ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ベート・ローガの魔法【ハティ】について。
 四肢専用の付与魔法でレベル5も焼き殺す灼熱を操る。
『魔力吸収』の属性があり、炎が触れた魔力を宿す攻撃を喰らい、出力と威力を増加させる。
『損傷吸収』の属性があり、ベート・ローガ本人が傷を追うごとに膨れ上がる。
 そんなとんでも魔法だがベート・ローガ本人を心の傷と向き合わせてしまうから、フィン達三首領すら一度しか発動を見たことがない。
 ヴァナルガンド・ストラッシュの時にはコレを纏って放つので魔法使いは基本的に勝ち目がない(ただメドローアとぶつかれば消滅するし、カイザーフェニックスは吸収超過で魔法が負ける)。
 NARUTOの水遁大鮫弾にプラスαしたような魔法。
 なお闘気にも対応してない為、ダイの大冒険の戦士タイプ最強格は対処可能。

 


第106話

 

 歓楽街の血風飛び交う夜は明けた。

 都市を覆う雨雲はベート・ローガの新必殺技で消し飛び、朝日がオラリオを優しく照らす。  

 けれどその温もりを感じてもベート・ローガの心は晴れない。

 ケジメは取った。

 オラリオの闇に潜む悪意を振りかざす者達は灰燼へと帰した。

 それはきっと良いことなのだ。

 そこに犠牲があろうとも。

 そんなぼんやりと暗闇が消えゆく空を眺めていたベート・ローガに声がかけられた。

 

「ベートさん」

 

「アイズか。

 今は誰かに構える気分じゃ・・・・・・って何でとんでもないとこに乗ってんだお前っ!?」

 

 やるせない気分のベートは聞き慣れた声を振り払うように返そうとしたところで、声の主の姿についツッコミを入れてしまった。

 

「楽です」

  

 彼女【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインは、イシュタル・ファミリア団長である【男殺し】フリュネの肩に腰掛けていたのだ。

 

「いや楽ってお前、そいつ何度も襲撃してきたらしいだろ。つーかアンタはアンタでなんで乗せてんだよ」

 

 アイズとフリュネは実は因縁があった。

 因縁というよりはかつて最速ランクアップ記録保持者であったアイズをフリュネが一方的に妬み襲撃してきただけなのだが(実はかなりの数の冒険者が妬んではいたがロキ・ファミリアに恐れをなして行動はおこさなかった)。

 アイズからしたらフリュネははた迷惑な存在(実はステイタスアップになると思っていたが)、フリュネからしたらアイズは目障りな存在。

 そんな間柄の二人がこんな行動(パイルダーオン)していれば、落ち込んでいたベートもつい突っ込んでしまうだろう。

 

「良い男に自分を肯定されるとさ、大概のことはおおらかな気持ちで受け入れられるようになるのさ」

 

「それでも人は乗せねえよ」

 

 ウットリとした声音(怖い)で理由を告げるフリュネだがベートからすればおかしいだろとしか言いようがない。

 ナニをどうすれば歓楽街の恐怖の代名詞がここまで変わるのか?やらかしたであろう心当たりある人物にベートは問いただしたくなった。

 

「ソレはソレとして」

 

「流して良いのかコレ」

 

 アイズはロキからベートが落ち込んでいたらやってやれと言われたことを実行する。

 ひらりとフリュネの肩から降りてベートの目の前に立ち、ぽん、とベートの左肩に右手を置く。

 そして、

 

「どんまい」

 

 抑揚のない声でそう告げた。

 

「(イラァ)おい、【男殺し】?

 イシュタル・ファミリアで『まな板』か『洗濯板』が必要じゃねえか?」

 

 これがロキの入れ知恵だと察したベートは頭に大きく怒りマークを浮かべ、あの愉快犯である道化神に報復を決意した。

 

「あの神は需要がないんだけどねえ」

 

 道化神ロキ。

 一応は女神でありオラリオ二大派閥の主神である彼女だがその人気はびっくりするくらい低い(ファミリア内では悪くはないが)。

 定期的に開催されるオラリオ美女美少女ランキングでも彼女の名があがることはない。

 というか女神だったことに驚かれるレベルだったりする。

 そんな彼女が歓楽街に送られてもその扱いはお察しである。

 

「ま、ロキの馬鹿は置いとくとしてだ」

 

 ベートは自分を慰めようとしたアイズの頭をクシャリと撫でつけ、

 

「すこしは気が晴れたわ、ありがとな」

 

 そう告げてからその横をすり抜けた。

 戦いは終わった、だがまだ後始末は残っている。ならば動かねばとそう思ったのだ。

 

「ベートさんはどうして人を見下すのか、なんで強くなろうとするのか、教えてください」

 

 唐突にアイズはそう訊ねた。

 ベート・ローガが日頃の態度とは裏腹に悪い人間でないことをアイズは理解していた。

 そしてどんな想いがあればあれだけ強くなれるのか彼女は知りたかった。

 

「・・・・・・俺は雑魚が嫌いだからだ」

 

「それだけ・・・・・・ですか?」

 

「雑魚の泣き言を聞くと、虫唾が走る」

 

「それだけで?」

 

「弱ぇヤツが身の程知らずに戦場に出やがるのが不快だ!!その上で泣き言だ、ふざけんな!!

 戦うのは、俺やゼノンみたいな強者だけで充分だろうが!!」

 

「(さりげに俺までカウントされとる)」

 

 瓦礫の物陰に隠れ潜んでいる誰かさんはそう思ったそうな。

 

「もう、誰も哭くんじゃねえ!!」

 

 両親、部族の同胞、妹、幼馴染、恋人、ファミリアの仲間、そしてアマゾネスの少女。

 ベート・ローガの傷となった散っていった者達の姿が脳裏によぎる。

 これ以上は沢山だ。

 だから引っ込めと彼は叫ぶ。  

 自身は戦場に身を置くくせに、他のやつ(ゼノンは除く)は戦うなと、死んでくれるなと懇願する。

 

「ずいぶんと優しいんだねアンタ」

 

 フリュネの素の反応に、人死に対して価値観の異なるアマゾネス達は頷く。

 女神カーリーの闘国出身者ではないが、アマゾネスにとって弱者は淘汰されても仕方ないという認識があるからだ(女のみの種族なので性の差による弱者認定や気遣いがない為)。

 

「っせえよ」

 

 自身の本音を言わされたベートはそう吐き捨てた。

 

「あの、ごめんなさい・・・・・・」

 

「あぁ?」

 

 アイズの謝罪にベートが怪訝そうな顔をすると。

 

「いやね、【凶狼】。

 アンタに不満抱いていたロキ・ファミリアの連中がさ」

 

 フリュネが気まずそう(鉄仮面装着中)に顔を左右に揺らしながら告げる。

 

「来てるんだよ、ココに」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 すると周りの建物、瓦礫の物陰から、ババっとロキ・ファミリア団員達が姿を現した。

 

「ばっちり聞こえたよー!」

 

「聞いてて嬉しかったというか、恥ずかしかったというか。あ、あははは」

 

 ティオナを皮切りに次から次へとロキ・ファミリアの団員達が現れそれぞれコメントをする。

 ベートの本音は、告白は、彼の群れの仲間達にしっかりと届いたのだ。

 

「あ、あ、あ、」

 

「まあ、なんだ。ロキの企みでな。

 いい加減ホーム内の不穏な空気を払拭したかったそうだ」

 

 同情するようなゼノンの発言に、ベートの心が限界を迎えた。

 

「テメェらっああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 本音の暴露を聞かれた羞恥が怒りとなって元凶共へと向かう(特にロキ)。

 

「ちょいまて」

 

「ぐふっ」

 

 とりあえず先頭の「ツンデレベートさん素敵っすね!」と発言したラウルを殴ろうとしたベートの襟首をゼノンを掴み止める。

 

「頼まれたレナ・タリーの件だが」

 

「わかってるよ、テメェでも無理だったことくらい。ディアンケヒト・ファミリアの聖女でも『呪道具』の『呪詛』を治す手段を生み出すには時間が足らねえ。アイツは助からなかったとな」

 

「いや」

 

「また、俺は間に合わなかったんだ」

 

「そんなことないぞー」

 

「傷が癒えねえ呪詛を浴びてアイツは」

 

「聞けよオイ」

 

「悪かったな、嫌なことを任せて」

 

「もう出ていいぞー」

 

「はぁ~い!!」

 

 不可能が前提だと頭にあるためゼノンの言葉が耳に入らないベート。

 なんとか告げようとするゼノンだが痺れを切らし件の彼女を呼ぶ。

 ひょいと、現れたアマゾネスの少女にベートの時が止まった。

 

「やっほー、ベート・ローガー」

 

 彼女、レナ・タリーは何事もなかったように元気な姿でそこにいた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(バッ)!?」

 

 ベートが勢いよくゼノンに振り返れば、

 

「いったいいつから俺が、『解呪呪文シャナク』を使えないと錯覚していた?」

 

「むしろ何ができないんだアンタ?」

 

「自分で言うのもなんだがちょっと思いつかない」

 

 今はできないことでも学べばできるようになるしな、とそう呟く。

 

「まあ、なんだ。

 お前が取りこぼしても仲間がいれば掬い上げてくれる。

 一人より二人、そういうこった」

 

「はっ、かもな」

 

 同じ傷を持つ二人はそう言って笑いあった。

 

「ベート・ローガ。貴方の想いは私は気づいてた。私は強くなって貴方の横に立てるようになるから!!」

 

 そしてレナ・タリーは子猫のようにベートにすり寄り自身の想いを告げる。

 

「「「「「「「おおお!!」」」」」」」

 

 と盛り上がるロキ・ファミリア団員達。

 美男美女美少女揃いのロキ・ファミリア。けれど彼ら彼女らの既婚者はもとより恋人が居る者すら殆ど居ない。

 ゆえに誰もがその手の話題に飢えている。

 

「あ?」

 

「エヘヘ」

 

「「「「「抱け!!そのまま押し倒せ!!」」」」」

 

 そして寄り添う二人を煽るアマゾネス達。

 アマゾネスとはこういう生き物である。

 

「ちょっと待ってください!!」

 

 しかしそんななし崩し的カップル成立に待ったをかける勇者(フィン・ディムナに非ず)がいた。

 

「私も、私だって、ベートさんの言葉に気づいて、ずっと好きだったんです!!」

 

 彼女の名はリーネ・アルシェ。

 新たに湧いてでた恋敵に想い人を奪われまいと本人らしからぬ大胆な行動にでたのだ。

 

「は?」

 

「むうっ」

 

「「「「リーネがいったああああ!!」」」」

 

「わあ大胆」

 

「あたしも団長が好きだあああ!!」

 

「なんでティオネさんまで叫ぶんですか?」

 

「「「「抱け!!二人とも押し倒せ!!」」」」

 

「なんかグダグダだね」

 

「後始末はこれからだというのに」

 

「若いのう」

 

「ま、沈んだ空気よりマシだろ」

 

「せやな」

 

「フフ」

 

 歓楽街の片隅で起きたロキ・ファミリアとその他色々な喧騒。

 傷だらけの狼人は、アマゾネスの少女と治癒師の少女にそれぞれ両腕を抱きしめられ目を白黒させる。

 そんな彼らを祝福し囃し立てる仲間達と、雄なら押し倒せと急かすアマゾネス達。

 三首領と主神、異世界の英雄が見守る中、アイズ・ヴァレンシュタインは小さく笑い声を零していた。

 

 もうすっかり雨は止んでいた。

 

 





 補足・説明。

 ソード・オラトリア8巻エピローグです。
 原作では二日ばかり立ちますがこの作品はすぐにこの騒ぎです。
 ベート・ローガとロキ・ファミリアのわだかまりはすっかり解消した感じですね。

 レナに関して。
 ベートからしたら助からない認識でした。
 原作より犠牲者も少なく故にアミッドさんの呪詛への対処ができないからです。
 原作では呪いを浴びたアミッドさんの血を材料に対専用呪詛秘薬が生成されます。
 シャナクだと一発ですが。
 
 最後はグダグダにしました。
 これからベート・ローガもフィン・ディムナ枠です(笑)
 まあフィンよりも被害はマシですが。

 次は本編のアレス編ですかね?
 下手したらブチギレゼノンが首都を消し飛ばしかねないのが心配です(笑)。


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