ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
ソードオラトリア。
ロキ・ファミリア所属じゃないと絡むの大変ですよね。ロキ・ファミリア自体が身内で固まってるイメージがありますし。
18階層の『夜』が終わり、『朝』が来た。
ロキ・ファミリアの下位団員(それでも遠征参加者にレベル1はいない)が作った食事を頂き、約束通りにアイズに『街』を案内してもらうことなった。
怪物祭でアイズ達と行動を共にしていたレフィーヤというエルフの魔導士がベルに敵意むき出しで、こちらを羨ましげに睨んできていた。
一緒に連れていかないのか?とティオナに訊ねてみればあのエルフ少女はレベル3、ロキ・ファミリアでは準幹部にあたる中位団員で、野営地にて仕事を割り振られているそうだ。
流石に三首領と呼ばれる三人はここを離れるわけにはいかないが、アイズとヒリュテ姉妹はこの階層程度ならば自由時間となるらしい。
いや、こちらを観察するように見つめるフィン・ディムナの態度から、この三人の役割はよくわからない俺を監視することなのかもしれない。
アイズの話によるとロキ・ファミリアの遠征では、単なるダンジョンに潜るではすまないイレギュラーな事態がおこってるらしい(詳細を語ろうとした時は止めたが)、だからこそ怪しい存在には探りをいれているのだろう。
傍から見たら怪しい存在なのは百も承知なのだが、この世界とは完全に無関係でロキ・ファミリアやギルドやダンジョンの事情など知らんのだが。
他所様の野営地に居るのも気まずいタケミカヅチ・ファミリアの三人を引き連れて『街』へと出発。
湖沼地帯、湖に浮かぶ島の上にあるという街。途中でベルが神威を抑えたヘスティアの様子に気づき、雑談しながら進む。
一人旅ばかりだった俺には語り合いながらの移動も中々新鮮な体験だったりする。
しかし『ダンジョンに神が存在することをバレたら不味い』か、人々の試練と鍛錬の為に神々により創り出された『破邪の洞窟』とこの世界のダンジョンはモンスターが湧き出て宝物を得られる共通点は有れどまるで別物のようだ。
別物と言えばこの景色からして明白だろうが。
迷路も仕切りも存在しない円形状の大空間、南端には17階層へと通じる洞窟、森は南部一帯から東部にかけて広がり、青い川や泉が存在する。
北部には木が疎らに立つ湿地帯、西部には湖へ鎮座したこの岩島、中心部には幹が途轍もなく巨大な大樹がある。ひたすら薄暗い洞窟の続く破邪の洞窟とは異なる大自然がそこにはあった。
「リリはオラリオ周辺以外の場所に出たことはありませんが、綺麗ですね」
「外を見て歩きましたが、この景色に勝るものはそうはお目にかかりません」
「・・・・・・故郷の山辺を思い出すな」
「うん・・・・・・」
リリルカと命、桜花と千草が心奪われたように言葉を交わす。元の世界でも見たことの無い完成された箱庭に俺も唸るばかりだ。
木を切り倒した道と高所を超えてベルがウキウキしながら楽しみにしていた『街』へと辿り着く。
最初に目に入ったのは木の柱と旗で作られたアーチ門、上部に共通語で書かれた『ようこそ同業者、リヴィラの街へ』の文字だった。
はしゃぐベル達を窘めるようにティオネが、「騙されないように」と忠告する。
泊まるとぼったくられるという事前情報と今の発言から、ここはたちの悪い観光地のような場所らしい。
アーチ門をくぐった先、島の最上部の断崖の上には地面から生える白水晶と蒼水晶に彩られた美しい集落系の『街』が築かれていた。
水晶と岩に囲まれた宿場町、それが『リヴィラの街』なのだ。
「この街を経営するのは、他ならない冒険者です。細かい規則や領主は存在せず、各々が好き勝手に商売を営んでいます」
ヘルメス・ファミリア団長のアスフィが、オラリオに到着した当日のベルのようになっている面々に説明する。ダンジョン内に存在するこの街は、元はギルドが迷宮に拠点を設けようとして頓挫した計画を、冒険者達が勝手に引き継いで造り上げたものだそうだ。この場所が街の定位置におさまっているのは、周囲を湖に囲む立地が砦代わりになるからだそうだ。
「砦代わりってことは、モンスターに襲われるんですね」
「そうよ、つい一ヶ月前もモンスターに襲撃されて壊滅しかけたもの」
「あれ危なかったよね〜!あたし達もその時ここにいたけどさ〜!」
ロキ・ファミリアが居ても守りきれない拠点か、いや壊れる前提の場所なのか。
ここの冒険者達は街を下手に守って損害を増やすよりは逃げてほとぼり冷めたら再建する方を選び続けたらしい。なるほどギルドなどの威信や体面が関わる組織が運営できないわけだ。
現リヴィラの街は三百三十四代目。
名の由来は、初めて街を築いた女冒険者から取ったものらしい。
その辺りからしてギルドから手が離れた、冒険者達の自立拠点らしさが滲みでているな。
「あのアスフィ様、この街にも沢山の水晶がありますが」
「ええ、この街だと売れないけど、地上なら18階層のクリスタルは換金できますよ」
「ベル様っ、ここから帰る際には是非水晶を山ほど採取していきましょう!」
俺達ベル捜索チームはともかく、ベル達は今回の稼ぎは無いからな。リリルカが金策に走るのも当然か。俺も素材としていくらか採取していくか。うまくすれば、ザボエラから聞いた魔界の強大なモンスター、ダーククリスタルを再現できるかもしれない。
アイズの話からキナ臭さを感じるオラリオの現状だと戦力は欲しいからな。
「流石にこの人数で移動するのは周りに迷惑だ。ここからは自由行動、各自行きたい場所へ散らばろうじゃないか」
両手を広げてそう提案するヘルメスに、それもそうかと皆が賛成した。
一人だけで行動するのは禁止し、それぞれグループを作る。できれば一人くらいはこの街の経験者がいて欲しいとこだがな。
「よしベル君、ゼノン君、リリルカ君、ボクと一緒に回ろうぜ!」
ヘスティアはベルと二人きりになりたいだろうに仲間外れを出したくないのか、自らの眷属全員に声をかけた。リリルカとは恋敵なのに律儀なことだ。
「アイズ君はご遠慮願おうかな!!」
とはいえアイズは最大の恋敵だから威嚇するが。
「嫌です、ベルとゼノンさんは私が案内します」
だがアイズはコレを拒否。
アイズからはヘスティアやリリルカのような恋愛感情の類は感じないが、案内を譲る気はないようだ。
「ぐぬぬ」
「あ、ゼノンが行くならあたしもー」
「ちょっと、団長の頼みでアンタはきっちり監視・・・・・・いえなんでもないわ」
監視役の人選ミスしてないかフィン・ディムナよ。あまりにも露骨過ぎまいか?
一体、遠征で何があったのやら。
「悪いなヘスティア。俺はヒリュテ姉妹と見て回る。アイズ、コイツラを頼んだ」
「任せて(ムフー)」
「「ゼノンさん(様)は別行動」」
なんでそこで残念そうにするんだベルとリリルカよ。
とにかく班分けも済んで、俺達はそれぞれ散ることになった。
なお、ヴェルフはタケミカヅチ・ファミリア三人と行動するようだ。蟠りもまだあり、居心地はよく無さそうなのがかわいそうだった。
「不思議と懐かしいもんだ」
冒険者達による雑な商店が立ち並ぶ通り。
その雑然とした空気に俺は懐かしさを感じていた。
「そうなのー?」
「生まれ故郷(多分)がこんな場所だったからな」
尤も故郷、アバン先生に拾われたあの場所はコレほど治安がよくなかった。町並みももっとうす汚かったし、何よりも死んだ目かギラついた目をしたガキ共が向こうには山ほどいた。
レベル二の冒険者でもここまで来れる者は限られる。だから人数は限られある程度の治安が保たれているんだろう。
(それでも碌でもないのはいるみたいだけどな)
見れば柄が良くない連中が目に付く、リリルカを搾取していた者達ほどの下衆共ではないが、気に食わない相手に喧嘩を売るくらいはしそうだな。
「ゼノンの生まれ故郷ってどんなトコー?」
ティオナの質問に「スラム街」とシンプルに答えて終わらせる。既に国に焼き払われて無くなった場所について語るのもなんだしな。
「しかし高いな。この値段なら探索した方が良いか」
装備はいらんから、この階層で採れる食材でもと思ったが、購入するには高すぎる。
「木の実類は上でも高値がつくから高いわよ。元からなんでもボッタクリ価格だけどね」
「だから私達も森の中でキャンプだしねー。あ、素材や魔石を売ろうとしても安く買い叩かれるから気をつけてねー」
なるほどエグい商売だ。
持ち運んでられないから売る必要があるが、捨てるよりマシな程度の額でしか買い取られないのか。
そして店主はここで買い取った素材と魔石をギルドで定価で換金すると。
需要があるから成り立つ商売だな。
行きで入手した籠いっぱいの魔石とドロップアイテムは魔法の筒で持ち帰った方が良さそうだな。
アイテムの取捨選択はダンジョン探索の基本だが、溝に投げ捨てるには惜しい利益だ。
そして金銭のやり取りは貨幣ではなく証文か物々交換で行うそうだ。
ここまで到達できる冒険者は『神会』で二つ名が与えられている。無名ではない冒険者の名と、所属する『ファミリア』のエンブレムから陰影を取り証文に記すそうだ。
エンブレムか、まだヘスティア・ファミリアには無いがこれから必要になりそうだな。
現状団員は三名(ゼノン作モンスターはてんこ盛り)のヘスティア・ファミリアだが、これから増えるかもしれんしな。
「ねえねえ、またエクセリオンブレードを見せてよー」
「何ができるか教えなさいよ。魔法に関してはリヴェリアもうるさいのよ」
質問攻めを適当にあしらいながら俺は両手に華という状況で観光を楽しんだ。
む、18階層名物『ダンジョンサンド』か。これは買うとするか。
リヴィラの街回です。
原作読むと本当に分かれたのかってくらい皆で話してましたね。
ゼノンは正体不明の強者ということで探りを入れられてますが、人選(ティオナ)から察するように本格的な調査ではなく、下の連中を黙らせる為の方便です。
フィンも知りたがってはいますが、闇派閥や下層での騒動とは無関係だと理解しています。というかゼノンのアリバイは調べたらあっさりわかるので。
後日、イシュタル・ファミリアとの付き合いが懸念されますが、きっちり楽しんでいた証拠が山ほど(死屍累々のアマゾネス達)でるのでその疑いも晴れます。
しかし二次創作を書いてると原作シーンの取捨選択が上手い作品を凄いと毎回思います。
そこら辺に手間取り、話が長引くのが書く側としての悩みです。