ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 この世界のモンスター爺さんの病み具合。
 
 るろうに剣心で有名な和月先生の作品の一つ【エンバーミング】に出てきた、フランケンシュタイン製造者達レベルです。
 ゼノンは自分も大概だと自覚してますが、それでもドン引きしました。



第115話

 

 イシュタルの依頼で出会ったビッグファーザーから知らされた【異端児】という存在。

 親しい者達からの裏切りで心病んだその人物から異端児の保護を依頼された俺は、オラリオに帰還後先ずはイシュタルに報告した。

 異端児という下界の未知にイシュタルも驚くが、同時に闇派閥との取引時に運送していたモノがそれだったのかと納得した。

 そしてイシュタルに異端児についてどう思うか聞いてみたが特に気にしないらしい。

 そこは【フリュネ】という時にアマゾネスか疑問視される存在を眷属とする懐の深さからなのだろう。

 むしろ彼女はそれよりもビッグファーザーの変質を哀れんでいた。

 情の深い男とて欲望の前には裏切られてしまう、ごくありふれた知性ある存在の悲劇。

 俺とイシュタルは心に湧き出たやるせなさを盃に注がれた美酒で飲みくだした。

 

 

 翌日。

 イシュタルとの酒宴による不調など一切ない俺はダンジョンに潜るベル達に弁当を渡し見送った後にホームをでた。

 目的地はフレイヤ・ファミリア本拠地【戦いの野】、眷属同士による鍛錬とは思えない蠱毒さながらの戦いが繰り広げられるその地に足を運んだ。

 武器がぶつかり合う音、身体が傷つく生々しい音と血の匂いが門の外まで届いてくる。

 そこで俺は門に一応ついてはいる呼び鈴を鳴らそうとはせず、大きく息を吸い敷地奥にある邸宅に届くように腹から声をだす。

 

「オッタル君、あーそーぼー!!」

 

 ピタリ。

 そのこの地に似つかわしくない内容と敷地を揺らすほどの大声にフレイヤ・ファミリア眷属達は硬直する。

 そして、奥の邸宅からドドドと猪の突進を連想させる駆け足の音が鳴り響いてくる。

 

「戦ってくれるか、ゼノンっ!!」

 

 都市最強の冒険者オッタルは(但しゼノンは除く、本人は冒険者のつもりはないので)、日頃の寡黙な武人然とした態度とはまるで違う、喜色を浮かべた表情でこちらへと走ってきた(そしてそれを見たメイド服のヒーラーは額にぶっとい青筋を浮かべていた)。

 

「ウ、ソ♡」

 

 しかしそんなオッタルの期待を俺は裏切る。なあああ、とショックでガクリ膝つく強者と戦いたい武人。

 わざわざオッタルが食いつきそうな発言をしたのはなるべく早く話を進めたいからだ。

 狂信者しかいないフレイヤ・ファミリアでは普通に門でフレイヤに取り次いでもらおうとしてもどれだけ時間が掛かるかわからないのだから。

 

「それで今日は何のようだ?」

 

 オッタルを追ってきたエルフがそう尋ねてきた。

 フレイヤ・ファミリア幹部【白妖の魔杖】ヘディン・セルランド。オラリオ随一の魔法剣士であるホワイトエルフだ。

 

「フレイヤ・ファミリアに依頼があってな、至急フレイヤに取り次いで貰いたい」

 

 ガクリと落ち込むオッタル(それを見てザマァと笑うヒーラー)を放っておき、俺は目的を告げる。

 本来なら団長であるオッタルに言うべきことだが、ヘディンが居るならばこちらの方が良い。

 

「依頼か、珍しいこともあるものだ。

 だが・・・・・・」

 

「依頼を聞くにしても、何もないというわけにはいかないわねえ」

 

「ククク、美神に願うならば相応しき供物を捧げよ」

 

 フットワークの軽いことに定評ある(都市外にふらりと旅立つこともザラ)フレイヤが【黒妖の魔剣】ヘグニ・ラグナールを連れ立って現れた。

 独特な言い回しをするヘグニの言葉に、オッタルが菓子折り持参で訪ねてくるように手土産を必要なのだと理解する。

 無論菓子折りは用意してあるが、フレイヤに話を取り次ぐ為のモノもある。

 

「朝洗濯に出されていたベルのシャ(バッ!!)ツ」

 

 取り出したブツは言い終わる前に美神に引ったくられた。

 

「ありがとう!!話は聞いてあげるからホーム内で少し待ってて頂戴!!」

 

 ヒャッホウ!!と喜びの声を上げながらフレイヤは冒険者に匹敵する速度で自室へと駆けていった。

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

「愉快な神だよなアイツ」

 

 あまりにも早すぎる強奪からの全力ダッシュ、俺じゃなければ見逃していたな(結構ギリギリ)。

 

「フレイヤ様をそう称すのは貴殿くらいだ」

 

「あ、俺は今日の護衛担当だし追わなきゃ、自室かな」

 

「待ってる間に軽く手合わせでも」

 

「やだよめんどい」

 

 嵐が過ぎ去ったような静けさ後にそれぞれ呟き、散っていった。

 俺は応接室に案内されそこで待機となった。その時に幹部連中はなるべく集めてくれとヘディンに頼んだ。

 

 

 

 カリカリカリカリカリカリカリカリ。

 カリカリカリカリカリカリカリカリ。

 カリカリカリカリカリカリカリカリ。

 小刀で石片を削る音がまるで曲を奏でているかのように応接室で鳴り響く。

 結構待たされると判断した俺は暇つぶしとして手持ちの素材で盤上遊戯の駒のような人形を彫っていた。

 そんな暇つぶし中にヘディンに言われてフレイヤ・ファミリア幹部【炎金の四戦士】ガリバー兄弟の四人が悪態をつきながらやってきた。

 俺の姿を見て不快そうに殺意を向けてきた四人だが、テーブルに並ぶ完成品の人形と俺の手元を見ると興味を持ち出した。

 暫し眺められた後、元職人の血が疼いたのか俺と同じように人形を彫りだした。

 石片を削る音の五重奏。

 それはフレイヤ・ファミリア副団長【女神の戦車】アレン・フローメルが到着し、騒音に本人がブチギレた後も続けられた。

 

 

「待たせたわね」

 

 数時間後。

 満足気に顔をツヤツヤとさせたフレイヤがようやく現れた。

 いや本当に待たされたわ。

 テーブルの上なんか知り合いやモンスターを模した人形でいっぱいだよ。

 

「どうすっかコレ」

 

「引き取るか?」

 

「コレは欲しい」

 

「フレイヤ様は外せない」

 

「人数分はあるな」

 

「策を練るときの配置などの際に使うから言い値で買おう」

 

 ガリバー兄弟が彫ったフレイヤ人形はダブってるので欲しいヤツが受け取り、それ以外はヘディンが引き取った。地図上に人員配置などを示す時に使うのだろう。

 

「それで依頼って何かしら?」

 

 自身を模した駒を掌で弄びながらフレイヤは俺に話を促した。

 

「その依頼の前に、お前らに確認を兼ねて【異端児】について説明しよう」

 

 ダンジョン下層まで行く冒険者であるフレイヤ・ファミリアならば遭遇したことがあるかもしれない。

 そう思い、知り得たばかりの異端児についての情報を語った。

 

「知性あるモンスター、ね」

 

「ギルドが何やら隠しているとは思っていましたが、このことだったのですね」

 

 フレイヤが僅かに興味を持ち、ヘディンが腑に落ちたと言わんばかりに頷いている。

 しかし異端児の存在を知ったフレイヤ・ファミリア幹部達の内心だが、

 

「「「「「「「(どうでもいい)」」」」」」」

 

 とこちらに明白に伝わるほどだった。

 フレイヤに己の全てを捧げる狂信者達にとってモンスターに知性があろうが喋ろうがどうでもいいのだろう。

 だが、モンスターだからと嫌悪を抱かないのであればロキ・ファミリアよりは交渉できそうではある。

 

「そんなわけで【異端児】の保護、まあ生きたままであればなんとかなるし捕獲を依頼したい」

 

「気色悪い怪物趣味に付き合えってのか?」

 

「ククク、女神の為に磨きし我が武威は「うるさい」はい」

 

「依頼人は正気か?」

 

「くだらない」

 

「気持ち悪い」

 

「悍ましい」

 

 好き放題抜かす幹部達。 

 どうでもいいが乗り気にはなれんようだ。

 

「だが依頼ならば受けても良い。  

 先日、貴殿がロキ・ファミリアに卸した戦闘用自動人形の強化版、さらに【祝福の杖】なる壊れぬ魔剣を対価として所望する」

 

 そんな中でヘディンは依頼にのってくれるようだ。

 

「それで引き受けてくれるならありがたい」

 

 手間はかかるが無理難題ではない。

 キラーマシン系の強化版作成は娯楽の延長でもある。

 

「私も受けてあげて良いと思うわ。

 異端児、その存在の魂も少し気になるもの」

 

 フレイヤの承諾。

 それはフレイヤ・ファミリアでは決定を意味する。ならば目的は達した。

 

「契約成立、ありがとよ」

 

 異端児とぶつかる可能性が高く、葬る可能性も高いフレイヤ・ファミリアが協力してくれるから異端児の安全も少しはマシになるだろう。

 

「・・・・・・けど」

 

「あん?」

 

「ずいぶん急に話をもってきたわね?

 貴方ならもう少し自分で動いてから協力を仰ぎそうなモノだけど」

 

 フレイヤが首を傾げながら俺らしくないと言う。

 まあ確かに俺自身異様に焦ってる、という感覚はあるな。

 

「予感、みたいなのがあってな。

 東方に【噂をすれば影がさす】って諺があるだろう?俺がこうして異端児を知ったからベル達も異端児に関わるんじゃねえかと」

 

「我らすら未だに遭遇していないダンジョンの未知にか?」

 

「ク、クク、それは砂漠より砂金を見つけるよりあり得ざる」

 

「ねえだろ」

 

「「「「ありえない」」」」

 

「いや、ほらベルって【幸運】のアビリティ持ちだから」

 

「・・・・・・・・・【幸運】ならばそのような厄介事に遭遇しないだろう」

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 プッ、

 

「「「「「「アハハハハハハ!!」」」」」」

 

 オッタルの発言がツボに入ったその場の全員は一斉に笑い出した。

 

「ま、そうだよな。ありえないか」

 

「如何に厄介事を引き寄せる愚兎と言えどな」

 

「いやいくつかはお前ら」

 

「でも、そうね。

 もし、あの子が今日ダンジョンに潜った時にその異端児と遭遇していたら・・・・・・」

 

「なんでウチの連中のスケジュールを把握してんだよ」

 

「その時は、オッタルがメイド服姿でミアのお店で一日給仕してもらおうかしら」

 

「!?!?(バッ)」

 

「そういう罰ゲームは普通自分でやらねえか?」

 

 エグいことを言い出す主神に俺が訊くと。

 

「あら、オッタルは私の子。

 私と一心同体よ」  

 

「・・・・・・・・・フレイヤ様(ジーン)」

 

「「「「「「オッタルぶっ殺す!!!!」」」」」」

 

「それで良いのかお前ら」

 

 主神の適当な発言に感動する脳筋と嫉妬する狂信者共。

 やっぱりフレイヤ・ファミリアは愉快なトコロだなと俺は思いました。

 それから雑談したり猫が襲いかかってきたので返り討ちしてから俺は帰宅した。

 異端児についてあらかじめ伝えておけば何かあった時に話を通しやすい、そんな意図もあったのだから。

 

 

【竈火の館】

 

「ただいまー」

 

 フレイヤ・ファミリアで結構時間かかってしまった(主にフレイヤのせい)、早く飯の準備をしねえと。ベル達はもう帰宅しているだろうか。

 そう思いながらリビングに向かうと、

 

「ぜ、ゼノンさん!?」

 

「あ、いやその・・・・・・彼女は」

 

「?」

 

 ローブで身を包んだ見慣れぬ人物。

 彼女は青白い肌、琥珀色の瞳、そして額にガーネットに似た紅石が埋まっていた。

 亜人かね?と一瞬思ったが、その身に魔石を宿すモンスターであることを察する。

 

「・・・・・・わたし、ウィーネ」

 

 自己紹介のつもりなのか彼女はたどたどしく名乗り、それを聞いた俺は異端児だと理解した。

 そして、一拍おき、

 

「メイドオッタルーーーっ!!」

 

 俺は都市最強冒険者のメイド姿が確定したことに叫ぶのであった。

 





 補足・説明。
  
 今話はゼノンがフレイヤ・ファミリアに訪れる展開です。
 ゼノンはざっくりと異端児の説明をしました。
 フレイヤ・ファミリアの幹部達が異端児の反応が薄いのは彼らが人間にも酷い目あわされた過去があるからそうなると予想しました(アレンは故郷を黒竜に滅ぼされたので反発はありそうですが)。

 盤上遊戯の駒みたいな人形。
 冒険王ビィト登場のガロニュートが作ってような感じです。

 ゼノンと仲よさげな幹部達。 
 オッタルを酷い目に合わす元凶なので実は好感度高めです。
 
 メイドオッタル。
 ミアがブチギレそう(笑)。

 
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