ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 話が進まないです。
 でも好きなキャラのやり取りを書くのはやはり楽しいです。



第39話

 

「みんな聞いてくれ!」

 

 遠征帰りの冒険者達が大きな輪を作って食事をしようとしていた。

 今回のロキ・ファミリアの遠征にはヘファイストス・ファミリアも参加しており、身内の顔を見つけたヴェルフが「げっ」と声をだす。

 格上の冒険者達を前に借りてきたウサギ状態のベルを見ながら、アイズに人気のない場所を勧められ座る。タケミカヅチ・ファミリアの三人はまだ謝るタイミングではないとすこしばかり距離をおいている。

 木箱の上に立ち、俺達の紹介をしたロキ・ファミリア団長フィン・ディムナ。その口上にリリルカは感心しているようだった。

 リーダーからの言葉になんだコイツラは、という視線がいくらか変化したのを感じつつ、食事として一人に二つ、三つの果物を渡された。

 礼を言ってから頂くと、綿花に似たフワフワな果物、名前もそのままに雲菓子は綿を蜂蜜に浸したような濃厚な味付けで甘くて美味い。

 口に入れてエネルギーに出来るなら暗黒闘気だろうと平気な俺に好き嫌いはないが、弟子時代にアバン先生に連れられてケーキなどの甘い菓子類を何度も食べたものだ。

 俺へのご褒美だと当時は言っていたが、アレは本人が食べたかったからだなと今なら思う。

 そんな懐かしさに身を浸していたが、隣に座るベルは一口齧って固まっている。

 そういえば甘い物が苦手だと言っていたか。だからジャガ丸君の甘味系は駄目だとアイズから勧められる度に涙目になっていたな。

 アイズは自分の好きな味を食わせたい気持ちと反応が面白いからと強引に押し付けていたが。

 

「ベル様、ベル様?お口に合わないのでしたら、リリがそれを食べましょうか?」

 

「いやいやリリルカ君、ここは主神たるボクが代わりに間接キスもとい食べかけを頂戴しよう」

 

「いえいえリリにそんな意図はありません。ただせっかく頂いたモノを残すのは申し訳ないだけで」

 

「それならボクが食べれば良いよね」

 

「「フフフ」」

 

 こんな地の底でも女の争いとは、乙女とはたくましいものだ。

 ベルには持ってきた食料でなんか作ってやるとして、この雲菓子やらダンジョン産の果物には興味が湧いてきたな。

 チュール嬢に後日訊ねてみるか。

 これら目的にならダンジョンに潜るのも悪くないかもな。あるいはベル達に頼むのも手か。

 乙女の争いは、横から手を出したヴェルフにより無事(?)解決した。食った後に胸焼けしたような反応した事からどうやらヴェルフの口にも合わなかったようだ。ベルの間接キスを奪われたダブル乙女がゲシゲシとヴェルフを蹴り出す、まああの二人から蹴られても大したことはないだろう。

 アイズはそんなやり取りにきょとんしている。

 

「それにしても、噂に聞いていたが・・・・・・不思議な階層だな、ここは」

 

 周囲を見渡したヴェルフがそう呟く。

 

「だな。地下の空間とは到底思えない」

 

 以前ザボエラから魔界の環境を聞いた事があるが、それともまるで違う。

 太陽の恵みが不要な独自の進化を遂げているらしいが、此処のように生き生きとした植物などは存在しないだろう。

 

「珍奇な実があって、空もあって・・・・・・『街』だってあるんだろう?」

 

「えっ・・・・・・『街』!?」

 

 思わぬ単語に仰天したベル。

 安全階層だからと住み着いた冒険者でもいるのかね?冒険者ならばステイタス更新の為に定期的に帰還しなければならないだろうが。

 

「・・・・・・ゼノンさんとベル、案内する?」

 

「ぜ、ぜひっ!」

 

「せっかくだしな」

 

 大した場所ではないとアイズの様子から察することができたが、ベルはワクワクしているようだった。

 つい頷いてしまったが、ベルの為に辞退すべきか?これはデートチャンスではなかろうか?

 だが断ったらアイズが拗ねそうな気もするんだよな。まあリリルカとヘスティアが額に青筋を浮かべている様子が視界に入ったのでどちらにしろデートは無理か。

 

「ゼノンー!アルゴノゥトくーん!」

  

 むっ?ティオナか。

 まだ口に甘い味が残ってそうなベルとヴェルフに干し肉をやっていると(ベルの食い方が人参を齧るウサギそのもの)、再びアマゾネス姉妹が現れた。

 ロキ・ファミリアの七人の最高戦力の半数がたびたび集まってよいのだろうか?

 

「干し肉食うか?」

 

 手製のジャーキーの出来は中々。

 オラリオは香辛料が手に入りやすくて助かる。

 

「貰うー!」

 

 とりあえずティオナに干し肉をやったら豪快にブチリと食いちぎってもりもり噛みだした。

 

「アンタね。私も欲しいけどもっとある?ハイエルフのリヴェリアはともかく、団長やガレスは欲しいと思うの」

 

「酒のつまみ分くらいならあるぞ。ほれ」

 

 保存と塩分補給の為に塩辛くしてあるがつまみにはうってつけだろう。

 

「ありがと。あと話を色々聞かせなさいよ。一宿一飯の恩よ、構わないでしょ?」

 

「(もぎゅもぎゅ)うん、聞きたい聞きたーい」

 

 強引に割り込んできたアマゾネス姉妹。なるほど、そこまで世界最速兎であるベルの情報を得たいのか。アイズもまた距離を詰めてく「あー」あ、お前も干し肉ね。

 ベルの周りの女比率上昇に、リリルカとヘスティアが眉を逆立て剣呑な空気を放ちだす。俺の前で口を開けたアイズに干し肉の切れ端を差し込んでやっていると、爛漫な笑みを浮かべたティオナがベルに能力値について聞いていた。

 どうやらミノタウロスの時にステイタスを目撃していたようだ。

 理由がわからないということはスキルまでは見ていないのだろう。

 答えに窮したベルは助けを求めるように俺を見るが、そもそも能力値が一つも上がらん俺に返せる回答はない。

 

「と、僕よりもゼノンさんですよ。ゼノンさんはレベル1なのによくここまで来れましたね。しかも神様連れてまで」

 

 む、矛先を変える作戦か。ベルめやりおる。

 そしてその言葉はこちらを窺っていたロキ・ファミリア三首領の興味も引いたようだ。

 

「なに、ベル達を助けに行く為にレベル4の冒険者が同行してくれてな」

 

 ヘルメス・ファミリア団長のアスフィ・アンドロメダと覆面の助っ人であるリューがそうだとヘルメスが言っていた。

 レベル2であっても階層主さえ回避できれば此処まで来ることは可能な以上、不自然ではないだろう。

 

「え?ゼノン君一人で階層主含めて遭遇したモンスター全部倒してきたよね」

 

 おいヘスティア。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 その言葉に聞き耳たてていた全員が驚き、ざわめきが野営地に巻き起こる。

 俺の実力を知っていれば出来て当然の事でも、レベル1としか見ていない者達からしたら信じられないことだからな。

 

「流石ゼノンさんですね」

 

「うん」

 

 ただベルとアイズだけは目をキラキラ輝かせて尊敬するように俺を見ていたが。

 

「それで神様、ゼノンさんはどんな風に戦いました?僕はまだゼノンさんがモンスターと戦うとこ見たことなくて」

 

「エクセリオンブレード使ってた?」

 

「(エクセリオンブレード?)なら説明してあげるよ。ダンジョンに潜ったゼノン君は両手に一つずつくさりがまを装備して、シュッとなって、パンッてなったら、シュラララッとして、カランと魔石を籠にいれてたんだよ」

 

((((((わかるかっ!))))))

 

 だいたいそんな感じだな。

 

「そんな。シュッとなって、パンッとなったら、シュラララッとして、カランだったとは」

 

「驚き。シュッとなって、パンッとなったら、シュラララッとして、カランとするとか」

 

「本当!?シュッとなって、パンッとなったら、シュラララッとして、カランとするなんて」

 

「わかるように話しなさいアンタ達。でもくさりがまでシュッとなって、パンッとなったら、シュラララッとして、カランとするなんて普通じゃないわね」

 

 ベルとアイズとヒリュテ姉妹には今の説明で伝わったみたいだな。リリルカとヴェルフは首を傾げているから伝わらんかったんだろう。

 わかりやすい説明だと俺は思うが。

 

「あー、よくわからんがゼノンの旦那は剣使いじゃないのか?ベルに剣の手ほどきしてんだろ(でもどたまかなづちを渡したんだよな)」

 

 ヴェルフがそう尋ねてきた。

 

「どの武器もある程度は使えるだけだ。剣が一番使いやすいのは事実だが、雑魚を蹴散らすにはくさりがまで充分でな」

 

「雑魚って、階層主のゴライアスも倒したってヘスティア様が言ってませんでしたか?」

 

「くさりがまで一閃だったよー」

 

「武器も持たず防具すら着ない、魔石なんて弱点ある裸巨人なんざ相手になるかよ」

 

 同じくらいの大きさのサイクロプスにギガンテス、すこしばかり小さいがトロルがアレに比べたら文明人に見えたわ。

 

「「裸巨人て」」

 

「たしかに裸」

 

 いやまあそれ言ったらモンスターは基本裸だけどな。でも同じ人型のゴブリンは服を着ていたような?

 

「ゼノンさんって本当に強いんですね」

 

「そんな話じゃすまないだろ」

 

「でも怪物祭で私達が苦戦したモンスターも瞬殺してたよね」

 

「何者なのよアンタは」

 

「さてね。雇われ料理人で、彫刻家の真似事して、鍛冶師のように武器を鍛えることができて、治療師ばりに治癒魔法使えて、こうして冒険者やっている。俺がなんなのか一言で称すなら、ヘスティアの眷属だよ」

 

 元の世界なら諸々ひっくるめて『アバンの使徒』で通せたんだけどな。

 しかし、ヘスティアの発言はチト不味いかもな。周りの冒険者共の興味と敵意と対抗心と疑念を煽ってしまったみたいだ。  

 適当にボコって実力示すわけにはいかんだろうし、絡まれたらどうするかね。

 

「ハイハイ、他所のファミリアの追求は御法度だろ?あまり聞きすぎては駄目だよ、ね?ティオネ」

 

「はい♡団長♡」

 

 ここでフィンが介入するか。

 たしかにこのままだと疑ってきた団員が喧嘩を売ってきそうだったからな。

 

「飯もすんだし、そろそろ天幕に引き上げるか。協力してくれた連中にも会わせたいが、それより話がある奴らがいてな」

 

 介入に乗っかって切り上げる。

 これ以上はいらんトラブルが起きるだけだ。

 

「えー、もっと話したーい」

 

「(コクッコクッ)」

 

「また今度な」

 

 駄々をこねるティオナとアイズを宥めすかし、立ち上がる。

 

「話がある連中ですか?」

 

「誰かいんのか?」

 

 リリルカとヴェルフが疑問に首を傾げ、薄々と察したベルが反応に困っている。

 

「お前らに『怪物進呈』した連中。と、言えば伝わるか?」

 

 さて、続きは天幕に戻ってからだ。

 顔を強張らせる二人を見ながら、また腹切るとかやらねえよな?と俺は地上でのやり取りから思っていた。

 





 今回は食事風景です。
 アニメ版だとシチューやサラダなど豪勢でしたが、行きならともかく遠征帰りなら無理ですよね。ダンジョン飯方式でもない限りは。でもモンスターは灰になるからなあ。

 ゼノンが甘味に強いのはなんでも食えるのと、アバンの影響です。アバンが甘味好きなのは作者の勝手な想像ですね。

 干し肉。
 携帯食料の一種ですが、しょっぱいので酒のつまみ向けです。雲菓子がエネルギー補給向きなら、干し肉は塩分補給向きです。ゼノン手製なので味は良いです。

 擬音説明。
 多分このメンツなら伝わるかなと。理論派には厳しいとこです。

 裸巨人。
 ゴライアスファンの皆さんごめんなさい。ゼノンはサイクロプスなどとの交戦経験があるからついそう言っちゃいました。

 まだまだ安全階層で話が膨らみそうですね。アニメ一期最終話まであとどれくらいだろうか。作者にもわかりません。
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