ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「ゼノン、怪物祭といい、奇跡の剣といい、もしやウチのアイズたんを狙っとるやないやろなぁ」

「見た目は良いけど中身は幼児はねえよ。
 あと俺は年上趣味だ」

「ジブンの年上ゆうたら熟女かいな?ええ趣味しとるやん」

「? 俺は十九だから熟女に限らんだろ」

「何言うとんねん。ジブンが十九やてその見た目で。神に嘘は通じんてしらんのかい。
 ホンマや」

「そんなに老け顔なのか俺?」

「君が落ち着いた雰囲気だからだよ。それに歳を取っても若い認識される老け顔さ」

「エターナルショタは黙れ」

「誰がエターナルショタだっ!!」

「お主じゃろフィン」




第18話

 

「泥棒猫滅泥棒猫殺泥棒猫潰泥棒爆泥棒猫」

 

「リリルカとの顔合わせ前に何を言ってんだヘスティア」

 

 摩天楼施設から北に進んだメインストリート。冒険者より市民が目立つこの大通りにオープンカフェが面していた。冒険者の街、荒くれ共のメッカとも言えるオラリオだが、主神たる神々、取引に訪れる貴族・商人、冒険者であり収入の良い乙女達の存在により、この手の娯楽施設は世界的に発展していたりする。

 ただ稀にモヒカン頭で袖破れ革ジャン棘付き肩パッドを装着した冒険者が顔を蕩けさせながら幸せそうにパフェをパクつくという、びっくりな光景に遭遇したりもするので注意が必要である。 

 

「フッ、ゼノン君。これはイメージトレーニングだよ。ベル君に纏わりつく泥棒猫との決戦に備えてね」

 

「泥棒猫どころか近所の野良猫にじゃが丸君(玉ねぎ無し)盗まれて泣いてたヤツが決戦なんて無謀なことはやめろ」

 

 近所の子供達も哀れなモノを見る目してたじゃねえか。

 

「フッ、それは君がトラゲリオン三世の実力を知らないからそんな事を言えるのさ」

 

「いるよな、野良猫に変な名前つけるヤツ」

 

 ベルとリリルカの騒動が、ソーマ・ファミリアの壊滅で幕を閉じてから数日。

 俺とヘスティアは、ソーマ・ファミリア所属のサポーターであったリリルカ・アーデと正式に顔合わせすることになった。

 色々とぼかしてお祝い自体はしたが、改宗やこれからについてきちんと話をするのは今日がはじめてだ。

 

「ヘスティア、リリルカについてだが」

 

「わかってるよゼノン君。彼女の事情は理解した。話を聞いた時にソーマのヤツに怒りのゴッドフィンガーをかましてやりたくなったよ」

 

「それはガネーシャがやったらしいぞ。泣きながらお前が反省するまでゴッドフィンガーを止めないっ!!、とか叫んでいたらしい(結局反省はしてないらしいが)」

 

「ガネーシャは同郷だからねえ」

 

 同郷か。

 天界と一括りにしているが神々はそれぞれ故郷のように所属が分かれているらしい。

 ガネーシャとソーマは同郷、ロキとフレイヤは同郷、ヘスティアとヘファイストスとアルテミスが同郷と言った感じらしい(他にもいっぱいあるとか)。

 それぞれ◯◯神話として名称があるらしいが、下界に天界での関係は基本的に持ち込まないのがマナーなんだとか。ルールじゃなくてマナーなのがなんとも、まあ友神関係とかを規制なんてできないよな。

 俺の元の世界は、人間の神、魔族の神、竜の神、の三柱しかいなかった。だが実際はどんな感じだったのかね?教会は基本的に人間の神を祀っていたと思うが。

 

「心配しないでゼノン君」

 

「ヘスティア」

 

 思考にふけった俺にヘスティアは笑いかける。

 

「言うべきことは言うけど、ボクは彼女が何を言おうと受け入れる。なにせボクは、君達の主神だからね」

 

 そんな普段の駄目さ加減は鳴りを潜めさせ、女神らしい慈悲溢れる表情で言った。

 

「悪いな」

 

 たとえどんな境遇だったとしても、リリルカがベルを騙して利用して私腹を肥やしたのは事実、それを許し飲み込む度量の大きさに俺はとある姫様の顔を思い出した。

 

「さあ、行こうか!!新しい家族に会いにね!!」

 

「ああ」

 

 どうやら俺の心配は杞憂だったと胸を撫で下ろしたのだった。

 

 

 

「お義父様、お義母様、どうかベル様をリリにください!!」

 

「誰がやるかああああっ!!」

 

 ヘスティアは受け入れられませんでした。

 多くの日傘が開き日除けを作る中、二人並ぶベルとリリルカの対面に俺とヘスティアが座ったら、開幕早々リリルカがぶち込んできた。

 そして誰がお義父様だ、俺はまだ十九だ。

 

「はっ!?あまりにしっくりくる状況に、ついリリは将来の予行練習を」

 

「しっくりなんてしてないし、そんな将来は来ない。顔合わせは顔合わせでもそっちの顔合わせかい!!」

 

 怒りでツインテールをゆらゆらと波打たせヘスティアは怒号を上げる。

 あ、店員さん騒いですいません。え?馴れてるから気にしなくて良い?ありがとうございます。

 

「さて、場も和んだし本題に入るか」

 

「この寸劇必要だったのゼノンさん」

 

「リリは本当でも良かったです」

 

「って君の仕込みかいっ!!」

 

 ツインテールを回転させた二連ツッコミと右手によるツッコミ、合わせて三連ツッコミをサラリと回避しながら俺は本題へと入る。

 生まれゆえに神に不信感のあるリリルカには素のヘスティアを見せた方が良いからな。

 

「良い方みたいですね、ヘスティア様」

 

 ゼェゼェと荒く息を吐くヘスティアを見て、リリルカは肩の力が抜けたようだ。

 

「ま、眷属に無関心ではないな」

 

「そこはべったりみたいですね」

 

 意外とそれも悪くはない。

 俺なんかはそう感じている。

 リリルカがこんなに穏やかに話をできるまで大変だった。罪悪感のあるリリルカは何度も何度も謝罪してきてベルを参らせていた。

 ベル自身は罰を与えたりなどは望まない。ただ今までの関係に戻って欲しいと願っていた。

 そんな優しすぎるベルにリリルカはリリルカで困り果てているのだ。

 

(もっと好き放題生きれば良いのにな)

 

 どうにもコイツラは繊細すぎる。

 良いことがあったらラッキーだったと受け入れてしまえば楽だろうに。

 与えられたものは、ありがとうと受けとることが相手に取っても一番良いことなのだから。

 

「ふん、とにかく君のことはゼノン君から聞いている。だから言ってやるよリリルカ・アーデ!!」

 

「は、はい」

 

「ようこそ、ヘスティア・ファミリアへ。今日から君はボク達の家族だ」

 

「!?」

 

「神様」

 

「フッ」

 

「受け入れない気なんて無かったさ、なんて文句を言おうか悩んだよ。でもね、君みたいな娘を泣かせたままになんてできないよ」

 

「ヘスティア様」

 

「身を凍えさす孤児よ、我が炉の前で暖まりなさい。いつかできる君の家族にその温もりを分けてあげられるように」

 

 リリルカは手を広げるヘスティアに抱きつき、ヘスティアはそんなリリルカを優しく抱きとめるのであった。

 神様なんて崇めたことはない。

 正直、大魔王バーンの言葉に靡きかけるぐらいに嫌悪すらしていた。

 でも、むこうにも魔界にもヘスティアが居れば、もっと何かが違ったのかもしれない。

 

「ボフエッ」

 

「なんでこの場面で吹き出すんですかゼノンさん」

 

 口が爆発したかのような衝撃、ヘスティアに甘える大魔王バーンの姿を想像したらつい。

  

「お義母様」

 

「その場合、旦那はベル君だからね」

 

「いえいえそれは無理がありますって」  

 

「無理なんてないから、むしろ至極当然だろう」

 

「どんな当然ですか」

 

「ぐぬぬっ」

 

「ぎぬぬっ」

 

「なんか抱きしめるにしては強くねえか」

 

「ミシミシいってますよね」

 

 一頻り女の戦いを済ませた後、あらためて席につきリリルカの今後について話し合う。

 リリルカの改宗は可能だからこの後にヘスティアから恩恵を刻んでもらう。  

 住む場所は、ヘスティア・ファミリアのホームである廃教会ではなく、顔馴染みのノームのお爺さんの店でお世話になるそうだ。前々から向こうもリリルカの身を案じてくれていたらしい。事情を全て話して受け入れて貰えたそうだ。

 リリルカの盗品はなぜか持ち主に返却(売られた製品は代金に入れ替わっていた)され、罪を償ったとは言い難いが一応は解決した感じだ。

 その謎の返却現象が別の騒ぎを生んでいるが。

 ちなみにヘスティア・ファミリアのホームに住まないのは、俺が上でテント暮らしをしているからも理由だとか。楽でいいんだがなあ。

 

「ベルはチュール嬢に説明しといてくれ」

 

「エイナさんにですか?」

 

「ああ、ベルを心配してかなり動いてくれたようだからな」

 

 担当しているだけの冒険者の為にしては、ちょっと怖いレベルで献身的に。

 

「怒られそうだなあ」

 

「怒られとけ、怒られとけ。心配して怒ってくれる人と巡り合うなんてそうそう無いんだからな」

 

 ベルは出会いに恵まれている。

 俺にはそう思えた。

 

「リリルカ君はベル君の面倒を頼むね」

 

「ベル様は世間知らずですもんね」  

 

「うん、ゼノン君は別の意味で世間知らずだけど、ベル君はいつか騙されそうだからね。変な奴にひっかからないように目を光らせてくれ」

 

(もう遅い気もするがな)

  

 まるで吸い寄せられるように集まる女性達に、時折感じる視線。

 既にベルの周りは厄介事だらけの可能性が高い。

 

「ゼノン様はどうされるのですか?」

 

「仕事が忙しくてなぁ。ポーション代やら消耗品代をお前らに渡すくらいしかできねえよ、スマンな」

 

(((充分すぎる援助なんだけど)))

 

 暗躍で時間取られた上、最近はお得意さん以外の石像も頼まれている。お得意さんが自慢するから評判が広まりつつあるんだ。

 

「じゃ、それぞれ方針は決まったところで、皆これから頑張ろう!!」

 

「「はいっ」」

 

「ああ」

 

 ヘスティアの音頭でコーヒーカップを軽くぶつけ合い、カフェで穏やかな時間を楽しんだ。

 ベルを取り合うヘスティアとリリルカの様子とか見ていて飽きないねえ。

 

 新しい仲間が加わったヘスティア・ファミリア。これがベルが大きく躍進するほんの少し前の出来事である。

 

 




  
 前書き 
 実際にあったかは不明。  
 フィンはかなりゼノンを警戒してますから。

 トラゲリオン三世
 近所に住む虎毛のボス猫。
 ヘスティアを馬鹿にしている。最近はシャドーなどのモンスターに世話されて毛並みがよくなった、

 リリルカの発言
 立場的に不謹慎ですが、ゼノンの指示によるもの。ヘスティアと馴染むための一計。

 ヘスティアの反応
 原作とは違い詳細を知っているから。正直ソーマをぶん殴りたい。なおソーマはガネーシャが折檻するも効果なし。

 リリルカの罪
 明確に裁くと他のサポーターに類が及ぶ為、フィンからストップがかかった。大なり小なりサポーターは同じようなことをしている為。

 リリルカの住居。
 廃教会はちょっと。
 でもヘスティアとベルの同衾を聞いてかなり悩んだ。
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