ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
アイズヒロイン確定かはまだわかりません。
案外、娘や妹ポジに落ち着くかもしれません。
ダンまちの物語はまだ序盤、これからどうなるのかどうかお楽しみください。
今回は繋ぎ回です。
「サポーターさん、サポーターさん。冒険者を探していませんか?」
「え?」
「混乱していますか?でも、今の状況は簡単ですよ?サポーターさんの手を借りたい半人前の冒険者が、自分を売り込みに来ているんです」
ベルが差し出した右手。
「はいっ、リリを連れていってください!」
その手にリリルカは自分の手を重ねた。
二人の再出発。
手を繋いでダンジョンへ向かうその姿を俺は静かに見届けた。
「ゼノンさん?」
「すまんな、待たせて」
横に並ぶ少女、『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインに一言謝る。ロキ・ファミリアの本拠地に向かう前にどうしても今の二人を見たかったのだ。
これからの交渉の気合をいれる為に。
自分が何の為に臨むのか、それをしっかりと胸に刻む意図もあって。
「あの子はやり遂げたんですね」
「ああ、ウチの、ヘスティア・ファミリアの自慢の団長だ」
そう、ベルはやり遂げた。
リリルカの心を救ってみせたんだ。
ならば次は俺の番。
二人が憂いなく冒険できるよう、足元の掃除に励むとしよう。
「フィン、団長はゼノンさんとお会いするそうです」
「ありがとう。怪物祭での借りはこれで終わった。他の面々にもそう伝えてくれ。今後この借りを持ち出すことはないと宣言する」
「わかりました。けれど良いのですか?」
「何がだ?」
「取引の機会を得るだけなんて」
そう、今回の取引は確約されたものではない。アイズに頼んだのは機会を得れるかどうかだけ。
そこから取引が為されるかどうかは、俺の交渉次第というわけだ。
手土産はある。
交渉材料もある。
取引の品もある。
相手はオラリオ最大手ファミリア。
フレイヤ・ファミリアと共に双璧とされるロキ・ファミリアだ。
「はじめまして、ではないけど。ここは自己紹介から始めさせて貰おうかな。
僕の名前はフィン・ディムナ。ロキ・ファミリアの団長を務めさせてもらっている」
【ロキ・ファミリア】が本拠、黄昏の館。
周囲一帯の建物と比べ群を抜いて高い、長大な館の一室にて、俺は金髪の小人族の男性の対面に座り、向かい合っていた。
「此の度、交渉の機会を作って頂き心より感謝申し上げます。
私はヘスティア・ファミリアのゼノン。家名を持たぬ生まれゆえ、名前のみの名乗りをお許しください」
「気にすることはないし、卑下することもない。君には、いやヘスティア・ファミリアには詫びるべきことも礼を言うべきこともあるのだからね」
「それこそお気になさらずに。ミノタウロスの件では貴方方は責任を果たされ、怪物祭の件はこの機会を作って頂いたことで充分です」
「それはファミリアの総意かな?それとも君個人の思いかい?」
「どちらもまた。我が主神ヘスティアはこの件は全て己に任すと宣言しております」
「そうか、で「もうかたっくるしい話し方はええねんっ!!」」
少年のような見た目の老練なる冒険者との会話に割り込んできたのは朱色髪、糸目の狐を連想する容姿の神。ロキ・ファミリアが主神、ロキだ。
「あー、うちはロキ。神ロキや。天界じゃあまあ色々司っとるけど、下界オラリオでは道化の神で通っとる。いいか道化の神や!!
洗濯板の付喪神なんかやないからな!!」
中々自己主張の強い神のようだ。
そして必死に否定する洗濯板の付喪神とは一体なんのことなんだろうか?
「そうだね。かたっくるしい話し方では話が進まない。所詮僕らは冒険者、まどろっこしい言い回しは貴族にでもやらせればいいさ」
「じゃあ、こっちも崩させてもらうな」
「「適応早い(やん)な!!」」
だって面倒くさかったし。
アイズ・ヴァレンシュタインに手を引かれて通された応接室。この場に居るのは、ロキ・ファミリアの団長であるフィン・ディムナと主神ロキ、そして俺だけだ。隣室に気配こそすれ、交渉に参加する気はないようだ。
「とりあえず確認だけはしとくで、こないな形で強引に取引こぎつけんのは今回だけやな」
下界にて全能を封印した神々の使える力の一つ、嘘の判定。交渉の際にこちらが不利になる厄介な力だ。
「ええ、貸しはこれで清算となります」
「んなら、ここでおしまいにしても、約束としては問題ないな」
「ええ、勿論」
機会は作って貰ったが主導権はロキ・ファミリアにある。それを確認する為の会話だ。
「ま、ええやろ。嘘はないでフィン。コイツはウチにたかる為にきたんとちゃう」
「まったく、他に確認しようがあっただろうに」
「スマンスマンて」
軽く謝るロキとため息をつくフィン。
一見穏やかな様子だが、こちらへの警戒は一切怠っていない。
「それでは、こちら側からやって欲しいことから言うべきか」
「そうだね。っといきたいところだが」
「ジブンが持ってきた、その細長い包みが気になってしゃーないわ」
フィンとロキが指さすのは俺が対価として用意した物。打ち立てホヤホヤの一振りの剣だ。
「先に確認しとくか?
これと引き換えに頼みを聞いて欲しい。それだけの話だからな」
「見たとこ剣やろ?ファイたんの最高の逸品を揃えられるウチらに武器で交渉とか正気かいな」
「そんじょそこらの品じゃ、この話もここまでになるよ」
布に包まれたまま剣を手渡す。
受け取った剣の軽さにロキは呆れたようにこちらを見るが、包みを剥がしその刀身を鞘から引き抜いた瞬間、表情を一変させる。
「なんや、これ」
十字架のような柄と鍔。
両刃の刀身は細く、中心には宝玉をあしらっている。存外にシンプルなデザインだが、宝物に目のないロキはこれがどれほどの物か、その鑑定眼から理解する。
「銘は『奇跡の剣』
女性でも扱える軽さに、鉄の鎧すら両断する切れ味、そして長剣としての頑丈さを兼ね揃えた剣だ」
「軽さはレイピア、破壊力は長剣ってわけやな」
「だが、それはその剣の主眼ではない。
その奇跡の剣は、斬ると同時に持ち手を癒やす力を秘めている」
「「なっ!?」」
どんな剣を創るか。
それは正直悩んだ。
だが、エルフの魔法使いが多く所属するロキ・ファミリアに攻撃呪文や特技の効果を放つ剣は、さほど需要がないと踏んだのだ。
「魔剣、か?」
「いや回復する魔剣なんて聞いたことないで」
二人の会話にでる魔剣。
この世界において魔剣とは、剣の形をした消耗品の魔法発動機だ。
威力の差こそあるが爆弾石などの攻撃アイテムに分類される。
それについては携帯に不便だなとしか思わないので俺個人としては一切興味がない。
「刀身がへし折れたりしない限り、効果は発動する。特殊な効果のある武器だと思ってくれ」
「軽く言うけどね」
「壊れない魔剣そのものやん」
別に壊れないわけではないけどな。適当に打った雷鳴の剣と違って頑丈だから長持ちはするが。
「どうだ?対価くらいにはなりそうか?」
完成度は高いと自負するが、未だにオラリオの武器事情に詳しくないため、ロキ達がどんな判定するのか想像もできない。
「充分すぎるで〜」
「前線に立つ剣士にうってつけだな」
斬れば斬るほど回復するから、見た目と名前とは違い狂戦士向けなんだよな。
「ん?けどコレをジブンは誰に使わすつもりで用意したん?」
「誰に渡しても扱えそうな代物だけど、確かに気になるね」
ま、装備者を想像しないで武器を創るヤツなんていないよな。
「アイズ、アイズ・ヴァレンシュタインだ」
「ほう」
「どうしてだい?」
そして奇跡の剣の持ち手として想定していたのはアイズ・ヴァレンシュタイン。
「怪物祭で自身が傷付こうと、レイピアが折れようと仲間を助けようと戦っていたからな。そんな最前線に身を置く娘には必要だと思ったからかな」
それにアイズ・ヴァレンシュタインは主神であるロキのお気に入りと聞く。
ならばその身を癒やす剣ならば欲しがると予想したんだ。
「せやなー」
「アイズはなー。これで悪化しないと良いけど」
しかしこちらの予想とは異なり、二人のトップは頭を抱えてため息をついた。
「まあアイズたんのことはええねん」
「そうだね、まだどうなるかは決まってないさ」
最大手ファミリアともなれば心配事が絶えないのか?何やら苦労人の気配がするが。
「とりあえず、こんなとんでもない代物と引き換えならなんでもしたるよ。つーかもう手放したくないしな」
「どうやって手に入れたか、も知りたいけど、ソレ以上にこんな逸品を渡してまで依頼したい内容が気になるね」
掴みはオーケーだな。
なら、
「ソーマ・ファミリアの壊滅。
それをあんたらロキ・ファミリアに依頼したい」
「「!?!?」」
足りなきゃ追加で報酬を払おう。
俺はそう言って、唖然とする両者に笑いかけた。
さて、どんな返答をするかね。
すいません、ここできります。
スマホ投稿なので三千字超えると大変でして。
用意した剣は『奇跡の剣』でした。
魔法使い部隊のあるロキ・ファミリアに破邪の剣(ベギラマ)や天罰の杖(バギマ)は需要ないかなと判断しました。
また怪物祭からロキ・ファミリアで戦闘スタイルがわかったのがアイズくらいだったのもあります。
『奇跡の剣』
壊れない魔剣だけど、追加効果なんだよなあ。アイズにはうってつけだとは思いますが。ちなみに回復に使うエネルギーは斬った相手から徴収しています。