ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「頑張っているんですね、フローラ姫」

「どうしたんだ?アバン先生」

「なに、私ももっと頑張ろうと、そう思っただけですよ」

 アバン先生の(強制的に)生徒になってから数年。あの人は街でカール王国復興と発展の話を聞く度に我が事のように嬉しそうに微笑んでいた。
 当時は理由がわからなかったが、今なら尻を蹴飛ばしてでもカール王国に行かせれば良かったのでは、と思う。
 つーか、そんなに気にしているなら帰ってやれよ。

 なお、帰ったら帰ったで、フローラ姫は二度と離さない為、監禁していた模様。



第13話

 

「碌なもんじゃねえなおい」

 

 人の悪性とは、平和な時にこそ花開く、とは誰が言った言葉だったか。

 あらゆる国を見て回った。

 あらゆる街を歩き巡った。

 その経験から理解したことだが。

 治安が悪い、スラム街のような都市では裏組織は、短絡的で暴力的な集団であり、はっきり言ってその手腕は稚拙だった。

 だが治安の良い、発展した王都のような都市の裏組織は、手の込んだ犯罪、厳格としたルールの、犯罪結社と呼べる集団となる。

 なんとも皮肉な話だ。

 治安が良い方が悪が強大で巧みになってしまうとは。治安を維持する組織があるからこそ、それを掻い潜るように頭、悪知恵を巡らせるのだ。

 ダンジョンという未知。

 ダンジョンという危機。

 そこに神の恩恵を受けて挑む、英雄達の都市オラリオ。

 そんな風に語られ知れ渡るこの都市であるが、軽く調べた程度で、その闇は、欲望は、深く、昏く、淀んでいて、醜い。

 暗黒闘気で大量に創り出したシャドー達による調査からわかった華やかで夢あふれる都市の裏側。

 予想していたその結果に俺はげんなりとした。

 そして、ベルとヘスティア、ロキ・ファミリアの面々が良い意味での上澄みであったのだと理解した。

 もし彼らと出会わずにこの調査にあるような連中と関わってしまっていたら、俺はすぐさま出ていくか、暗黒闘気で創り出したモンスターを率いてこの都市を征服しようと企んだろう。

 

「リリルカ・アーデ、か」

 

 こちらにも動きがあった。

 ベルに憑けたシャドーからの情報によると、サポーター働き自体はきちんとして、経験のないベルを教導するように指示までしてくれた。ただ魔石を回収し荷運びするだけと揶揄される存在とは思えない迷宮探索の練達者だそうだ。

 だがベルから信頼を勝ち得ると、回収する魔石を自らの懐に入れ、換金の際には金をちょろまかし、ポーションなどの買い物を自ら買ってでては定価の倍額ふっかけているらしい。

 

(世間知らず過ぎだろベル)

 

 そんな状況に一切気付かず、リリがサポーターしてくれたからいつもより稼げましたと笑ってたんかいあの白兎。

 あまりの驚きの白さに冷や汗すら流れはじめる。なるほどベルの髪の白さは心の白さだったか。きっとベルは魂すらも純白なまでに白いのだろう、ってアホかい!!(1人ノリツッコミ)。

 挙げ句の果てにリリルカ、いや元から狙いであったヘスティア・ナイフまで盗みとったらしい。

 俺がシャドーに手を出すなと命令してなかったら、リリルカは今頃始末されていたぞコレ。

 

(はあ)

 

 ベルとて無警戒ではないそうだ。

 というかギルド受付嬢であるチュール嬢がなんども注意してくれていたらしい。

 だがベルはリリルカを信頼した。あまりにも自分を卑下していたリリルカの態度から、信頼したいと思ったのだろう。

 ベル憑きシャドーから〈処します?処します?〉と思念が伝わる。冒険初日からベルと共にあるシャドーは、そうと創ったのもあるがベルを何よりも大切に想っている。けどまだリリルカ・アーデは最後の一線を越えてはいないし、ヘスティア・ナイフ自体も【豊饒の女主人】のウェイトレスであるエルフ・リューが取り返してくれたそうだ。

 俺以外にもベルを気にして見守っている存在がいる。ならばベル憑きシャドーは下手に動かさない方が良いだろう。

 あと追加情報だが、リリルカ・アーデは種族を変えられるか、姿を変えられる変身呪文モシャスのような魔法が使えるらしい。なるほど、巷で噂される盗難事件の犯人が特定されないわけだ。種族や外見が変わってしまえば、俺のように気配で察したり、シャドーなど闘気や魔力で認識しない限りは本人だとわからないからな。

 

(どうすっかね)

 

 調べた出生や経歴から、リリルカ・アーデに同情し、哀れみを持つことはできる。助けてやることも、手段を選ばなければまあ出来はする。

 だがそうしても本人の心は救えない。

 救ったところで、なんでいまさらと憎悪の念すら抱くだろう。

 というか、ここまで拗れた性格なら俺みたいな強者に手を差し伸べられたら、表面では笑って感謝し本心で見下されてるとつばを吐くだろう。

 善意なんてものを素直に受け取れるのは、それこそベルみたいな裏表ない者くらいだ。

 

(俺にリリルカ・アーデは救えないな)

 

 自分自身の生まれと経歴から、俺はそう結論をだした。

 手を出すのはベルが救ってからだ。

 あの拗れた心も、ベルのようなお人好しなら掬い上げるだろう。

 そして仮にベルが失敗したら、ベルの命を守り、リリルカ・アーデは命だけ助けて、別の都市にでも放り捨てる。

 そこからはまあ、知らん。

 方針を定めた俺は、いつもの日常へ戻る。食堂で働き、石像を彫り、家事をこなす日々へと。

 

 

 

 

「あの、ゼノンさん。こちらが僕のサポーターをやってくれてるリリルカ・アーデです」

 

「【ソーマ・ファミリア】所属のサポーター、リリルカ・アーデです。はじめましてゼノン様」

 

 うん知ってる。

 

「ああ、【ヘスティア・ファミリア】のゼノンだ。名字は無い。一応恩恵は刻んだがダンジョンには潜ってない」

 

 ベルがリリルカをホームに連れて来ちゃったよ。リリルカがホームの廃教会を見て顔を引き攣らせているよ(ゼノンの寝床である敷地内に張ってあるテントも原因)。

 どうしよ。

 

「ゼノンさん!!リリは凄いんですよ!!魔石も手早く回収してくれて、荷物もたくさん持ってくれるし!!経験豊富で物知りで!!だからリリを雇ってから沢山稼げるようになったんです!!」

 

 うん知ってる。

 でもね、ちょろまかされてるの君。

 嬉しそうにはしゃいだように、リリルカ・アーデについて説明するベル。

 その興奮ぶりに、何故か頭にはウサ耳、尻にはうさぎの尻尾が生えて元気に揺らしている幻覚が見えて、目をゴシゴシと擦ってしまう。

 あ、リリルカ・アーデも同じことをやっている。コイツにも見えたのか。

 

「あの、ゼノン様」

 

「様つけされる立場じゃねえけど。恩恵貰ったがダンジョンに潜らないしな」

 

「その、なんでベル様と潜らないのでしょうか?」

 

 探るように、警戒するように、同調か、嫉妬か定かではない感情をのせてリリルカ・アーデは俺に問う。

 

「そもそもダンジョンに潜るためにこの都市に来たわけじゃねえからな」

 

 この世界の情報を得る為と生活する為に来たんだ。

 

「そうなのですか」

 

「恩恵を刻んだのだって、・・・・・・ヘスティアが泣いて縋りついてきたからだしよ」

 

「うわあ」

 

 そんなヘスティア、俺達の主神の姿を想像してリリルカ・アーデはドン引きしていた。

 なんでそこまでしたのか、眷属の数、主神自身が屋台でバイト、ホームの廃教会ぶり、から察したのだろう。

 うん、端から見たら零細なんてレベルじゃねえなヘスティア・ファミリア。

 

「冒険者様でないのは理解しました。ただベル様が慕われてますし、目上の方なので、様つけはしますがよろしいでしょうか」

 

「好きにしてくれ。正直こそばゆいが言いやすい方で良い」

 

 手をひらひらと振りながらそう返す。

 

「あ、そうだコレな」

 

 懐のサイフの中身を確認し、袋に金貨を移してから渡す。

 

「? なんでしょう」

  

「使用したアイテム代だ。ベルに請求してないらしいな」

 

 ポーションはベルが持っている物を使用しているようで、その補充の買い物は(ちょろまかしながら)やっているが、リリルカ・アーデ自身が使用したボーガンの矢や消耗品代は請求していない。  

 それでも儲かってはいるようだが。

 

「受け取れませんよ!!」

 

「いいから受け取れ」 

 

 断るリリルカ・アーデに強引に渡す。

 

「俺はベルとダンジョンに行かないが、ベルの夢は応援してやりたい。その手助けをしてくれるお前に対価を払うのは当たり前だろ。ありがとうな」

 

 これは本心だ。

 俺と一緒に居るとベルはダンジョンで名を馳せるなんてできやしない。

 その一助となるリリルカ・アーデに感謝しているのは本当なんだ。

 

「・・・・・・・・・・・・愛されてるんですね、ベル様。・・・・・・・・・リリとは違って」

 

 あ。

 ヤベ、やらかした。

 俺に礼を言われた瞬間は嬉しそうになったが、ふと考えこんでその目が、感情が昏く淀みだした。って待ておいそこのガスト〈ごはんー?〉って暗い感情を感じとってでてくるな。

 いっそチューチュー吸わせたらスッキリするかね?(現実逃避)。

 リリルカ・アーデにとって大切にされてる存在は妬ましい存在だったんだ。

 これ一線超えさせるきっかけにならねえか?

 

「どうしたんですか?ゼノンさん、リリ?」

 

「あ、ああまあちょっとな(汗)」

 

「なんでもありません、なにもありませんでしたよベル様(営業スマイル)」

 

 とりあえず準備は進めるかな。

 取引材料も用意しとこ。

 ヘスティアに頼んで鍛冶場を借りなきゃ。

 こうして俺と、リリルカ・アーデの顔合わせは終わった。冒険者ではない俺にはそこまで嫌悪はしてないようだが、ベルへの態度が地雷だったようだ。

 そして直に対面したからわかる。

 俺にリリルカ・アーデの心は救えないと。

 虐げられた弱者を救えるのは強者じゃない。

 その心に寄り添える、優しい者だけなのだ。

 

 

 

「それでそのサポーター君はどうだったんだい、ゼノン君」

 

 ベルが居ない時間帯にヘスティアにリリルカ・アーデについて話した。

 

「近いうちに死ぬなアイツ」

 

「死ぬのっ!?」

 

 顔を見た時に自然とそう思ってしまった。

 

「自分が賢い、賢く上手く立ち回れていると思っているヤツは、死ぬ」

 

 元の世界にもそんなヤツがいたからな。

 

「結局、物を言うのは暴力なんだよ」

 

 一人ぼっちの弱者は、生き残りたいなら、周囲を舐めては、見下してはいけないのだ。

 

「なんとか、できないのかい?」

 

「ベルが救うさ」

 

 ただまあ、リリルカ・アーデにも幸運がある。

 俺がアバン先生に手を引いて貰えたように、ベルと出会えたのだから。

 

「俺は後始末の準備かね」

 

 さあて、どこまでやるか。

 





 犯罪組織、闇ギルドのアレコレ。
 元となっているのは、ロードス島戦記。
 島内でもっとも繁栄している千年王国アラニアは、貴族達の暗闘もあり闇ギルドは組織として強大で構成員の教育もきちんとされており、犯罪者を送りこまれる流刑の地、暗黒の島マーモは支配こそしているがゴロツキの集団だった。

 リリルカ・アーデについて
 ゼノンでは救えない。
 いくら助けようと、リリルカ自身が救いを受け入れられない。自分もそうだったから理解できた。
 どう転んでも命だけは保証される。
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