ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「ねえねえ」

「ティオナ・ヒリュテ、だったな。どうした?」

「「修行で得た力は他人の為に使うもの」っていつから思えるようになったの?」

「あー、かなり最近だぞ?」

「そうなんだー」

「えっと、こっちに来てから・・・・・・で、向こうでダイ達と出会って・・・・・・ヶ月だから。
 三ヶ月くらい前からだな」

「思ったよりずっと最近だった(´゚д゚`)」



第11話

 

 コンコンコンコンコン。

 一心不乱にノミと鎚を振るう。

 一振りするごとに切り出した長方形の岩は形を変えて、瞬く間に見上げるほどの人型へと転じていく。

 ヒゲを蓄えた、筋骨隆々で逞しいおじさんの石像。服装はワンショルダーという薄着のスタイル。

 やはり【うごくせきぞう】ならばこのデザインに限るというもの。

 先日の【怪物祭】、都市内にモンスターが現れるという異常事態が起きた。神の力を封じている無力なヘスティアの身の安全の為にも対策は必要だ。

 だからこうしてホームを守る存在を拵えてるというわけだ。護衛ならばシャドーや影の騎士の方が良いのだが、アレ等はどうにも見た目からの印象が悪くとられそうな気がする。うごくせきぞうなら人形兵とかそんな感じに勘違いしてくれる可能性もあるしな。

 ちなみに迷宮都市オラリオは石材が異様に安い。自然再生するダンジョンの最上層から採掘してるからだそうだ。バベルという巨大な建築物、石畳の敷き詰められた都市、それらはダンジョンの恩恵によるものだったのだ。先日の怪物祭で破壊された街並みも、潤沢な資材の供給で速やかに修復されている。

 ベルは現在、ダンジョンに潜っている。

 ヘスティアにプレゼントされた武器を早く馴染ませたいそうだ。

《ヘスティア・ナイフ》

 ヘスティアの神友にして都市最大手の『鍛冶師』のファミリアの主神である鍛冶神ヘファイストスが鍛え上げた作品。「駆け出し冒険者に持たせる一級品」という無理難題に応えたこのナイフは、装備者の成長に合わせて、経験値の獲得と連動して強化されていく『生きた武器』。

 いや、優れた武器が生きているのは当たり前のことじゃないのか?(ロン・ベルク基準)そこに関しては驚くことではないな。

 しかし強化されていく武器か。ロン・ベルクが見たらどう思うかね?創り手たるヘファイストス自身は『邪道の武器』と称したらしいが、俺にはイマイチ判断ができないな。

 俺が使う俺が自分用に作った武器は、デザインと、技に耐えられるか、だけに拘っているからな。

 基本的には剣が得意だが、他の武器と使った感じで劇的に差がでるわけではないし。

 

「ゼノンさーんっ!!」

 

「どうしたベル」

 

 一体完成。

 名前はトンヌラにするかね。

 

「明日エイナさんと出かけるんですけど、何が必要ですかっ!?」

 

 エイナ、ベル担当(注、ゼノンも)のギルド受付嬢だったか。ヘスティアと怪物祭で絆を深めた(ヘスティアが溶けるくらい惚気けてた)かと思ったら他の女とデートとはなんとも手の早い。

『憧憬一途』というスキル持ちなのに、どこが『一途』なんだろうか?

 いやベルは女を誘えるタイプじゃないから、向こうから誘った可能性も高いな。

 受付嬢なんて男の影一つが人気を左右する職の娘から誘わせるなんて、やりおるなベル。

 ポップが見たら嫉妬で襲いかかるぞ。それを見たマァムがポップをしばくだろうが。

 そして、何が必要か。

 デートに必要な物、それは。

 

「金」

 

「僕が訊きたいのはそっちじゃないです」

 

 慌てた様子からスンと真顔になるベル。

 なんだよもー、お金が一番大切だろー。

 

「ヘスティアのヤツは適当に誤魔化しておくから朝帰りでもいいぞ」

 

 デート先がヘファイストス・ファミリアの店舗でも無ければ鉢合わせはしないだろうしな。

 ヘスティア・ナイフの代金は全額自分で返す約束らしい。だからバイトの掛け持ちって形で働きにいっている。全く、俺も手伝うって言ったのに聞きやしない。

 

「そんな朝帰りだなんて。確かについ先日しましたけど」

 

 それとは違うタイプの朝帰りをしてみなさい。具体的には朝チュン。

 

「あとこれ持ってけ、到達階層増えたとはいえ、冒険者は物入りだろ」

 

 金貨の詰まったズシリと重たい布袋を渡す。臨時収入があったからまだまだ余裕がある。

 

「むしろ冒険者じゃないのに僕より稼いでるゼノンさんってどうなってるんですか?」

 

「警備用に石像彫ってたら、通りすがりの神に「美しい私の姿を彫ることを許そう」って言われて一体仕上げたらずいぶんと気に入られてな。それはその報酬だよ」

 

「(警備用?)それでポンっとこんな大金だせるなんてさすがは神様ですよね」

 

「案外有名なファミリアの主神だったりしてな。後ろに控えていた眷属もベルより強そうだったぞ」

 

「・・・・・・自分で言うのもなんですが、それは強いことになるんですか」

 

「うん、なんかごめん」

 

 だって先日のロキ・ファミリア構成員よりは弱そうだったんだもん。

 でもアイツラも【豊饒の女主人】の女将よりは弱そうだったしな。

 冒険者の本場迷宮都市オラリオで一番強そうなのが酒場の女将とか、一体どうなってんだか。

 

「ま、だからしばらくは石像を彫りまくらないとな。眷属も自室に欲しいとか注文してきてよ」

 

「ゼノンさんってなんでもできますよね」

 

「石像作りは見様見真似なんだが」

 

 向こうで彫刻家に弟子入りなんてしてねえよ。ロン・ベルクに鍛冶を習った時についでに手ほどきされた程度だわ(柄などへの細工のため)。

 

「才能の暴力っ!?」

 

 なんでもやってみるもんだな。

 それだけなんでもできるならデートについても教えてくださいよー、としがみつくベルをあしらう。だからアバン一門は女関係は苦手だっての。

 

 こんなありふれた日常。

 だがこれが新たな騒動のきっかけとなり、一つのファミリアが壊滅するはじまりだったとは、まだ俺は知るよしもなかったのだ。

 

「ところで、鍛冶の神様が作ったナイフよりも使いやすくて鋭い雷鳴の剣って一体。というかゼノンさんって何者なんですか」

 

「世界最高の鍛冶師の弟子。

 一月くらいしか習ってねえけどな」

 

 どうやらロン・ベルクは世界を超えても、比類なき最高の鍛冶師のようだ。

 




 
 土日は投稿時間が不定です。
 平日は仕事後に寝るまで書いてるのであの時間だったりします。
 いわゆる2巻の導入回。
 アバンと出会うまではリリルカ・アーデのような存在を踏みにじって生きてきたゼノンは果たしてどうするのでしょう。
 
 ちなみに今のヘスティア・ナイフよりは雷鳴の剣の方が優れてます。そう遠くないうちに超えますが。
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