ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

22 / 119

 原作ですが、
 かつての最強、ゼウス・ヘラ・ファミリアはなんで三大クエストをダンジョン完全攻略より優先したんだろうか?
 タイムリミットが迫っていたのか、倒せると踏んだのか。
 しかし、もし黒竜討伐よりもダンジョン完全攻略の方が困難であると踏んでいたのなら、深層へ挑戦するのは無謀な試みなのかもしれません。
 と、なんか思いました。



第22話

 

「剣姫の輝きはあの子に少し眩し過ぎる。と思っていたのだけど」

 

 都市随一の高さを誇る摩天楼施設、バベルの最上階。そこから市壁の天辺部で訓練する少年少女を覗き見る一柱の女神がいた。

 市壁の天辺。

 立ち入り禁止であるため普段から誰も寄りつかず、更に胸壁も備わっている場所を選べば誰かに見つかる心配も皆無。

 そこで行っている訓練は知らなければ発覚しない類のものなのだが、ベルに夢中なヤンデレ女神はその魂を捉える『眼』とバベルの高さそして愛によって、その途轍もない距離を越えて観測していた。

 

「まるで姉弟みたいなのよね」

 

 張り合うように魂(生命とはまた違うが)宿る武具を見せ合う少年少女。

 小さく澄んだ透明な輝きと、目も眩むような鮮烈な光を放つ金色の輝き。

 それらがぶつかり合い、互いに輝きを増しているように見えた。

 その姿にヘスティアとベル・クラネルが寄り添う姿を視た時のようなマグマのように湧き上がる衝動が起きることはない。

 嫉妬、という感情が身を焼いたりはしない。

 欠けたモノを埋め合うような二人の関わりに、むしろ微笑ましくすら思えているのだ。

 

「欠け、ね」

 

 輝きにばかり眼がいっていた彼女が魂の形を捉えるようになったのは、少年少女の側にいるもう一人の青年を視たからだろう。

 満ち足りた欠けることなき揺るぎない真円の魂を持つ謎の青年。

 都市最強、即ち世界最強と言っても過言ではない自らの眷属が「彼がいる間はたとえ副団長であろうと手出しをさせてはならない」と進言させた程の存在。

 世界樹の如く才能という枝葉を天に広げ伸ばした多才の体現者。

 彼は幼い輝き二つを守り支え導いていた。

 

「ちょっかいはやめておきましょうか」

 

 少し眷属を少年少女にけしかけようかと思っていた。今の二人の強さを確かめようと。

 しかしそれは危険だ。

 青年を怒らせることになると女神は察する。

 彼は明らかにこちらに気づいていると女神は感じていた。

 視線を向けるたびにこちらを振り向き、遥か遠くの彼女と幾度も眼があったこともある。

 どれくらいベル・クラネル、想い人が強くなったか確かめてみたい気持ちもあるが、剣姫に八つ当たりするほど黒い衝動は湧かず、最強の眷属不在時に青年を怒らせるのは危険だと本能が察していた。

 彼女、女神フレイヤは現在ベル・クラネルの魂がより輝く為の舞台作りを進めていた。

 それは青年を怒らせようと止めるつもりはない。青年が潜ろうとしないダンジョンならば成功するという目算があるからだ。

 なによりも、その所業に彼女は恥じ入ることも悪びれるつもりも一切ないのだから。

 伴侶に成り得るだろう少年の魂をより輝かせる。それを誰かに責められる謂れなどない。

 もっともその行為を知れば、責めたりはしないがその愛の重さに大半の神はドン引きする。それこそ同じ美の神とされるイシュタルであっても。

 眷属をけしかけるのは止めて、女神フレイヤは観測を続ける。

 ぶつかり合い、吹っ飛ばされ、気絶して、覚醒と治癒され、再度ぶつかり合う、そんな少年少女の姿を。

 もう間近に迫る、少年の試練の時まで。

 

「毎回お弁当を用意することないじゃない」

 

 そんな中、拗ねるように唇を尖らせ女神は呟く。主夫の如くヘスティア・ファミリアを支える青年への不満を。

 ベル・クラネルにせっかく用意した弁当を渡す機会が、話しかけるきっかけが減っていることに彼女は文句を言いたい気持ちがあった。

 恋する乙女。

 今の彼女はまさにそれであった。

 年齢と今までの男性遍歴については考えてはいけない。

 

 

 

 

 ブルリ。

 

「なんかヤンデレの気配がする」

 

「突然何を言ってるのゼノン君。そしてボクじゃないよね」

 

 ベルにパプニカの太陽のナイフを渡してから数日。今度はベルがアイズに自慢して、アイズが羨ましそうにぐぬぬと唸る一幕があった。

 ベルは専用装備だが、アイズはロキ・ファミリア共有装備(というか勝手に持ち出しちゃ駄目なヤツ)。その差が二人に優越の差を生み出していた。

 じ〜じ〜じ〜じ〜。

 そのせいか、アイズから強請るような視線を向けられているのだが、これは永久機関並みに延々と二人から強請られることを繰り返されるだけだと理解できたので無視を決め込むことにした。

 

「なんかアイズにも作るべきかな」

 

「まったく無視できてないよね、甘えに弱いお父さんか君は」

 

 それでおさまるなら良いかなって。

 いや繰り返しになるのはわかってんだけど耐えきれないんだよ。

 幸いなことにベルに口止めしたからアバン流についてはアイズに知られてはいない。門外不出、という決まりはアバン先生から聞いたことはないが、アイズが他のファミリアである以上は伝えるのは問題だろう。

 ちなみに当のアイズは、弁当にジャガ丸君が入っていて、ヘスティアがジャガ丸君の屋台で働いてることを知ったら、

 

「ヘスティア・ファミリアに改宗したら毎日ジャガ丸君食べ放題っ!?」

 

 と真理に気づいたかのように目をキラキラ輝かせてそう叫んだ。

 余り物を貰ってるだけだから食べ放題じゃないからな?廃棄処分費浮かせる為に認められてるだけなんだよ。

 そんな理由で改宗されても困るだろうから、ロキ・ファミリアは本拠地にジャガ丸君屋台を設置すべきではと思う。

 あと栄養が偏るからウチに改宗したらジャガ丸君の倍は野菜食わせるからな?

 

「それでベル君は成長してるんだね?」

 

「ああ、一緒にダンジョンに潜ってるリリルカの話によると『ファイアボルト』に頼り過ぎかもとベル本人は気にしているが、体捌きが明らかに向上しているそうだ」

 

 朝の訓練後にベルはリリルカをサポーターとして1日ダンジョンに籠もり稼いでいる。

 その時のことをこうして報告して貰っているのだが、訓練の成果はキチンとでているようだ。

 まあアレだけ吹き飛ばされてたらな。

 憑けているシャドーも同じ報告しているから、まず間違いがない。

 そしてリリルカからしたらベルは組みやすい冒険者であるとのこと。

 サポーターである自身の指示を素直に聞いてくれるので、無駄なく的確に戦えてるらしい。

 人の指示に素直に従える度量。

 これもまた冒険者に向いた資質だと思う。

 

「ただ、な」

 

「何か気になることでも?」

 

「アイズのレベル6へのランクアップを気にしていたらしい」

 

 最近は姉と弟にしか見えないが、ベルにとってアイズは想い人。

 秘密の訓練で縮まった距離がまた遠くなったと気にしているのかもしれない。

 

「でもさ、レベル1からレベル2へのランクアップって最速でも1年かかるらしいよ」

 

 そう、歳は近くとも二人の冒険者歴は差がある。先に冒険者になり年月を積み重ねたアイズに一足飛びで追いつくなんて、成長増加スキルがあっても不可能だろう。

 数千歳の大魔王バーンに魔法操作のほんの一瞬であっても数年、下手したら数ヶ月足らずで追い付いた唯の人間であるポップという超絶例外の存在は無視するとして。

 

「その記録もアイズだしなあ」

 

 さらに強制的に手伝わされた『豊饒の女主人』でウェイトレスの元冒険者のエルフにランクアップについて訊いていたそうだ。

 

「偉業、ねえ」

 

 人も神々も讃える功績なら、まあ達成してきた。

 だが、自分より強いモンスターを打破なんて俺はしたことないんだよなあ。

 ひたすらモンスターを狩り続けてステイタスを成長させる冒険者とは異なり、アバン流をはじめ、武神流、呪文を体得してからモンスターと戦ってきた俺。

 戦闘は自らの実力の確認行為でしかなく、それで負けたのは修行をつけてくれたアバン先生達を除いて、三人だけだ。

 その三人にしても、二人は死亡している。

 

「俺が今までやってきたこと以上の偉業なんてやりようないから、ランクアップなんて俺は無理かもな」

 

 可能性があるとすればロン・ベルクを破ることか?だが奥義に才牙を組み合わせて反動を無くしたロン・ベルクに勝てる気なんてしないのだが。

 武器として落第と言っておきながらしっかり極めやがって。

 いや俺のことはいいか。ダンジョン潜らないし。

 

「聞いた話だと無理っぽいよね」

 

「焦ることはないと思うんだがなあ」

 

 同じ歳月をかければベルはアイズよりは上にいけると思うのだが。

 ダイ達みたいに向こうから襲いかかってくるわけじゃねえんだから。

 

「もうヴァレン某との訓練も終わりだっけ?」

 

「ロキ・ファミリアの遠征があるからな」

 

 個人的にアイズにも何かしてやりたいとは思うが、そうなるとファミリアとして接触せねばならない。だがあの腹黒そうな団長と性格悪そうな主神との取引は必要ない限り遠慮したい。

 

「聞いてる限りだとあの娘も心配だから一度くらい会えば良かったかな?」

 

 気にしていたが結局会えずじまいだったな。

 

「バイトが忙しかったもんな、ヘスティア」

 

「ハハハハ」

 

「いったいいくらしたんだよ、ヘスティア・ナイフ?」

 

 働き詰めになるくらいの額なのか?いやそれでも足りるわけがないのだが。

 

「神友特別価格だから、ゼノン君が心配することはないぜ☆っ」

 

「本当かね」

 

 まあ本神がそう言うならそうなんだろ。

 

「それでゼノン君は二日くらい泊まり込みなんだっけ?」

 

 話を逸らすようにヘスティアが俺の予定について触れてきた。

 

「本拠地の入り口に彫ってほしいらしくてな」

 

 お得意様からの特別依頼だ。

 完成したら運べばよい石像と違って向こうに行かなきゃいけない。

 

「どの神から請け負ってるのさ。いい加減教えてよ」

 

 ただお得意様についてはヘスティアには伏せている。石像も顔は隠す徹底ぶりだ。

 

「天界での付き合いも含めて、不仲な場合もあるから言わねえよ」

 

 ロキのような例もある。

 それで文句言われたり、気にされたりしたら面倒だ。

 

「むう〜、ボクがそんなに狭量に見えるのかい」

 

「ロキについて語った時の姿を見る限りはな」

 

「アレは向こうが絡んでくるんだよ」

 

 そんな風に語り合いながら時間は過ぎる。

 

 

 そして。

 ベル・クラネルが大きく躍進する、その試練の日を迎える。





 前半、フレイヤ様サイドです。
 作者の彼女の印象は拗らせたヤバいヤンデレです。怖いですね。
 フレイヤから見ても姉弟だったのであんまり嫉妬してません。さらにオッタルの進言でゼノンがいるから襲撃はしませんでした。

 アイズについて。
 ベルのパプニカのナイフを羨ましがり危うく無限ループになるとこでした。ファミリアが違うのでほいすか渡せません。
 ジャガ丸君食べ放題で改宗したがりましたが、まあ無理ですね。

 ベルについて。
 ランクアップを気にしています。
 冒険者年数考えたら普通に無理なの諦めきれません。

 ロン・ベルクについて。
 才牙の存在を知り会得。
 結果、ザボエラの超魔ゾンビは反動なく滅殺しました。奥義にしか使えない仕様なので、才牙含めて究極奥義です。
 壊れたら反動ダメージな才牙はやっぱり武器として落第だと思っています。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。