ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 独自設定が色々とあります(今さら)。




第26話

 

 ベルの二つ名が『リトル・ルーキー』に決まったらしい。

 なんとも微妙な二つ名だなと俺は思った。

 その名称になったことでヘスティアは「やったぞベル君、無難だ!」とベルに抱きつきながらご満悦な表情だったが、肝心の抱きつかれたベルはヘスティアが喜んでいるから不満を顔に出さないように表情を引きつらせていた。

 リトル。

 男においてこれほど気になってしまう言葉はそうはあるまい。男とは高身長に憧れるもの、見上げるほどの巨漢に、鍛え抜かれた益荒男を格好いいと思うもの。さらにはアレを見られて『リトル』などと呼ばれたら膝をついて打ちひしがれるほどの精神ダメージを負うだろう。

 ましてやベルは冒険者を志し、『英雄願望』というスキルすら発現してしまうほどに『理想の存在』への思いが強い。つまりそれだけ高身長への憧れがあるのだ。

 一緒に暮らしていると俺の身長を羨ましそうに見上げる姿が見られるくらいだからな。そこら辺はダイと同じで和んでしまうのだが。

 さらには『ルーキー』だ。

 新人やら新米を指しているのだろうが、冒険者を始めて一月のキャリアがベルにはある。確かにリリルカやアイズに比べたら新人も新人だが、普通はそれくらい冒険者をやっていたらルーキーなどと呼ばれなくなるものではないのか?

 

(早急にランクアップしないと辛くなるだろうな)

 

 ランクアップ最速記録を更新したばかりではあるが、それを喜ぶ以上に次のランクアップを目指すべきだと考えている。

 呑気に喜ぶヘスティアだが、無難だというこの二つ名が悪意あるモノだと認識してないのだろうか?(それだけ他の二つ名が酷かっただけ)。

 ベルは次のランクアップで二つ名が変わらない限り、どれだけ身長が伸びようと『リトル』で、何年冒険者を続けようと『ルーキー』と呼ばれ続けるのだ。

 恐らくこれを決めた連中は、数年先にベルの二つ名をネタにヘスティアを誂うその瞬間を涎を垂らしながら今か今かと待ち望んでいるのだろう。

 

「『リトル・ルーキー』ですか、小人族であるリリには複雑な気持ちになる二つ名ですが、お揃いだと思えばなんとか」

 

 一緒に聞いていたリリルカもこんな反応だ。小人族は種族的に仕方ないとはいえ他種族より低い身長を気にする者が多い。なにせその身長ゆえに非力であると迫害すらされたのだから。

 ヘスティアが良かった良かったと喜ぶ姿を、俺達三人はなんとも微妙な気分で見守るのであった。

 

「ところでさ」

 

 グリンっとヘスティアが俺の方に顔を向ける。

 

「どうした?」

 

「ベル君から美味しそうな匂いがするんだけど、ボクがいないからって外食に行ったのかい?」

 

 バレテーラ。

 仕事で親しくなったアポロン眷属の幹部であるダフネ(短髪美人)とカサンドラ(なぜか懐かれてる)に教えて貰ったレストランにヘスティアがいないことを口実に行ってみた。

 女性二人が行くだけあって甘味が充実した良い店で、俺とリリルカは満足したが、甘い物が苦手なベルは少々困っていたようだ(別に軽食があったから良かったが)。

 そういえばベルはジャガ丸君の抹茶クリーム味やカスタード味も避けていたな。

 甘い揚げ物に違和感あると言っていたが、揚げドーナツと大差ないと俺は思うのだが。

 しかし、ヘスティアにバレてしまったか。隠し立てすることではないがヘスティアが拗ねてしまうと面倒だ。ならば。

 

「なあヘスティア?」

 

「なんだいゼノン君、言い訳なら」

 

「ベルは元からそんな匂いがするだろ?」

 

 適当にそれっぽいことを言って誤魔化そう。

 

「しませんけどっ!?」

 

 それっぽいこと(ベルは美味しそうな匂い)を言えば、そんな匂いがすると言われたベルが否定し叫ぶが。

 

「あっ」

 

「それは確かに」

 

 ヘスティアとリリルカは言われて見れば確かにと顎に手を当てて納得しだす。なんでだろう?

 

「ゼノンさん、僕ってそんな匂いなんですか?」

 

「シラネ」

 

 野郎を嗅ぐ趣味はねえ。

 アマゾネス達の匂いは唆るような気分が盛り上がる匂いだったが。

 けどまあ、

 

「ホレお土産の、デラックスアンコと蜂蜜とクリームマシマシダンジョンサンド。甘いぞ」

 

 面倒だけどバラすがな。

 

「「結局行ったこと隠す気ないの!?」」

 

 何もないのは可愛そうだし。

 

「一口で何カロリー摂れるんだろそれ」

 

 ベルはその味を思い出したのか顔を引き攣らせていた。

 冒険者には男女問わず人気なんだがな、エネルギーが大量に摂れるから一口齧ればしばらく動ける。

 

「ありがとうゼノン君」

 

 一緒に行けなかったのは残念だがお土産あるなら良いやとヘスティアは鷹揚に頷くのであった。

 

 

 

 翌日。

 ミノタウロスを倒した戦利品であるドロップアイテムの『ミノタウロスの角』をベルがやたらと気にしていた。

 元の世界で散々蹴散らした魔影軍団の雑兵である彷徨う鎧の残骸に比べたら上等な素材だろうが、魔影軍団最強の鎧兵士『デッドアーマー』や超竜軍団のドラゴンなどから取れる素材に比べたら大分見劣りするな。

 ただベルにとっては思い入れ深い素材。強敵を打倒した証だ。

 その角を素材として失ったバゼラードの代わりを創って欲しそうにしているが、この世界のドロップアイテムを上手く加工できる自信がないのだが。

 破損した鎧(直撃は辛うじて避けてはいたがボロボロになっていた)を新調すると言っていたのだから、その時に加工を依頼するべきだと告げる。

 ヘスティア・ナイフとパプニカのナイフで大丈夫ではあると思うが、あくまでパプニカのナイフは予備武器なのだ。

 

「とにかく、体得したっていう大地斬を試してみるか。ホレ適当に拵えた石像だ斬れ」

 

 ポンポンと適当に拵えた石像(形はバーンパレスの某自称最大最強の守護神)を叩きながらベルに見せてみろと促す。

 

「物凄く彫り込まれてなんか強そうですけど、本当に斬っていいんですか?」

 

 ヘスティア・ナイフとパプニカのナイフを構えるベルがおずおずと訊いてくる。

 確かに見た目は強そうだし、見た目だけは強そうであるし、無駄に彫り込んじまったが。

 

「粉微塵にしても一切気に病むことのない稀有な人型造形だ。存分にやれ」

 

 ヒムと激戦を繰り広げて瀕死のヒュンケルに追い討ちかけようとした卑怯者で小物。勧誘からの付き合いがあり、そのあり方に同情と同調してしまったザボエラに比べるといくら壊されようが気にならん(それでも二番目にはザボエラがあがる)。ラーハルトと協力(お互い死ぬほど顔を顰めながら)して撃退したのも懐かしい記憶だ(数ヶ月前)。

 

「はいっ!アバン流刀殺法・大地斬!!」

 

 両手に持つナイフを十字に交差させて斬る大地斬。ベルの筋力と短く軽いので威力の乗りにくいナイフを二刀を同時に放つことで補ったか。

 ダイもナイフでやってた?ダイはその気になれば百獣魔団を吹き飛ばせる筋力の持ち主だ、一緒にしてはいけない。無意識にだが闘気も纏っていたのもあるが。

 

「大地斬はマスターしたか」

 

 四分割されたマキシマム石像(ザマァ)の切断面を撫でるが、砕いたではなく斬っている。これなら体得したと言っても問題ないな。

 

「本当に出来た」

 

 両手を見ながらベルは言う。

 大地斬を使えたのは激戦の土壇場。

 そんな状況で使えたからといって覚えたかは半信半疑だったんだろう。

 

「身体が覚えるってのはそんなもんだ」

 

 剣技に限らず身体を動かすことは成功体験が一度でもあれば次から出来るようになるもんだからな。

 

「次は海の技『海波斬』なんだが」

 

 なんだけどなあ。

 

「難しいんですか?」

 

 悩みだす俺にベルが気になったようで尋ねてきた。

 

「いや、理屈としては簡単で、ベルにはむしろ大地斬より向いている技なんだが」

 

 海波斬は速さの技。

 だから敏捷の高いベルには向いている、向いてはいるのだが。

 

「だが?」

 

「ベルって『海』を見たことあるか?」

 

「あっ」

 

 やっぱり無さそうだな。

 育ちからして山というか内陸出身みたいだし、海を見たこと無いのは当然だよな。

 というか普通は生まれ育った都市で一生過ごすもんで、他所の地方を知ってる方が珍しいのだが。

 オラリオ出身だっていう、アイズ(詳しくは知らないから微妙)やリリルカ(オラリオ外に出たことなし)も海を見たことないんじゃないかな?

 

「海を知らない奴に海を斬れってのもなあ。頓智かよって話だ」

 

 絶海の孤島であるデルムリン島出身のダイなら海は馴染み深いもんだったが、意外な落とし穴だ。

 

「じゃ、じゃあもうアバン流は覚えられないんですか?」

 

 それは嫌だと涙目でベルが言う。

 

「確かオラリオから大して遠くない場所に港町がある筈だ。そこで海を見て触れて泳いで、とにかく体感してからだな」

 

 汽水湖の港町で海では無かったか?詳しくは調べないとわからない。

 ただヘスティア・ファミリアに海に行くほどの余裕もまたないんだよなあ。

 

「海波斬は技の理屈よりも修練方法を用意する方が難しい。だからしばらくは大地斬をより高めるように鍛錬しとけ」

 

「はいっ!」

 

 修練方法どうすっかな?

 スペシャルハードコースみたいにドラゴンの炎の息を斬らすべきなんだが、仕損じたら全身火傷だ。

 竜変化呪文ドラゴラムは使えるけど、俺が使うと普通のドラゴンじゃなくて邪竜の類になるから使うなってマトリフ師に厳命されてんだよな(外見が闇竜シャムダ)。都市内でドラゴンになるわけにもいかんし。

 フレイムでも拵えて息を吐かせるか?それだと空裂斬と混同しそうなのがなあ。

 あとやっぱり仕損じたら火傷するし、何よりも都市内で火災になるわ。

 まさか都市に住むとこんな面倒なことがあるとは思いもしなかった。

 修行するなら山籠りが最適なんだな。

 海波斬。ダイは容易く体得し、俺も簡単に体得した技の意外な難易度に俺は頭を抱えることになる。

 

 

 その後、ベルに『豊饒の女主人』で祝賀会を開くと誘われたが、祝う気持ちはあるがダンジョンを冒険した者だけで祝うべきという気持ちと、しばらくフレイヤ・ファミリアと関わりたくないので辞退した。

 今日は頼まれた作品と、ベルの練習用のマキシマム像を彫ることに専念しよう。

 

 

 帰ってきたベルとリリルカに『豊饒の女主人』は怖いとこですと言われた。

 今さらか?

 あとシル(なんか微妙に引っかかる存在)に物凄く纏わりつかれ明日の買い物に同伴を申し出られたり、ダンジョン攻略の経験があるらしいリューに中層について色々と教えて貰ったそうだ。

 経験者らしき彼女によれば、ベルとサポーターリリルカだけでは厳しく、せめてもう一人は仲間がいる、俺はついていかないとは何事だ、と色々と言われたらしい。

 俺はエルフとは相性が悪いのか、チュール嬢と並んでリューとやらともあまり仲が良くない。

 あの潔癖な気質が合わないんだよなあ。

 生命体の時点でお綺麗なわけないだろうが。という反発が俺の根底にはあるからだろう。

 逆に娼館のアマゾネスと相性が良かった。

 あの感情と欲望を全面に押し出す気性は一緒にいて楽なんだ。

 アレから何度か行ったが、客だけでは足りんアマゾネス達の相手をしてやるとイシュタルからも礼を言われるからな。

 まあ良い。

 エイナ嬢もリューとやらもベルに関しては真摯に向き合ってくれてる。お互いの合わなさは脇に置いといてその点があるから嫌うまではいかない。

 んで、そんな話をしているうちに他の冒険者に組まないかと誘われたらしい。

 冒険者嫌いなリリルカには特に不快な酔っぱらいどもで、一緒に飲んでいた綺麗所目当てで声をかけたらしい。

 押しに弱いベルの代わりにリューが拒否してくれたらしいが言い方が鋭く、エルフは認めた相手じゃないと肌の接触を許さないという気質から揉め事になったが、その冒険者達は店員達に叩き出されたらしい。

 こんな街で女だけの店なんだ、自衛くらいできるだろうよ。

 とにかく、ベルとリリルカは『豊饒の女主人』の怖さを理解したそうだ。

 

 しかしレベル2にランクアップ。

 最速記録を更新という悪目立ちはいらんトラブルを引き起こしそうだ。

 酒場で絡んだ連中も処理しておくべきかもな。

 明日は鎧を探しに行くそうだが、万が一に備えて準備しておくか。フレイヤに目をつけられてるのを抜きにしてもベルはトラブル体質みたいだしな。

 

 

 ベル・クラネルのランクアップ。

 それは新たな騒動の始まり。

 宿願を抱く伝令神の謀が、異世界の英雄をダンジョンへと招きいれる。

 そして世界は、ダンジョンは、神は、冒険者は、ベル・クラネルは、英雄の実力の片鱗を知る。

 

「しっかり見とけベル。  

 これが全てを斬る一閃、

 これがアバンストラッシュだ」

 





 リトル・ルーキー。
 無難だとヘスティアは言うが普通にからかいのネタかと。数年後くらいに「まだリトル・ルーキーなの?」と笑い話にするつもりだったと予想される。
 
 ダフネとカサンドラ。
 アポロン狂信者ではないが仲が良い。室内の調度品を拵えたら喜ばれた。
 カサンドラに関しては予知夢を信じられたから尋常じゃないくらい懐かれている。ゼノンからしたらメルルという世界を救った最大の功労者の一人を知るから予知の類を軽んじないだけ。

 マキシマム像。
 試し斬りにはうってつけ。動く石像では抵抗があるがコイツならいくら斬っても気にならない。

 海波斬。  
 技の理論よりも修行方法が難しい。メレンって海につながる港町認識で良いのだろうか(汗)。
 
 ドラゴラム。
 なぜかゼノンが使うと普通に闇竜シャムダ(形だけ)になる。光の闘気を限界まで高めてから唱えると聖竜ミラクレア(形だけ)になるが死ぬほど疲れる。

 エルフ。
 アンチをする気はありません。
 ただ気質が合わないだけです。
 ドラクエでも他の種族に厳しいことが影響しています。ただエイナの誤解は殆ど解けていますが、ゼノンがギルドに行く用事がないのと、顔を合わせるには気まずいので。
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