ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ゼノンは無自覚ですが、
 ベルやアイズ、リリルカに、ダイにしてあげたかったことをしている感じです。
 ヘスティア?
 守る対象ですが、同類扱いかなと。



第20話

 

 夜の向こうから朝がやってくるような境界線のような混じりあった時間。

 迷宮都市を囲む市壁の上、内側の都市の姿を一望できる絶好のスポットだ。

 都市中央のバベルはまさに天をつくほどに果てしなく高く、その存在感と迫力はかの飛空宮殿バーンバレスを思い出される。

 しかし、こんなに巨大な建造物の下に、これよりも遥かに深く広大な迷宮があるかと思うとなんとも不思議でとんでもない。

 空よりも大地の方が長くて深いとは誰がいったか、逆に見たらダンジョンこそ、地面に伸びるバベルなのかもしれない。

 そんな取り止めない思考を、

 

「ぐほうっ」

 

「アレ?」

 

 気絶と覚醒を繰り返すベルと、またやり過ぎた?と首を傾げるアイズを見ながらするのであった。

 しかしベルよ、めくれ上がるスパッツに注目して食らうとは色々駄目では無かろうか。

 倫理観的に問題だが、腐った死体や死霊の騎士などの人型モンスターを拵えて同じことをやり、戦闘中のパンチラに慣れさせるべきだろうか?

 チラッ、ジー。

 アイズが助けを求めるようにこちらをじっと見ている。

 

「はいよー。

 覚醒呪文ザメハからの治癒呪文ホイミ」

 

 ザメハって睡眠状態じゃなくて気絶にも効果あるんだな。今まで試す機会がなかったから初めて知ったわ。

 訓練、アイズとの組手で吹っ飛び気絶したベルの意識を覚醒させ傷を治す。

 

「う、ゼノンさん」

 

「レッツ、トライ」

 

 親指をぐっと立てて再度ベルをアイズに挑ませる。ひたすら吹っ飛ばされる気絶するを繰り返してるだけだが、なんと動きに成長が見られるという事実。

 アイズなりに試行錯誤して行う訓練は確かな効果を齎していた。

 マジかよ(驚愕)。

 処置をした後にはまた離れる。

 模擬戦という形で行われる訓練。 

 ロキ・ファミリア流の洗練されたやり方が見れると思ったが予想とは違った。

 どうやら訓練をつけると申し出たアイズは誰かに訓練をしたことが無かったようだ。

 ならなんで提案したんだコイツ。

 だが、動きを見る限りアイズの体捌きは中々のもの、実戦を積み重ねることで最適化されてる動きだ。

 

「君は臆病だね」

 

「っ!?」

 

 そして、肉体的な動きだけではない。

 

「ソロでダンジョンに潜るなら、臆病でいることは大切なことだと思う。でもそれ以外にも、君は何かに怯えてる」

 

 意外なことに彼女は人をしっかりと見ていた。俺が全く気づかなかったベルの内面について、アイズはすぐに気づいたのだ。  

 

「私は君が何に怯えているかはわからないけど・・・・・・多分、君はその時が来たら、逃げ出すことしかできない」

 

 怯える。

 恐怖、か。

 俺にはよくわからない感情だな。

 いや感情、だったな。

 敗北し、敗れても、失うモノなんて空気より軽い己の命一つだった俺にはそれらの感情は無縁だった。

 はじめてその感情を自覚したのはいつだったか。そんなに前では無かった気がする。

 

「うあああっ!?」

 

「駄目だよ。無鉄砲になっちゃ駄目」

 

 訓練は、指導は続く。

 吹っ飛ばしては気絶、それを繰り返すだけかと最初は焦ったが、ベルにとって実りのある時間なんだろう。

 俺はそう感じた。

 

(問題なさそうだな)

 

 ヘスティアの懸念は無用だったとしっかり伝えておくとしよう。

 

「ゼノンさん・・・・・・」

 

 アイズは再度助けを求めるようにこちらをじっと見てきた。

 

「はいよー」

 

 けど、治癒の為に付きっきりじゃないと駄目じゃないかコレ?

 適当にホイミ使えるモンスター拵えて置いときたいが、アイズ・ヴァレンシュタインは幼少期から戦姫と呼ばれるほどにモンスターを虐殺するくらい大のモンスター嫌いだと評判だからな。

 笑い袋なら自動人形で通じないだろうか?

 むしろアイテムとしてベル達に装備させるのもありかもしれない。

 

 

 

「朝ご飯ですよー」

 

 遥か先の空から太陽がおはようしてくるまで訓練を続けた二人。

 そんな二人に俺は籠にいれて持ってきたサンドイッチを渡す。

 

「どうもゼノンさん」

 

「ありがとうございます」

 

「たんとお食べー」

 

 二人が受け取ったのを確認して茶を淹れる。

 市壁の上で火を焚いて良いのかわからないが、飲むなら温かい飲み物の方が良いだろう。

 

「あ、ジャガ丸君だ」

 

 今日のメニューは、ジャガ丸君サンド。

 ヘスティアがバイト先から貰ってきたジャガ丸君を葉野菜と一緒にパンに挟んだサンドイッチだ。

 

「ゼノンさん」

 

 ベルが美味そうに齧りついてる中、アイズは据わった目でこちらに何かを訴えかけるようなこちらに声をかけた。

 

「どうした?」

 

「邪道です」

 

「ん?」

 

「ジャガ丸君は、ジャガ丸君というだけで素晴らしい食べ物。それだけで完結した完全食。それを野菜とソースと一緒にパンに挟むなんて邪道です。ジャガ丸君はそれだけで何もつけずに齧りつかなければいけないんです。他に足したり、加工してはいけないんてす」

 

 ああこの娘、ジャガ丸君が大好きなんだね。

 その熱意ある言葉を聞き、俺は、

 

「よく噛んでお食べー。好き嫌いは駄目だよー」

 

「モガモガ」

 

「アイズさーんっ!!」

 

 躊躇うことなくその口にジャガ丸君サンドをねじり込んだ。

 文句抜かす前に食えやオラ。

 

「もぎゅもぎゅ、フガフガ、・・・・・・美味しい」

 

「ほれお茶」

 

「どうも」

 

「そして、何事もなく食べきってお茶を飲んでる!?」

 

 ねじり込んこんだジャガ丸君サンドを食べきったアイズは俺が渡したカップを受け取り満足そうに飲みはじめる。

 なお、この食べさせられ方が気に入ったのか、明日から毎日強請られるようになることを俺はまだ知らないのであった。

 

「ふぅ」

 

 早起きした朝の一時。

 こんな風に過ごしていると、ふと思うことがある。

 もっと早く合流していれば、ダイ達ともこんな時間を過ごせたのかなと。

 

(駄目だなそりゃ)

 

 だがそれは無駄な考えだ。

 アバン先生がメガンテから生還できたのに敢えてダイから離れたのと同じ理由で。

 最初から俺が側に居たらダイ達はあの時のように成長できず、きっとどこかで詰んでいただろう。

 だが、それでも思わずにはいられない。

 もっとあの小さな勇者に、

 目の前にいる、出会いを求める少年と英雄を求める少女のような、十二歳らしい子供のような一時を与えてやりたかったと。

 

(笑っているかダイ)

 

 遠き異世界で、幸せを願った少年達の未来を俺は思うのであった。

 

 

 

 

 訓練をはじめて数日後。

 トラブルが発生した。

 

「ズルいですっ!!」

 

 頬を膨らませて涙目になりながらこちらを批判するような睨みつける、今まで見たことのない表情をしたベル・クラネル。

 そしてその後ろで、

 

「ムフー」

 

 ベルに向けて自慢するようにドヤ顔で『奇跡の剣』を見せつけるアイズ・ヴァレンシュタインの姿があった。

 

「アイズさんには武器をあげるなんて!!」

 

 それは正確にはロキ・ファミリアの共有財産なんだけどなー。

 

(アバン先生、こんな時はどうしたら良いんでしょうか?)

 

 俺はなんでもできる(女関係以外)偉大なる勇者に、思わず問いかけるのであった。

 

 





 朝の訓練。  
 なんだかんだと無理して付き合うゼノン。
 ザメハとホイミは大活躍。
 なお、アイズ経由で呪文について聞いたフィンが頭を抱えるのはまだ先の話。
  
 ジャガ丸君サンド。
 作者はコロッケサンドが好き。
 実は土日でコロッケを作った。手作りだと、普通の揚げ物より手間やら洗い物が増えるがその苦労に見合う味。一瞬で消えるのが難点。

 ラッキースケベイベント。
 保護者同伴の為、死んだ。
 気絶と生傷の放置ができなかったばかりに。

 アイズ。
 幼児退行化してそう。
 訓練は意外と原作通りしっかりしている。
 ジャガ丸君サンドを口に無理やりねじ込まれながら食べる悦びに目覚めた。 
 
 ベルの嫉妬。
 こんな子供らしさがあってもよいかなと。
 ちなみに作者は親に同じことを言ったらゲンコツでした。
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