ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 作者はシリアスが苦手なので息抜きでちょっと未来の話。


「デメテルの大農場で収穫だあー!!」

 ロリ巨乳紐神であるヘスティアの宣言から手伝い兼食い扶持稼ぎ兼娯楽兼護衛の収穫手伝いがはじまる。
 あの一件以降、オラリオの生命線であるデメテル・ファミリアは実力あるファミリアの護衛がつくようになっていた。
 
「♪〜」

 農作業で活躍するのはヘスティア・ファミリア団長であるベル・クラネル。狩猟より農耕がメインの田舎育ちは伊達ではない。
 またスキルもあり収穫物運搬で活躍するリリルカ・アーデ。働けば働くほど取り分が増えることから彼女は熱心に荷運びを繰り返す。

「良い働きぶりねえ〜、ベル君はうちのペルセポネのお婿さんになってもらうおうかしら〜。ゼノンさんは私の旦那様で」

「なに各方面に喧嘩売るとんでもないこと言ってんだいデメテルっ!!そしてゼノン君はまたなにをしでかしたんだい!!」

 きっかけがきっかけだが、危機を救われたらトキメクのが乙女というものである。デメテルは乙女よりあらゆる意味で母性溢れるが。

「脚部に鍬を複数つけて耕す、か。いや車輪、円盤状の方が」

「手入れを考えたら単純な方がよくないか?持たせる農具のバリエーションを増やそうぜ」

「君たちは収穫を手伝いなさい」

 そして大農場に来たにも関わらずその場でキラーマシンを改造しだすゼノンとヴェルフ。二人がかりでガチャリガチャリウィーンガッションとキラーマシンをカスタマイズしている。
 そんな二人にツッコミを入れるヘスティア。カサンドラとダフネとバーチェはマイペースに淡々と収穫を行い、命と春姫は昔を懐かしみながら雑談しつつも和気あいあいと楽しんでいた。
 そしてもう一人。

「・・・・・・まだですか?」

 アイズ・ヴァレンシュタインは揚げ油の入った鍋の前でスタンバっていた。

「「「「「「気が早いわっ!!」」」」」」

「新ジャガは水分多いからじゃが丸君にはしないぞ。そのまま塩ゆでして食べるんだよ」

 そんな楽しい未来の一幕。



第113話

 

 イシュタルの頼みからデメテル・ファミリア救出という、ラキア王国侵攻の裏で起きた惨劇を防いだゼノン。

 闇派閥によるオラリオへの兵糧攻めだけに留まらない事態だと判断した彼はすぐさま報告の為にデメテルを連れ立ってギルドへと向かった。

 しかし待ち受けていたのはとんでもない事態。

 日頃から雑に扱ってはいるがそれでも温かく揺るぎない絆を結んでいる主神にして家族であるヘスティアがラキア王国の手の者(というかアレス本神)に攫われたのだ。

 その事を知ったゼノンは、アバンの死を知った時と同様に、体面も利益も一切脳裏に浮かばぬほどにキレていた。

 その怒りに呑まれた姿はかつての敵である竜騎将バランのようであった。

 

「ゼノンさん」

 

 その姿を見たデメテルはそっと彼に寄り添いだす。宥めよう鎮めよう、そんな考えは思い浮かばない。

 ただその怒りがゼノン本人を傷つけぬよう、それだけを思っての行動だ。また同時にそれだけ想われるヘスティアが少しばかり羨ましいと彼女は思った。

 

「こんのっ、ドアホーーーっ!!」

 

 道化神ロキの怒声がギルドを揺らす。

 遊び人のように常に小気味よく余裕ある彼女らしからぬその怒りはとある神へと向けられていた。

 

「・・・・・・はい、ガネーシャはドアホです」

 

 ギルドの石床に正座して縮こまる、象の面をつけた偉丈夫。

 都市の憲兵ガネーシャ・ファミリアの主神ガネーシャである。

 普段のやかましさが鳴りを潜め、ひたすらやらかした事の大きさ、友神を目の前で攫われた申し訳なさに彼は心苦しそうに反省していた。

 

「たく、あのじゃが丸おっぱいもいくらじゃが丸君のハーブが切れたからってこんな時に収穫に行こうとすんなや。

 まあギルドの許可なく検問を通したドアホにも問題あるがな(ギロリ)」

 

 ファミリアを持つ神と神の恩恵を得た冒険者がオラリオから出るのはギルドからの許可が必要である。ダンジョンで鍛えられた冒険者がレベルの低い外で好き放題するととんでもない事態になるからだ。

 それを防ぐ為にオラリオで最大手の一角であるガネーシャ・ファミリアが門番として検問を請け負っているのだが、あろうことかその主神が通してしまったのだ。

 

「・・・・・・はい、ガネーシャはちょっとくらいなら大丈夫だと思って許可したドアホです。すいません」

 

 ちょうど戦争が終わりそうだから帰ってきたガネーシャ(正確には眷属達からうるさいから先に帰れと追い出された)はじゃが丸君という都市を潤す元気の塊が食べられないのは問題だとヘスティアとじゃが丸君屋台のおばちゃん達の通過を許可したのだ。

 その後にオラリオ入門待ちで並ぶ列で言い争いをしていたアレスとその眷属であるマリウスに見つかりアレス渾身のぶちかましをくらい攫われたのだ。

 

「ゼノンはどうしとる?戦争に参加要請した時にラキア王国をどんな滅ぼし方にするか複数の案を平然と出してきたからやっぱり断ったが、知ったらキレるで。

 つーか護衛に自動人形とか付けてないんかい」

 

「彼らのホームに訪ねたら別件で不在だったよ。向こうでもヘスティア様が攫われたと聞いたバーチェ・カリフがラキア全土を毒に沈めると飛び出そうと暴れだしていたよ(団員及びパンドラボックスが必死に止めていた)

 ちなみに護衛に関しては揚げ油の臭いが染み付くからとヘスティア様が断っていたらしい」

 

「おう、ズレた気遣いがとんでもない事態を巻き起こしとるがな」

 

 慎重なゼノンでも本人が拒否することまでは強要したりはしない。またシャドーなどの影系モンスターは竈の神にして聖火を宿すヘスティアと相性が悪く、ベル達のようにこっそりつけるわけにはいかなかったのだ。

 

「あー、ゼノンには世話になっとるし。あのじゃが丸おっぱいも心配やし、さらに捜索隊をだすか。

 ヘルメスの情報なのがアレやけど、アイズたんとベル坊が追ったから大丈夫やと思うけど」

 

「ベル君は当然だけどアイズもヘスティア様はじゃが丸君の神で世界の宝と真剣だったからね」

 

「アイツは竈の神やで。竈の神やけど格はやたらと高いねんけど、烏枢沙摩明王(某便所掃除の神)とかもそうやけど」

 

「オラリオでも慕われてる方だからね」

 

 庶民的ではあるがとフィンは続ける。

 実際にその場にいたじゃが丸君屋台のおばちゃん達やオラリオの民衆などの冒険者ではない者達もヘスティアを助けたいと申し出てるくらいなのだ。

 

「とにかくゼノンに連絡して、ヘスティア救って、アレスのボケとラキアに落とし前やな。

 流石に今回は笑い話じゃすまさんで」

 

「君もなんだかんだでヘスティア様の為に怒ってるじゃないか」

 

「はっ、誰があのドチビの為に怒るかい。

 借りの溜まっとるゼノンに申し訳ないからや。

 ・・・・・・攫われたのはムカついたけどな」

 

 送還されるような事にはならないだろう。

 それでも喧嘩相手がやられたことに道化の神は憤っていた。

 そしてソレはロキだけではなく、その場にいるあらゆる種族の者達の総意であった。

 誰もがヘスティアの身を案じ、誰もがヘスティアのことで怒っている。

 そんな繋がりを感じさせる温かい光景。

 その光景が、ブチギレていたゼノンの頭を冷やすことになった。

 

「・・・・・・・・・・・・あの時のバランもこうだったら或いは」

 

 冷えた頭で先ほどの自分の姿を見つめ直すことができる。

 ラキア王国を滅ぼすと呟く自分は、あの竜の騎士バランと同じだったのではないかと。

 そしてバランは、あの日復讐に堕ちたあの場面で自身と同じ想いを抱く者達、奥方であるソアラの死を嘆き悲しむ者達が居れば、あそこまでやらなかったのではないかと思うのだ。

 誰かが側にいれば、喜びも嬉しさも悲しみも怒りも分かち合える。

 そうすれば一人より違うモノが見えたのかもしれない。

 今の自分のように、と。

 なにせゼノンは、皆もヘスティアが攫われたことに憤っていることで心が軽くなったのだから。

 

「ゼノンさん?」

 

「ああ、少し、頭が冷えた」

 

 聞けばヘスティアもやらかしてはいる。

 なら迎えにいって後で説教してやろう。

 そう、思うことができた。

 それは多分、バランという悲しき先例と、バランによって奪われた友の存在があったからだ。

 

「お〜い、ロキ!!」

 

「ゼノンやないか、すまんが伝えんといかんことが」

 

「聞いてたさ。

 こっちも緊急事態があってな」

 

「緊急事態?

 よこのぴったり寄り添うデメテルが関係しとるんか?」

 

「ああ詳しくはデメテルからだが、俺が知っている範囲では〜〜〜〜」

 

 ゼノンを見て申し訳なさそうな表情を向けたロキは続けられた説明を聞くことになる。

 そして、

 

 

「ラキア王国潰すで。

 第七次オラリオ侵攻なんて出来んくらい国力を削る」

 

「闇派閥と協力・・・・・・はないね。

 単なる偶然だとしてもこれはね」

 

「ラキア侵攻なんて主要派閥が出払うタイミングで闇派閥が動くのは当然だったか」

 

「せめてガネーシャ・ファミリアは都市に残るべきだったっ!!!!すまん、デメテルよっ!!」

 

「私の神友を苦しめるなんて、闇派閥もアレスも許せないわ」

 

「従属神が散り散りになることによる群雄割拠を防ぐ為にも見逃してきたが、アレス送還も視野にいれるべきだ」

 

「向こうの反応次第じゃ久方ぶりに何柱も天に還すことになりそうやな」

 

 俺とデメテルが齎した情報により、多くの神々が憤怒に染まる。

 それは自らの迂闊さに対してもである。

 デメテルが狙われたこと、その眷属が囚われ命奪われる寸前であったこと、ゼノンがそれを防ぎそのせいでヘスティアが攫われたこと。

 様々な要因で数百年見逃されてきたラキア王国は今、存亡の危機にあった。

 

「アレスを送還するなら私にやらせて頂戴。ヴェルフに手を出そうとしたこと、ヘスティアを攫ったこと、アイツの頭をこの手でかち割ってやるわ」

 

 怒りに身を震わすヘファイストスが槌がミシミシと軋むほどに握りしめる。

 既に相思相愛ともいえるヴェルフに対する所業、まごうこと無きぐーたらな駄女神である神友への行い、情の深い彼女が怒髪天を衝くのは当然である。

 

「ファイたんはそれだけやのうて、アフロディーテの件でも(ガシリっ)」

 

「あら、こんなところに砥石が」

 

 なにやら余計なことを呟こうとしたロキはヘファイストスに頭部を捕まれ持ち上げられた。

 

「ごめん、ごめんして。ちゅうかウチ、洗濯板でも壁でも砥石でもないねん」

 

 ヴェルフに知られたら困るヘファイストスの過去の恋愛事情である。

 

「オッタル、今すぐラキア王国兵を殲滅なさい」

 

「神命のままに」

 

 デメテル、下界に降りてからは疎遠になりがちだった神友の為にフレイヤは都市最強に命令を下す。

【戦争ごっこ】で見逃された兵達は例年より遥かに大きい代償を払うことになる。

 

「うちらが捕まえた兵達のステイタス放棄は当然やけど、今後アレスが眷属を作れんようにせんとな」

 

「ラキアの民が混乱して酷い目にあわないように見逃してきたが、アレスを支持する以上は無関係ではない。今回は相応の代償を貰おう」

 

 やらかしている戦神アレス。

 それでもラキア王国を維持できているのは民の支持があってこそ。

 ラキアが豊かである限りアレスを主神として崇め称えるならば、支持しなくなるまで赤貧に喘いでもらう必要がある。

 

「敗戦国の税率って八公二民やったっけ?」

 

「いっそ九公一民になるまで絞るべきかもね」

 

 ゼノンがデメテルを救わねば本当にオラリオは滅ぶところであったのだ。

 攻められたオラリオが滅びかけたにも関わらず攻めてきたラキアを許すことはできないのだ。

 またここできっちり落とし前をつけなければ、ゼノンが本気で暴れるだろうことをロキ達は危惧していた。

 国ごと消し飛ぶよりはマシ。

 ラキア王国はこれからそのような目に合うことが確定した。

 

「さーて、終わらせるで皆の衆!!」

 

「「「「「おおっ!!」」」」」

 

 怒りを追加し気合新たに、オラリオのラキア王国への報復がはじまる。

 この時の報復の苛烈さに、オラリオを狙う数多の国が震えあがる。

 一罰百戒。

 見せしめこそが抑止となるのだ。

 

 

 

 

 数日後。

 ヘスティアはベルとアイズにより救い出され、迷い込んだ村で数日滞在した後にオラリオに帰還した。

 その地で黒竜について、神と人の愛について学んだベルはアイズ、ヘスティアとの関係を深めることになる。

 やたらと殺気立つオラリオの者達に首を傾げたりもしたが、帰還したホームで心配していた仲間達から抱きしめられた。

 そしてゼノンだが、今回の件で神に対する報復について模索することになる。

 人は神を畏れ、神を討てば呪われる。

 ゆえに手が出せず、好き放題に過ごす。

 アレスもであるが、エニュオと呼ばれる存在も神である可能性が高い。

 そんな連中が敗北し送還されても天界に戻るだけ、それはゼノンには許しがたかった。

 

「応報しないとな」

 

 かつて読んだ伝承で語られるとある剣を再現する。それならば退屈しのぎに来る神々にとっては最大の報復になるだろうと判断した。

 

 

 そして場所は変わり歓楽街。

 

「俺はガネーシャじゃないっ!!

 ガネ子だあああっ!!」

 

 今回やらかした神の一柱であるガネーシャは、お詫びとして人(神)手不足と聞いた【撫で撫で屋】で働くことにしたそうだ。

 なぜか女装のつもりなのか唇に紅を塗り、メイド服を身に纏って。

 

「デメテルが働いてくれるのはありがたいけど、収支はトントンかねえ」

 

「ゼノンさんは来ないかしら(ソワソワ)」

 

「アイツは娼館のみだよ」

 

 オラリオを救った立役者であるイシュタルのため息が、戦争の終わった迷宮都市の夜に流れる。

 

「俺がガネ子だああああっ!!」

 

「「「「「うるせえ!!」」」」」

 

 なおガネ子の撫で撫でもかなり評判になる。

 新たな下界の未知である。

 

 





 補足・説明。

 原作ではヘスティアがベルの自分の扱いから悩み飛び出すことから始まります。
 ベルは他の人より神は神だとわけて考えてるフシがあります(アイズに惚れてるからなのもあるが)。
 そこから誘拐、追跡、奪還、からの黒竜の鱗に守られる村へと辿り着き、村の祭に参加し、かつて神と愛し合い死に別れた村長の話を聞きます。そんなヘスティア達と関係を深める閑話ですね。
 当作ではヘスティア誘拐にキレるゼノンが冷静になるくらい皆が心配していて、そこからラキア報復になります。
 やはりバランを知るゼノンはそこまで怒りが持続しません(客観視に長けてるのも理由)。
 ただバランもその場に誰か居ればとは思いました(いや赤子出産まで夫婦だけでやったのは異常ではあるのですが、産婆とかいなかったのか?)。
 あの場に味方にならずともソアラの死を嘆く誰かが居れば別の見え方も出来たのでは、と作者は思うのです。

 ラキアへの報復。 
 あえて細かく描写しません。
 正直この手の報復シーンは読むにしても書くにして熱が入り過ぎてあまりよろしくないなと感じますので。
 アレスの支持が下がる程度に搾り取られるイメージでお願いします。
 その資金は黒竜対策の防壁や生産職ファミリア警護に当てられます。
 というか敗戦国は重税課せられるのが世の常ですからね。原作でそれをしないのは迎撃する冒険者の人数が少なく戦費が嵩まないからでしょう。

 ゼノンによる神への報復案。 
 ヒント、ルドルフ将軍。

 撫で撫で屋。
 感想にてニューカマーという言葉があったので、本当にニューカマーが参加した。
 あとデメテルも警護もあり働きます。

 俺がガネ子だあああっ!!
 原作でやらかしてた神。 
 反省として働きにきた、なお無給。
 どう見ても仮面のメイドガイ。
 でも人気に。
 人間はわからないとイシュタルは宇宙猫に。
 

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