ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「なんと心惹かれる造形か」

「おい椿っ!お主、救助した冒険者の装備を直すとかぬかして回収したそうじゃの!ファミリアの団長たるものなんという所業を!」

「む、ガレスか。一切反論できぬ言葉だ。だが見よこの斬新な造形を」

「これは・・・・・・ナウいのう」

「だろう、シンプルゆえに誰も思いつかずに作り出さなかった造形、極まった機能美。こんなものを見て何もしないなどできはせぬ」

「ドワーフの好み直撃じゃなあ」

「まあ、重要なのは刻まれた術式の方だろうが、それは魔術師か魔導具職人の領分。某には手が出ぬな、ヴェル吉ならば興味あるだろうが」

「むう、ワシも欲しい」

「造りは把握したからできるだろう。あとは創り手の許可のみよ」

「サイズを測り、替えの槌を作っとるから文句は言えぬな」

「コレを作った鍛冶師とは語り合いたいものだ」



第37話

 

「ここか」

 

 シャドー達の発する暗黒闘気を辿った先は、道化のエンブレム掲げる大規模の野営郡。

 

「ロキ・ファミリアだねえ、遠征帰りかな?ところでなんで迷わず此処まで来れたんだい?君はダンジョンを潜るのはじめてだろ」

 

 こちらを探るようなヘルメスの言葉。

 ゴライアスを瞬殺してからずっとこんな感じだな。まあどうでもいいが。

 

「勘。あとはヘスティアの愛の力」

 

「いやーわかってるねえゼノン君。ボクの愛のベル君センサーは此処にベル君がいるとビンビンのバリ3だよー」

 

「バリ3?」

 

「いやー・・・・・・嘘ではないけどなんかなあ」

 

 そういや、神の力が通じないスキルあったんだっけか。どうやら任意発動みたいだなコレ。

 

「とにかくベル君について聞きにいこうよ」

 

「しかしヘスティア様。他所のファミリアにいきなり訪ねて良いもんか?」

 

「ですね」

 

 桜花と千草が不安そうに言う。

 あー大手ファミリアってそんな怖い存在なんだよなあ。

 

「まあなんとかなるだろ。揉めたら叩き潰せば良いだけだしよ」

 

 何人か知り合いはいるが、ベルを門前払いした門番やら自分らがロキ・ファミリアだとプライド高い連中もいるからな。

 そういったのは仲間以外が接触すると噛みついてくるんだよな、選民しそうとかそんな感じに。

 

「「嘘を言ってないのがなあー」」

 

 神二柱がなんか言ってるが知らん。

 

「野営中すいませーん!迷子のウチの子知りませんかー!?」

 

「迷子扱い」

 

「怪物進呈をそんな扱いで良いのでしょうか?」

 

「私達が言って良いことではないのですが」

 

 野営をしていたロキ・ファミリアの面々は近寄る集団に警戒していたが、迷子というダンジョンらしからぬ発言(ダンジョンでの迷子はほぼ詰み)に呆気に取られていた。

 

「迷子ですか?」

 

 団員の一人が恐る恐る訊ねてきたので、正直にベルについて説明する。

 

「ああ、それなら」

 

「わーーっ!ゼノンだーーっ!

 なんでダンジョンにっ!?」

 

「ん?ティオナか、迷子を迎えにな」

 

 大きな声を上げて駆け寄ってくる薄着(ヘスティアも大差ないが)のアマゾネス。

 怪物祭の件で知り合い、それから働いてる食堂にちょくちょく顔を見せに来ては英雄譚について語りだす、元気な娘だ。

 英雄譚、春姫のヤツも好きだったからいつか会わせてやるのもいいか。

 イシュタルから女にしてやれと勧められた極東の狐人・春姫、娼館に通う事で異種族への忌避感は大分薄まってきたから抱くことは抵抗なかったが、鎖骨見て気絶する女は抱けん。

 そう伝えると、魔法が希少だから面倒見ているが、そろそろ娼婦(男性経験無し)ではなく使用人にするかとイシュタルも頭を悩ませていたな。

 

「迷子?あ、アルゴノゥト君かー!」

 

「アルゴノゥト?お前が好きな英雄だっけか、道化とかどうとかの」

 

 一瞬ベルのスキルを知ったのかと思ったが、先日のミノタウロスとの戦いから連想したとのことだ。アルゴノゥトとやらもミノタウロスと縁があったらしいからな。

 

「そうそう、そのアルゴノゥト君が変な兜を付けて傷だらけで運ばれたんだよ」

 

「あー、変か?どたまかなづち。俺はベルにぴったりで便利な武器だと」

 

「変だよ(真顔)」

 

「変か」

 

「うん、変(真顔)」

 

 この元気っ子が真顔になるんだからデザインが駄目だったか。機能美を追求した良い感じのフォルムだと思うんだけど。

 

「それでベルは居るのか?」

 

「さっきまで寝てたみたいだけど、今はフィン達と話をしてるよ。私は仲間の看病の為の道具を運んでる途中ー」

 

「看病?治癒呪文なら心得はあるが」

 

「あ、怪物祭で治癒魔法を使ってたもんね!?解毒は出来るっ?!」

 

「数百年生きた魔人の毒以下ならな」

 

 解毒か。

 キアリーでどこまで治せるか。元の世界だと解毒呪文はこれしかなくて、効果は本人の力量に左右されるんだよな。まあザボエラ印の猛毒を、致死毒含めて殆ど解毒できたからなんとかなるとは思うが。

 

「すご~い!!」

 

「「((嘘は言ってないんだよなー))」」

 

「ベルがそっちの団長と話し中なら邪魔しちゃ悪いな。ベルを助けてくれた礼だ、治癒させてくれ」

 

「本当っ!?ベートが戻るの明日の予定だから助かるよっ!!」

 

 ベート、酒場でやらかした悪ぶってるお人好し狼人か。尻がスプラッシュしたという事以外はそんな印象なんだよ。

 

「ベル以外の連れはどうだ?リリルカとヴェルフ、小人族の少女と、赤毛のヒューマンの青年なんだが」

 

「その二人ならまだ寝てるよー」

 

「悪いヘスティア、お前はそっちを頼む。ミアハのとこのポーションを渡すから必要なら使ってくれ」

 

「任せてよ、ゼノン君」

 

 本当なら今すぐベルの元に行きたいだろうに、ありがたいことにリリルカ達の事を頼むと了承してくれた。

 

「ならヘスティア様には俺達がついていく、荷物も預かっていますし」

 

「すまん、桜花」

 

「当然の事をしているだけだ」

 

 さすがに見知らぬ場所に一柱だけで行かせるわけにはいかないから助かるな。

 

「じゃ、行こーゼノン!早く早く!」

 

「急かすな、いや重症者がいるなら急ぐべきだな」

 

 背中をティオナに押される中、ここまでついてきたヘルメス達にも確認する。

 

「あんたらはどうする?一人は途中で離れていたが」

 

 あの覆面ウェイトレスはロキ・ファミリアに保護されてると聞いた時点で姿をくらましていたからな。素性を隠しているのと関係あんのかね?

 

「適当に過ごすよ。ウチのアスフィもファミリアの団長だから泊まるなら話を通さないといけないしね」

 

「街では泊まらないのか?」

 

 詳しくは知らんが、ダンジョン内の街だと聞いて印象に残っていたんだが。

 

「あそこ、ボッタクリ料金でさ。よほどのことがない限りは野宿が正解なんだよ」

 

 なるほどね。

 嫌な感じがする神だから動向を把握しときたいが、シャドーを使うとリスクが高いか。

 未だに神という存在には知らないことだらけ、どんな能力や隠し玉があるかわからねえ。

 

「まあいいやホレ」

 

「笛?」

 

「特に効果はないただの笛だ。なんかあったら吹け。この階層内なら2秒以内に駆けつけてやる」

 

 ちょい加工すればモンスターを集める笛になるが、緊急コールくらいには使えるな。  

 

「いやあ、嫌われてると思ってたけどねえ」

 

 意外だとばかりにヘルメスは言う。

 

「思惑あってもベルを助けにきたことは変わらねえ。やらかさん限りは身の安全くらい保証するさ」

 

「参ったねこりゃ(下手な足止めは無駄だな、かといってアスフィじゃ相手にならない。解毒魔法まで使えるとなると毒も使えないか)」

 

「(なんか命拾いした気がする)」

 

 ヘルメスとアンドロメダを置いて、俺は負傷者が集められたテントに向かった。

 

 ティオナに背中を押されてる時、負傷者が集められた天幕に入った時も、他所のファミリアのレベル1風情がと敵意と警戒と見下しを込められた視線を向けられ辟易したが、申し出た以上はやるべきだ。

 

「解毒呪文キアリー」

 

 無詠唱魔法、と誰かが呟く中で俺は一人一人解毒していく。まとめて治せないのがこの呪文の不便な点だ。ならばアバンの書の闘気術の章に載っていた『光の波動』を使えばいいんだが、キアリー程度で驚く連中の前では使えねえよな。

 そして毒妖蛆とやらの毒らしいが、感覚的に元の世界の死の蠍くらいの毒だ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「あとはミアハ・ファミリア製だがポーションも渡しとく。あんたらのお陰でウチのに使わずにすんだからな」

 

 ロキ・ファミリアのトップはあの腹黒そうな小人族。貸し借りはなるべく無しにしとかねえと、ヘルメスとは違う意味で面倒そうだ。

 用意しておいたポーションを治療師達に手渡し、俺は天幕を後にした。

 俺が去った後になにやら騒ぎになったそうだが。

 

「すっごいねー、ゼノン。本当にレベル1?」

  

「神の恩恵を刻む前に今の実力だっただけだ」

 

 神の恩恵のせいか、知識面から身体を鍛えたりが難しいんだよな。どうしても強くなる手段がダンジョンでモンスター討伐か、冒険者同士の殺し合いになる。

 元の世界のどこよりも発展しているオラリオ。世界中の人種が集まり、さらに魔石を動力とした道具類、神の齎す知恵や発想から広がる文化は興味深い。

 ただ、パプニカの気球やベンガーナの戦車のようなものはまだ見てないから、一部では向こうが優れているかもしれない。

 尤も、アバン先生とハドラーの二人が全力で文明の進化に力を注げば元の世界も時代が数百年くらい進んだだろうがな。

 

「そっか、なんだか御伽噺の英雄みたいだね」

 

 神の恩恵なく、不条理に立ち向かった英雄ね。

 

「そんな大層なもんじゃねえよ。昔はソレに成りたかったが、もうどうでもいいしな」

 

 あっちで死ぬまでの俺は英雄なんかじゃなく、ザボエラの言う『強欲者』。

 今の俺は・・・・・・なんだろうな。

 

「ホレ全員治したから、そろそろベルの元に連れてってくれ」

 

 英雄ね。

 誰より強くて、誰よりも賢くて、誰より呪文が使えて、どんな問題も解決できて、世界中に誰からも愛されて、誰よりも素晴らしい人格者。

 そんな存在だと思っていたが・・・・・・・・・・・・そんなもんじゃねえよな。

 少なくとも、あの人達も、アイツもそうじゃなかったんだから。

 

「わぁー、アルゴノゥト君見つけたー!」

 

 ベルの元へ走り出すティオナを見ながら俺は今さらながらに英雄とはなんなのかを考えていた。

 何が英雄なのかはわからない。

 でもベルは、どこかダイのような優しさとポップのような勇気を持つアイツは、英雄になれるかもなと期待していた。

 

 

 

「フッ、あれだけ魔法を使っても疲弊しない魔力量。ならばもう手段は選べない」

 

 そんな異世界の英雄を見る伝令神は、その実力を低くともかつての最強派閥構成員レベルだと仮定して、己が目的の為に最終手段をとる覚悟を決めた。

 

「何をやる気ですか、ヘルメス様」

 

「心配するなアスフィ、俺を誰だと思っている。

 俺はあのゼウスとヘラの間を使い走りしていた神だぜ、理不尽の対処法は誰よりも熟知している」

 

「・・・・・・私は死にませんよね?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・多分」

 

「改宗しようかしら」

 





 椿はハーフドワーフなのでこんな感じでした。術式には気付きましたが、此処ではどうにもできない感じですね。ただヘスティア・ナイフに刻まれてるし、ベートの装備もあるので不可能ではなさそうです。

 ナウい。
 1979年の流行語で、NOWから今、現代的な、今風と表現された死語ですね。
 作者は漫画とかで知ったと思います、なんか昔から当たり前に使っていたような?
 バリ3も多分死語かな?携帯のアンテナを指していたような感じです。
 
 ザボエラの毒。
 多分世界最高レベルかなと。毒殺されかけたり戦ったではなく有償で実験に付き合ってました。
 出世欲の強いザボエラをゼノンは嫌いではありませんでした。知識面だと格上でしたし。

 ヘルメスの処遇。
 まだ悩んでます。
 ただ抹殺、送還を望まれる方はすいません。彼の立場なら理不尽な強者には慣れてるかなと思いまして。彼の最終手段もあまり大したことではありません。
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