ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 休日だから書けました。
 本日2話目です。
 まだの方は前話からどうぞ。



第45話

 

 本当に意思があるんだな。

 逃げ道である南端の洞窟が崩落して塞がれた。何が要因かはこの場で一番詳しいヘルメスもわからないらしい、ダンジョンの異常事態。

 あのひたすら潜って戦って罠を切り抜けるだけの破邪の洞窟がどれだけマシなのかよくわかる。

 尤も、あそこはここのような生活できるレベルの報酬など本っっっっっ当にでないのだが。

 序盤なんて薬草一枚の時すらあった。

 さて、ベル達含めて全員を逃がすだけなら帰還呪文リレミトを複数回使えばいける気もするが、バーンパレスでの役立たずぶりを覚えている俺は気が進まない。また、ダンジョンに意思があるならここで使用してそんな脱出手段があることを教えるのは不味い気がする。いざという時の切り札は存在すら秘匿すべきものなのだ。

 となれば戦力としてモンスターを創り出すのも不味い、ダンジョンも冒険者共もどんな反応するか予測すらできないからな。

 

(しかしまあ)

 

 本当にお人好しなんだなアイツら。

 強化されたゴライアスの叫びで暴れ出したモンスター共。それらに襲われた自分を襲った冒険者達を救うベル達。

 そんな姿になぜか笑みが溢れてくる。

 

(適当に減らすか)

 

 アバン流弓殺法。

 用意しておいた弓でゴライアス以外のモンスター共を間引いていく。闘気をこめる、その一点においてはどの武器より優秀な弓で一矢一殺どころかまとめて何匹も射抜く。

 アバン流ではないが、弓技のシャインスコールならモンスター共をまとめて一掃できるがそれは目立ち過ぎるから使用できない。

 ヘルメスの企みはリヴィラの冒険者とベルの共闘にシフトした、ならベル達が助けた連中の保護くらいなら問題もないだろう。

 

〈お嬢様が「ゼノン様はどこですかー!!」と叫んでおられますが?〉

 

 リリルカ憑きシャドーからそんな連絡がきた。

 すまんが耐えてくれ。

 俺も手を貸せなくて胃が痛くて仕方ないんだ。

 まったくこんなに試練を与えることが辛いなら自分でやった方が遥かにマシだ。

 今後は、ベルに試練を与える件でヘルメスに手は貸さないようにしよう。

 モルド達に群がろうとするモンスター共を始末しながらリヴィラの街の冒険者達が集結するのを待った。

 

  

 

 なるほど、これがリヴィラの街の冒険者か。

 ヘルメスの目論見通りにゴライアスへと進軍する集団。その中で誰よりも早く駆けつけたのは、さっきから駆けずり回るアスフィ・アンドロメダだ。

 どうやら戦闘スタイルは道具使い、といったところか。ベルトのホルスターから小瓶を取り出しゴライアスへと投擲していた。今回は爆薬だが、毒に煙幕と様々な種類がありそうだな。

 荷物運びに補正がかかるスキル持ちのリリルカが目指すべき戦闘スタイルの一つかもしれない。

 速度も中々、さっきから立ち向かって足止めしていたリューとともに決定打こそ打てないがゴライアスの周囲を動き回り意識を分散させている。

 しかしコイツも「あの男はなにをしている(ギリッ)」とか呟くのやめてくれないかな。

 覆面で口元隠してもわかるんだよ。

 

「武器はいくらでもあるからなぁ!畜生!得物が潰れたらさっさと交換に来い!」

 

 あれがリヴィラの街の顔役ボールスか。

 総勢百名の冒険者で囲い攻撃を加えて足止め。

 魔導士達を集めて魔法円で強化し、最大火力で葬る算段ってとこか。

 その魔導士達は大盾と、なぜかどたまかなづち(もどき)を装備したドワーフ達が壁となって守っていた。

 そういえばあの椿とかいう鍛冶師に好きに広めて良いと言ったよな。完全に同じ物ではないが似たような感じに兜を加工していた。

 エルフ達が見るたびに吹き出すのが少々問題ではあるな。

 職業、種族に合わせた配置。

 前衛の冒険者には好き放題やれという本人達の気質を理解した指示。

 顔役だけあって優秀な指揮官だ。 

 

(さてどうするか)

 

 モルド達周り、後衛の移動型大型弩を運ぶ連中、ヘスティア達のいる替えの武器を積んだ拠点を狙うモンスター共は片付けた。

 ゴライアスの遠距離攻撃、空気弾だが音の砲弾だかの『咆哮』も弓による空気撃ちにて相殺もしている。

 けれど、そろそろ負傷者が増えてきたか。

 

「広域治癒呪文・ベホマラー!」 

 

 わざわざ木の上に立ち、周囲から見えるように呪文を唱える。

 それは負傷者の確認だけではなく一言叫ぶ為でもある。

 

「リヴィラの街の勇敢なる冒険者達よ!

 何度でも傷つき倒れるがいい!

 その度に全員治して戦えるようにしてやろう!

 そう、何度壊されようが蘇る、お前ら自慢の街のようになっ!」

 

 ゴライアスに手は出してない。

 冒険者達に、口をだして傷を治すだけだ。

 

「ゼノンさんっ!!」

 

「ゼノン様!!」

 

「旦那!!」

 

「すげえあの野郎。この人数を魔法一つで治しやがった」

 

「ディアンケヒト・ファミリアの聖女以上だってのか!!」

 

「いくぞ、テメェら!!

 どうせ治るから傷つき放題!!耐久ステイタス上げるボーナスタイムだぜぇ!!」

 

「新参にリヴィラの街を語られて、怖気つく腰抜けなんていねえよなあっ!!」

 

 ベホマラーは魔力消費こそ多めだが認識している全ての味方を治癒できるのは便利だな。

 元の世界では単独行動ばかり、ダイと合流してからも基本的に少人数だから使う機会がなく覚えたのに使用しなかった呪文だ。

 使用したのはハドラーが親衛隊を引き連れて港を強襲(選別だったが)した時と大魔王バーンが光魔の杖を取り出した後、エクセリオンブレードが砕かれるまで、ベホマラーでダイ達を治癒しながら戦った時だったか。

 エクセリオンブレードともう一本振るいながら、呪文を唱えるのはしんどかったが、ダイの剣が折られて窮地だったから無理せざるをえなかった。

 ベルも頑張っている。

 他の冒険者に発破をかけられ、ゴライアスに張り付くようにナイフを突き立て切り裂いている。

 そんなベルをリューが指導するように寄り添いながら戦っているな。

 

「ベホマラー!」

 

 さて魔導士部隊の準備が終わるまで、俺は回復役に専念するか。

 

〈創造主〉

 

〈なんだリリルカ憑きシャドー?〉

 

 リリルカは、負傷者を引きずって下げたり、新しい武器を手渡す形で貢献しているな。

 

〈お嬢様が先程から創造主を心配しておられますが〉

 

〈?〉

 

〈「あれだけの広域治癒魔法をノーリスクで使える筈がない。さっきまで居なかったのも準備の為だ。顔色も悪いし、早く倒さないとっ!!」と冒険者達を鼓舞しております〉

 

〈「ゴフッ」〉

 

〈創造主!?〉

 

〈気にするな、ただのストレスだ〉

 

 こちらには都合の良い勘違いだが、ストレスで胃にダメージが。

 なんでこういった病にはホイミ系は通じないんだろうか。このままだと精神ダメージで倒れかねないぞ。

 胃薬、誰か持ってないか?アスフィ・アンドロメダなら所持してそうな気がする。

 

 それから何度かベホマラーを唱えたところで、魔導士達の詠唱は完了した。

 ボールスの声で前衛は下がり、包囲網の中心に誘導されていたゴライアスは周囲に高まる魔力の塊に目を見開いた。

 だが対応は間に合わず、怒涛の一斉射撃が火蓋を切る。

 

『ーーーーーーーーーッッ!?』

 

 連続で見舞われる多属性の攻撃魔法連打。火炎弾が着弾すれば雷の槍が突き刺さり、氷柱の雨と風の渦が炸裂する。さらには虎の子の『魔剣』まで使用され、これで仕留めると出し惜しみなくぶちかまされた。

 ロキ・ファミリアご自慢の魔導士部隊でもそう簡単には撃てないだろうリヴィラの街最強の一撃。

 爆音と衝撃音と巻き上げられた砂塵に聴覚と視界がしばし利かなくなる。

 その場の冒険者達が固唾を呑んで砲撃中心地帯を見守る中、立ち込めた煙からどんっと巨人が片膝つく音が響いた。

 顔面部分は焼け爛れ、黒い皮膚も傷つき抉れ、赤い血肉を晒してはいる。

 冒険者達が勝利したと歓声を上げるが、俺は気がついていた。

 

「チッ、駄目か」

 

 まだ終わってないことを。

 

「ケリをつけろテメェ等ぁ!!」

 

 最後の仕上げとばかりに前衛達が四方八方から躍り出るが、それが悪手だと俺にはわかる。

 肉体は破損しようとモンスターの核である魔石から流れ出るエネルギーに影響はでていないのだから。

 

「広域防護呪文・スクルト」

 

 援護にはやり過ぎな気もするがこれくらいはしないと死人がでかねない。

 俺以外に気がついたのはリュー。

 彼女の見上げた先、ゴライアスの焼け爛れた顔面は徐々に修復していった。体中もそうだ、赤い光の粒子が発散され、その肉体を見る見る癒やしていく。

 

「大魔王バーンを思い出す」

 

 ドルオーラをくらって灰になっても蘇ってみせた大魔王。

 アレに比べたら羽虫みたいな巨人だが、大魔王バーンを知らない冒険者からしたら絶望そのものだろう。

 

「自己再生!?」

 

 驚愕するアスフィの叫びと同時にゴライアスは高く振り上げ握りしめた両拳を足元にぶちかます。

 

「間に合わねえ」

 

 同時に弓を射って相殺しようとしたが無理だった。果たしてスクルト一回でどこまで相殺できるやら。

 大草原が割れる一撃。

 爆発と地割れと衝撃波は、サイクロプス、ギガンテスの暴れまわる光景を思い出させた。

 

「俺がやるか」

 

 幸いスクルトとベホマラーで死人はいない。だが、勝利したと思ったところでどんでん返しされたので、冒険者達の足並みは揃わず、部隊の再編は困難だ。

 こうなってしまえばもう勝ち目は俺しかない。ヘルメスの思惑は外れたが、まあ仕方ない。

 諦めとも残念とも思う感情が身を包む中、

 

《リィン》

  

 その音が聴こえてきたんだ。

 

「まだやるのか。ベル」

 

 誰もが絶望する中でその少年は立っていた。渡された黒大剣を握りしめ、鐘の音を鳴らしてそこにいた。

 

「なら見せてみろよ。英雄候補」

 

 再度ベホマラーを唱える。

 癒える傷と湧き上がる体力に冒険者達は驚愕し、そして自身らの勝ち目が、希望が、鐘を鳴らす少年だと理解する。

 

「援護しろっ!!」

 

 その叫びは誰のものだったか。

 隻眼の顔役か。

 苦労人の団長か。

 咎人たるエルフか。

 落伍者だった冒険者か。

 それとも、異界の英雄か。

 

 リィンとした鐘の音は、次第にゴォンという大鐘楼の音に成り変わる。

 

「だが一手、足りねえな」

 

 冒険者達の奮起によりベルを狙わんと集まったモンスター共は狩られる。ゴライアス本体はリューとアスフィと命のベタンに似た魔法が足止めする。

 けれども足止めも、ベルの攻撃も、あと一手分だけ足りない。

 

「火月ぃいいいいいいいいいい!!」

 

 だがその一手分を、感傷を乗り越えた、意地よりも大切なモノを見つけた鍛冶師が、埋める。

 ヴェルフ・クロッゾが嫌悪し続けた『クロッゾの魔剣』、妖精の森を燃やし、海を焼き払ったとまで言われる伝説の魔剣がその力を解き放った。

 

「やるじゃねえか、魔剣鍛冶師」

 

 思わず溢れた称賛。

 俺が打つ武器に付加される呪文でもあそこまでの威力を出せるのは、修復終了間近の愛剣のみ。

 その威力は、頑強な強化されたゴライアスに致命傷の烙印を与えた。

 そして、

 魔剣に焼かれた漆黒の巨人ゴライアスへと、一人の少年が発光続ける黒大剣を構え疾駆する。

 

「ああああああああああッッ!!」

 

 憧憬だけの想いだけ人一倍の、才能なき平凡な少年ベル・クラネル。

 小さな勇者ダイとも、大魔道士の後継ポップにも、武神の拳を託された乙女マァムとも、元六軍団長にしてアバンの使徒長兄である不死身のヒュンケルとも、まるで届かないだろう存在。

 けれどその走りは、その突貫は、彼等に劣らぬ輝きを放っていた。

 

「見せてみろ、英雄の一撃ってヤツを」

 

 ベル・クラネルの全てを賭した一撃は炸裂し、純白の極光が18階層を照らし尽くした。

 そして光晴れた後、そこには剣身のない大剣に身体を預けたベルと、上半身ごと核たる魔石を砕かれ灰となっていくゴライアスの姿があった。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 次の瞬間、大歓声が巻き起こった。

 冒険者達は諸手を突き上げ、肩を叩き合い、腕を組み、その喜びを分かちあった。

 そして伝令神ヘルメスは、ベル・クラネルを最後の英雄足る器だと確信した。

 

 

 ゾワリ。

 冷気が、怖気が、ダンジョンを満たす。

 けれど、

 ダンジョンの悪意は、ダンジョンの憎悪は、そんな喜びを、英雄譚を許さない。

 これで駄目ならさらなる絶望を。

 冒険者の苦痛に塗れた死のみが、ダンジョンの無聊を慰めるのだから。

 奥の階層よりナニカが這い出てきた。

 巨人で駄目なら、死骨の王にて滅ぼそう。

 ダンジョンの意思が喜びを打ち消さんと新たな絶望を産み出した。

 だがそれは、

 静観を決め込んでいた異世界の英雄をブチギレさせるには充分過ぎた。

 

「勝利に水を差すなクソが」

 

 迫り来る死骨の王に立ちふさがる者。

 異界の英雄。

 勇者と大魔道士を救った男はそこに居た。

 そして彼は今ベル・クラネル達、いわゆる身内らが見たことのない額に青筋浮かべた怒りの表情となっていた。

 光翼の勇者とも欲望の天秤とも呼ばれしゼノンは、見届けることの出来た英雄譚を台無しにしようとしたダンジョンに、無遠慮な闖入者にかつてないほどキレていたのだ。

 

「ベルッ!!」

 

「ハイッ!!」

 

 突然呼ばれたベル・クラネルは反射的に返事をしてしまった。

 

「アバン流刀殺法、その基本形たる三つの技は、奥義へと至る過程にすぎない」

 

「過程、ですか」

 

 ゼノンは語る。

 恩師に教わったその流派を。

 

「大地を斬り、海を斬り、空を斬る。

 それらを全て成し遂げた時、その者はこの世の万物、全てを斬る事ができる」

 

 雷鳴の剣を抜き放ち、利き腕の逆手に握り、全力の闘気を注ぎ込む。

 その輝きは、先程の英雄の一撃にすら劣らない。

 

「そう、これが」

 

 巨人を上回る骸骨がその腕をゼノンに目掛けて振り下ろした瞬間、

 その一閃は放たれた。

 

「アバンストラッシュだ」

 

 18階層を真横に切り裂くような閃光の奔流が走り抜ける。

 全てを斬る一閃は、死骨の王を跡形もなく消滅させたのだ。

 

「ま、これがお前の目指す英雄。その力の一端ってわけだな。アバン流を極めた先にこれがある。それを覚えておけ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・ハイ」

 

 ダンジョンの悪意はさらなる力によって打ち消された。呆然としたベル・クラネルだが、それもすぐに収まり、身体中から我慢できない感情が溢れてきて、ゼノン目掛けて飛びついた。

 目指すべき英雄はここにもいたのだと。

 

 そして、出立したものの異変に気づき引き返した風纏う少女もその一閃を見た、見てしまった。

 

「英雄。ゼノンさんはやっぱり英雄なんだ」

 

 

 今度こそ本当に終わり、歓声を上げる冒険者達。片付け回収後、その勢いで街をあげての大宴会を行い、大いに盛り上げることになる。

 ベル・クラネルはもみくちゃにされ、もはや彼をラッキーなだけの新米と侮る者はいない。

 ゼノンは冒険者全員に感謝され、リヴィラの街名誉市民と認定された。

 ウダイオスと思われる存在を打ち倒した実力以上に、冒険者全員を生存させた事実に感謝されたからだ。

 

「恐れのない感謝か、悪くねえな」

 

 尽きぬ欲望に狂っていた天才は、また一つ好きな場所を見つけたのである。

 

 





 書けました。
 頑張りました。
 手助けしたけど回復だからセーフ。セーフだよな?セーフってことにしてください。スクルトもしてたわどうしよう。
 ゴライアスには、直接手は下してません。
 ウダイオスさんにはアバンストラッシュしました。
 ちなみに、ゼノンの愛剣ですがドラクエ作品の定番の剣にオリジナル要素を加えたモノです。見た目は斧なアレです。次章で出します。

 アバンストラッシュを書けて満足ですが、もっときちんと細かく描写できるようになりたいです。
 


 次はアポロン編。
 殆ど身内だけどどうしよう。
 この方、ヘスティア・ファミリアの食費を5割くらいだしてんですよね。
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