ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
葬送のフリーレンは未視聴でしたがミミックに食われるシーンなんてあったんですね。
実はコレ、作者が朝起きた時に炬燵に頭を突っ込んでたこと(実話)から思いついたネタなんです。
目を覚ました時にパニックって騒いだら駆けつけた弟にゴミムシを見る目で見られました。
「今回の件は団長である俺の責任です。ケジメとして腹を切ってお詫びいたします」
タケミカヅチ・ファミリア団長、カシマ・桜花はミアハ・ファミリアのホーム【青の薬舗】の床に、直に膝を折り膝下から足の甲を床につけ、尻をかかとに据えて背筋を伸ばした姿勢、極東でいう正座の姿勢を取ると上着をばっと脱ぎ捨て上半身をさらし、いつだか俺が祝いの品として渡したドス・ナイフを抜き放った。
「ケジメ?」
「キル?ハラ?」
「なぜ腹?」
ケジメ、お詫びという言葉から桜花が何を意図しているのかはなんとなく伝わる。
だが腹を切るという言葉があまりにもぶっ飛んでいる為、文化が違い理解の及ばないヘスティアとミアハついでに俺は混乱状態に陥ってしまった。
ケジメの為にハラキリしようとする桜花。
桜花を止めようとする千草。
桜花の覚悟に水を差すなと千草を抑える命。
葛藤の末に苦渋の表情で押し黙るタケミカヅチ。
店で腸をぶち撒けないでと涙目のナァーザ。
カルチャーショックで混乱する俺達。
状況はまさに混沌としていた。
ベル達がダンジョンから帰ってきてない。
俺が泣きそうな表情のヘスティアにそう告げられたのは夕日が傾き周囲が仄暗くなった頃だった。
俺の記憶ではっきりしているのはベル達に装備(どたまかなづちとその他)を渡したところまでで、あまりの眠気にテントに入ったまでは薄ぼんやりと覚えているがソレ以降は定かでない。
ヘスティアによるとテントの中で宝箱(ミミックだが宝箱というか工具箱に擬態してた)に上半身を突っ込んだまま爆睡していたらしい。
見た瞬間、殺人事件かと思って勢いよく引きずりだしてしまったとか。
そういえばヘスティアの趣味は読書。そのジャンルの作品もよく読んでいたな。いわゆるミステリートリック作品は冒険者の耐久性と耐毒性と身体能力のせいで成り立たないことが多いが、神の恩恵を刻まない一般人と神からはウケていた。
「リリルカはダンジョン内で泊まる用意はしてなかった筈だが」
初めての中層だから遅くなっただけだろう。そう思いそう信じていられたのは日付が変わるまでだった。朝早くから探し回るのは迷惑だからとヘスティアを宥めつつ、シャドー達に都市内を探索させたがベル達は見つけられない。
つまりダンジョンから未帰還である可能性が高いことを示していた。
ギルドの受付時間になったタイミングで冒険者依頼の為の資金を渡してからヘスティアにはベルのアドバイザーであるチュール嬢の元に向かわせる。ギルドは冒険者のダンジョンへの出入りの記録がされているからだ。
ファミリアを立ち上げて一月と少しのヘスティアと、ダンジョンとギルドに詳しくない俺がこのような行動をとれたのは、ミアハとナァーザが協力してくれているからだ。
かつて製薬系中堅ファミリアを率いていたミアハはそれ相応の経験があり、ナァーザの過去の件もあり様々な助言をしてくれたのだ。
「ダンジョンに潜る準備が必要だな」
もはや面倒やら非効率だとか言ってられない。ベル達が帰還できない状況に陥っているなら迎えにいくしかないだろう。
助けを仰ぐべきだとミアハは提案してくれた。ヴェルフはヘファイストスの眷属だからそちらにも連絡しなければならない。
俺とヘスティアはできる限りのことをする為にオラリオ内を駆け回った。
そして時間は戻る。
なぜ桜花がハラキリしようとしているのかは、ベル達が帰還していないのはタケミカヅチ・ファミリアが原因だったのだ。
13階層で負傷した千草を抱えた桜花達は逃亡を選択、生き延びる為にベル達にモンスターを押し付ける行為『怪物進呈』を行ったのだ。
俺が助力を求めにタケミカヅチのホームに行った時、桜花達はその事情ーーベル達の外見特徴とパーティ構成を聞いて察し顔を青くして全ての顛末を俺とタケミカヅチに打ち明けたのだ。
昔の俺だったら、聞いた瞬間に桜花達を殺したのだろうか?いや昔の俺ならベル達に拘ることもなかったか。顛末を聞き即座に頭に血が上り雷鳴の剣に手が伸びたが、ヘスティアがまだ生きていると教えてくれていたこと、タケミカヅチ・ファミリアとの今までの付き合いがあったことから抜き放つことはなかった。
ただ俺の顔を見た桜花が覚悟を決めた表情となっていたが。
桜花達も必死だったとはいえ、モンスターを押し付けてしまった己の子の行いをタケミカヅチは詫びた。タケミカヅチはただ恩恵を与える神ではない、行く宛のない孤児を幼少期から育てていたまさに彼ら彼女らの親と言える存在。だからこそ深く真剣にタケミカヅチは頭を下げた。
そしてタケミカヅチが謝罪した後に、団長である桜花がケジメをつけると言い出したのだ。
「御免」
俺が真剣に打ったドス・ナイフはドラゴンの鱗とて紙の如く切り裂く切れ味がある。人体などスルリと捌いてしまうだろう。
コレ以外に詫びる方法がないと覚悟を決めた桜花の刃が突き刺さる瞬間、
「ベル君達が戻ってこなかったら、君達のことを死ぬほど恨む、けれど憎みはしない、約束する。だからケジメはいらない」
誰よりもタケミカヅチ・ファミリアに憤っている筈のヘスティアが桜花を止め、宣言した。
ヘスティアは彼らを許した。慈悲深いその言葉と毅然とした態度に、タケミカヅチの子供達は生まれて初めて主神以外の神に心打たれた。
そしてそれは俺も同様だった。
倒れた敵に手を差し伸べ許した、小さな勇者ダイの姿をヘスティアに重ねていた。
「ゼノン君もそれで良いかな?」
恐る恐るとヘスティアは俺に問う。リリルカの件でやらかしてる俺ならタケミカヅチ・ファミリアを皆殺ししてもおかしくはない。
「まだベル達は生きてんだ、恨み辛みは本人達に言わせようや」
でもあんなヘスティアの姿を見ちまったらどうこう言えねえよ。
「だけどゼノンっ!!俺は世話になっていたお前の息子にっ!!」
息子じゃねえから、俺はまだ19だ。
桜花が食い下がる、知り合いだからこそケジメは必要だと訴えでる。
「いくらオラリオが流れ者に寛容でも、目立つ極東人は習慣や容姿の違いから差別を受ける。同郷身内で集まり団結するのは当然だ」
桜花達が生活するにしても足元を見られたことも少なくはない。身内以外気を許せない環境、だから代表である桜花は舐められない為に強気な態度でいるしかなかったのだ。
「頭なんて下げた日には何を要求されるかわかりはしない。だから仲間に累が及ばぬようにケジメをつける」
「ああ、そうだ」
「桜花、テメェの失敗はベル達を同郷じゃないからと警戒したことだ。『怪物進呈』のその時にアイツに助けを求めていたら、協力してその場を切り抜けられていただろうよ」
「・・・・・・そう、かもな」
タケミカヅチ自身も周りの神共から馬鹿にされてるからな。オラリオの連中が信用できなくて当然だし、ぶっちゃけ信用するべきではない。
でもベルは、ベル・クラネルはその数少ない例外だった、そんだけの話。
「付き合いがねえのがいけないんだ。ベル達を助け出したらタケミカヅチ・ファミリアで鍋やんぞ鍋。いざとなったら助け合える、そんな間柄でいる為にな」
「ゼノン…」
「ゼノン君の言う通りだよ」
ヘスティアはゼノンの言葉に納得し、タケミカヅチの子供達に懇願する。
「今は、どうかボク達に力を貸してくれないかい?」
「「「「「「「仰せのままに」」」」」」」
一糸乱れない動きでタケミカヅチ・ファミリアの6名は膝を床につき、頭を垂れた。
ヘスティアの恩情に応えようする想いが自然と現れていた。
「では、話を先に進めよう。時間が惜しい」
ミアハが前に出てそう仕切る。
「捜索隊、だったな。まだベルが生きてるのは間違いないんだな?」
「ああ確かさ。ヘファイストス、ヴェルフ君の方は?」
「ちょっと待ちなさい、契りを交わした子が多くて把握しづらくて・・・・・・・・・」
眷属の生死が把握できるのは有り難いな。
ならばあとは捜索呪文で探せば良いが、ダンジョンは地下だから地図だと同じ場所を示すんだよな。
「生きてるのがわかりゃ充分だ。今から俺がベル達を回収しに潜るよ」
「「「「!?」」」」
「良いの?ゼノン君」
俺がダンジョンに興味がないことを知る者達は驚き、ヘスティアが心配そうに問いかける。
普段潜らないのは労力と対価が釣り合わないからに過ぎない。
「でもヘスティア、その子はレベル1よね?」
「ダンジョンに潜ったこともないのだろう?」
ヘファイストスとミアハが無謀だと判断し止めに入るが。
「実力は大丈夫だろうが、道案内はいるな」
「なら俺が」
「拙者も」
俺の実力を察しているタケミカヅチと組手で何度も地面に転がした桜花達が名乗りでる。
「俺にメドローアが使えれば、ベル達の元へ続く一本道を創れるんだが」
位置確認を怠らなければ巻き込む心配もないしな。
「なんかとんでもないことを言わないで、あとダンジョンは破壊しないでね危ないから」
壊しちゃ駄目なのか。
メドローアは無理でも階層をぶち抜いて潜る気だったんだが。
「ゼノン君が行くなら戦力は足りると思う。あとは捜索の為に地理に明るい人がいれば」
闇雲に探しては手遅れになる。
ならば階層に詳しい者が必要なわけだ。桜花達では中層に行けても見て回れるほど詳しくはない。
「本当に大丈夫なの?」
「ああゼノンは料理人なのだろう?」
ヘファイストスとミアハが疑う中、どうするかと悩んでいると。
「オレも協力するよ、ヘスティア!」
青の薬舗の扉が勢いよく開き、優男の胡散臭い顔した神が現れた。
「何をしに来た、ヘルメス!」
「ご挨拶だなぁ、タケミカヅチ。神友のピンチに駆けつけたに決まってるじゃないか」
そこからは神達のやり取りが続く。
優男風の胡散臭い神の名はヘルメス、後ろに眷属らしき女を引き連れたソイツはヘスティアが出した冒険者依頼の依頼書を揺らしながら依頼を受けると申し出ていた。
ならば引き受けてもらうだけだが、日頃の行いと性格が宜しくないのか、この場に居る神全員が疑ってかかっていた。
初対面である俺や桜花達、眷属一同はそんなやり取りに置いてきぼりをくらっている。
最終的にヘスティアが了承したが、それも仕方ないからという様子だ。
「俺は今から出られるが桜花達はどうだ?」
「準備が必要だ、待ってくれ」
「今夜当たりに出発ね」
主神の言葉にヘルメス・ファミリアの団長であるアスフィという眼鏡をかけた女が言う。
「あとヘルメス様・・・・・・先程、私を『連れていく』とおっしゃっていましたが、まさか」
「ああ、オレも同行する」
何やらヘルメス・ファミリアがまごまご話している。そしてその内容を聞きつけたヘスティアもダンジョンに同行することになり、そんな彼女にナァーザからは薬、ヘファイストスはヴェルフ宛の物を託される。
「不味いねえ」
ヘスティアという足手纏いが居ると危険だとヘルメスは感じたようだ。
どうやらコイツは俺を単なるレベル1だと見立ててるようだ。
「もう一人戦力がいるか」
「ならば俺が同行しよう」
そんな胡散臭い神の呟きに応える漢がいた。
「なんで居るのお前?」
それは鍛えられた筋肉を持つ猪人。
強者としての風格を漂わす益荒男。
「陣中見舞いに行ったが不在だったから探したぞ。ミアハ・ファミリアの分もある」
高級ケーキ詰め合わせを持つその者の名はオッタル。オラリオ唯一のレベル7。フレイヤ・ファミリア団長にして最強の冒険者である。
「ケーキありがとな、帰れ」
陣中見舞いを受け取り青の薬舗から叩き出す。その場の全員が凍りついたように硬直していたが、そんな余裕は俺達にはない。
「ヘルメス、だったな」
「あ、ああ」
「まごまごしてたら、アポロンやフリュネまで大勢引き連れて来かねない。当てがあるなら急いでくれ」
顔を引き攣らせる神に俺は急かすように告げる。ヘルメスとヘスティアがダンジョンに潜るならアポロンも潜りたがるだろうし、オッタルのようにフリュネまで参加しようとするだろう。
それは1日帰って来ない身内を迎えに行くにはあまりにも大所帯過ぎる。
ベル達の為ならそうした方が良いのはわかるけど、大手ファミリアは不仲と聞くからいらんトラブルがおきかねん。
「もしかして、君ってかなりとんでもないのかな?ゼノン君」
こちらを見定めるような眼差しを向けるヘルメス。それがいつだかのザボエラやキルバーンのようだった。
「つまり近い内に死ぬのかね?」
「なんでっ!?」
すいません、フリーレンは未視聴です。
今話は、ベル捜索隊結成までですね。
桜花はハラキリしようとしてますが、それだけゼノンに申し訳なく、ゼノンと敵対したくない現れです。
原作桜花が頭を下げないのはオラリオ来てからの差別などで頑なだったのかなと思いましてこう書きました。現実でも謝罪は全面降伏に取られるとか聞いたことがありまして。
ヘファイストスとミアハはゼノンの実力を知らないので心配です。
道案内がいたら充分なんですけどね。
ヘルメスからのくだりは原作のままだから流しました。リューさんは戦力的には充分ですが参加します。
オッタル参戦、却下。
ロキ・ファミリアが遠征してるからかち合わないように断りました。
というかオッタル参加したらフリュネも来ます。大混乱ですね。