ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「ゼノン様は宿屋とかに泊まらないのですか?」

「宿屋はなあ」

「リリは料金の安い宿に詳しいですよ(フンス)」

「いや金の問題じゃねえんだ」

「何かあったんですか?」

「宿屋に泊まると、魔王軍が襲来してきたり、襲撃受けたり、勧誘受けたり、国王に呼び出されたりと、面倒ごとばっかり起こってなあ」

 だから宿屋は利用したくないと呟くゼノン。元の世界での経験が忌避感を抱かせていたようだ。

「どんな人生を歩んできたんですか」

 そんな煤けた表情のゼノンにリリルカは心配しつつもツッコミを入れた。


第19話

 

「ゼノンさーんっ!!」

 

 最近仕事が忙しくて身体が足りないように感じる。いっそ大魔王バーンみたく肉体を分けることができないだろうか?いやそんな外法に手を染めるくらいなら食堂の仕事を辞めるべきだろう。でも店長はオラリオに来たばかりの氏素性知れぬ俺を雇ってくれた恩人だし、料理は趣味と息抜きを兼ねているからなあ。

 

「アイズさんが、アイズさんが、アイズさんが稽古をつけてくれるって!!」

 

「ポーションを注文しとくか」

 

 あの娘手加減とかできなそうだし。

 そういえばミアハ・ファミリアのポーションをリリルカがやたらと気にしていたな。

 元の世界だとポーションなんかの飲み薬は大したのが無かったからあんまり詳しくないんだよな。

 風邪とかの病気は薬で治していたが、怪我や毒や麻痺は回復呪文を司祭に使ってもらうのが普通だったし。

 リリルカはミアハ・ファミリア製のポーションを使ってなかったみたいだし、なんかあるのかねえ。

 

「それで、なんでそんな話になったんだよ」

 

 ソーマ・ファミリアの後始末で取引したが、別に協定結んだり、傘下に入ったわけじゃねえんだが。

 

「そ、それはですね・・・・・・・・・・・・」

 

 ベルの話によると、チュール嬢にリリルカの話をしにギルド本部へ向かったら、受付にチュール嬢と話すアイズ・ヴァレンシュタインが居た。

 初心なベルはその姿を見た瞬間出口へ全力ダッシュしてしまったそうだが、しかしアイズ・ヴァレンシュタインにまわりこまれてしまったそうだ。

 なんとか急ブレーキが間に合いぶつかりこそしなかったが、目の前に憧れの人がいて頭が真っ白になったそうだ、生まれつきだろソレ。

 で、チュール嬢に叱られた後に話を聞けば、アイズ・ヴァレンシュタインはベルに用があるとのこと。ベルが先日のリリルカとの一件・モンスターとの戦いで紛失していた緑玉色のプロテクターを拾ったので直接返したかったそうなのだ。

 そういえばあの時になんか拾っていたな、俺が気づいていれば手間をかけさずにすんだのだが、申し訳ないことをした。

 そんであらためてミノタウロスの件を謝罪されたそうだ。ベルにしたら謝られることではなく、むしろ逃げ続けてお礼を言えなかった自分を恥じてその場で助けてくれてありがとうと礼を言った。

 ずいぶんと生真面目な子達だよ。

 それから顔を真っ赤にしながらアレコレ話したら稽古をつけてくれると言われたそうだ。

 

「それはありがたい話だ」

 

 ベルがこれから強くなっていくのには戦い方を学ぶ必要がある。

 俺が稽古をつけてやっても良いが、まだ今のベルはアバン流を学ぶ為の身体能力すらない。

 かといって、基礎体力向上の為にダイがデルムリン島でやったような岩を括り付けた長距離走や岩を持ち上げたスクワットをやらせるくらいなら、ダンジョンに潜ってステイタスを上げた方が効率が良い。

 だがベルはそれでは駄目だと実感して悩んでいる。

 

(どちらを先にやるか、なんだよなあ)

 

 体捌きか、基礎身体能力か。

 両方同時にやるのがベストなんだが、冒険者として生活している以上は修行に専念なんてできない。

 当面の生活費くらいは俺が稼げるんだが、リリルカすらもそこまで出されるのは嫌がる。

 

「ファミリア間の問題があるから良くないことなのはわかっていますけど、それでも」

 

 そしてベルにしても、ファミリアの問題や気恥ずかしさや申し訳なさを感じつつも、向上心と想い人と関わりたい一心から稽古をつけて欲しいそうだ。

 

「わかった、ヘスティアには俺から話しておくからお前はしっかり稽古をつけてもらえ」

 

「か、神様には僕から」

 

「ヘスティアに猛反対されて抗えるのか?」

 

「うっ」

 

「こういったことは間に人を挟んだ方が良いんだよ。お互いの感情ばっか先走っていらんことを言いかねないしな」

 

 本題から逸れた発言でより感情的になり話が拗れるのはよくあること。

 それで後に引くような揉め事になったら辛いだけだろうに。

 ヘスティアはベルにアイズ・ヴァレンシュタインと接近して欲しくない。

 ベルはアイズ・ヴァレンシュタインともっとお近づきになりたい。

 アイズ・ヴァレンシュタインはベルに興味をもっている。

 最後の理由がイマイチわからんが、こんな状況だとアイズ・ヴァレンシュタインとの稽古がベルの為になるという利点があってもすんなり認められる訳がない。

 俺が説得するのが一番良いだろう。

 そもそも理由はあれど俺がベルを鍛えてやれないのが悪いのだしな。

 

「そういえば、アイズさんがゼノンさんのことを訊いてきたんですけど、お知り合いだったんですか?」

 

「怪物祭でチョーカッコよく助けてやった」

 

「僕も見たかったっ!!」

 

 アイズ・ヴァレンシュタインがベルを気にする理由。噂話で聞いた、アイズ・ヴァレンシュタインは力を渇望し、モンスターを憎んでいる、って話と関係あんのかね?

 よくわからんが、ベルはかなり早く成長してるようだしな。成長速度でも気にしているのか?

 

 

 

 

「ってなわけで明日からしばらくアイズ・ヴァレンシュタインがベルを指導してくれるらしい」

 

「認められるかあああああ!!」

 

「いやもう決まったことだしあきらメロン。ロキとは違い二つも付いてるから二倍あきらめられるだろ」

 

「唐突なセクハラッ!?

 さてはかなり面倒くさがってるな君っ!?

 そして零に何をかけても零なんだよっ!!」

 

 零とか言ってやるな可哀想だろ。 

 だってなあ。

 

「ベルがやりたいってんだからやらせてやればいいじゃねえか」

 

「そういうトコがゼノン君がお父さんと呼ばれるわけなんだけどっ!?」

 

 誰がお父さんだ、俺はまだ十九だ。

 

「こちらに利点しかねえ話なんだ。

 リリルカが加わったからダンジョンでの立ち回りや他の冒険者との付き合い、店についても学べるし任せられるが、戦闘能力ばっかはなあ」

 

「ゼノン君だと忙しいのを抜きにしても無理なんだね」

 

「はっきり言って、あんなに弱くてなんで生きてられるのか分からないレベルだ」

 

「それは君の生きてきた環境がおかしいだけだから」

 

 神の恩恵受けといて、ようやくパプニカの騎士レベルだぞ。ロモスの騎士団よりはマシだが戦闘に身をおいとかせて良いのか悩むわ。

 でろりんの足元にも及ばんだろうしな。

 

「だから異世界ズレがあるゼノン君ではなくヴァレン某が鍛えるっていうのかい。ぐぬぬ」

 

「それとベルのスキル『憧憬一途』の効果も期待でき「それが嫌なんだよ」」

 

「はあ」

 

「うっ、わかってるよ嫉妬なことぐらい。でもさあ、リリルカ君とダンジョンで二人きりなのに、さらにヴァレン某と稽古とか、ボクだってもっとベル君とイチャつきたいよ」

 

 俺のため息に、ヘスティアは涙目になりつつもそう言う。自分勝手な考えだと自覚はあるようだ。

 

「そこはベルにも言っておく。ヘスティアを蔑ろになんてしないが、最近は冒険ばっかりでのんびり過ごしてないからな」

 

 スキル『憧憬一途』をきっかけに、速攻魔法『ファイアボルト』、向上し続けるステイタスもあって強くなるのが楽しくて仕方ないんだろう。

 

「ゼノン君っ!!」

 

「俺としては、この稽古はベルだけじゃなく、アイズ・ヴァレンシュタインにも良いことだと思っている」 

 

「ヴァレン某にも?でも先日レベルが6になったとかで最高峰の冒険者になったばかりだよね」

 

 そんな話もあったか。

 オラリオにも数名しかいないレベル6の第一級冒険者。その領域に踏み出したんだとか。

 年齢を考えたらとんでもないことらしいな。

 

「レベルねえ。たまに見て貰うが俺はステイタスなんて一切上がらないよな」

 

「リリルカ君の件で十階層モンスターをたくさん狩ったのになんで君は成長しないのさ」

 

 単純作業レベルの敵だからかね。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインについてだが、ヘスティアもベルの件を除いて色眼鏡抜きで本人を見てみろ。アレはリリルカよりも拗れた子供だぞ」

 

「えっ!?!?」

 

「下手に力があるからだろうな。見てて正直痛々しい」

 

 だから気にかけちまうんだが。

 ベルの想い人だからって理由もでかいが。

 

「・・・・・・そうなんだ。ならベル君と関わるのは良いことだよね」

 

「なんかベルに構うと癒やされるしな。アニマルセラピー、ってヤツか?」

 

「言いたいことは分かるよ、ベル君は亜人じゃなくヒューマンだけど。だから今度ベル君用にウサ耳バンドとうさぎのしっぽを作っておくれ(欲望の発露)」

 

「晩飯はうさぎ肉のシチューにするから素材はあるな。やってみるか」

 

「ジビエッ!?狩ってきたのゼノン君っ!!」

 

「育ち盛りには肉を食わせねえとな」

 

 買うより安いし。

 

「とにかく、ベル君とヴァレン某の訓練は認めるよ。ただし、ゼノン君、君が毎回不埒な行為がされてないか確認することが条件だ」

 

「ばっかお前、年上のお姉さんと訓練して不埒な行為がないとか、やる意味あるのかよ」

 

「どんな訓練だあっ!?」

 

 お約束だよ、お約束。

 ベルにもご褒美くらいないと。

 けどまあこのあたりが落とし所だよな。

 

「了〜解。ただ付きっきりは無理だから様子を見に行く程度だぞ」

 

「ボクが行ったら邪魔しちゃうからそれでお願い」

 

 自覚があるから良い主神・親だよな。

 

「うううベルくぅ~ん。ボクは君の為に溢れる激情を耐えてみせるよう。あっ、さっきの装備品に半ズボンも追加で」

 

「そっち(欲望)も耐えろ。あと服屋いけ」

 

 ベルのアイズ・ヴァレンシュタインとの訓練はなんとかヘスティアに認めて貰えた。

 ロキ・ファミリアにも一報いれるべきか悩むが、それはお節介がすぎるだろう。

 ベルの訓練、果たしてどうなることやら。 

 





 前書き
 元の世界だと宿屋に止まる度にイベント発生しました。他にも街の有力者の妻や娘からの夜這いなどもありました。なので宿屋=面倒事発生場所認識です。

 ベルの訓練。
 基礎能力からアバン流は無理な為、了承。というかベルの意思が最優先だから反対はしません。

 ベルの実力。
 呪文を使えるパプニカの騎士くらいかなと。ロモス王国騎士よりは強いです。なおでろりんはまだまだ先。

 ミアハ・ファミリアのポーション。
 解析呪文インパスを使うとかなりアウトな代物。だが元の世界と比べたら破格の薬です。

 アイズ・ヴァレンシュタイン
 ヘスティアから見ても心配しそうな闇深少女。ベルとのアレコレ無ければ優しく抱きしめるレベル。

 ウサ耳バンドとうさぎのしっぽ。
 性能自体は悪くないドラクエ装備。
 そこに半ズボンは欠かせないらしい。
 バニースーツは流石にねえ。
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