ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ヘルメスの扱いを受け入れてくれる方が沢山いてホッとしました。
 土下座は最初から決めてましたが、言い当てる方々がおられて焦っていました。
 原作展開にこだわる、というよりはこのキャラが居たらこうなる、という形で書いております。
 なのでオリ主に関わらないとだいたい原作のままの行動になる感じですね。
 闇派閥、ソードオラトリアにはどこまで関われるか。ヘルメスが要請する可能性はありますが、ヘルメス自身の信頼が薄めなので、ロキ・ファミリアとは友好的に動けなくなるんですよね。
 怪人のせいで、ぽっと出の強者は疑われる傾向にありますし。
 
 ちなみに当作品ですが、ギャグ作品として書いております。
 目指す目標が、ワンパンマン。  
 最強系シュールバトルギャグ、のつもりです。



第44話

 

「気分悪いな」

 

「そう言わないでおくれよ」

 

 俺は現在ヘルメスと二人、木の上に立ち枝葉の影に隠れていた。

 罪悪感からシクシク痛む胃を押さえながら俺はその光景をじっと眺める。

 冒険者達の輪の中に辿り着いたベル。

 これから始まるのは冒険者の洗礼、無法者達の宴、英雄になる夢を放り捨てた者達の享楽の場。

 ヘルメスの企み。

 それは都市最高峰の魔道具制作者である『万能者』アスフィ・アンドロメダが創り出した『ハデス・ヘッド』なる装備した者を透明化するアイテムをベルに因縁のある、ベルの世界最速記録に不満のある冒険者に貸し与え、リンチさせるというもの。

 ロキ・ファミリアが出発する野営地混雑時にヘスティアを攫わせ誘い込み、透明化した同レベルだが経験ある冒険者と戦わせる。

 オラリオに来てまだ一月と少しの田舎出身の夢見る純朴な少年に。冒険者達の悪意と嫉妬を思い知らせ、それを乗り越えられるか確かめたいそうだ。

 

(必要だったかね?)

 

 了承こそしたが、俺はその企みの必要性に悩んでいる。冒険者の悪意、綺麗ではない人の一面、それに関しては劣悪ファミリア出身のサポーターのリリルカ、復権目論む実家から飛び出しファミリア内で孤立するヴェルフ(魔法の試し打ちなど割と自業自得な面もあるが)などから学ぶことができただろう。

 何よりもベルは、孤独と、必要とされない辛さを知っている。

 夢見る少年だが、既に何度も潰されかけてはいるのだ(某ヤンデレのちょっかいもあるし)。 

 ただ、確かめたいというヘルメスの考えにも理解はできる。ヘルメスはかつての最強を知っている、神時代の最高峰を知っている、黒龍(という存在らしい)に敗れた事実はあっても、今の最強より遥かに強かった二大ファミリアとそこに居た最強達を知っている。

 そこまで、それ以上に、ベルが成れるのか見極めたいのも、その両ファミリアの部下だった身としては当然だろう。

 ゼウスとヘラの遺児。

 それがそうするだけの存在であることは、その情報を知り青褪めて胃を押さえだしたアスフィ・アンドロメダの反応が示していた。

 

「それに見たかったのはベル君だけじゃない、彼等もだよ」

 

 ヘルメスの視線の先には、リリルカとヴェルフとタケミカヅチ・ファミリアの三人。

 彼等がどう動くのか、彼等がベルの為に動くのか、それほどまでに人望がベルにはあるのか、それもまたヘルメスの見極めたかったことの一つなのだ。

 

「胃、胃が」

 

 適当な言い訳をして姿を晦ました俺を、リリルカと桜花は探しているようだ。

 いやリリルカに関しては既に疑問を抱いてる様子だ、シャドー経由からの情報で「あの二足歩行する過保護が何もしないなんてありえるのでしょうか?」とか呟いているようだし。

 誰が二足歩行する過保護じゃい。

 暫し探した後に俺がいないとわかると、リリルカを暫定リーダーとしてヘスティア及びベルの捜索を開始し始めた。

 

「さあて、これからどんな展開になるかな?」

 

 ヘルメスのワクワクした顔を見ながら、俺は昔ならありえない精神的要因からくる胃の痛みに苦しむのであった。

 

 

 場面は動く、舞台は進む。

 天然の円形の高座、ベルとヘルメスに唆された冒険者モルドは闘技場の興行のように向かい合い、観客であるモルドと大差ない燻り冒険者達を観客に戦っていた。

 いかに世界最速記録保持者と言えど、見た目と年齢から強そうには見えないベルと、ガタイも良く顔に傷のある冒険者らしい外見のモルド。

 その戦いはモルドに切り札なんてなくても一方的なものになると確信させ、周囲の連中を盛り上げる。

 彼らとて心根悪辣な外道ではない。例とすればリリルカのソーマ・ファミリアでの扱いを知ったら不快に感じる程度の善性はある(団長だったザニスよりこの場の全員は強い)。

 けれどベルを殺さないという前提と生意気な小僧に分からせてやるという建前が、この事態を引き起こしている。

 何より冒険者は無法者。

 怪物進呈を許容する彼等にモラルなど当てにするほうが間違っている。

 

 だが、

 一方的になる筈の展開は一切起こることはなかった。冒険者としてのキャリアの差、年齢による体格差、透明化による圧倒的優位は、ベルに通じることはない。

 ベルの経験は普通ではない。

 それは、ランクアップするまでの経緯を記した書類を読んだギルドアドバイザーであるチュール嬢の反応からして明白だ。

 それに加え、ベルはアイズと俺による訓練に関しては伏せている。

 ゆえに戦闘経験に関してはさほど問題ではない。体格差、筋力差に関しても同様だ。強化されたミノタウロスよりモルドは筋力があるわけではないし、またベルの戦闘スタイルとして筋力比べをすることはない。

 そしてなによりも、

 

「てっ、てめえ、見えてんのかぁああああああああああ!?」

 

 ベル・クラネルに透明化は通じない。

 これはベルの戦闘技術が理由ではない。確かにアバン流刀殺法・空の技『空裂斬』の修得には、実体無き存在のその核を捉える為『心眼』、眼力に頼らぬ第六感に近い感覚を会得する必要がある。

 だが俺はまだそこまで教えてはいないし、かつて小さな勇者ダイが魔王軍六軍団長が一人氷炎将軍フレイザードを討伐した時のような覚醒もしていない。

 ならばなぜ見えるのか。

 それは、

 

〈旦那様と共に敵を討つ〉

 

 ベルに憑けたシャドーが、こっそりベルと融合しているからである。

 そのため現在ベルは、実体無き暗黒闘気生命体であるシャドーの視界を得ているのだ。

 

「(あんな使い方もあるんだな)」

 

 予想すらしない被造物の活用方法に創造者である俺も目から鱗である。

 ミストバーン、正確にはミストのような暗黒闘気生命体が肉体ある存在に取り憑ける・融合できる事は知っていた。

 だが取り憑いた存在に自らの能力を貸し与えられることは知らなかった。

 あるいはそれは、ベルの為に創造したあのシャドーの固有能力なのかもしれない。

 

「(ま、俺は手を出してねえし)」

 

 ベルの為に何もするなとシャドーに命じることはできる。融合までしたらベルにシャドーの存在がバレてしまう恐れもある。

 だがもはやあのシャドーはたとえ命令違反で俺に消されようと、ベルの身を第一として動くだろう。

 

「(だから無駄だと言ったんだ)」

 

 ヘルメスがあまりに一方的な、ベルが圧倒する光景に目を見開き驚いていた。

 あの融合状態は魂を目視でもできなければわからないだろう。

 だからヘルメスにはなぜベルが優位なのか理解できない。理解できないから、自分の中の知識から理屈を引っ張りだして強引に納得する。

 

「さすがはあのアルフィアの甥、ってところかな」

 

 生来の才能という理屈で。

 ちなみにベルが透明化したモルドに反応できる理由はもう一つある。

 それはベルが視線に敏感だから。

 某ヤンデレ女神による無遠慮過ぎる視線に、この約二ヶ月間ずっとさらされ続けたベルは、元から人一倍臆病なその感覚を研ぎ澄ませてしまったのだ。

 シャドーとの融合で見えて、さらには感覚でわかるのだから、モルドという同程度のステイタスの冒険者ではどうにもならないだろう。

 今のベルに相手に強者ぶるにはあまりにもアイツらは実力が足りな過ぎた。

 

「チクショウがあああああ!!」

 

 そしてそれはモルド自身が、先を行かれること、追い抜かれることに慣れてしまった本人こそが、誰よりもわかってしまった。

 

「哀れなもんだ」

 

「しょうがないさ、才能の差ってヤツはある」

 

「そっちじゃねえよ」

 

 ヘルメスのやれやれとした態度で言った方ではない。

 

「夢を捨てられないことが、哀れなもんだ」

 

 レベル2。

 それとて冒険者の中では上級と言える存在ではある。オラリオでは数はいるが、外ならば充分に強者扱いされるほどだ。

 だからモルドはチヤホヤされたいなら、オラリオで燻るより外に出れば良いのだ。

 主神との関係もあるだろう。

 だが、見切りをつけて故郷で錦を飾ればちっぽけな自尊心と故郷の安全は守られる筈だ。

 だが彼はそれをしない。

 まだ自分は上に行けると信じて、オラリオでダンジョンに潜る日々を続けている。

 命の危険ある冒険を。

 想いが報われないと理解しながらも。

 そんなどうにもならない感情を抱える姿が痛々しくて哀れで仕方ないのだ。

 

「はあっ!!アバン流刀殺法大地斬!!」

 

 ベルの両手のヘスティア・ナイフと牛若丸が閃く。振るわれる大剣はミノタウロスには比べものにならない。だから容易く大地斬で断ち切られる。

 

「そんな、馬鹿な」

 

 武器を失い呆然とするモルドに、アイズ直伝の回し蹴りを繰り出す。

 その一撃で吹き飛ばされ、蹴りの威力と地面に激突した衝撃で切り札である『ハデス・ヘッド』が砕け散ってしまった。

 

「ぎっ、ぐがぁ・・・・・・クソガキがぁ」

 

 頭を押さえ、ふらついた身体を起こすモルド。もはや勝敗は明らかだ。

 

 

「ここまでかな?」

 

 決着はベルだけではない。

 囚われたヘスティアはリリルカ達により助けられ、邪魔する冒険者達を蹴散らして今まさに合流する段階まできている。

 人数差に関してはレベル4らしいリューの加勢であっさりリリルカ達に傾いた。

 ヘルメスとしては物足りない展開のようだが、どちらにせよリューと合流した時点で終わる騒動に過ぎない。

 

「じゃ、とっとと撤収するか」

 

 企んだ本神が終わりだと言うならもう後片付けだけでいいだろう。

 負傷者をリヴィラの街まで運んで適当にホイミしてやれば終わりだ。

 悪意と嫉妬をした煽られ利用された連中をボコる気にはならないしな。

 そう決めて、動こうとしたところで。

 

【やめるんだ】

 

 力ある言葉が場を支配した。

 ソレを発したのはヘスティア。

 彼女はその争いを見かねて、神の力を行使してしまったのだ。

 

「おいおい、駄目だろヘスティア」

 

「これが神威か。全開ではないだろうが、大魔王バーンと遭遇した時のことを思い出すな」

 

 尋常ではない気配。

 下界の者を平伏させる神の威光。

 それは生物として格が違うのだと悟らせる。自分が捕らえられた時には使用しなかったソレを、争い傷つけ合おうとする子供達を止める為に解放してしまった。

 

「(こんな力を持つ存在が山ほどいたら、そら好き放題できるか)」

 

 元の世界でも平伏しないヤツはどれだけいるか。

 この世界の人間が、古代の英雄を目指さず、神の恩恵を賜るのも納得してしまう。

 幸いなことは人格者である善神も降りてきたことだろう。でなくば下界は完全に神々の遊び場だった。

 

「・・・・・・うわあああああ!?」

 

 ヘスティアの神威を受けて、一人の冒険者が逃げ出せば、後を追うように続々と走りだす。

 砂埃と悲鳴が過ぎ去った後、森には静けさだけが残った。

 ヘスティアはベルに泣きべそをかきながら抱きついていた。

 そんな様子を駆けつけた面々が囲むように微笑みながら見守っていた。

 

「一件落着、か」

 

 むしろマッチポンプだろうがな、と内心呟きながらなんと言い訳して合流するかと頭をかいたところ、

 その異変は起こった。

 足場が、森が、階層全体が揺れている。

 あちらで最初に気付いたのは経験あるリュー。そしてベル達もまた悟る。

 異常事態が起きる前触れであると。

 

「・・・・・・ヘルメス」

 

「不味いねこりゃ」

 

 冷や汗をかきながらヘルメスは言う。

 

「これが神がダンジョンに潜ることを禁止する理由なのか?」

 

 気配を感じて天井を見上げれば、安全階層を照らす水晶の中で何かが蠢いていた。

 

「かつて暗黒期にも神威の解放でモンスターが出現した事例はあった。だがあの程度の解放であんなものが産み出されるのはありえない」

 

 ダンジョンに意思がある。

 とびきりの悪意が煮詰まりに煮詰まった意思が。

 

「ウラノスの祈祷はどうした。それとも・・・・・・ロキ・ファミリアが対応しているデュオニュソス絡みの闇派閥の暗躍がダンジョンを刺激しまくってるのか」

 

「厄ネタを住人に完全に秘匿しておいて都市運営なんてしてんじゃねーよギルド関係者」

 

「いやそれは、ウラノスの責務で、俺は雇われだし。ぶっちゃけ対応する側のロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアとガネーシャ・ファミリアからの信用も底辺なんだオレ」

 

 秩序側が一切団結してねえのかよ!!

 闇派閥とかいう連中が少し団結しただけで各個撃破されて終わりだろうが。

 

「まあいい。あれは俺が殺る」

 

 パキリと白水晶がひび割れる音が響き、何かが生まれようとしているが、見る限り大したことはない。

 

「・・・・・・・・・待ってくれないか」

 

「あん?」

 

「アスフィにリヴィラの街に応援を出させる」

 

 ヘルメスの手には小さな石。

 それで現在透明となってヘスティアを護衛しているアスフィに連絡をするのだろう。

 

「ゼノン君なら倒せるんだろう、アレを」

 

「・・・・・・・・・テメェ」

 

 開花した菊の花を彷彿とさせるクリスタルから顔を出したのは巨人。

 本来誕生しない筈の階層に君臨する『迷宮の孤王』ゴライアス。

 皮膚の色、気配から先日瞬殺した同じモンスターよりも強いことがわかる。

 元の世界でも色が違うだけで別次元の強さのモンスターなんてザラにいたからな、スライムとか。

 

「ベル達にアレをあてがう気か」

 

「駄目なんだよ」

 

「あ?」

 

「個の強さでは黒龍に届かなかった。ゼウスとヘラだけでは駄目だったんだ」

 

 ヘルメスの表情は懇願に似た必死さがあった。

 

「ここで、この場面で、冒険者達が一致団結できないのなら下界に希望なんてない。ここで、この場面で、冒険者達を派閥を超えて団結させられるなら・・・・・・・・・ベル・クラネルは英雄に成れる」

 

 個の力で世界を救えない。

 それは黒のコアを発動させようとしたバーンの企みを、世界中の人々が、でろりん達が阻止したことから証明している。

 

「あと少し、あと少しだけ待ってくれ。オレに希望を見せてくれ」

 

 そんなヘルメスの必死さを俺は振りほどくことはできなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・チッ。直接戦いはベル達がどうにかならなくなるまではしない。だが、死者は一人も出さないように援護する。

 妥協できるのはここまでだ」

 

「ありがとう」

 

 クソ、意気地なしが。

 俺はダイやアバン先生のように全てを背負う覚悟が持てねえってのかよ。

 

 ベルに期待か。  

 引き下がったのは、ヘルメスにのってしまったのは。俺もそう思っているからかもな。

 

(悪いな)

 

 ベル達が襲撃してきた冒険者達を救いに駆け出す様を見ながら、俺は深く深く謝罪した。

 

 





 長くなってしまったのでここまでです。
 できれば今日中にもう一話上げます。

 ベル君に透明化が通じないのはシャドーちゃんか融合するからでした。少年ヤンガスと不思議なダンジョンネタですね。
 まあヤンデレ女神のストーキング効果もありますが。なおヤンデレ女神の被害はゼノンもあり、また元の世界でも魔王軍からの監視が厳しかったです。

 ゴライアス出現。
 ヘスティアのせいじゃないらしいので(原作ヘルメス談)闇派閥のアレコレも要因かなと、別の迷宮との接続もダンジョンに意思があるなら不快でしょうし。

 団結しない秩序側。
 ゼウスとヘラは夫婦だから協力できたけど、現状はバラバラですからね。そら闇派閥とエニュオが好き放題しますよ。
 なおヘルメスの信頼が底辺扱いなのは作者認識ですが、ゼウスのパシリなのは周知されてだろうからなのもあるかなと。
 
 ゼノンの決断。
 瞬殺したいけど堪えました。
 ゴメちゃんの奇跡が世界救済には必要だと実感してますから。
 なお援護ですが、ハッスルダンスではありません(殆ど一緒だけど)。

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