ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 この話はかなり原作改変展開となりますので閲覧注意となります。
 改変タイミングとしてはかなりギリギリなので。

 ちなみに予定している派閥大戦ですが、下手したらヘスティア・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの戦争遊戯に落ち着くかもしれません。



第112話

 

 女神デメテル。

 ヘスティア、ヘファイストスと同郷の神であり慈愛と豊穣を司る。ヘスティアとは姉妹同然の仲であり、また豊穣を司ることからフレイヤとも神話が違っていても仲が良く神友同士なんだとか。

 その神性から農産物生産系のファミリアを運営していて都市外に広大な農地を構えている。

 その規模はオラリオの食料全般を担うほどであり、戦闘員は居ないもののガネーシャ・ファミリアをも上回り、生産系で高ランク冒険者が居ないにも関わらずその等級はC。

 本神の性格は大らかで慈悲深い神格者。

 その母性溢れる容姿とヘスティア以上のグラマラスなスタイルから一部では『デメテルママ』と呼ばれているらしい。

 巨乳を怨敵とし、清らかな性格の持ち主を生理的に嫌うあのロキすら毒気を抜かれてしまうのだとか(まあフレイヤと神友でありまたイシュタルからはあれで実はかなりいい性格してるとコメントされていたが)。

 豊穣と慈愛は、清廉潔白であることではないのだろう。

 

 さて、

 そんな女神。

 オラリオ屈指の人気ある女神なのだが。

 そんな彼女を俺は、このゼノンは今から、

 歓楽街に居を構えるイシュタル・ファミリアが運営する『撫で撫で屋』にスカウトしにいかなければいけない。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 流石の俺も気が重いぜ。

 

 

 先日の休日にてベルとシルという謎の少女(正体はフレイヤ)を尾行した俺達はダイダロス通りの孤児院に辿り着いた。

 そこでシルが空いた時間に孤児院の子供達の面倒を見つつ、差し入れという味見役をさせていたことが判明した。

 孤児院の子供達は苦しい懐事情もあり食べなきゃ勿体ない精神で残さず食べていた(偉い)。

 その後ベルは子供達にジト目で睨まれつつ遊び相手となり、さらにシルのあざといアピールに翻弄され時に脅されながら(子供にスカートめくりされ下着を見たベルをリュー達に伝えようとするなど)膝枕などをしていた。

 ちなみに俺はその間に教会の雨漏り箇所を修繕したり、家具類の修理、野草の調理法を紙に記入し、ついでに護衛としてシャドーを配備したりした。

 休日なのに働いてるとか言われそうだが、俺からしたら手遊びのうちなのである。  

 そんな一日が終わり、締めに歓楽街にベルと遊びに行こうとしたがそれはシルに防がれ(ベルも手足をジタバタして抵抗していた)、一人でナイトフィーバーすることになった。

 そんな楽しい夜の時間に、歓楽街の支配者イシュタルから依頼をされたというわけだ。

 先日闇派閥と袂を分かったイシュタル・ファミリア。そうとなれば警備を今まで以上に強固にしなければいけない。

 そのため『撫で撫で屋』を担当していた団員達も警備に組み込む必要があり、人手不足になってしまったのだ。

 ならば『撫で撫で屋』の営業を縮小すれば良いのでは?と思うが、性欲の発散ではなく心の癒やしを提供する『撫で撫で屋』はギルド上層部・各ファミリア団長に評判であり縮小しようものならばどんな影響がでるのか計り知れないらしい。

 皆さん疲れているんだなあ。

 だから人員、神員確保としてヘスティアを含めた女神達を雇用しようとしているのだ。

 ただ、女神といってもピンキリ。

 癒やす要素の母性(主に胸が)絶無なロキのような女神もチラホラおり、撫で撫で屋で働ける母性持つ存在は限られる。

 だからこそ今回、母性ある女神の代表格であるデメテル勧誘へと踏み切ったのだ。

 なおフレイヤに関しては眷属がアレだから候補にすら上がっていないらしい(本神は面白がって引き受けそうだが)。

 

「ま、闇派閥関連で手間かけてるわけだからこの程度はやらねえとな」

 

 デメテルとは何度か面識がある。

 ヘスティアとの関係からベル達と大農場で収穫を手伝いに行ったこともある。

 スカウトに応じるかは正直わからないが、何気にお堅いヘスティア(あの格好で?)を説得するよりは大分大分マシだろう。

 イシュタル自神が勧誘しないのは今までのやらかしから下手に勘繰られると踏んだからだ。

 それなら俺も大差ない気がするが、あのヘスティアの眷属であることは安牌の証明になるのだとか。

 

「さーてついた、と」

 

 古参ファミリアの一角であるデメテル・ファミリアの館は歴史があることを示すかのように古く広大。

 都市外の大農場周辺に暮らす者や営業事務所に詰める者も多いが、書類などの関係から団員がここで働いている。働いている、筈だよな?

 来客用の呼び鈴を鳴らす前に妙な胸騒ぎと違和感を感じた。

 人気がない。

 大農場から収穫した農産物は倉庫に運ばれ、そこから各営業事務所か取引先に卸される。

 だから本拠地である此処に必ずしも団員が詰めているわけではないかもしれないが、

 

「面倒ごとだなこりゃ」

 

 俺は自身の勘に絶対の信頼を置いている。

 嫌な予感がしたら、対策し、調べ、乗り込む。

 鳴らそうとした呼び鈴をそっと戻し、館外部に保険を仕組んでから気配を消して館内部に侵入した。

 微かに漂う邪気。

 おそらく此処に今、下衆がいる。

 

 

 

「やめてええええっ!!」

 

 女神の悲鳴が館地下室に響き渡る。

 赤髪の怪人の握る長剣が地下室の床に倒れ伏すデメテル・ファミリア団員に突き立てられる。

 デメテル・ファミリアに戦闘員はいない。

 だから碌に抵抗も出来ぬままその命は無惨に散らされてしまう。

 団員の居ない館上階の調査を優先したばかりに、俺は少しばかり遅かった。

 

「わかったからっ!!貴方に従うから!!」

 

 地下室には悲痛な声を上げるデメテルと傷だらけで縛られて意識のないデメテル・ファミリアの団員達がいた。

 そしてデメテルを脅す為に武器を構える赤髪の怪人と道化のような衣装に身を包んだ神とも人ともわからぬ謎の存在。

 状況は最悪。

 デメテルは人質を取られ服従を強要され、抵抗を続けた結果として団員の命を奪われてしまったのだ。

 否、

 まだ、間に合う。

 

「はぁっ!!」

 

 念押しの為か、さらに長剣を振るわんとする怪人に鞘から引き抜いたライトシャムシールで斬りかかる。

 地下の暗闇に目立つ光の刀身。

 不意打ちには向かないがだからこそこちらに注意を引ける。

 

「な!?貴様はっ!?」

 

「へえ?」

 

 カースウェポンだと思われる禍々しい長剣を弾き、まだ生きた証として湯気立つデメテル・ファミリア団員に治癒呪文ベホマをかける、駄目か。

 傷は塞がり血は止まったが、その生命の流出は防げない。これは集中し蘇生呪文ザオラルを唱えなければならない。

 

「え?貴方は」

 

「ヘスティア・ファミリアのゼノン」

 

 窶れその両目から涙を零すデメテル。

 そんな彼女にあの人、勇者アバンのように笑いかける。

 そう、こんな状況だからこそ大丈夫だと笑みを向けなければいけないのだ。

 

「都市最強を蹴散らしたというイレギュラーか」

 

「今回はレヴィスの方を連れて正解だったか。しかし、ヘスティアァァァ」

 

 怪人と謎の存在はそう唸る。

 これからの事を考えれば生きたまま捕らえるべきだが、蘇生の猶予が迫る状況ではそんな余裕はない。

 殺るか。

 アイズと因縁あるらしき赤髪の怪人と闇派閥の情報源となり得る謎の存在。

 そんなものと失われかける命では、天秤に乗せて比べるまでもない。

 

「分が悪い。退くぞ」

 

「惜しいが仕方ないか。

 だがデメテル、告げたら、わかるな?」

 

「ひっ!?」

 

 撤退の意を示す両者。

 謎の存在に関してはデメテルに念押しするかのようにその仮面の口元に指を当てながら告げる。

 関係がない死ね。

 死体からの情報収集も度外視としライトシャムシールに闘気を込め一刀にて葬ろうとしたところで地下室の壁を突き破りモンスターが現れた。

 

「うっとおしい!!」

 

 だからなんだ。

 俺目掛けて突っ込む巨牛頭部の鼻先に左拳をいれて吹き飛ばす。

 巨牛の下半身に額の位置に据わる女体の上半身。まるで異なる存在を強引に組み合わせたかのような不釣り合いで不自然な異形。

 

(ザボエラみたいな研究者がこちらにも居たのかよ)

 

 そう吐き捨てたくなる気持ちを堪えながら、破られた壁の先へと逃げる両者よりモンスターを優先する。

 背後にはデメテルと動けない眷属達。

 あのモンスターには容易く踏み潰されてしまう。

 

「後手後手か、畜生」

 

 俺は強い。  

 だが一人だ。

 一人しかいないから、やれる事は限られる。

 ダイ達と行動を共にするまでは、気にすることはなかったが面倒過ぎた状況に再び俺は陥っていた。

 昔の俺なら気にしなかった。

 利益のある方を優先して、そうでない方を切り捨ててきたから。

 その結果の犠牲も英雄らしく演出し振る舞うだけで有耶無耶にできた。

 だが今はもうできない。

 ダイ達と出会ってしまったから。

 切り捨て失われてしまう物が惜しい。

 切り捨てて失ってはいけないと思う。

 

「逃げて!!あんなモンスターに勝てないわ!!ヘスティアの子である貴方を巻き込めない!!」

 

 こんな時にも自分より他人か。

 誰かさん達と同じお人好しだなと俺は笑う。

 けれどデメテルの懇願が耳に届く前に俺は既に攻撃を終えていた。

 

「オア?ア?ア?」

 

 何が起きたか分からず珍妙なうめき声を上げるモンスター。

 俺の手にはライトシャムシールではなく、翼を模した刃の大剣エクセリオンブレードが握られていた。

 

「人造だか神造だか知らんが、ザボエラに比べたら大した技術じゃねえな」

 

 品性は下劣で下衆を極めた性根だが、大魔王バーンに届きうる存在を創り上げた超天才。

 その作品たる超魔生物とは比べものにならない下等なモンスターを闘気術の極みである才牙で正中線から両断。その断面からズルリとわかれ鮮血を撒き散らしながら巨体は左右にドチャリと崩れ落ちる。

 

「さて、気配は去ったがやることは山積みか」

 

 肩にエクセリオンブレードを担ぎ、ライトシャムシールを鞘にしまいながらそう零す。

 蘇生は最優先だがその前に、

 

「邪なる威力よ退け。

 マホカトール!!」

 

 地下室の床に魔力を込めた拳を叩き込む。

 魔力は館に侵入前に仕込んだ魔力石へと結ばれ半球状の結界となる。

 我が師、勇者アバンが最も得意とした破邪呪文。ではあるのだが。

 

「もって数時間ってとこか。島一つを数ヶ月以上保たせるアバン先生はとんでもねえな」

 

 破邪呪文との適性が高すぎるアバン先生。

 勇者じゃなくて聖者じゃねえのと何度思ったことか。

 

「温かい、魂が、身体が、楽になるような、邪気が払われるような感じがするわ」

 

 戦える存在が俺一人しかいない状況なら結界くらい張らないと不安だからな。

 この状況で暗黒闘気でモンスターを創り出したらいらん誤解を招きかねんし。

 この世界のモンスターに有効かはまだ試してないが、さっき斬り捨てた死体から邪気が抜けてく様子から効果はありそうだ。

 それと、

 マホカトールの影響を感じたデメテルは急いで倒れた眷属達に駆け寄っていた。

 その姿から、デメテルが本当にこちら側だと判断できた。

 マホカトールは邪気ないし邪な意思ある存在に攻撃に似た影響がでる。

 それがない以上は疑いは完全に晴れる。

 便利な呪文ではあるが、俺では館一つに数時間しか保たず、またオラリオの神々は悪神や奸智の神とかいう下界では悪行を成してなくても反応しかねない存在がいるから使えないのだ。

 あと暗黒闘気モンスターが使用できなくなるのが地味に痛いんだよな。

 ヒムレベルまで進化すれば別だがシャドーなんかは一瞬で掻き消える。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」

 

 先ほど刺された眷属を抱きしめながら謝罪するデメテル。

 さて蘇生をしてから、他の団員の治療。

 あとは確認してから捜索もかもな。

 慈愛深き女神の涙を止める為に俺は魔力を高めるのであった。

 

「ところで貴方はなんの用事があってわざわざ訪ねてきたの?」

 

「この状況で言える内容じゃないっす」

 

 眷属人質に取られて苦しんでいた相手に、撫で撫で屋勧誘の為に来ましたなんて言えるわけねえだろうが!!

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 些細なきっかけから発覚した都市の存亡に関わる尋常ならざる事態。それを防ぎ、囚われたデメテルの眷属達全員の安全を確認し、蘇生及び治癒も完了。

 あとはこのヤバい情報をギルド、ガネーシャ、ロキ、ついでにフレイヤに伝えようとデメテルに気づかれないように警備を固めてからギルドに向かった。

 オラリオの食料全般を担うデメテル・ファミリアはまさに都市の生命線。

 至急警備の見直しが必須だからだ。

 館と団員達を意識を取り戻したデメテル・ファミリア団長に任せ、ギルドに辿り着いた俺はその最悪の情報を聞いてしまった。

 

「ヘスティア様がラキアに攫われたぁっ!?」

 

 ヘスティアが、あの女神が、俺の家族が、ラキア王国に攫われた。

 あの人の心に寄り添う、優しいヤツが。

 くだらない欲望の為に、良いように、物のように扱われている。

 

「滅ぼしてやる」

 

 それを目論んだ者。

 そうなるように望んだ神。

 それを許容した臣下。

 それに反感覚えぬ民。

 一切合切全て許さず、滅ぼし尽くす。

 

 異世界から迷い込んだ勇者と大魔道士を救った英雄のその本気の言葉は、隣にいた豊穣と慈愛の女神にしか届くことはなかった。

 

 





 補足・説明。

 オリジナルの原作改変展開となります。
 できる限り悲劇や犠牲を減らしたいのが当作品のコンセプトだったりします(作者の好みにもよりますが)。
 ならなんで暗黒期から書かなかったというと、そこからやると原作開始からほぼオリジナルになって書けなくなってしまうからです(無念)。

 今話はオリジナルなデメテル救済展開です。
 原作では闇派閥の一派というか協力者ポジである謎の存在、都市の破壊者により辛い目に合う彼女と殺されてしまう眷属を救いました。
 原作を読破された方はご存知でしょうが、彼女はとある存在を違和感から探り囚われてしまうのです。
 それがだいたいこの時期で、原作でもタケミカヅチが彼女の顔色の悪さに気づいていました。
 そんな彼女を撫で撫で屋勧誘の為に訪れたゼノンが救いました。
 イシュタル改変の影響の一つですね。
 またゼノンじゃなければレヴィスとモンスターにより返り討ちにされてます。
 しかし、その結果。
 ゼノンはアバンやホルキンスの死を知った時と同じくらいの衝撃を受けてしまいました。


 


 え〜、鬱展開を引っ張るのは嫌いなのでバラシますが酷いことにはなりません。
 ただゼノンの怒りと悲しみに穏健なオラリオの神々もキレてラキア王国にかつてないほどに賠償を求めます。
 でなければ全国民根絶やしにしかねませんし。
 側にいなかったから、これはゼノンのトラウマの一つですので(なおゴメちゃんという救えなかったトラウマあり)。
 
 自分は一人しかいない。
 その無力さを彼は痛感しています。



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