ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

21 / 119

 ダイの大冒険世界の仲間達で、ゼノンを嫌っていた者はいません。
 ただ、強欲なのは知られていたのでザボエラやキルバーン、バーンからの高待遇引き抜きを即座に断ると驚かれてました。
 そんな驚く仲間達に、なんで驚くんだよ、とプリプリ怒るのがダイでした。



第21話

 

「あのベル君が子供っぽい行動してるね」

 

 ベルのズルい発言から数日。

 最近のハードスケジュールぶりにいい加減息抜きに行くべきかと悩みだした頃、ホームの廃教会地下にてヘスティアにベルとアイズの訓練状況の報告を行っていた。

 ベルの発言にヘスティアは意外だなと驚いている。確かにそれは俺も思ったことだ。

 十四、確かに成人扱いされる年齢であるが子供と言えば子供だ。

 けれどベルは一人でオラリオに来ただけあって、甘えるような発言はしていなかった。

 それが今回、姉が持つものを羨ましがる弟のような発言をしたのだから、その場にいた俺、今聞いたヘスティアは驚いたのだ。

 もっとも、ダイも十二、ポップは十五だから今更年齢で驚くのは間違いかもしれないな(自分自身は十九)。

 

「甘えること自体を悪いとは思わねえ。ベルが甘えられるようになったと思えばなんとかしてやりたい、だが」

 

「装備品を渡すのは色々と不味いって話なんだよね」

 

 オラリオに暮らしてしばらく。

 こちらの常識を以前より知った今では、適当に打った雷鳴の剣がとんでもない代物だとようやく気づくことができた。

 さらには一見すると平和なオラリオが、冒険者というならず者の都市に相応しい治安であることも。

 下手に渡して他の冒険者に襲撃されたら目を当てられない。

 

「かといって、その時持っていたヘスティアに頼まれた『ウサ耳バンド』と『うさぎのしっぽ』をベルに渡す勇気が俺にはなくてな」

 

「そんな勇気はどんな勇者でも持ち合わせてないよ。というか、ボクの評価地に落ちる寸前だった?」

 

 勇者とは勇気あるもの、というがこの二つをあの状況で渡すのは勇気とは言えないよなあ。

 

「だからまたヘファイストスのトコで鍛冶場を借りたのかい」

 

「ああ。今回ばかりは適当なモノを渡すわけにはいかないからな」

 

 何を創るかはとても悩んだ。

 

「それで何を創ったの?」

 

「武器だ。ヘスティア・ナイフ以上に持ち手に寄り添う武器なんて創れないから、お守り兼予備武器だがな」

 

「そうなんだ」

 

「防具は、チュール嬢とリリルカの助言を聞きながら潜る階層に合わせて適宜更新していくのが妥当。今の装備品の品質も悪くはない」

 

「うん」

 

「ならば、アクセサリー、指輪やアミュレットの類はどうかとリリルカに尋ねたら止めとくように言われたよ」

 

「なんでだい?」

 

「冒険者がダンジョンに潜る際にそんなもん着けてたら特殊な効果のある代物だと言ってるようなもんだと。他の冒険者に目をつけられやすく、奪われやすいそうだ」

 

「ねえゼノン君。ボクは今から酷いことを言うよ」

 

「おう」

 

「リリルカ君が言うと説得力が違うねえ」

 

 それな。

 

「本人も笑いながら言ってたから気にしなくて良いと思うぞ」

 

「言っといてなんだけど罪悪感が」

 

 リリルカはそのサポーター時代の経験が目を肥えさせているわけだから責める気にはならんがな。

 それに盗まれる方が間抜けだとは俺も思わなくはねえし。

 

「だから武器にしたってわけだ」

 

 雷鳴の剣のように効果がつかないように打つのは神経使ったが。

 

「どんな武器だい?」

 

 テーブルに三本のナイフを並べる。

 青い刀身で鍔に赤、緑、青の宝玉を埋め込まれたシンプルな作り。

 元の世界でパプニカのナイフと呼ばれた物、そのレプリカである。

 本来ならばパプニカの特産である青銀を用いて作るべきだがあるわけがないので似たような素材で打った。

 

「パプニカ王家に伝わるナイフを再現したものだ」

 

「ヘファイストスのトコでバイトしてるからわかるけど、これもかなり良さげな物だね」

 

「丁寧に作ったからな」

 

 それでも特殊な効果のついた武具に比べたら格段に落ちる。

 予備武器程度には丁度よいだろう。

 

「ベル君にナイフを渡す意図は理解できるけど、このナイフである理由はあるのかい?」

 

 装備品として邪魔にならないからだけではない。当然他のナイフではなくコレにした理由はある。

 

「小さな勇者ダイがパプニカの姫レオナに託されて幾多の苦難を共に乗り越えた武器なんだ」

 

 ダイの年齢的にナイフくらいがちょうどよかったのはあるだろう。

 剣が手に入るまではその質の高さもあって大いに活躍したそうだ。

 ただ竜騎将バランとの戦いで技に耐えきれずに消滅してしまったが。

 

「ベル君が喜びそうだなあ」

 

 英雄譚好きなベルならば喜ぶだろう。

 そしてこれから成長して冒険を繰り広げていくベルには縁起の良い代物だとも思う。

 再現したものとは言え、武器としての性能もキチンとしてるので既にヘスティア・ナイフとバゼラードを装備しているが問題ないだろう。

 

「えっと、3本あるのはレプリカだからかい?」

 

「いや、赤の宝玉のナイフが太陽のナイフ、緑の宝玉のナイフが風のナイフ、青の宝玉のナイフが海のナイフ、とそれぞれ名称が違うんだ」

 

 名前がそうだからといってそれに因んだ効果がついてるわけではないが。

 レオナ姫がダイに最初に渡したものは、赤い宝玉の太陽のナイフで、消滅後は風のナイフを渡していた。海のナイフは実物を見たことはないが、亡くなったパプニカ王が所持していたのではないかと予想している。

 

「ならベル君には太陽のナイフかな?ベル君は明るくて太陽みたいだしなんかポカポカするもん」

 

 それはヘスティアもだと思うが、ダイにあやかるなら太陽のナイフがうってつけだな。

 

「ヘスティアも一本選んでくれ。性能に差はない」

 

 他の二本も使い道は決めている。

 

「ええっ!?ボクは武器なんて使えないよ!?竈の神なんだからお玉がせいぜいなんだけどっ!?」

 

 お玉で武器を拵えてやろうか?

 いや言いたいことはわかるが。

 

「リリルカの人生を知って、この街で護身すらさせないのは無理があるだろ」

 

 神に危害を加えるのは悪人であってもそうは居ないらしい。俺にはよくわからんが、下界の人々は力を封印し人と同じ程度に堕ちた神であれ基本的に自然と敬うものなんだとか。

 あくまで基本的にで、ヘスティアのようにバイトを掛け持ちしジャガ丸君屋台の客寄せ看板娘まで堕ちてる神もいるにはいる。

 

「それはそうかも」

 

 リリルカを引き合いに出されれば武器を持つことに抵抗あるヘスティアとて頷かざるを得ない。

 緑の宝玉の風のナイフか、青の宝玉の海のナイフか一頻り悩んだ後、ヘスティアは風のナイフを選んだ。

 

「竈の神だからね、火加減を調整するのは風なんだよ」

 

 選んだ理由は納得のいくもので、「あと海はあのポセイドンだから抵抗が」、と表情を曇らせてもいた。

 

「残った海のナイフはリリルカに渡すとするかね」

 

 魔石採取に使うには勿体ないが護身用にも使えるしな。

 

「ねえ、ゼノン君。一つワガママ言ってよいかい?」

 

「なんだ?」

 

「その海のナイフは、リリルカ君じゃなくて君が持っていてくれないかい」

 

「俺が?」

 

「その、リリルカ君をハブりたいとかではないんだ。ただヘスティア・ファミリアは、ベル君とゼノン君とボクで始まったからさ、その記念に良いかなと」

 

 リリルカをはじめとした、これから入団してくる者には別の物を用意してあげてほしいとヘスティアは言う。

 ファミリア結成の記念に、か。

 なるほどその考えは悪くない。

 むしろこそばゆいような、照れくささに似た感情が湧き上がってくる。

 

「そうだな、それも良いかもな」

 

 何よりもベルが喜びそうだ。

 今でこそオラリオ最大手であるロキ・ファミリアも、最初は今は三首領と呼ばれるトップ三人から始まったと聞く。

 彼らにもこのような結成記念品や思い出があるのだろうか。

 俺はヘスティアの提案を受け入れ、海のナイフを装備することに決めた。

 

「よし、ならリリルカには今度『アバンの印』でも創ってやるか。アクセサリーは危険だと言われたがそう目立たないデザインだから大丈夫だろう」

 

「ファミリア構成員の証には良さそうだけど、「アバンって誰だよ」になるんじゃないかな?」

 

 それもそうだな。

 だが名称は変えねえよ(鉄の意志)。

 アバン先生に認められた卒業の証。

 その名前は俺には特別なものだから。

 

「あとはベルにアバン流刀殺法の手解きでもするか。一週間で勇者に成れるスペシャルハードコースをする気はないが、つうか無理だが段階踏んで教えるくらいはいいだろう」

 

「良いのかい?教えるか悩んでいたみたいだけど」

 

「リリルカの時に、ベルは我欲で力を振るう者ではないと証明した。なら資格は充分だ」

 

 教えても体得できるかはわからない。

 この世界は、神の恩恵に反映されなければ技術などそこまで効果はない場合もある(鍛冶や神秘など)。

 それでも知ることには意味はある。

 同程度のステイタスであれば、積み重ねた技術が勝敗をわける要因になる筈なのだから。

 

「そっか、それもベル君は喜びそうだね」

 

 ヘスティアはそう言って見守るように笑うのであった。

 

 

 

「ところでいつ、『ウサ耳バンド』と『うさぎのしっぽ』を渡せばよい?」

 

 今の装備なら付けても邪魔にならんし、効果があるから無駄ではないんだよな。

 

「色々台無しになるからしばらくは良いよ」

 

 あの時は暴走してたんだとヘスティアは慌てながら言うのであった。

 

 

 

 ベルにホームの廃教会上部で太陽のナイフを渡した。ベルは受け取った後、飛び跳ねるほど喜んだ。

 それだけでも渡したかいはあったが、さらに海のナイフで石像用の石材をアバン流刀殺法大地斬で斬ってみせた。

 これはこのナイフだからできたのではない。

 ただ力任せに斬ったのではない。

 俺だから出来る技でもない。

 斬るという行為のあらゆる要素を意識することで出来る技の極み。

 必ず身につける必要はない。

 だがこの技を、アバン流刀殺法を極めた先に、全てを斬ることが出来る自分がいる。

 そうベルへと告げた。

 目を見開いたベルは、俺のその言葉を真剣に捉えたようだ。

 何度か自分の太陽のナイフをカチンカチンと石材に当てたりもしていたが、折れそうで怖いからとまだ挑戦はしないそうだ。

 実際にダイもアバン先生の剣(古道具屋で十ゴールドで買った安物)を折ってしまったらしいしな。

 俺が極めればこんなことも出来ると、手刀で石材を斬って見せたらコレにはベルもドン引きしていた。

 射った矢でも同じことが出来ると知ったらどんな反応するかね?

 なにはともあれ、ベルはパプニカの太陽のナイフを喜び、アバン流刀殺法のその入口の前に立ったのである。

 

 

 この時に渡した太陽のナイフと、この時に見せた大地斬が、ベルに襲い来るミノタウロスを倒す一助になることを俺はまだ知らない。





 ウサ耳バンドとうさぎのしっぽ。
 創っておいたけど渡せなかったそうです。
 今の装備なら邪魔にならないし、アクセサリーとして地味に強化効果がある。

 パプニカのナイフ。
 小さな勇者ダイの初期装備(最初は木刀だが)。
 多くの戦いを乗り越えた名品。
 別のナイフだが、真大魔王にすら傷をつけた。
 ベルのメイン武器にはしないが、お守り兼予備武器として装備。それでも現段階では他の装備より質は上。

 リリルカの発言。
 説得力が違う。
 移動が多い冒険者に特殊効果のアクセサリーは必需品。だがそれゆえ高価で、小さいが故にぬすまれやすい。武器は鍛冶師を当たれば盗品だと証明しやすいが(個人契約も少なくない)。アクセサリー類だと消耗品に近い物も多いためそうはいかない。

 アバンの証。
 素材の聖輝石はないので形だけ。
 ヘスティア・ファミリア構成員の証になるかも?「アバンって誰だよ」と疑問に思うまでがお約束。

 アバン流刀殺法大地斬。
 ゼノンはベルに教えると決めた。
 ただステイタスだよりのこの世界ではハードルが高いのも事実。
 実際、力任せに岩を斬れる冒険者はそこら中にいる。そして雷鳴の剣なら振るうだけで斬れる。
 それでも知ることに体得する事に意味はある。
 いつか全てを斬る為に。

 ベルとアイズ。
 太陽のナイフをベル見せられ今度はアイズがぐぬぬとなった。姉と弟かな?
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。