ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ロキ・ファミリアに贈られたキラーマシン2なんですが、ロキ・ファミリア団員から『2(ツー)先生』と慕われだしています。
 ラウルは実力から良いとこまでいけるのですが、流石の器用な彼でも剣と棍棒と弓の同時攻撃はまだ捌ききれません「同時は反則っス」と悲鳴をあげてるとか。
 また、参加できないアイズやティオナがキラーマシン2に奇跡の剣や自身の愛用の武器を装備させてさらに難易度を上げたりしています(魔剣(消耗品)を両手に装備させたり弓に装填した時はリヴェリアが説教した)。



第109話

 

「はい、できたぞ」

 

「「わーい!!」」

 

 ヘスティア・ファミリアの朝はホーム大食堂での朝食からはじまる。

 調理担当は当然ながら俺。

 アバン先生仕込みの調理技術を存分に振るい、仲間達の食事を用意する。

 ファミリアの人数が増えてきて手間も増したが、それでも大した負担ではない。

 競うように一緒に作ろうとするバーチェとカサンドラがいるし、他の団員も何かと手伝いにくるからだ。

 

「「「「「「いただきまーす」」」」」」

 

 食事のメニューは俺が好きなのと命や春姫がいるので極東風が多い。

 なのでヘスティア・ファミリアの団員達はいつの間にか使うのが難しい極東の食器『箸』で食事ができるようになってしまっていた(何気に器用なベルは豆や卵黄すら摘める)。

 

「すっかり極東ご飯に慣れてきたよねえ」

 

「徹夜明けにはハムやらチーズは重たいからありがたいよな」

 

 茶碗(陶芸にも手を出したいがまだ勉強中なので木の椀)に注がれた味噌汁を啜るダフネと、先日のヘファイストスへの告白から徹夜で鍛冶に打ち込んでるヴェルフが漬物をおかずに白米をかっこみながらそう呟く。

 良い具合に漬かった野菜はそれだけで白米がすすんで困る。

 

「でも食事が美味しすぎると少し困りますよね」

 

「ゼノンさんのお弁当なら良いけど、携帯食だと辛いよね」

 

「これから泊まりでダンジョンに潜った時にどうすっかな」

 

 冒険者らしい悩みを言うようになってきたな。

 携帯食は携帯性と保存性が第一だから味は正直良くはない。日帰りなら弁当で間に合うが、数日分となると持たないか。

 携帯性保存性と味を両立させるには・・・・・・。

 

「!! 弁当をモンスター化して連れていかせれば解決か」

 

 元の世界でもモンスターを食用にしていた(抵抗ある人も多かったが)。海産物系はそのままいけたし、おばけキノコやナスビナーラなどの野菜系もいた。

 ゆえに調理技術を伝授してダンジョンで狩りをさせて食事を作らせれば良いとも考えたが、ダンジョンのモンスターは食用にならないらしい。

 ならば逆転の発想。

 調理済みのモノを暗黒闘気でモンスターにすれば万事解決。

 携帯性保存性さらに味の問題もない。

 

「ではハンバーガーで試して・・・・・・」

 

「ゼノン君、本気でやめてねお願いだから」

 

 俺の試作はヘスティアに全力で止められることになってしまった、なんでだろう?

 

 

 そんな和気あいあい(一部おかしなのがいた)な食事が終わり片付けが終わったところで、大食堂はそのまま話し合いの場となる。

 せっかく揃っているのだから予定の確認と報告を行うのだ。

 団長であるベルの仕切りで(最初は俺にやって欲しそうにしていたがすっかり慣れた)、それぞれの話を終えたところで、最後に俺の報告を行う。

 

「先日納品しにいったロキ・ファミリアでな、団長であるフィン・ディムナからリリルカへ縁談の申し込みがあった」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「「「「「ハァッ!?!?」」」」」

 

 縁談、冒険者には割と縁のないその衝撃的な内容に一同が一拍間を空けてから驚きの叫びを上げた。

 

「り、リリが縁談ですか!?」

 

「しかも相手があの【勇者】!?」

 

「すごい玉の輿だね」

 

「二大派閥の団長となれば実質王族や貴族みたいな扱いだからな」

 

「姉が狙ってるオス、だったか」

 

「リリが求婚されたーー!!」

 

「ハワワワ、お、御赤飯炊かないとですか?」

 

「いえ春姫殿、その前に花嫁衣装を」

 

「エライコッチャ、エライコッチャ」

 

 混乱する仲間達、ヘスティアなんて立ち上がり行ったり来たりしだす。

 まあそれだけの大事だよな、だが。

 

「けど、断っといたぞ」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「「「「「「「「ハァッ!?!?」」」」」」」」

 

 再度一拍空けてから驚く一同。

 提案されたその場で拒否してやったわ。

 

「え?リリルカ君に尋ねる前に勝手に?(いやまあリリルカ君はベル君が好きだから問題ないけど)」

 

「それはあまりにも勝手な判断じゃないかい?」

 

「ほ、本人同士のことなんですし」

 

「うちの子が欲しければ俺を倒してからにしろ、って話なんですね」

 

「リリルカはカサンドラではなく、私とゼノンの娘だろう」

 

「リリはカサンドラ様からもバーチェ様からも産まれてませんから。

 いえお二人は実の母より素晴らしい方ですが」

 

「いくら必要なくとも本人に確認しろよ旦那」

 

「そうですよ」

 

 リリルカがベルに惚れてることはベル以外は周知の事実だから不満はないが、俺の勝手な行動に非難轟々となる。

 いや俺も確認しようかと思いはしたんだが。

 

「断った、というか。

 正確には縁談を申し込む前に今の女関係を清算しろ、と言ったんだ。

 アイツ、ティオネとアルガナに求愛されてるだろ」

 

「「「「「ああ〜〜〜〜〜」」」」」

 

 ロキ・ファミリア団長【勇者】フィン・ディムナ。オラリオ二大派閥の片割れを率いる小人族の英雄。

 有事の際にはオラリオ全体の指揮すら任される有能なリーダーであり、オラリオ随一の槍使い。

 そんな彼がファミリアの仲間であるレベル5のアマゾネスであるティオネ・ヒリュテとレベル6のアマゾネスである元カーリー・ファミリア団長であるアルガナ・カリフに求愛されていることはオラリオ内外で知らぬ者がいないほど有名な話である(そもそもファミリア団長の恋愛話は珍しいのでネタになりやすい)。

 

「そんなアマゾネスの間にレベル1のリリルカを放り込んでみろ。どうなるか想像できるだろ?」

 

 アマゾネスの求愛行動に恥じらいという概念はない、ゆえに場を弁えずにオスへ迫り襲いかかる。逃げるフィン・ディムナと互いに攻撃し合いながらも追いかける二人の姿はオラリオではすっかり日常的な風景となっていた。

 そこにリリルカを投下。

 

「挟まれてプチッと」

 

「踏み潰されて地面のシミへ」

 

「激突の余波で吹き飛ばされてお星さま」

 

「姉のことだから邪魔者は先ず排除するな」

 

「リリの悲惨な最後を想像するのやめてもらえますか?確かにありえそうですが」

 

「さ、流石にそこまではしないんじゃないかな」

 

「バーチェ君だって強引じゃないしさ」

 

「それはゼノン殿が強すぎるからでは?」

 

「(ギクリっ)」

 

 予想される未来に皆が青褪める。

 実際に縁談を受けたらリリルカのことはフィンが守り、安全は保証されるだろうがそれでもな。

 

「そんなわけで断った、というよりは保留だな。リリルカが望むなら話はつけるが」

 

 その場で縁談を断った理由を伝え終わり、改めてリリルカの意思を確認する。

 

「結構です。  

 リリは【勇者】様と結婚する気はありません。あ、命が危ないからではないですよ?」

 

 するとリリルカは一考すらせずに、オラリオで最も人気のある男、同族の英雄からの求愛を拒否する。

 

「良いの?こんな機会はもうないよ」

 

 ファミリア内で打算的な思考の持ち主であるダフネがリリルカの意思を訊ねる。

 フィン・ディムナに求愛される、女としてそれは幸運すぎる出来事なのだから。

 

「リリはもう選ばれましたから」

 

 その問いにリリルカ・アーデはあの日のことを思い出す。

 誰にも見向きもされなかった自分を少年が助けてくれたことを。  

 全てを許し、再び手を引いてくれたことを。

 

「だから良いのです」

 

 笑みを浮かべる彼女に後悔はない。

 なら俺の判断に誤りなしだ。

 

「リリルカ、お前が結婚する時の花嫁衣装は俺が全力で拵えてやる。ダンジョン最下層でも着ていけるような凄いやつをな」

 

 リリルカが誰と結ばれるかはわからない。できればベルであって欲しいが、そうでなくとも自分のできる最高の祝福をしてやろうと心に決めた。

 

「「「「「それはちょっと」」」」」

 

「え?」

 

「ゼノン君、花嫁衣装に防御力は求められてないからね」

 

「装備しないと勿体ない代物を作られたら逆に困るわ」

 

 ヘスティア・ファミリア女性陣は花嫁衣装を着てダンジョン攻略する自分の姿を想像してそのシュールさに顔を引きつらせるのであった。

 

 

 





 補足・説明。

 原作8巻のリリルカ・アーデ編です。
 原作の内容は、春姫加入に自分の立ち位置と自分の居る意味を悩んでいたリリルカがベルからフィンとの縁談を告げられる話です。
 ベルはリリルカにファミリアから去って欲しくはないけど彼女の為を思ってその縁談を告げ、リリルカはベルに必要されてないのだと感じて縁談を受けてしまう展開になります。
 当作では、そのような葛藤がリリルカになく、ゼノンがあっさり断りましたが。
 今のフィンの周りは危ないですし(笑)。

 弁当のモンスター化。
 食料問題を解決する一手。連れ歩いたバーガーミミックを食わせようと考えるゼノンは頭がおかしいです。

 フィンの求婚。
 小人族再興の為に後継者として小人族の子を求めています。それこそ自身の幸せを度外視して。
 本編では書きませんでしたが、
 そんな一族の産まれであるヴェルフは、英雄の子孫なんてろくでもねえぞと反発しています。
 またバーチェがアマゾネスしか産めないからと選ばれないティオネとアルガナを哀れに思いました。
 ゼノンにしても、【ダイ】の例があるからそれを理由に子作りは止めて欲しいと感じました。とっさに断った真の理由はこちらです。想いあったゆえに結ばれたバラン夫婦にしても宿命のせいで悲劇が起き、ダイに引き継がれてしまったのに。それを意図的にやるのは許容できませんでした。
 フィンにアンチな意見になるので本編では書きませんでしたが。

 後はオラリオの高ランク冒険者は独り身ばかり、というネタもやりたかったけどまたの機会ですね。
 特に団長は主神と性別違うと夫婦レベルで支えてますし。


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