ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
ベル君の恋路って、『憧憬一途』で成長する為に原作完結まで叶わないの確定しているのかな?
オリジナルスキルはなあ、そもそもステイタスの数値計算が作者は苦手なんです。
ソーマ・ファミリアの壊滅。
そのあまりにも大事な依頼に都市最大のファミリアの主神と団長は絶句する。
俺の依頼内容にある程度の目星はつけていただろう。だがこれを予想するのは難しい筈だ。
「・・・・・・どうしてそんな依頼をするのか、理由を聞いてもいいかな?」
表情を強張らせフィンは問う。
「俺の周りを嗅ぎ回ってたんだ、察しはついてんだろう?」
ロキ・ファミリアは怪物祭以降から俺について調べていた。酒場の一件で気にしていたんだろうが、あの騒動で全力ではないが幹部連中が苦戦したモンスターを一蹴したわけだからな。
それこそ勤め先の常連達が「ロキ・ファミリアに何かしたのか?」と訊いてくるくらい露骨に調べていたんだ。
それにエイナ・チュール嬢の件もある。
俺の身内がソーマ・ファミリアと揉めている、ぐらいはわかっているだろう。
「サポーターの同族の件か」
リリルカ・アーデの境遇に関して、一族の光に成らんとするフィン・ディムナには思うところがあるんだろう。リリルカの境遇にはその種族が理由の一つではあるのだから。
ソーマ・ファミリアに介入しなかったことが、フィン達第一級冒険者が無情であることの証明にはならない。なんとかしてやりたくとも、彼等はあまりにもしがらみが多過ぎるのだ。
「リリルカ・アーデを自由にしてやりたい。それが依頼の理由だ。本人だって自力でなんとかしようと足掻いてはいたさ、正攻法ではなかったがな。けれどいくら泥に塗れて道理を通そうとしようにも、ソーマ・ファミリア団長はそれを認める手合いではなさそうでな」
ソーマ・ファミリアを私物化した男、ザニス・ルストラ。究極的にコイツをなんとかすれば良いだけの話だ。リリルカを想えば神ソーマとのなんらかの踏ん切りも必要だが、それは後でも良い。
「『酒守』ザニス・ルストラか」
「んーー?ほなら、ソーマ・ファミリアを壊滅ちゅうても、ソーマの阿呆趣味神の送還までは望んでへんのやな?」
個人的にはあんなものが下界に居ても百害あって一利なしだと思うが、酒を愛好する者において敬愛する存在ではあるのだろう。
神酒ソーマの味を知る者達は、飲めなくなる、ただその理由だけで、ソーマ・ファミリアの現状を許容しかねない。
「不快だから消えて欲しい、というのが本音ではある。酒造りの腕と熱意は本物でも、それ以外が最悪だからな。
だが問題なのは、ザニス・ルストラが好き放題していることだからな」
ソーマ・ファミリアに敷かれるルールの全てがヤツの手によるもの。
頭をすげ替えて立て直す、というなら文句を言う気はない。
「エイナちゃんがギルドの視察でソーマんとこを取り締まるて意気込んどったけど、それじゃ足らんかもな」
「酒造りを禁止はできても、団長の代替わりまではギルドが出来ることではないからね」
チュール嬢の行動力も半端ないようだ。
だがそれでは足りないな。
「しかしゼノン君。僕達ロキ・ファミリアは最大手ファミリアだからとはいえ、最大手ファミリアだからこそ、そう簡単に戦争遊戯を仕掛けたり、他ファミリアに介入したりはできない」
「昔のなんにでも噛みつけた頃が懐かしわー」
フレイヤ・ファミリアならば主神が気に入らない、と思えばやれただろう。
だが、ことロキ・ファミリアは違う。
団長である『勇者』フィン・ディムナには名声こそが最も大切なことであり、それを下げる行為など出来はしないのだ。
「ギルド長ロイマンも止めるだろうしね」
「低ランク冒険者しか居らんでも眷属の数は多い、ギルドに落とす金は少なくないやろしな」
塵も積もれば山となる。
買い手を探す手間がかかる高価な下層の魔石やドロップアイテムよりも、安く買い叩けて需要が多い上層の魔石の山の方がギルドにはありがたいのだ。
その収益あればこそ、問題行為が多くても見逃されてきたのだ。
実際に冒険者の対応するのは現場の職員だから気にしてないだけかもしれないが。
それだけではないけどな。
「大義名分と理由が欲しいならこちらをご覧ください。ついでにギルド長ロイマンもこれ見たら引き下げるだろうよ」
懐から何枚かの羊皮紙の束を取り出す。
これは契約書の写し。
ソーマ・ファミリア団長ザニス・ルストラと闇派閥、さらにはギルドの幹部との繋がりを示すものだ。
「・・・・・・へぇ」
「小悪党が舐めた真似してくれるやん」
一読した両者は殺意に似た冷たい気配を漂わせだす。闇派閥とロキ・ファミリアの因縁は深い。
幾人もの仲間が、ファミリアは違っても親しかった者達が、闇派閥との戦いで命を落としている。
ダンジョンに挑んだ末の死ならば、冒険者だから受け入れることはできる。
だが、闇派閥との戦いでの死は最初から連中がいなければ、連中が馬鹿げたことをしなければ発生しなかった犠牲だ。
怨みと憎しみを抱えていて当然だろう。
「ギルドの幹部に賄賂、か。今まで目溢しされていたのも納得だね」
「ロイマンやないのも賢いっちゃ賢いで。あの豚エルフは金の亡者やけど、闇派閥を嫌悪するんは変わらんからな」
ギルド長ロイマン。
エルフの恥さらしとも罵られる、同族からも冒険者からも嫌われる存在だが、都市の運営とファミリア間の調整には誰よりも真摯だ。
不利益な存在だから、という理由もあるだろうが都市を脅かした闇派閥を嫌悪する感情はある。
「ロイマンと不仲な堅物と評判の人物だったんだけどね」
「だからこそやろ。ロイマンを蹴落とす為に敢えて汚れ仕事に務めている、と思い込みながら金を懐に入れてるんや」
あるいはその人物もソーマに酔っているのかもしれないな。
ギルド職員に恩恵は刻まれない。
神すら魅了する酒に抗える筈もないだろう。
「ソーマ・ファミリア。潰す理由はできたかな」
「せやな、闇派閥について吐いて貰わんとなあ」
ロキ・ファミリアが闇派閥について情報を得てなかったのは訳がある。
それはロキ・ファミリアは探索系ファミリアのトップであり(フレイヤ・ファミリアは主神が好き放題してるタイプのファミリア)、都市の治安維持を担っているわけではない。
闇派閥との戦いの中心存在ではあったが、それもギルドからの要請あってこそなのだ。
ダンジョン探索と新階層開拓こそが第一であるロキ・ファミリアに他に目を向ける余裕はなく(深層遠征も部隊規模ゆえに赤字に終わる場合が多い)、闇派閥から行動を起こされてから対応、という形になってしまうのだ。
見つければ潰す。
だが都市を探し続けるには組織としてのキャパシティを超えているのだ。
こういった点がオラリオの問題なのだろう。
対応できる能力はあっても、対応するまでにかかる手間が理由で闇派閥に先手を取られ続けるのだから。
ゆえに俺が齎した情報は、大義名分は、ロキ・ファミリアにとっても利益となる。
「ロイマンも納得するね」
「自分の立場を狙うヤツを潰す理由ができたんや、当然やろ」
ギルド職員が闇派閥と関連あるファミリアと癒着。この寄り合いのような都市に死刑制度はないが、投獄くらいはされるだろう。
「ヘスティア・ファミリアのゼノン。この依頼、ロキ・ファミリアが引き受けさせて貰うよ」
「ソーマ・ファミリアを潰した時の戦利品やらはどないすん?」
『奇跡の剣』という買おうとしたら幾らになるか分からない代物を差し出され、『勇者』の名声を高められる手柄を得られ、『ギルド長ロイマン』に貸しを作れ、『闇派閥と手を結んだ者』という怨敵を粛清でき、『これから起こり得る問題』の情報を入手でき、『虐げられた同胞』を救える。
フィン・ディムナにとって不満の無い取引だろう。さらにロキはソーマ・ファミリアを潰す際に神ソーマが作った、飲みたかったが飲めなかった神酒をドサクサにまぎれて手に入れられるとも踏んでいる。
「リリルカ・アーデの改宗。それさえして貰えれば充分だ」
ザニス・ルストラは捕まり、その罪が明らかになればもはや何もできないだろう。
闇派閥に怨み持つ者の報復対象になる可能性もあるし、闇派閥から口封じに始末される可能性もある。
俺も監視はするつもりだ。
投獄されているなら何もしないが、抜け出して何か企んだら俺の手で始末する。
「そっか」
「ほんまはこの取引でジブンの光り輝く剣について教えて貰お、って思ってたんやけど。ちと貰い過ぎやしな」
ロキ・ファミリアはそれだけ俺のエクセリオンブレードに興味があったのか。
「教えてやっても良いが、あんまり知っても意味はないぞ」
俺がそう考えるには理由がある。
エクセリオンブレード、才牙は闘気法の極み。
元の世界でも俺しか使えない技だった(理論は教えたが体得する時間と体得する意味がなかった)。
だがこの俺しか使えない高等技能には欠点が多い。
「なんでだい?」
「最強にはなれない技だからな」
ロン・ベルクの闘気を纏った絶剣、竜騎将バランの真魔剛竜剣によるギガブレイク、大魔王バーンの光魔の杖によるカラミティウォール、真大魔王バーンのカラミティエンド(これに至っては手刀)。
絶対の自信があった俺の奥の手は格下には圧勝するが、格上には通じない。
そんなもん覚えても仕方ない。
「そうか、それでもまたの機会に教えてもらいたいね」
「こんなこと、何度もあっても困るがな」
無い、とは到底思えないが。
「最後にいいかな?」
「なんだ?」
居住まいを正したフィンは何やら真剣な表情をこちらに向ける。
「君がベル・クラネルとリリルカ・アーデの為にここまでするのは『修行で得た力は他人の為に使うもの』という師の教えによるものなのかい?」
まるでコレを聞くために今回の件を引き受けたのではないかと思わせるほどの気迫だ。
なんとしてもこれだけは聞きたかったのかもしれない。『勇者』と名乗る、英雄たらんとするフィン・ディムナとしては。
「いいや」
もっとも、そんな理由じゃないがな。
「え?」
「ベル・クラネルとリリルカ・アーデは身内だ。
他人じゃねえよ」
俺はアバン先生ともダイ達とも違う。
自ら好き好んで、解決しなきゃならないトラブルに利益もないのに首は突っ込まない。
目の前にあったら、なんとかはするがな。
だから、
「身内の為だったら、出来ることはなんだってやるさ」
他人じゃないからここまでする。
「・・・・・・君という人間がどんな存在かようやくわかったよ」
そしてミノタウロスの件、ベル・クラネルが無事で本当に良かったとフィン・ディムナは小さく呟いた。
この一言を最後に、俺とロキ・ファミリアの取引は無事終了した。
そして後日。
ソーマ・ファミリアはロキ・ファミリアにより壊滅させられる。
正確には、ギルド職員を引き連れた『勇者』フィン・ディムナ個人が叩き潰した。
ソーマ・ファミリア、ソーマ・ファミリア団長ザニス・ルストラの仕出かした悪行は白日の下にさらされその罪は裁かれることになる。
ソーマ・ファミリア主神、ソーマはその本拠が蹂躙される様にすらどうでもいいと言わんばかりに無反応を貫いた。
彼の、眷属への下界の子供への失望が変わるのは、一人の小人族の少女が神酒を乗り越えるその時まで待つ必要がある。
壊滅したソーマ・ファミリアはこれからはチャンドラというドワーフが団長となりギルドの下部組織となる。酒造については完全に管理されることになる。
ただ、ロキ・ファミリアが幹部ガレス・ランドロックの伝手で、ドワーフの酒造家を招く予定があるので悪いことばかりではないだろう。
なお、神酒を戦利品として独占しようとしたロキだが、ギルドに没収をくらい酷く落ち込んでいたそうな(いくらかは分配されたが)。
洗脳に等しいその効果を調べる必要があるし、神すら魅了する酒には使い道があるからだ。
ソーマ・ファミリアの構成員は罪状あるものは裁かれ、改宗を希望するものは認められることになった。
これにより、リリルカ・アーデはようやく、生まれた時から縛られていた因果から開放されたのだ。
ただ、まだ心にあるしこりも、そう遠くない未来で乗り越えることになる。
(ケリはついたな)
思っていたより血の流れない決着。
今の状況ならばリリルカに報復を企む者はもういないだろう。
憂いは取り除けたようだ。
些か疲れはしたが、
「ベル様!!」
心から笑い、ベルに飛びつくリリルカを見れば報われるというものだ。
「さて、リリルカ改宗祝いの準備でもすっかね」
好物とか訊いておくか。
誰かの為に動けるようになった自分。
アバン先生が見たら、なんて言うかな。
そう思い、あの声が、優しいあの声がまた聞きたくなった。
なお、奇跡の剣を俺に貰ったとはしゃぐアイズ・ヴァレンシュタインが現在進行形で騒動を起こしまくっていたが、俺がそれを知るのはまだ先の話。
終わった。
なんかご都合展開ですが、ソーマ・ファミリアは壊滅して再生です。
この展開ならカヌゥ殺る必要なかったかなともおもいましたが、アレは荷物取り返すついでだったということで。
一応はロキ・ファミリアに利点がある取引でした、という感じですね。
なおザニスはまだゼノスについては知らない設定です。でないと監獄で始末されますから。
ギルド幹部はオリジナル設定です。
ただ上納金を上乗せして誤魔化してたのはあると思っています。
フィンに関しては、結局最後の質問したかっただけですね。
彼からしたら思うところのある言葉なので。
なおロキ・ファミリアにゼノン製の武器が流れるかは未定です。今までの付き合いと支払いもありますので。
アイズがどんな騒動を起こしたかは、まあお察しで。