ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 主人公とロン・ベルクの出会いは、主人公が一番調子に乗っていた十四歳の時。
 勇者アバンを超えた(戦闘能力のみ)と図に乗っていた時期に最強の武器を求めて出会い、最強だと確信していた自慢のエクセリオンブレードは粉微塵にされ、死ぬ一歩手前までボコられました。見逃されたのはエクセリオンブレードのアイデアと主人公の才能が飛び抜けていたからです。



第5話

 

 時間を刻む音が部屋の中に無機的に響いている。

 

「遅いよう、ベル君大丈夫かなぁ」

 

 狭い地下室内をそう呟きながら美少女の姿をした女神が落ち着きなくうろうろと動きまわっていた。

 

「恩恵から生きてることは分かんだろ?なら大丈夫だろ」

 

 影に潜ませたシャドーは改造してある為ホイミを使うことができる。雷鳴の剣の性能もあって死ぬことはまず無いと思うのだが。

 

「ゼノン君は心配じゃないのかい!!ベル君がダンジョン潜る時に影からこっそり見守るとかしてくれてもいいじゃないか」

 

 ベルの安否という不安からこちらを責めるようにヘスティアは言う。

 確かにそのとおりだと納得はするが、

 

「ベルがより惨めになるだけだろうが」

  

 ダンジョンに向かった理由が理由。

 無力感からがむしゃらになる姿なんて知り合いになんて見られたくはないだろう。

 

「ううう、ボクがあんな事を言ったからかな?」

 

「そこは気にしてなかったぞ」

 

 酒場に辿り着くまでは神様を怒らせちゃったと気にしていたが、シルの登場からそれどころではなかったしな。

 

「それはそれでなんか納得できないけど、ロキ・ファミリアとヴァレン某とベート某めえ、よくもベル君を傷つけたなあ!!」

 

「ヴァレンシュタインは関係なくね?」

 

 そして何故かベートに関しては充分に罰を受けてるような気がする。

 

「だいたい自分達の不手際でミノタウロスを逃しておいて笑い話にするなんて最低じゃないか!!」

 

「いやまあそうだろうが、冒険者の自己責任の範囲だろ?」

 

 とはいえレアケースなのは間違いないらしい。今後は大手ファミリアの帰還予定期間は下層モンスターが追い立てられて上層に現れる可能性があると注意されるようになるだろう。

 大規模の部隊を率いて遠征をする場合はギルドにある程度予定を告げたりするだろうしな。

 

「そこら辺とかゼノン君はシビアだねえ」

 

「金やら名声目的でダンジョンに潜ってんだ、同情の余地はねえだろ」

 

 モンスターがダンジョンから溢れてくることが問題だってんなら入口にマホカトールでも張ってやろうかね?

 モンスターの間引きにしても、真剣に対処する気があるならば複数のファミリアに好き放題やらせるのではなく、選ばれた一握りの存在にやらせれば良いのだ。

 あくまで娯楽。

 神々が地上に降りてきた理由もそうだが冒険者を含めて我欲を満たさんとするばかりで、世界の危機に真剣に向き合っている存在なんていないのだろう。

 そもそも大魔王バーン率いる魔王軍による地上侵略(真の目的は地上爆破だったが)のような世界の危機なんてこの世界にはないんだろうしな。

 まだ一月足らずしかこの迷宮都市で過ごしておらず、この世界の状況全てを識っているわけではないので、この考えを誰かにぶつけたり、この考えで誰かを批判したりする気はないが。

 

(もっと色々と学ばないとな)

 

 ただ様々な知識があるだろうギルドの資料室は職員から信用されている高名な冒険者しか使用できない。

 

(閲覧する為にダンジョンで名を挙げるのもなあ)

 

 やりたいことをする為には嫌なことを我慢してやらなければならない。

 それが一つの真理であると俺は知ってはいるが、そこまではちょっとという気持ちもある。

 

「やっぱりボクはベル君を探してくる!!」

 

「ステイ」

 

 居ても立ってもいられなくなり外へと駆け出しに行こうとするヘスティアの服を部屋の隅からニュッと伸びたマドハンド(触れても泥のつかない特別性)が掴んで止める。

 

「今なんかいなかったっ?!」

 

「気の所為気の所為」

 

 何かに掴まれたと感じたヘスティアが慌てて振り返るもすでにマドハンドは隠れている。

 ベルに付けたシャドーもそうだが誰かに存在をバレないことを厳命してあるからな。と、そこで気配を感じたのでヘスティアに声をかける。

 

「扉から離れた方が良いぞ」

 

「ほえ?ぷぎゅっ!?」

  

 扉の前にいたヘスティアは勢いよく開いた四角形の板(扉)に顔面強打。そして身長に不釣り合いな巨乳も「むぎゅ!」と悲鳴を上げて圧潰!

 

「眼福だねえ」

 

 異性として趣味ではないが、良いものは良い。この場に同意してくれるだろうマトリフ師とポップが居ないのが悔やまれる。

 顔面を押さえながらうずくまるヘスティアは、声にならないうめき声をあげる。

 

「か、神様・・・・・・ご、ごめんなさい」

 

 俺の声に反応できず不意打ちをくらったヘスティアだったが、頭上から降ってきた声を聞いて、ばっと顔を上げる。

 声の主が心配していた愛する眷属だったからだ。

 

「ベル君!!」

 

「おかえりルーキー。少しはスッキリできたか?まずはシャワー浴びて着替えてこい。茶を淹れておいてやる」

 

 見ればその姿はボロボロ。

 服こそ破れたり汚れたりしているが、外傷らしきものはないようだ。

 雷鳴の剣の性能と、潜ませたシャドーのフォローのおかげだろう。

 ヘスティアが問い詰めるとどうやら6階層まで行き、ダンジョンで『上層』と定められる12階層までで新米冒険者では敵わないと言われるウォーシャドウを何匹も屠ったそうだ。

 

「全く、無茶なんてして、心配したんだからね」

 

「ごめんなさい・・・・・・」

 

 家に着いた安心感から戦いの熱が下がった身体は、ようやく疲労を感じさせるようになる。

 徹夜した眠気と、戦い続けた疲労、緊張がほどけた緩みから崩れ落ちそうなベルをヘスティアはしがみつくように支え、シャワー室まで連れてゆく。

 

「ベル君、シャワーを浴びて着替えてゼノン君が作った食事を食べたら、君はベッドで寝ること。いいね?」

 

「いいんですか?」

 

「当然だろう。ここで君をソファーに放り出すほど、ボクは性根を腐らせてないぜ?」

 

(ベルのベッドを作ってやるべきかね?)

 

 そこまで難しいものではないし、木切れにマットレスとシーツがあれば作れるだろう。しかし作るとなるとただのベッドでは面白くない、何かワンアイデア。

 

「いっそ飛ばすか」

 

 空飛ぶベッド、トベルーラを応用すればいけるかもしれない。

 

「何を飛ばす気なんだいゼノン君」

 

 しかしベッドを飛ばすにしても利点は、部屋の模様替えする時にベッド移動が簡単、布団を干すのもベッドごと外に出せる、くらいか?

 

「うん、なんだかよくわからないけどとりあえず止めてね?」

 

「でもスペースがないから無理か」

 

 ソファーを処分すればいけるがコレはコレで愛着あるしな。

 

「不甲斐ない主神ですいません」

 

 俺の言葉に住居問題の責任を感じたヘスティアはそう謝罪した。

 

「とにかく、ベルは休めよ」

 

「はい、あ」

 

「どうした?」

 

「きちんと無事に帰ってきました。借りていた雷鳴の剣はお返しします」

 

「おう」

 

 いくら格闘術を修め、呪文を使えるとしても、幼少期の環境から武器が手元にないと落ち着かないんだよな。一応神の恩恵を刻んでいるから武器を所持していても咎められたりしないしな。

 ベルが両手で横に持った雷鳴の剣をこちらに差し出してきたので掴んだのだが、

 

「ん?」

 

 こちらが掴んでもベルは雷鳴の剣を放そうとせず、そのまま引っ張り合ってしまう。

 

「どうしたよ?」

 

 はよ放せ。

 

「ゼノンさん」

 

 ベルの表情を見れば、申し訳ないし悪いことしてるのはわかるけどそれでもちょっと、と往生際が悪い顔をしていた。

 

「この雷鳴の剣、もっと貸して貰えませんか?」

 

 まあそうなるわな。

 聞けば遭遇した上層モンスターを霧だか煙のように抵抗なくスパスパ斬れたそうだ。元の世界でもドラゴンとか斬れる代物だしな。

 そんなものを一度振るったら戦士として手放せなくなるのは当然だろう。

 だが、

 

「駄目」

 

 剣を掴む逆の手でベルにデコピン(全力でやれば魔界生息モンスターの頭も吹き飛ぶ)をして強引に手を離させる。

 弱さを補う為に強い武器を装備する。

 それは正しい考えである。

 だが、使い手の実力に下駄を履かせるような武器は渡すべきではない。

 剣の性能を自分の実力だと勘違いし、修練を怠り、本来積むべき経験を得ることなく先に行ってしまうことになるからだ。

 まあそれ以前に、ベルの拙い剣技だと下手したら自分自身を斬りかねない。雷鳴の剣は自重だけで岩をストンと斬れてしまう程の切れ味があるからだ。

 包丁だってそうだ。

 熟練の料理人なら切れる包丁の方が力の入れ方を理解しているので安全で、切れない包丁だと無駄に力を入れてしまうから怪我をしやすい。

 武器とはその実力に見合ったものでなくば使い手を危険にさらすだけなのだから。

 

「この剣を使いたいならせめてドラゴンと戦うようになってからだな」

 

 そのレベルくらいなら単なる剣技では戦闘力が足りなくなる。

 ダイも超竜軍団相手にしたから鋼鉄の剣を折ったと聞いたし。

 

「いやあの、それはハードルが高すぎでは」

 

 どっかで鍛冶場を借りて武器を打ってやっても良いが、俺は鍛冶技術を最初にロン・ベルクに習ったせいか雷鳴の剣以下の武器って作れないんだよな(ネタ武器以外)。普通の鉄の剣にもなんか特性ついちまう。

 

「そうか、ベル君には武器が必要なのか」

 

 そんな俺達のやりとりを聞いてヘスティアはなにかを思いついたようだった。

 その後、ベルはヘスティアに「強くなりたい」と宣言し、諸々済ませたあと二人仲良くベッドで寝た。ヘスティアがジュルリと涎を垂らす姿に呆れるが、闘争の疲れは女で癒やすのが一番だ。

 あの様子では男女のハッスル的なことはしないだろうがな。

 

「お休み」

 

 抱き合って目を閉じた二人を確認したのち、俺は仕事へと向かった。

 





 主人公
 さり気なく徹夜。普通に平気。
 鍛冶の師匠がロン・ベルクのせいで普通の武器は作れない欠陥がある。
 雷鳴の剣は回収。今のベルには危険な代物な為(夜だから良かったが他の冒険者に目をつけられる危険性もあった)。

 空飛ぶベッド。
 ドラクエ6に登場した乗り物、ベッドだけど乗り物。ひょうたん島の通れない、木々がない場所を通れる。最終的に天馬がいるため使われなくなる。
 主人公はトベルーラの応用して作成できると踏んでいる。もし作成し売り出したら、オラリオでサポーターは廃業し、ダンジョン入口は空飛ぶベッドで渋滞になると思われる。
 子供の頃、ベッドを乗り物と見立てて遊んだ童心にかえれる一品。
 なおドラクエ6のイベントは病気の少年を想う優しい人達の姿が見られる。でもベッド。
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