーは自らの眷属、即ち娘。かつてのイシュタルならば損切りとして見捨てただろうが今のイシュタルはその犠牲を許さない。

 

「・・・・・・ここまでだね」

 

 イシュタルはそう呟き、闇派閥との決別を宣言した。

 

 

 

「なるほどね」

 

 会談していた闇派閥構成員は副団長であるタンムズが始末。

 その後にイシュタル・ファミリア総戦力による歓楽街内の闇派閥拠点襲撃を決定したそうだ。

 

「じゃあフリュネはどうしているんだ?」

 

 タンムズはイシュタルの護衛。

 アイシャは部隊の総指揮。

 となれば団長であるフリュネは何をしているのか。

 

「アタシに指揮を頼んでから完全武装して連中の拠点に突っ込んで行ったよ。一番強いヤツが一番先頭で暴れるもんだろって言ってね」

 

 理に適った采配。

 レベル6の最上位に成りつつある最強のアマゾネスのフリュネ。

 あのカーリー・ファミリアの最強二人を返り討ちにした彼女ならば遅れをとることはないだろう。

 

「あの好き放題していた暴君がすっかり変わったもんだよ」

 

 俺は知らないが、今のフリュネが団長であることを不満に思う者は誰もいないそうだ。

 できないことは押し付けるが、ファミリア最強であるし闘争となれば最前線に立つからだ。

 

「これが終わったらご褒美に抱いてやっておくれよ」

 

「褒美には抱かねえよ」

 

「え?」

 

「そんないい女は金を出して抱くさ」

 

「そういうトコだよ」

 

 本音を返しただけなのに何やらため息をつくアイシャ。よくわからないがまあいい。

 

「それじゃ俺は何をやれば良い」

 

「手伝ってくれんのかい?」

 

 この騒動を放置して酒は飲めんわ。

 

「知らん仲ではないだろ」

 

 闇派閥との闘争も無関係ではないしな。

 

「じゃ終わったら治癒を頼みたいね。

 ポーションは問題ないが闇派閥はどうやら暗殺者も雇ってるみたいでね」

 

「解毒が必要なわけだ」

 

 さらにアマゾネスは基本的に薄布だけの装備。毒塗り刃物で狙いやすいわな。

 

「そういうことさ」

 

「了解、一段落したら見て回るさ」

 

 イシュタル・ファミリアと闇派閥の戦争。

 戦力はイシュタル・ファミリアが上であり、さらに奇襲に近い状況。総力戦で負けはないだろう。

 治癒は戦いが一段落してからやるとして、

 

「とりあえずベートとレナのトコに行く」

 

 鍛えたベートなら大丈夫だと思うがどうにも嫌な予感がしているからな。

 

「ああ頼んだよ。あとレナはアタシからだと言って一発殴っといておくれ」

 

 レナのやらかしに納得しても不満がないわけではないようだ。

 

「雨か」

 

 天より降り出した雫。

 嫌な天気だと思いながら俺は夜の歓楽街へと飛び出した。

 

 

 

「チッ」

 

 その光景は想定していた中で最悪なものだった。

 

「また、だ」

 

 傷だらけのアマゾネスの少女の腹部に刺さる一振りのナイフ。

 そこから滲むように紅が溢れ出る。

 ベート・ローガは呆けたように自らの服が生命の色で染まるにも関わらず彼女を抱きかかえていた。

 

「また、俺は間に合わなかった」

 

 どうすれば良いのか。

 どうすれば良かったのか。

 狼人の青年の呟きを雨が無情に流していく。

 

「いつだって俺は、こうなんだ」

 

 もはや嘲笑することすらできない。

 俺に鍛えられてなお取りこぼした事実が彼を打ちのめしていた。

 そんな彼の姿を駆けつけたアイズを含んだロキ・ファミリアの面々は信じられないものを見るような目で見ていた。

 

「ベート、行け」

 

「ゼノン?」

 

「何をすべきか、わかってんだろ?」

 

 だから俺は慰めもせずに促した。

 沈んだ心の底にある激情が俺には見えていたから。

 その言葉にベートの瞳に熱が戻る。

 怒りという熱が湧き上がる。

 そう何が悪いかは明白だ。

 誰が悪いかなんてわかりきっている。

 ぶつける対象なんて決まっている。

 

「頼んだ」

 

 すっかり冷え切った少女を受け取る。

 もはや死に体、だがまだ死んではいない。

 

「任せろ」

 

 ならばなんとかできるだろう。

 

「ああそうだ、こいつも持ってけ」

 

 用意しておいたモノをベートに投げ渡す。

 

「これは?」

 

「【炎の爪】ありあわせのもんだが、中々の性能だ」

 

「ありがとよ」

 

 今のベートの装備でも闇派閥相手には充分だろう。だがもしもベートが至ってしまったなら話は別。

 

(後できちんとしたのを作ってやらねえとな)

 

 完成したアバンストラッシュにあの程度の武器では心許ないのだから。

 

 

 夜のオラリオに【凶狼】が解き放たれる。

 激情宿す牙は全てを斬るだろう。

 

 

 





 補足・説明。

 イシュタル・ファミリア健在の為にこんな流れになりました。
 レナのやらかしからの闇派閥との決別です。
 原作では狩る側の闇派閥が狩られています。

 ベート・ローガサイドはほぼ原作のままです。
 原作ではフィンの計画通りでしたが、この作品では予定外すぎててんてこ舞いです。
 ベートは闇派閥の暗殺者から周囲の人々を守り奮戦しましたが、原作ではオラリオ中に散らばるアマゾネス達に向かった戦力が一点集中してしまった為に手が足りませんでした。
 その結果、側にいようとしたレナが刺されて倒れてしまいました。

 次でなんとか締めたいとこですね。
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