ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 まさかあれだけの情報で正解する方が居られるとか、この海の◯ハクの目を持ってしても見抜けなかったわ。
 ゼノンはどんな武器を用意したのか、どうぞお確かめください。
 ただ、
 作者は買いませんが、毎回必ず購入して装備させていた方が居られましたら、マイナーと言ってすいませんでした(土下座)。



第34話

 

 パンッ、パンッ。

 弾けるような乾いた音が迷宮内に響き渡る。

 無尽蔵に湧き出るモンスター達は悲鳴も断末魔も上げることなく息絶える。

 急所を吹き飛ばされ、肉体を両断され、魔石を抉り出され、現れては死に、灰となって散る。

 その一連の流れが、まるで定められているかのように繰り返し繰り返し行われている。

 シュララララ。

 そんな擦れるような、掠れるような音がしたかと思えば、

 

「お、ととと」

 

 カランッとヘスティアの背負う籠に魔石やドロップアイテムが放り込まれる。

 ベル・クラネルパーティ捜索隊。

 その先頭を歩く男ゼノンは、一歩も止まることなく歩き続けながらモンスターを始末し、戦利品の回収も同時に行っていた。

 同行したタケミカヅチ・ファミリアの三名と、ヘルメス・ファミリアのアスフィ、ヘルメスにより呼び出された助っ人リューは動くタイミングすらない。

 

「ま、造作もねえな」

 

 使うの久方ぶりだがなんとかなるもんだ、とゼノンは呟く。

 片手がブレた。

 そうレベル4の中でも別格であるリュー・リオンの視力であってもそうとしか認識できない速度で動けば、パンッとした音が張り、頭部が弾け飛んだモンスターの身体がドサリと地面に崩れ落ちる。出現したそばからモンスターは呆気なく討たれる。

 その両手に持つ武器『くさりがま』。

 草刈りで使う片手鎌を持ち手の先端あるいは刃の後ろから鎖で重量を測定する分銅と繋いだ、農民達の自衛用の武器である。

 遠くの敵に攻撃をでき、鎖を振り回すだけで威力を上げられるこの武器は、ヒノキの棒や竹の槍、銅の剣よりも強力な武器である。

 普段の生活で使う物を組み合わせるだけで作れるのも良い。

 ゼノンの元の世界では農民達はこれを振り回してスライムやいっかくうさぎに立ち向かったものだ。

 使い方としては分銅を当てるか、鎖を巻き付け動きを止めたところで手元の鎌で相手を切り裂くのだが、ゼノンレベルとなればその程度ではない。

 アバン流鎖殺法。

 鎖、鞭、などの縄の類を武器とするその殺法であれば威力は段違いだ。

 斬る難易度が高い手鎌であれど硬い鉱物のような肌を持つモンスターを切り裂き、まるで生きているかのように高速で走る鎖の側面は触れたモノをヤスリのように削る、そして重量ある分銅ともなれば当たった箇所を一撃で弾き飛ばす。

 

「すげえ」

 

「嘘みたい」

 

「くさりがま、拙者でもあれは難しいですよね」

 

 タケミカヅチ・ファミリアの三人組は呆けたようにその戦いぶりに見惚れている。

 ただ倒すのではなく鎌や鎖で魔石とドロップアイテムを回収しているので、わざわざ解体したり拾ったりする手間もない。

 

「むぅ」

 

「いやいやいや嘘でしょ」

 

「怪物祭での活躍は真実だったんですね」

 

 リュー、ヘルメス、アスフィも只のレベル1と思っていた存在の実力に圧倒されていた。

 

「強いとは思ってましたがこれほどとは」

 

 いや、リューだけはゼノンが弱いなどとは思っていなかったが。

 

「え、弱いと思っていたからあんな事を言ったんじゃないの?」

 

「私もそう聞こえましたが」

 

 ヘルメスとアスフィがそう問えば。

 

「? 過信しているとは言いましたが弱いとは言ってません。立ち振舞いから只者ではないと理解できてましたし。どんな強者だろうと舐めてかかればダンジョンで命を落とす。だから忠告したんです」

 

「・・・・・・そういうこと」

 

 あちゃーとヘルメスは頭に手を当て。

 

「・・・・・・私は研究者なので」

 

 少し恥ずかしくなったアスフィは頬を赤く染めてそっぽを向く。

 

「もっともその必要はなかったようですが。彼は強く、一切油断などしていない」

 

 鋭い眼差しを向けた先には気怠そうな態度のゼノンが映る。

 そんな態度でありながらも長くオラリオに住み、ダンジョンに潜った経験のあるリューとアスフィよりも遥かに早くモンスターを察知し、気付いた頃には討伐していた。

 

「お、お、ととと〜」

 

 籠に魔石が入る度に、神力を封じ外見通りの体力しかないヘスティアがバランスを取ろうと声をあげながら揺れる、弓が武器である千草などは手が空いているためそんな彼女を支えるくらいだ。

 

「あれほど強ければクラネルさんと潜れば良いものを」

 

 ヘルメスに呼び出されたその時は自らが先頭に立ち、かつて『疾風』と呼ばれた武威をもって襲いかかる脅威を払うものだと思っていた。

 だが、ヘルメスは戦力として当てにしていたがゼノンからすれば単なる道案内程度にしか思われていなかったのだ。

 

「ここいらには抜け道やら潜めたり隠れる場所はないんだな」

 

「ええ」

 

 再生し変動するダンジョンとはいえ毎日のようにまるで違うモノに作り変わったりはしない。

 記憶とギルドの記録に照らし合わせ、ベル・クラネル達の捜索に集中する。

 

 出発してから数時間。

『上層』には居ないと当たりをつけて『中層』進出を優先したが、既にタケミカヅチ・ファミリアが敗走した階層まで到達しようとしていた。

 想定よりも遥かに早い階層進行速度。さらに遭遇したモンスター全てを討伐しているのだからとんでもない。

 

「まぁ、楽でいいですね。やる事がなさ過ぎる気もしますが」

 

 アスフィの呟きは虚しく消える。

 前方から回転しながら突進してくる生きた砲弾ともいえる鎧鼠のモンスター『ハード・アーマード』は弧を描く手鎌に両断され、壁面から奇襲をかけようとしていたダンジョンを穿孔しながら移動するミミズに似たモンスター『ダンジョン・ワーム』は分銅に押し砕かれる。

 先程からずっとこうである。

 直進し殲滅しながらも後方から出現するモンスターすらも前を向いたまま対処する。

 ゼノンという強者の知覚範囲は、レベル4である冒険者二人を遥かに凌駕していた。

 そして、アスフィ・アル・アンドロメダことヘルメス・ファミリアに所属し『万能者』の二つ名を持つ上級冒険者は、こんな桁違いの実力者を事前情報だけで舐めてかかり見下した事実にそっと冷や汗をかくのであった。

 

「いねえな」

 

 光源が一定量確保されていた上層はともかく、燐光が乏しい中層は酷く暗い。

 だが松明の光源のみが頼りで探索した破邪の洞窟よりは大分マシな為、ゼノンの目には充分に周囲を把握できる。

 

「ゼノン!!」

 

 すると捜索に集中した桜花が何やら見つけた。それはヘルハウンドの死体。魔石を抽出されずに原型を残したそれは放置されていたようで、鼻を突く腐臭が漂っている。

 討伐したモンスターを放置。

 それは相討ちとなって死に絶えたか、回収する余裕が無く放置されたかのどちらかだ。

 稀に第一級冒険者などが上層中層の素材を不要だと放置して進むことがあるが、残された魔石を喰らったモンスターが強化種になってしまうこともあるため魔石の回収だけはするように伝えられている。

 

「時間的にはここら辺ってことか?」

 

 これがベル・クラネル達の戦闘の痕跡である可能性は高い。

 中層に潜る冒険者は上層に比べると大幅に数が減る。だからこそ、もう二日前になるというそれなりの収入になる魔石が放置されていたのだろう。

 

(暗黒闘気の残り香もねえ。シャドーが散ったわけではなさそうだ)

 

 せっかくの亡骸、手駒を増やす為にヘルハウンドの死体で『アニマルゾンビ』でも拵えようかとゼノンは考えたが、ヘスティアはともかくヘルメスの前でやるべきではないかと思い留まる。

 犬の嗅覚を持つ手駒は捨てがたいが、情報通を気取り、あの実直なタケミカヅチ、お人好しなミアハ、職人気質なヘファイストス、そして善良なヘスティアからも信用されていないヘルメスの前で迂闊な真似はすべきではないと判断する。

 

「アンドロメダ、それでどこを探すんだ。デタラメに探し回っても見つかりっこないぞ」

 

 桜花達、タケミカヅチ・ファミリアはまだ中層に詳しいとはいえない。

 だからこそ、経験豊富だろうヘルメス・ファミリア団長に尋ねる。

 

「日帰りの装備で中層に赴いたベル・クラネル達に、迷宮内で滞在する選択肢はない」

 

 だから何かしらの事故で、脱出できないかさらに下に落ちた可能性が高いと彼女は言う。

 

「ここまでの一本道にいないならそうなるか」

 

 ならばより深く、より危険地帯に落ちていったということになる。

 ただでさえ突破できるかわからない階層の更に下へと。

 

「自力で帰ってこれないほど、深い階層に落ちた彼らが取るべき行動はなにか。コレほどの時間を生存しているならば当てなく彷徨うのではなく、安全階層である18階層を目指していると、私は推測します」

 

「本当に実行するのか?まともな神経じゃない」

 

 ダンジョンの怖さを知り、敗走を選んだ桜花が信じられないように唸る。

 

「私ならそうする。そして彼らも、いや冒険を一度超えた彼なら、振り返らずに前へ進むと思います」

 

 あり得る話だとゼノンは考える。

 到達した経験こそないがリリルカは中層について調べあげ事前知識を得ていた。

 ならばそこまで降りて態勢を建て直そうとしてもおかしくはない。

 それに、

 

「救助は期待できなくとも、上に戻る当てはあるからな」

 

 現在迷宮にてロキ・ファミリアの遠征が行われている。アイズと接触できれば協力を乞い願えるかもしれないし、ロキ・ファミリアの後ろについていけば危険は大分減るだろう。

 帰りの収入は期待できないが、まるで相乗りするかのように便乗する冒険者達は実はかなり居るのだ。

 

「じゃあ、目標地点は18階層。周囲の痕跡に気を配りながら正しい順路で進むとするか」

 

 途中の縦穴に飛び込んでショートカットしたい誘惑にかられるが、同じことを思ったヘスティアの発言は二人のレベル4に止められる。

 ランダムに開閉する縦穴に飛び込んでは木乃伊取りが木乃伊になりかねないそうだ。

 

「階層をぶち抜いてショートカットも駄目なのか?」

 

 破邪の洞窟で何度かやった所業をゼノンは提案する。ビッグバンは威力がありすぎるが、イオラ程度なら階層に穴を開けられるだろう。

 

「嘘はついてないからできるみたいだけどやめてね危ないから」

 

「本当に・・・・・・見誤っていたねえ」

 

 ヘスティアの溜息混じりの制止と、ヘルメスの何やら予想外だと言わんばかりに帽子を深く傾けながらの呟きが迷宮にこぼれる。

 

 ダンジョンを未だに知らぬ異世界の英雄は、なぜ神が迷宮に入ってはならないのか、その理由すら正しく理解していなかった。

 

「ふんばれよ、ベル、リリルカ」

 





 なんとマイナー武器は『くさりがま』さんでしたー、パチパチパチパチ。
 正解した方がいてビビリましたガチで。
 アバン流鎖殺法があるから採用を決定しました。楽をする為というのも、これなら接近して斬る必要もなく、魔力を消費する必要もなく、魔石の回収も楽だからです。
 序盤でブーメランの前ぐらいにあったりするくらいの武器で買うならもっと良いのまで粘ったりするイメージが強いですね。くさりがまなのにグループ攻撃じゃないですし。なんでいばらのムチやモーニングスターの分類じゃないか気になりますが、鎖を巻き付けて鎌で斬るのが基本だからですかね?

 えーと、あとリューさんについてですが、もとよりゼノンさんとの付き合いはありませんし、正直あまり好きではありませんが、強者認識は『豊穣の女主人』のメンバーと同様にもってました。
 ただ慢心男だとは思ってキツイ当たりだった感じです。エイナ同様、ベルの話題にでまくるから不快に感じてたのもありますが。 

 ヘルメスは勘違いですね。
 この手のキャラは情報通を気取ってみたいものしか見ないイメージがありまして。
 アスフィはとばっちりです。

 感想返信が滞っていてすいません。
 でも鋭い感想や深い考察が多くて、次話を書く前に返信で内容尽きてしまいかねないので、返せないのです。ただ毎度の励みと、発想、ネタを頂戴しておりますので生きる糧になっております。
 これからもどうかよろしくお願いいたします。
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