ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「ベル君が今日退院なのに朝帰りとは」

「お義父様、不潔です!!」

「父親じゃねえよ、俺はまだ19だ」

「元凶がヤンデレで怖かったから女抱くとかわけわからないよ!!」

「ベル様に悪い影響でちゃうじゃないですか!!」

「ヘスティアも対面してみろ、マジ怖いぞ。あとベルは元からスケベだろ。
 まあ不謹慎だったのは認めるよ。だから」

「「だから?」」

「この優待券はお詫びかつ退院祝いとしてベルに譲ろダブルフライングクロスチョップッ」

「ただいまーってなんでゼノンさんに飛びかかってるのさ神様、リリ!!ズルいな僕も混ぜてよ!!」

 ゼノン娼館帰りの朝。
 フライングクロスチョップをするヘスティアとリリルカ。帰宅しそれを目撃したベルは羨ましそうにそう言った。
 これはベル・クラネルがステイタス更新でレベル2にランクアップする直前の出来事である。



第25話

 

 ベルがレベル2にランクアップした。なんか凄いらしい。

 

「「「反応が薄いっ!!そしてなんか!?」」」

 

 いやまあね、最短記録更新だったりとか、大半の冒険者がレベル1で生涯を終えるとか、レベル2は上級冒険者と呼ばれるとか、壊滅し再編されたソーマ・ファミリアの元団長がレベル2だったとか、蓄えた知識から凄いのはわかるんだけど。

 

「レベル1と実力の違いがわからん」

 

 角生えたりとか外見的な差があればなー、或いは腕に宝玉が出現するとか。

 

「それはランクアップではなくモンスター化じゃないかな?ゼノン君にとって神の恩恵ってどんな認識なのさ」

 

「人体改造」

 

「否定できなくて反応に困るんだけど!?」

 

 ベルと初めて出会った時より別の存在のように強くなったのはわかる。

 ただ、神の恩恵無しに同じ時間鍛えてもこれくらいの実力にはなれたんじゃないかなと思う。

 ダンジョンというモンスターと戦える場が無くとも、系統は限られるが俺がモンスターを創り出せるしな。

 

「でも、神様。僕もこう、特に変わった感じがしませんけど」

 

「『ちっ、力が溢れてくる・・・・・・!』なんて起きると思っていたのかい?」

 

 ベルの言葉に、わなわなと震える演技をしてから笑うヘスティア。

 それは力の種を食って一時的にパワーが増した時の反応だよ。

 

「それはちょっと残念ですね、リリはランクアップしたこと無いので気になってたんですけど」

 

 冒険者(サポーター)歴が十年以上のリリルカは残念そうにそう言った。ランクアップできれば変われる、なんとか出来るようになる、それはソーマ・ファミリアに所属していた彼女にとって希望だったのだろう。

 ベルが言うには、体が軽くなるとか、世界が変わったような感覚とか、そんなもんは無いそうだ。数分前の自分と変わらなさ過ぎてレベル2になった実感が湧かなくて、肩透かしを食らった気分だとか。

 

「ザニス様は、レベル2である自分はレベル1の貴様らとは格の違う存在なのだぁ!とか散々自慢してましたけど」

 

 そんなん見てたらリリルカも期待するわな。

 

「体の構造が作り変わったり筋肉が増したりするわけじゃないからね。劇的な変化を期待させてたら悪かったよ」

 

「あっ、いえ、そんな風にはっ・・・・・・」

 

「ふふっ、でもね?【ステイタス】の昇華は本物さ。君という『器』は高次の段階に移った。神達に近付いたって言えばわかりやすいかい?」

 

((やっぱり人体改造では?))

  

 俺とリリルカが首を傾げていると、ヘスティアはさらさらとベルの【ステイタス】を用紙へと記入する。ランクアップしたら基本アビリティと熟練度は初期数値のI0から再出発する。数値は小さくなっても弱体化したりするのではなく、その数値に新しく追加されていくらしい。

 

(なるほどよくわからん)

 

 強さが数値化されない世界出身だからか、イマイチ理解できない事柄なんだよな。

 ランクアップが終わりインナーを着るベルをリリルカがガン観してる中、俺は覚えた呪文とか一覧されてたら便利なのになと考えていた。

 ベルがすぽんと首を出したところでステイタスを書き終えたヘスティア。

 

「驚かせようと思ったけど、先に言っておこうかな」

 

「「「?」」」

 

 嬉しそうに微笑んでるヘスティアは、ベルに用紙を渡しながらそう言った。受け取ったベルが記入されたステイタスを見る前に「朗報だぜ、ベル君?」と言葉を続ける。

 

「スキル、さ」

 

「へっ?」

 

「おおっ!?」

 

「ほお」

 

「君の二つめぇーー、じゃなくてっ!・・・・・・うん、ほら、アレだ。君の待望だった、スキルの発現だよ」

 

 そういえば『憧憬一途』は秘密にしてたっけな。うっかり口を滑らしかけたヘスティアは必死に誤魔化す。幸いなことにベルはスキルの発現という驚きと喜びでなんとかなったが。

 クイックイッ。

 

「(ベル様って別のスキルあるんですか?)」

 

「(ああ、本人が知ると無茶しかねないから秘密にしてるんだ)」

 

 当然のように察しの良いリリルカは誤魔化せなかった。迂闊ではあったがリリルカならば知っておいた方が良いだろう。

 

「(気になりますけど、秘密なら訊きませんよ)」

 

「(教えるのはヘスティアに確認してからだな)」

 

 ベルが血眼になって文字を追っている間に俺とリリルカはコソコソとそう話していた。

 

「『英雄願望』?」

 

 それが新しいスキルの名前か。

 ベルらしいな、と正直思ってしまった。

 スキル発現に嬉しすぎて笑みが弾けるベル。その様子をリリルカとほっこりしながら眺めていたが、唐突にまるで冷え込むようにその笑みが消えていった。

 

「「?」」

 

「ふふふ」

 

 その表情の変化する理由がわからない俺達が頭の上に?マークを浮かべていると、

 

「う、うぁああああああ!?」

 

 と生温かい眼差しで微笑むヘスティアに気付いたベルが絶叫しだした。

 

「どうしたんだアイツ?」

 

「スキルや魔法は恩恵を授かった者の本質や望みなどに影響される場合があります。リリの『シンダー・エラ』も何かになりたかった願望を反映したんでしょうね」

 

「なるほど」

 

 となると剣使いに弓技量アップみたいなスキルが生えてきたりはしないわけだな。

 

「だから、その・・・・・・・・・」

 

「英雄になりたいって気持ちが形になった訳か。一昔前の俺なら発現しそうなスキルだな」

 

 そらヘスティアとリリルカは微笑ましそうになるわな。ただまあ、

 

「恥ずかしがることかね?」

 

 野望がデカい、それだけじゃねえか?別に叶わぬ夢想ってわけじゃないんだしよ。

 

「ゼノン様は、ベル様の可能性を信じているんですね」

 

 教えてすぐに大地斬をモノにしたんだ、可能性を見出すには充分だ。

 

「にょわああああああ!!」

 

 だがいい年(14)して御伽噺の英雄に本気で憧れていると仲間達にバレたベルは、奇声を上げながら悶えまくっていた。

 

「ベルくん可愛いねえ」

 

「ベル様マジ萌」

 

「追い打ちかけるなお前ら」

 

 鎮静化させる呪文ってなんかあったか?ザメハは効果なかったが。

 それからベルが心に折り合いをつけて立ち直るまでしばらく時間が必要だった。

 

 

 

「そんでどんな効果なのかね?」

 

『英雄願望』、能動的行動に対するチャージ実行権。意味がわからねえ言葉が並んでいるな。

 

「リリの『縁下力持』みたいに常に発動してるタイプではなさそうですね」

 

「ベル君が意識的に動いた時に、何か効果が現れるんじゃないかな?」

 

「意識的にですか?」

 

「必殺技を打つぞ、と気合を入れた時とかかね」

 

「とすればミノタウロスの時にベル様が使った『大地斬』って技を今使えば威力が増すんでしょうか?」

 

「それはいいかも」

 

「要検証だな。技の威力を把握しとかねえとか怖くて仕方ねえ」

 

 詳しくは発動しないとわからないという結論になったが、ベルは『英雄願望』の『アルゴノゥト』という読みを気にしていた。

 なんでもベルが昔読んだことのある喜劇よりの御伽噺と同じ名称なんだとか。

 幼少時の思い出との思いがけない再会にベルは混乱していた。

 軽くあらすじを聞いてみたが、魂に刻まれるような感銘を受けるシナリオではないと感じたが。

 アルゴノゥトか。アバン先生、ダイ、ポップ、そしてバランのような俺の知る英雄達とはまるで違うタイプだな。

 

「ごめん、皆。ボクはそろそろ出かけるよ」

 

「え?神様、今日お仕事あったんですか?」

 

 ヘスティアが外出すると告げると、定休日認識だったベルがそう問いかける。

 

「いえ、ヘスティア様のバイト予定はありませんよ」

 

 それに対してリリルカがサラッと答えてくれる。

 

「リリルカが全員のスケジュールを把握してくれてるのは助かるよな(ヨシヨシ)」

 

 おかげで夕食の準備とかの調整がしやすい。

 

「(えへへ)リリは皆さんをサポートするのが役目ですから。ヘスティア様はバイトではなく『神会』に出席されるんですよね?」

 

 そういえばアポロンもそんな事を言ってたような?

 

「ああ、そうさ。暇な神達の会合だよ・・・・・・【ランクアップ】した者の称号を決める、ね」

 

 二つ名、ねえ。

 レベル2で付くんだから、やっぱりランクアップって特別なんだな。元の世界だとアバン先生やノヴァ、マトリフ師にブロキーナ師、魔王軍6軍団長やキルバーンくらいしか付けられてなかったが。

 

「ベル君が、レベル2になったからね。ボクもあの席の末端に入ることを許されたんだ。今日、君の二つ名も恐らく決めることになる」

 

 ランクアップした眷属持ち限定の集まりか、神同士の格付けにも影響してそうだな。

 するとベルは、ありはしないウサ耳と尻尾を揺らしながら(本人以外見える幻覚)興奮したように言う。

 

「わっ、わっ、わっ!それじゃあ僕もアイズさんみたいな通り名を頂けるんですよね!?」

 

「・・・・・・えらく乗り気だね?」

 

「「?」」

 

 ヘスティアは乗り気ではないのか?

 

「そりゃそうですよ!」

 

 二つ名とは冒険者の代名詞。ランクアップした者だけに与えられる神達に実力を認められた証。なんかとても名誉なことらしい。

 

「それに、神様達が決める称号はどれも洗練されていて、格好いいじゃないですか!【漆黒の堕天使】とか聞いただけで強そうって思っちゃいますよ!」

 

「・・・・・・ああ、そういうことか」

 

 意気揚々と語るベルを、ヘスティアは訝しげな顔から力の無い笑みへと変えた。

 哀れみとかそんな感情に見えるが。

 

「そうだね。下界の者にはまだ早過ぎる」

 

「え?それってどういう」

 

「いや、なんでもないよ。いつかベル君達にもわかる日が必ず来る」

 

 意味深なことを言い出してヘスティアは支度を始めた、リリルカは理解できないままとりあえずその手伝いをする。

 

「そういえばゼノン君は、以前いた場所で二つ名とか付けられていたのかい?」

 

「ああ、名声を求めてかなり大々的に動いていたからな。人間側からは【アバンの後継】、【光翼の勇者】、【人類の希望】なんて呼ばれていたな」

 

 アバンの後継は弟子である立場を利用してたから。光翼の勇者はエクセリオンブレードが理由だな。

 

「「おおおー」」

 

「人間側から?じゃあ魔王軍側からとかもあったの?」

 

 ベルとリリルカが憧れるように言う中で、ヘスティアが疑問を口にする。

 

「【欲望の天秤】、【強欲者】、【体を持った同朋】、とか言われたっけなあ」

 

 ザボエラとキルバーンにはしょっちゅうそう呼ばれて勧誘されたなあ。魔王軍ではそんな認識で、だから最初はクロコダインとヒュンケルはやたらと警戒してやがった。ちなみに同朋呼びはミストバーンだけだ、なんで当時そう呼んでたかはわからなかったが、正体知った今ならわかる。

 誰が肉体もった暗黒闘気だ。

 

「そっか、参考にさせてもらうね」

 

 参考にされても困るわ。

 

「じゃあ逝ってくるね」

 

「は、はいっ」

 

「なんか死地に赴くみたいですね」

 

「あの神共だからなあ。碌でもない集まりなんだろ?」

 

 最後にヘスティアはベルを見据え、キッと決然とした表情で口を開く。

 

「ベル君、ボクは泥水啜ることになっても、必ず無難な二つ名を勝ち取ってくるよ・・・・・・!」

 

 君のために・・・・・・!

 やる気というか、是が非でもという必死さが滲み出ていたヘスティアを俺達はなんとも言い難い感情で見送った。

 

 

「気の取り直しと、ヘスティアがいないし俺も休みだから三人で食事に行くか」

 

 ベルのランクアップ祝いも兼ねて。

 

「「行くーーっ!!」」

 





 触れてませんが、幸運についてとエイナさんに訪ねたりはしています。
 ベル君のみなので省きました。
 あとは原作とは違い、リリルカも一緒に検証しています。

 アルゴノゥト。
 この後でベルに詳しく語られて本屋にも寄ります。英雄の中にバランを入れたのは、彼が冥竜王を倒した悲劇の英雄だと認識してるからです。

 ゼノンの二つ名。
 ベルとリリルカには異世界だと伝えてませんが、ゼノンなら二つ名くらいあると二人は思っています。
 なおラーハルトはずっと強欲者呼びでした。

 三人で外食。
 親の片方いないと外食するノリです。

 
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