ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 どたまかなづち、の反応。
 神は神話や司る物次第で反応がわかれるので個神ごとになるかなと思います。
 代表的な神をいくつかあげると。
 フレイヤは忍び笑い。
 ロキはトールを連想して青ざめる。
 ヘスティアはゼノンを休ませる。
 ヘファイストスは出来に感心。
 ヘルメスは爆笑。
 アポロンはこれはこれであり。

 アマゾネスの反応は、彼女達はゴツい武器を扱う人がいる点と、勝てば良いという価値観があるので、笑いはするけど受け入れる感じですね。自分達が使うかは微妙ですけど。でもフリュネがどたまかなづちを装備して回転してきたら、フレイヤ・ファミリアの猫耳戦車と競り合えそう。



第31話

 

 極東の地からオラリオに出稼ぎにきたファミリア、『タケミカヅチ・ファミリア』とヘスティア・ファミリアのダンジョンに潜らない稼ぎ頭であるゼノンの付き合いは実はけっこうある。

 主神同士が友神関係という下地と、貧乏ファミリア同士という共通点と、故郷に仕送りしているタケミカヅチ・ファミリアとベルを支えているゼノンという似た状況であるという理由もある。

 だが彼ら極東の者達がゼノンに親しげに接する一番の理由は結局の所、黒髪のヒューマンだからだったりする。

 オラリオに来るまで異国という事で少なからず差別を受けてきた彼らは、同郷人らしき苦労人を放っておけず何かと気にかけていたのだ。

 またタケミカヅチ・ファミリアの面々は、恩恵に頼らない武の使い手である点からゼノンを尊敬していた。武神であるタケミカヅチから手ほどきを受けてきたタケミカヅチ・ファミリアの実力は神の恩恵であるレベル基準よりも高い。

 神の恩恵を授けられてから鍛錬をはじめた者(ダンジョンに潜るばかりで鍛錬とは言い難いが)、などとは雲泥の差である。

 だからこそそんな彼らは、組手でタケミカヅチ本神も含めて造作無くあしらうゼノンを、特にタケミカヅチ・ファミリアの首領であるカシマ・桜花は、表にこそださないが兄貴分のように慕っている。

 なお、オラリオにあまり無くあっても高価な極東様式の料理や道具を頼めば簡単な説明だけで再現してくれることも、タケミカヅチ・ファミリアのメンバーが慕う理由だったりする。

 ゼノンにしてもタケミカヅチに救われた孤児である彼ら彼女らを、アバンに救われた自身と重ねてみているのかもしれない。

 タケミカヅチ・ファミリアの面々は金目当てでタケミカヅチを襲撃したことなど一度もないが。

 そんな付き合いのあるゼノンとタケミカヅチ・ファミリア。

 他ファミリア、異国人でありながら良好な関係。

 だからこそ、桜花率いる眷属達がゼノンの仲間であり家族であり息子(誤解)である『リトル・ルーキー』ベル・クラネルに『怪物進呈』をしてダンジョンから生還したと聞いたその時、主神であるタケミカヅチは眷属達の無事を喜ぶと同時にゼノンとヘスティアに申し訳無さから項垂れてしまったのだ。

 

 もっとも、その事を把握できたのは、『怪物進呈』の対象がベル・クラネルだと判明したのは、帰還した眷属達の治療が終わり一晩たってからだが。

 なお気づくのが遅れた理由が、ベル・クラネルの特徴である白髪が『どたまかなづち』を装備していたせいで見えなかったせいだったりする。

『怪物進呈』の瞬間にすれ違った、『絶✝影』の二つ名を得たばかりの新米レベル2ヤマト・命がかろうじて覚えていたから判明したのだ。

『怪物進呈』の対象がゼノンの義息子。それを知ったカシマ・桜花はヘスティアの得意とする極東謝罪及び懇願作法『土下座』を超える、極東最大の詫び、ケジメ作法である『ハラキリ』を実行する覚悟を決め、懐にゼノンが鍛えたドス・ナイフ(銘なしだが売れば7桁ヴァリス)を携え、主神タケミカヅチと共にヘスティアの元へと向かうのであった。

 

 

 時は遡り、ダンジョン13階層。

 世界最速兎『リトル・ルーキー』ことベル・クラネルは、自身より遥かに大きなリュックを背負うサポーターの少女リリルカ・アーデと、着流し姿に大剣を肩に担ぐ売れない鍛冶師の青年ヴェルフ・クロッゾと共に中層への進出を果たしていた。

 最初の死線と呼ばれる『中層』。

 山腹に存在する天然の洞窟を思わせるエリアである。先が見えないほどに奥まで続く岩石の一本道。戦いやすい開けた地形、通称『ルーム』に繋がっている通路である。

 

「行こう、皆」

 

 自身にとって未知の領域。

 多くの者が命を落とした死地に踏み出す。

 その事実にベル・クラネルは恐怖を感じるが、それ以上に高揚があった。憧れるあの人、アイズ・ヴァレンシュタインも歩んだ道、そこに自分もいるのだから。

 

「『サラマンダー・ウール』を着ているからといって気をつけてください」

 

 リリルカの注意の声が響く。  

 一本道という地形で『ヘルハウンド』の火炎放射を躱すことは困難である。

 だからこそ見つけしだい真っ先に叩く必要がある。

 口から放たれるのはエイナ・チュールによる講習で学んでいるので(それぐらいどこから吐くのか)、火を吐かれる前に速度の早いファイアボルトを命中させて防ぐことも考えていた。

 事前情報から対応の段取りを決めて進むベル・クラネルパーティ。

 そこへ、べたらっべたらっ、という何かがかけてくる音が聞こえてきた。

 

「・・・・・・いきなりか」

 

 ヴェルフの呟きと同時に現れるモンスター。

 ごつごつした黒一色の体皮の逞しすぎる犬のような四足獣、ヘルハウンド。

 

「距離を詰めるぞ」 

 

「火を吹かせてはなりません!!」

 

「うんっ!!」

 

 戦闘開始。

 こちらが駆け出す姿を認識した2頭のヘルハウンドは強烈な遠吠えを上げてから凄まじい勢いで突っ込んでくる。

 お互いの直進により距離はあっという間に縮まり、攻撃射程に入る。

 

「ギャッ!?」

 

 大きく飛び跳ねたヘルハウンドは人体の死角たる空中から襲いかかる。

 確かに長柄の武器でもない限り対応できぬ攻撃だが、ベル・クラネルは『どたまかなづち』を装備している。噛みつこうとするそのトラバサミのような顎の側面に身体を捻らせた勢いのまま『どたまかなづち』側面でぶっ叩く。

 首と頭に負荷を感じたベル・クラネルだがその痛みは瞬く間に消え去り、礼をするように頭を下げた後『どたまかなづち』の後ろ部にてヘルハウンドの顎を突き上げ砕く。

 

「せいっ!」

 

 アッパーカットされたかのように逆エビのように仰け反り宙に浮かぶヘルハウンド。そこへヴェルフが大剣を一閃、冒険者を恐れさせる『放火魔』は火を吹くことも出来ずに両断された。

 ベル・クラネルの『どたまかなづち』による迎撃とヴェルフ・クロッゾのトドメの一撃。

 パーティだからこそできる、一呼吸で一頭仕留める連携である。

 だがヘルハウンドは2頭。

 片割れが殺られたモンスターは距離を離し、下半身を高く上半身を伏せるようにな態勢を取る。牙を剥いた口の隙間から、大粒の火の粉が放たれる瞬間を伺うように溢れている。

 

「ちょっと遅いです!」

 

「ギャンッ!?」

 

 リリルカ・アーデの腰に下げたランタンに潜むフレイムが『(出番かな~)』とスタンバっている中、鋭い一矢がヘルハウンドの右眼に突き刺さり頭部深くまで捻り込まれる。

 ゼノンにより改良された小手のように装備できるハンドボウガンの威力は今までとは比べものにならない。重くなった弦も『力の指輪』を装備することで苦も無く引ける。

 的確に急所を射抜いた一撃はリリルカ・アーデの狙い以上の効果を発し、動きを止めるどころか半ば仕留めてすらいた。

 瀕死のヘルハウンド、そこへ兎と鍛冶師が武器を振り下ろし完全にトドメをさした。

 

「幸先は良さそうだな」

 

「にわか仕込みの連携、とは言えないくらいできてきましたね。というかゼノン様どれだけ改良したんですかコレ」

 

「でも、いい感じだったよ」

 

「「(それ以上に『どたまかなづち』を使いこなしてることに驚きなん(ですけど)だが)」」

 

 ベル・クラネルはここまでの道程でも使いにくそうな『どたまかなづち』を上手く扱っていた。

 攻撃を防ぐのは勿論、跳躍力を活かしてゴブリンを一撃で地面の染みにした時はドン引きしたものだ。

 槌先端からファイアボルトを放つのは序の口で、槌後方にファイアボルトを当てて加速すらした。

 そんな使い方をすれば、こんな武器を使えば頭と首にかかる負荷はダメージどころか後遺症がでてもおかしくないレベルだが、『どたまかなづち』に刻まれた術式がそれを完全に解決していた。

 

「っと。また来たぞ」

 

 休む間もなく現れるモンスター。 

 それもまた中層の特徴である。

 

「あれは・・・・・・ベル様!?いえ、晩ごはんのおかずですね」

 

「僕か食べ物の二択っ!?」

 

 ぴょこぴょこと現れたのは、長い耳に白と黄色の毛並みふさふさの尻尾に鋭い一角を生やした兎。

 ヘスティア・ファミリアではなぜか頻繁に食卓に上がる肉を連想させるモンスター『アルミラージ』である。

 

「この間の『白兎の丸焼き木苺ソース、ソーセージ添え』も美味しかったですねベル様(ジュルリ)」

 

「なんでランクアップ祝いのホームパーティでそれをチョイスしたのかなゼノンさん。丸焼きにした兎を白く塗り飾って頭には着色したカリフラワーを詰めて目はプチトマトで舌はハム、開いたお腹からソーセージがまろびでてたんだけど」

 

「とあるエルフ族の伝統料理らしいです」

 

「轢死した白兎にしか見えなかったよ」

  

「おい、お前ら今の話を聞いた『アルミラージ』が怖気づいたのか下がってんだが」

 

 同胞(違うが)を食い散らかす侵入者共に怯えるアルミラージ達。だが食われてなるものかと勇気を振り絞り手近にあった岩を砕く、そしてその中から新しい天然武器を取り出した。

 片手で装備できる小型の石斧。この通路にある岩の多くは『迷宮の武器庫』なのだ。

 

『『『キャウ!!』』』

 

「皆さん、ベル様もとい晩ごはんに油断しないで殺りますよ」

 

「おう!!」

 

「ねえその言い方やめて」

 

 

 

 中層での激闘。

 それはタケミカヅチ・ファミリアに『怪物進呈』をされてからも続くことになる。

 慣れぬ撤退戦、逃れる為に飛び込んだ縦穴。

 ヴェルフ・クロッゾが崩れ落ちたタイミングで襲いかかってきたモンスターの群れは、リリルカ・アーデがゼノンに託された『魔法の球』を投げつけ対処。そこから現れたさまようよろい10体が足止めとなる。

 多くの苦難と決断の末。

 墜ちていくベル・クラネル一行。

 下へと進む道を選んだ彼らに待ち受けるものとは。

 

 

 なお余談ではあるが、そんなベル達が窮地に陥っている頃、地上で異世界の英雄にして彼らの父親分であるゼノンは、寝床であるテント内で寝ぼけたまま上半身を宝箱型モンスター『ミミック』に突っ込んで爆睡していたとか。

 

「(なんか温い)」

 

『ミミック』さんもどうすれば良いのかと困り果てていたそうな。

 





 タケミカヅチ・ファミリアの、というかカシマ・桜花のアンチポイント。
 それを防ぐ為にはあらかじめ付き合いがあれば良いじゃないと、付き合いについて触れました。
 じゃないと地上で発覚時にゼノンが皆殺しにしかねないので。
 原作桜花さんにしても、意図はわかるが詫びはすべきかと。暗黙の了解であれ仁義は通すべきなので。
『仁義を欠いちゃあ人の世は渡っちゃいけねえ』
 ただそういった説教的なあれはエスカレートしかねないので止めました。
 ちなみに当作では、腹斬って詫びる覚悟です。

 ドス・ナイフ。
 ゼノン作、極東風の短刀。タケミカヅチ・ファミリアの武具に興味を持ったゼノンが参考にして拵えた。特殊な能力はないが雷鳴の剣より優れた逸品。命のランクアップを祝って(ついでに)あげた。普段は使わずに神棚に奉じてある。

 ベル・クラネル。
 良い感じに潜ってたら怪物進呈くらった。鍛えてはいたが慣れぬ中層では突破できるほどではななかった。さり気なく『どたまかなづち』を使いこなしていた。

 リリルカ・アーデ。
 火力アップで戦力に。狙撃能力は元から高め。なお影には執事風シャドーが憑いている。

 アルミラージ。
 かなりの頻度(兎素材目当て)で食卓に兎が出るため肉認識。
『白兎の丸焼き木苺ソース、ソーセージ添え』は浅井ラボ先生の名作『されど罪人は竜と踊る』から。主人公である不幸の化身である眼鏡置きガユスの恋人にして後の妻であるジヴーニャが作ったアルリアン人(長命ではないなエルフに似た人種)伝統料理。
 味は良いが見た目は白兎の轢死体。

 魔法の球。
 ゼノンがリリルカに託したマジックアイテム。中身はさまようよろい10体。ザボエラが使ったら魔界モンスターを詰め込んだ魔法の球の小型版。
 ただ中身のさまようよろいは時間制限があり周囲のモンスターを攻撃しかできないので、あくまで足止め用の道具。
  
 ゼノン。
 爆睡中。この後ヘスティアが発見し悲鳴をあげてから引きずりだす。ミミックさんの気遣いで唾液はついてない。
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