ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「今日は勝つっすよ『2先生』!!」
 
「★▽□●」

 ゼノンからロキ・ファミリアへと贈られたキラーマシン2。
 ロキ・ファミリア二軍の訓練相手にもっとも肉薄する実力者は二軍筆頭格であるラウルである。
 あらゆる武器を鍛錬の末に使いこなす彼は、同時にあらゆる武器に対応する術を心得ている。
 ゆえにキラーマシン2の剣と棍棒と弓に誰よりも上手く対応できるのだ。
 しかし対応する術を知っていても、そこはゼノン作のキラーマシン2。ラウルは絶え間なき連撃に押し切られていた。
 だがそれも連日戦えば慣れていく。
 その勤勉さこそが、ラウルの持ち味。

「はあっ!!」

 キラーマシン2の斬撃を鍔迫り合いで凌ぐ。
 続く棍棒の打撃を地面から引き抜いた別の武具で逸らし、トドメの射撃を武器を捨て身軽になった状態で躱す。
 一つの武器で対応するからのまれる。武器に掛かる負荷が軽戦士の持ち味を封殺していたのだ。
 ゆえに捨てて、その都度新たな武器で挑む。
 器用貧乏と称されるラウルだからこその戦法。
 
「ここっす!!」

 キラーマシン2のメタルボディに斬撃は無意味。
 重量あるハンマーの打撃にて仕留める。
 ようやく初めて一撃与えられると彼らしからぬ笑みを浮かべ大きく大上段に振りかぶったところで、

「★▽□●」

 赤く輝くモノアイからレーザーが放たれた。

「へ?ギャアアアっ!!」

「「「「ラウルーー!!」」」」

 レーザーはラウルに命中し、その身体を吹き飛ばすのであった。
 斬撃、打撃、射撃、とくれば次は魔法力か闘気による砲撃。
 ゼノンの設計に抜かりなし。

「第一級冒険者は・・・・・・遠いっす(ガクリ)」

「「「「ラウルー!!」」」」

 倒れ伏すラウル。駆け寄る二軍達。
 キラーマシン2。
 その高き壁に二軍達は戦慄するのであった。

 
 ちなみにレーザーを突破したらパーツ各所に仕組まれた状態異常を起こす毒(ミアハ・ファミリア製)が噴出することを彼らはまだ知らない。




第110話

 

 ギルド本部、受付嬢。

 冒険者達の対応を一手に引き受ける『ギルドの華』が1人、エイナ・チュール。

 肩にかかる茶色の髪に、緑玉色の瞳と眼鏡、ハーフエルフを示すその耳はちょこんと尖っている。

 家庭の事情もあり『学区』卒業後にギルドに就職してすでに五年ほど勤める彼女はヘスティア・ファミリア団長であるベル・クラネルの担当・アドバイザーである。

 冒険者の任意でギルドから提供される、迷宮探索を支援するための担当官。  

 その性格、容姿から人気のある彼女だが現在受け持っている冒険者はベルだけである。

 通常の迷宮探索の相談や打ち合わせに加え、膨大なダンジョン知識を教える為の勉強会、テストまで行っている。

 その教育の仕方と効率と知識は、あのアバンから教えを受けたゼノンすら感心するほどで、ベルに対してしっかり学ぶようにと言うほどだ。

 通常のアドバイザーではここまでしないが、彼女は今までの経験や新人時代の出来事から酷烈、スパルタと称される程の冒険者達が耐えきれず逃げ出すほどのシゴキを行っていた。

 それに耐えられているのはベル唯一人。

 彼とて憧憬という原動力がなければ危うかっただろう(ちなみに憧憬対象のアイズは瞬で逃げる)。

 そんな過保護とも冒険者に入れ込み過ぎとも同僚から苦言を呈される彼女はヘスティア・ファミリアの一人であるゼノンが苦手、否、一時期は嫌ってすらいた。

 初めて会ったのはベル・クラネルと冒険者登録をした日。

 ギルド受付嬢として数多の冒険者を見てきた彼女はゼノンは只者ではないと気づいていた。

 他の冒険者も彼は傍らの少年とは違い大成するだろうと囁やきあっていたほどだ。

 エイナはそんなゼノンと一緒ならばこの危なっかしい少年は大丈夫だ、生きて戻ってこれると安堵したものだ。

 だが、

 ゼノンは登録後、一度としてダンジョンに潜ろうとはしない。

 持ち前の知識欲からかエイナの勉強会には参加したが(すぐに覚えてやめたが)、ベル・クラネルとパーティを組むことがなかった。

 だからといって働かないでベルの稼ぎで暮らしていたわけではない。

 きちんと食堂で働き、ベルのサポートをしていた。

 でもエイナ・チュールは納得できなかった。

 ゼノンが一緒ならベルは今までの冒険で傷つくことも、死にかけることもなかったのではないか、と。

 ゆえにエイナ・チュールはゼノンを嫌っていた。戦えるのに助けないから。

 その認識が変わったのはゼノンの実力を知ってからだ。

 怪物祭でのモンスター撃退。

 未帰還だったベルの救出。

 そして都市最強冒険者、フレイヤ・ファミリア団長【猛者】オッタルの打倒。

 その圧倒的実力を知ったからこそ、納得してしまった。

 彼が一緒では冒険にならない。

 ベル・クラネルは彼の望む高みに到達できないのだと。

 

 そして現在。

 今までの非礼を詫びたエイナは、オラリオのカフェにてゼノンと茶をしばいていた。

 内容はベルの教育について。

 ゼノンがベルに稽古をつけるようになってから、いつの間にか定期的に話し合うようになったのだ。

 肉体面ではゼノンが、知識面ではエイナが。

 その分担をした二人による会議である。

 当初逢引かと、出歯龜及び調査をしについてきたヘスティア達だが、『ベル・クラネル教育予定』の真剣な話し合いを見た彼女らはベルの冥福を祈り去っていった。

 そんな話し合いの一幕。

 会議が一段落して雑談に興じていた時のことである。

 

「そういえばベル君と春姫さんとはどんな感じですか?」

 

「春姫が初心を通り越したナニカのせいで何も進展してねえよ。未だにベルと未来を妄想しただけで気絶する」

 

「身請けされたのにそれですか」

 

「娼婦としてはイシュタルも匙を投げてたくらいだからなアイツ」

 

「最近はゼノンさんだけではなくロキ・ファミリアのベート・ローガ氏が凄い凄いと、元気に話してくれます」

 

「ベルって性別問わず年上が大好きなんだよなあ。その慕いっぷりにベートだけじゃなく、妬んでたモルド達まで先輩気取りで可愛がってやがる」

 

「ベル君って年上好きなんですね」

 

「リリルカの年上アピールで真っ赤に反応するくらいにな」

 

 エイナとゼノン、その雑談内容は様々だがやはりその話題は自然とベルのことばかりとなる。

 互いに19。  

 容姿端麗な二人がカフェで顔を突き合わせて14の少年について語り合う。

 ガネーシャ(お巡り)さんこっちです。

 

「そういえばゼノンさんはギルドの受付嬢の間で人気なんですよ、今日も紹介しろと同僚からせっつかれて」

 

「冒険者に人気な受付嬢が冒険者とは付き合いたくない心理、かあ。まあ自らダンジョンとかいう危険地帯に飛び込む連中なんて相手にしたくないわな」

 

 冒険者と受付嬢が恋仲になってしまうことは多い。だがその多くが悲しい別れで終わる。

 ギルドという組織が発足してから受付嬢は存在するがその先達が皆口を揃えて冒険者はやめろと伝えているのだ。

 だからこそゼノンは狙い目なのだろう。

 ダンジョンに潜らずとも強者であり、稼ぎも良いのだから。

 ちなみに生産職である冒険者も人気ではある。

 彼らはダンジョンに潜るがあくまで作品や生産品の為だからと安全第一であり生還率も高いからだ。

 だが、

 その生産系ファミリアの筆頭であるヘファイストス・ファミリアとデメテル・ファミリアなのだが、主神が善神かつ容姿の良い女神であるせいか、主神に夢中な団員ばかりで受付嬢に靡く者など滅多にいないのである。

 

「恋愛は興味ねえ。まだ遊んでたいんだよ」

 

「ゼノンさんはそこだけは俗っぽいですよね」

 

 ゼノンにとって恋となれば、ポップ関連。愛となればアバン関連、そして悲しきバラン関連。

 彼ら彼女らのような、命すら賭ける真摯で厚い情念を抱ける気がまだしない。

 親しくはなっても、あそこまでではないと冷静に俯瞰してしまうのだ。

 

「会うだけあってくれませんか、このままだと本当に吊るされそうで」

 

「・・・・・・付き合う気がねえのに会うのは不誠実だろうが」

 

「そういう真面目なところがあるから安心なんですけどね」

 

 エイナが異性と二人きりでカフェで会話できるのもゼノンのこのような性格があるからだ。

 純粋にエイナに下心を抱いてないというのもあるが、ゼノンは基本的に不誠実を厭う。

 

「ところでなんか最近変なことはなかったか?」

 

 ゼノンは物陰から此方を窺う複数の気配を感じながらそう尋ねた。

 

「あ、ご存知でしたか?

 気の所為だと思うのですが、なんかここ最近誰かに追い回されてる気がして」

 

「(まああのエルフとドワーフと神二柱だろうな)あー職場は対応してくれねえのか?」

 

「用心棒を雇ってもらうことはできますが、そこまでは」

 

「ならうちの『うごくせきぞう』でも買うか?今ならお友達価格で驚きのこのお値段(ヘスティアのバイト代二月分)」

 

「うーん、すこし厳しいですが買える値段だから悩みますね」

 

「本気か、高給取りだな受付嬢」

 

「ちなみに外見は?」

 

「ガネーシャタイプ、存在感あるし」

 

「ベル君タイプは、ないですか?」

 

「いや用心棒って見た目でビビらすのが目的だからな?ベルでビビるヤツはいねえ。オッタルタイプにしとけ」

 

「お菓子のおじさんはちょっと(エイナもヘスティア・ファミリアホームで遭遇した)」

 

「悩みますが、自宅が賃貸なのでやめときます」

 

「場所とるのが難点なんだよなあ。今後の課題だな」

 

 そんなやり取りを繰り返し、ゼノンはだったらベル本人に護衛させるかと提案。

 見た目での威圧効果はないが、ベルは視線に敏感だからまだ疑いの段階なら居るかどうか見つけられると告げた。

 エイナはベルが了承するならとその提案を受け入れるのであった。

 

(付きまとってる連中も害意はないし、いざ手を出した時に処すれば良いよな)

 

 ウキウキしだすエイナを見ながらゼノンはそんなことを考え、実際に手を出した場合はふん縛ってフリュネに搾り取らせようと心に決めるのであった。

 

 

 後日。

 ベルはエイナの送り迎えをきちんとこなし。

 エイナは小さな護衛に安心とショタを堪能し。

 影から守るように主神から唆されていた、エイナに懸想していた冒険者、エルフのルヴィスとドワーフのドルムルは、失恋とBSSをくらい打ちのめされ。

 娯楽で眷属の恋愛沙汰で賭けをしていた主神二柱は、愉快な寸劇に愉悦した。

 

 

「ありがとう、ベル君」

 

 そしてハーフエルフのアドバイザーはまたベル・クラネルへと想いを深めるのであった。

 

 

 なお余談だが、

 エルフとドワーフと神二柱はゼノンに捕縛されフリュネに供され、ミイラ寸前まで搾り取られたらしい。

 

「好きな相手の嫌がることをする意味がわからねえ」

 

 ゼノンはまだ自分に恋愛沙汰は無理だなと改めて思うのであった。

 





 補足、説明。
 
 原作8巻のエイナ編です。
 原作ではエイナがストーキングされベルが護衛となり解決する展開です。
 オラリオの受付嬢、アドバイザーの説明を兼ねたエイナとベルが仲を深める話ですね。
 当作では今まで触れなかったゼノンとエイナの関係の説明回です。
 ちなみにゼノンは最初からストーキングに気づいてましたが、やらかしたら処す判断でした(半ば放置)。

 ベルは視線に敏感。
 ストーカー(フレイヤ)のせいですね。
 何気にベルの危機察知能力成長に役立ってます。

 うごくせきぞうの値段。
 実際はもっとしますがお友達価格です。

 ルヴィスとドルムル。
 エイナの元担当冒険者、エイナに惚れていたが勉強会は逃げ出した。  
 エイナの好みが頼ってくれる年下たから振られた。
 現在はミイラみたいにカラカラ。

 主神二柱。
 元凶。
 眷属の恋愛沙汰で賭けをしていた愉悦神。
 物陰から怪しげなローブを纏って影から護衛とアドバイスをしていた。
 現在は送還しない程度にミイラ状態。


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