ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ラキア王国ですが、戦神アレスが主神ではありますが神は彼だけではなく戦争やらで敗北した神が何柱か従っているそうです。
 何万人の兵士に恩恵が刻めるのはそれが理由で、全員がアレスの眷属ではないそうです。
 ヴェルフはそんな立場の女神と親しかったそうですが、ヴェルフのラキア脱出の手助けをした彼女は罰として天界に送還されたそうです。

 


第108話

 

「相談?」

 

 ラキア王国侵攻による戦争特需で盛り上がるオラリオ。

 その儲け時に乗っかる気のない俺は今日もまたガチャガチャとモンスターを組み立てる。

 今制作しているコイツは今後の為の特別製。

 外装を打ち上げて暗黒闘気を込めて完成するさまようよろいとは桁の違う存在。

 完成すればダイの足止めをできるレベルになるだろう(技を使われたら一発かもしれないが)。

 そんな工房に籠もり制作に励む俺にアポロンとの戦争遊戯がきっかけで改宗したヴェルフと命が相談があると訪ねてきたのだ。

 

「えっと、その相談内容ですが」

 

「まあ、二人ともだいたい同じでな」

 

 命とヴェルフ。

 性別も性格も戦闘スタイルも職業(冒険者ではあるが)も異なるこの二人がねえ。

 思い当たるのは戦闘か料理か鍛冶の上達法だが、それならばこの二人だけでは来ないだろう。

 ならどんな相談なのだろう?

 そんな風に考えて言いにくそうな二人を促せば、口を揃えてその内容を告げた。

 

「「神との恋愛についてなんですが」」

 

「他あたれ」

 

 アバン一門は恋愛沙汰は専門外なんだよ。

 

 

 

「タケミカヅチとヘファイストスねえ」

 

 拒否はしたが引き下がらない二人にげんなりしつつも話を聞くことにした。

 二人の想い人(神)は改宗前の主神らであり、オラリオでも数少ない善神(ヘファイストスは中立寄りだが)である。

 

「ええ、その、ファミリアを一度離れてより一層恋慕が募ってしまいまして」

 

「このままだと冒険に集中できないから、何かこう、一区切り付ける為にできねえかなと」

 

 言いたいことはわかった。

 改宗前は側にいたことで満たされたモノが離れたことで発散されずに高まっているのか。

 命がけのダンジョンでソレに意識がいったら危ないと自覚はあるが、自覚はあってもどうにもならないのが恋心ってヤツなんだな。

 でもなあ。

 

「・・・・・・やっぱり恋愛経験ない俺に相談することじゃなくね?」

 

「「あれだけ女性に手を出しておいてっ!?」」

 

「娼館以外だと抱いてねえわ」

  

 人を女誑しみたいに言うなや。

 

「いや、でも、ゼノン殿ってオラリオの女性に人気ですよ、ミアハ様やタケミカヅチ様みたいに(ガハッ)」

 

 命よ、想い人(神)を例に上げたことで精神的自傷ダメージ受けて血を吐くな。

 

「ヘファイストス様(ギリッ)や椿のヤツもずいぶんと気にしていたしな」

 

 ヴェルフよお前は血涙か。でもそいつらが俺を気にする理由は作品だろうに。

 

「まあ人気が出ちまうのは昔の英雄志願だった頃の名残りだな。清く正しい外面良い英雄(笑)を演じて過ごしていたからなあ」

 

「・・・・・・ゼノン殿は演じなくとも英雄なのでは?」

 

「作品に関しては、物珍しいだけだろ?異世界の技術なんだからよ」

 

 異世界っていうかロン・ベルク流だが。

 

「それだけじゃねえだろ」

 

 想い人(神)と似たようなタイプ。

 想い人(神)が気にする男(意味が違う)。

 なら相談したがるのは仕方ないがなあ。

 ま、アドバイスになるか知らんが思いついたことを告げてやるか。

 

「とりあえず、命。

 タケミカヅチに恋愛感情はねえ、諦めろ」

 

 恋愛感情どころか他の神々のような(例・ロキ)色欲の類も感じない。

 

「そんなきっぱりとっ!?」

 

「ヘファイストスは押しに弱そうな性格だし、押し切ったらなんとなるだろ」

 

 ヘスティアの面倒を数年間みたり、ヘスティアの頼みをきいたりしてるしな。

 

「それができたら苦労しねえんだよ!!」

 

 神が人界に降りてくる際にそれぞれ目的がある。

 娯楽を、未知を、救世を、破滅を。

 各々の欲求があって訪れる。

 タケミカヅチはおそらく人間の救済が目的だ。ゆえに孤児を集め庇護し育てている。

 ヘファイストスは未知、自身でできない可能性を求めて来た。だから鍛冶系ファミリアを立ち上げたんだろう。

 

「タケミカヅチは目的からして人間に恋心を抱いたりせんだろ、アレは親しげだが線引はきっちりしてるぞ」

 

 あの父性ぶりから天界の奥さんとかいるのかもなってくらいにな。オラリオじゃ話題にならんがそんな間柄の存在がいてもおかしくはない。

 

「あれだけ天然ジゴロしておいてっ」

 

 天然だから受けが良いのさ。

 

「内心できっちり線引してるから下心なく女を褒めれるんだよ」

 

 綺麗なものを綺麗と言ったりとか。

 

「まさにゼノンの旦那じゃね?」

 

 それはそうかもしれない。

 俺も女と関係持つのは娼館のみと決めてるから褒めることに抵抗も躊躇いも打算も下心もない。

 

「ヘファイストスは、未知を求めているから神に本気で惚れて成果を見せれば付き合えると思う」

 

 神に惚れる行為がそもそも下界の未知だ。それに加え神に認められる作品を完成させてみせれば神話のワンシーンとなりそうだ。

 

「・・・・・・参考になったぜ旦那」

 

 ま、ヴェルフに関してはヘファイストス本神も気にしてたから上手くいきそうだよな。

 

 

「まあこんなとこかね」

 

「ありがとよ旦那」

 

「なんとかなりませんかゼノン殿ぉ!!」

 

 タケミカヅチはなんともならんと思う。

 

「しかし旦那」

 

「あん?」

 

「さっきから何を組み立てているんだ?」

 

 工房に鎖で吊り下げられたモノ。

 ブルーメタルをボディとした赤い単眼の存在。

 一見すると鎧に見えなくもないが、脚部はなく尻尾のような先には弓矢がついていた。

 

「ああ、ロキ・ファミリア対策」

 

 先日のベート・ローガのランクアップからロキ・ファミリア内で俺に弟子入りしたがっている者が増えているらしい。

 けれどベート・ローガだから了承したのであって、希望者全員を指導する気など俺にはない。

 

「・・・・・・旦那。前々から言おうと思っていたが、ロキ・ファミリアに貸しをつくりすぎじゃねえか?」

 

「その助けていただいてきたタケミカヅチ・ファミリアの者が言うのもなんですが、その、取引にしてはあまりにもゼノン殿の負担が大きいように感じます」

 

 ロキ・ファミリアへの貸し。

 俺の負担、ねえ。

 気遣うように言いにくそうに告げる二人は、他所のファミリアに助力していることによる不満や嫉妬から言い出したのではないと伝わる。

 あくまで俺を心配してのことだ。

 でも俺がロキ・ファミリアにしてきたことを思い返せば、祭でモンスターから団員を助けたことを始めとしてして色々やってきたからなあ。

 中にはヴェルフや命が知らんことも多々あるが、ベート・ローガへのアバン流牙殺法教導からのランクアップがデカすぎたか。

 

「そうしている理由はいくつかある。打算的なこともな」

 

 リリルカもずいぶんと気にしていたし、俺の考えを伝えておくべきか。

 

「まず、俺がロキ・ファミリアにしてやってることが俺個人として大したことじゃないのがある」

 

 奇跡の剣、祝福の杖、あとは炎の爪もか?渡した武器は材料さえあれば数日でできる代物。作りたい気持ちもあったから負担ではない。

 オラリオ(元の世界でも)ではとんでもない武器だが、ロン・ベルク作に比べたら格は落ちる程度。

 

「大したことじゃないとは」

 

「披露してるのも石像作りでしたね」

 

 ま、仕事を抱え込みすぎて疲れたりもしたがやりたいことをやった結果だからな。

 

「次にロキ・ファミリアが闇派閥関連のオラリオの治安に関わる厄介事を引き受けているからだ」

 

 オラリオ二大派閥だから、それだけの理由で連中は本来ならやらんでも良いことをしている。

 無論、団長であるフィン・ディムナは名声を得るためという計算もしているだろう。だが、三首領と団員達の善性からの行動なのもまた事実だ(ロキは微妙)。

 

「それは・・・・・・」

 

「ヘファイストス様やディアンケヒト様も対価はあるけど助力してるしな」

 

「だから手助けくらいはする。矢面に立たない代わりってのもあるが」

 

 思い当たる点に二人は納得する。

 ぶっちゃけ俺が本気になれば闇派閥関連を片付けることも不可能ではない。

 しかし人類どころか地上の危機だった大魔王軍侵攻に比べ、オラリオと闇派閥の戦いは神の恩恵あれどあくまで人間同士の戦い。

 貴族達の内輪争いほどくだらなくはないが、こちらに実害がでない限りは好んで手を出したくはない。

 アバン先生とて人間国家の戦争に加担したりはしないだろう。

 

「最後にロキ・ファミリアには出来る限り『貸し』を貯めておきたいのさ」

 

「なぜですか?」

 

「今でも充分だろうに」

 

 最後の理由に首を傾げる二人。

 俺が明確に利益を求めたからだ。

 そして理由だが、

 

「知ってのとおり、ベルはアイズに惚れている」

 

 ベル本人は隠してるつもりだろうが、ヘスティア・ファミリア団内どころか近所のおばちゃんも気づいているだろう。

 

「俺はリリスケに頑張って欲しいがな」

 

「自分は春姫殿を応援しています」

 

 ファミリアの仲間内でも推しに違いはあるよな。俺は一夫一妻とかルールはないのだし、好かれてる女を全員娶ったら?派ではあるが。

 

「で、もし将来的にベルとアイズが相思相愛になれて付き合うとなった時に障害となるのはファミリアが違うことだ」

 

「基本的に別ファミリア団員との恋愛はご法度ですよね」

 

「恩恵ない一般人なら良いが、団員となれば戦力の引き抜き扱いで戦争遊戯にまで発展しちまう」

 

 そう、だからベルの初恋は障害がある。

 まあベルがロキ・ファミリアに改宗すれば別だろうが本人がそれを認めないだろう。

 ベルにとってヘスティアは恋愛対象とは別枠の特別な存在なのだから。

 ・・・・・・ヘスティアには可哀想なことに。

 

「けど、そうなった時に俺の貸しが返済できないレベルで積み上がってれば認めざるを得ないだろう?

 だからロキ・ファミリアに貸しを作りまくるんだよ。

 あとベート・ローガに関しては気に入ってる二割に、実験二割に尻スプラッシュの詫び六割で指導しただけだ」

 

 ベートはロキ・ファミリアの為じゃなく個人的に、というのが本音なんだよ。

 

「なるほど」

 

「ベルの為ってのが旦那らしいぜ」 

 

 じゃなきゃあそこまでしないさ。

 個人的に親しいから心配して助けたりもするが、身内に比べたら劣るしな。

 

「・・・・・・そんで話を戻すが、今組み立てている『キラーマシン2』は俺の指導を望む連中の試験だ。

 コイツに勝てなきゃアバン流を会得なんてできないってな」

 

「「(キラーマシン2?1は?)」」

 

「ベートレベルの才能と本気、もしくはベルのような1からの指導に加えスキル補助がないと体得はそもそも難しい。なら振るい落としという名目のお断りが必要なんだよ」

 

「それは自分達もですが?」

 

「俺らもソレを倒さなきゃ駄目か?」

 

 命とヴェルフかあ。

 

「命は『海』の技なら鍛えれば、ヴェルフは『地』の技ならなんとかって見立てだな。だが基本スペックが足りてねえのがなあ」

 

 ベルも足りてないと言えば足りてないが、憧憬からか型を覚えるのが早いんだよな。

 

「どっちにしろ全員『空』の技で詰むから半端に教える気にはならねえよ」

 

「そこまで難しい奥義なんですね」

 

「なんで詰むってわかるんだ?」

 

 アバン流『空』の奥義。

 それをベート・ローガに指導した経験から判断するに、まず闘気の問題が上げられる。

 生物である以上は持ち得る生命エネルギー、それを戦いの為に洗練したエネルギーである闘気。

 理屈上は鍛えれば誰でもできるが、冒険者にはとある障害がある。

 それは神の恩恵。

 神の恩恵によるステイタスの効果。

 身体能力強化や老化の低下などは闘気と似た効果がある。それは本人の生命エネルギーがステイタスに使用されているから出来る効果と推測される。

 ゆえに使用されている生命エネルギーをさらに闘気として体外に放出するのは難しく、それが可能なのは生命エネルギーが増大した高レベルでないと不可能なのだろう。

『残光』という技がこの世界にはあるらしい。

 オッタルの話によるとアバンストラッシュに似たその技も高レベル冒険者でなければできなかったそうだ。

 同じではないかもしれないが、そこに高レベル冒険者の無意識な闘気運用が関係しているのだろう。

 

「ま、理屈としてはこんなトコだな。

 ベルも闘気を剣に纏わすぐらいは出来たが、今のレベルじゃアバンストラッシュブレイクは使えてもアローは無理だろうよ」

 

「・・・・・・む、難しいです」

 

「学者みてえに考えるんだな」

 

 アバン先生は学者の家系出身だったからその影響だろうよ。

 

「とにかく諸々納得してくれたか?」

 

「おう」

 

「タケミカヅチ様への恋愛にはまだ」

 

「それは俺にも無理だから」

 

 命が諦めないなら不可能ではないかもしれないが、どうにもできん。

 

 

 

 後日。

 命はタケミカヅチからタケミカヅチ・ファミリアの祝事兼、送別会で雌雄一対の剣の片割れを贈られたそうだ。

 間違いなくタケミカヅチに恋愛的な意図はないだろうが、そんな事をされたら女は舞い上がるだろうに。

 

 ヴェルフは実家の父と祖父に脅迫じみた手段でラキア王国へ帰参を求められたそうだ。ヴェルフは血筋の宿命を超えた自らの在り方を決めたそうだ。

 その後、ヘファイストスに彼女に認められる武器を作れたら付き合って欲しいと告白したそうだ。

 その告白はヘファイストスの惚気にうんざりした椿により周囲にバラされオラリオ中に広まり、さらにヴェルフの二つ名が【不冷】になる由来となったそうだ。

 

 そしてロキ・ファミリアに送り出された『キラーマシン2』は今日も元気にロキ・ファミリア団員を蹴散らしているそうだとか。

 

 

「レベル5クラスの自動人形とかポンっと送りつけないで欲しいんだけどっ!?」

 

 フィン・ディムナ、度重なる心労から胃痛だけではなく円形脱毛症も出始めちょっと泣いた。

 

 





 補足・説明。

 原作8巻の命とヴェルフの話です。
 原作8巻は登場人物の恋愛に絡めたエピソード集となっています。

 恋愛相談。
 ゼノンに恋愛経験はないがアドバイスはします。

 タケミカヅチ。
 作者の印象です、解釈違いの方はすいません。
 彼とミアハは神として保護者として他者に接してる印象が特にあります。

 ヘファイストス。
 押しに弱い印象です。あとは面倒見が良いのかなと。ゼノンからしたらヘスティアが迷惑をかけた存在認識です。
 
 闘気について。
 独自解釈です。
 闘気を扱えるのはレベル5かそれくらいなイメージです。ただ春姫の魔法で一時的に扱うことは可能です。

 キラーマシン2。
 弟子入りを断る手段です。
 コレに勝てたら指導はしますが、手数が多くて固くて早いので二軍では勝てないレベルです。
 ちなみに幹部は戦っては駄目なルールです。訓練場が壊れたので。

 
 
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