ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
ベートスプラッシュが有名な理由。
◯ルさんがさり気なく言いふらしまくっているからです。
ちなみにその件でベートさんは他の冒険者達に同情され、むしろ剣姫に酒を飲ますな、の方がオラリオ内で広まっています。
ケラケラ笑いながらベートさんにゲイボルグするアイズの姿がものすごく怖かったようです。
港街メレンの狂乱の夜は未だ続いていた。
かつて拠点を構えていたポセイドン・ファミリアによって水棲モンスターの出所であるダンジョンへと繋がる大穴に『海竜の封印』が施され、大海原へと旅立っていって以来一度も無かった大騒動。
迷宮都市オラリオですら少ないレベル6冒険者を擁する大手ファミリア同士の戦いは、荒れ狂う海よりも激しく世界を揺るがす。
果たしてこの夜が明けた後、勝者として立つのは誰なのか。
既に港街メレンで起きていた、ロキ・ファミリアが訪れた原因は決着した。
地主である街長は証拠を抑えられ自供し、ギルド支部長はウラヌスの片腕に処分を言い渡され、神ニョルズは神ロキの説得に応じた。
残るはカーリー・ファミリアとの抗争だが、駆けつけたロキ・ファミリア男性陣の参戦により趨勢は決しつつある。
カーリー・ファミリアのアマゾネス達とて弱くはない。ロキ・ファミリアの二軍であれば、個人戦闘力やレベルで上回る者もいるだろう。
だがダンジョン攻略において何よりも集団戦を重んじているロキ・ファミリアと、儀式による個人戦闘を優先する闘国では、あまりにも練度に差が出ていた。
そして何よりも個人戦力。
ロキ・ファミリア三首領、市街地であるがゆえに魔法を全力で使えなかったリヴェリア・リヨス・アールヴを除いた二人、団長であるフィン・ディムナとガレス・ランドロックが強すぎた。
ガレス・ランドロック、少しばかり特殊なドワーフである学区の最強戦力を除けば、最強のドワーフである老兵は、ヒリュテ姉妹を誘き寄せる為に攫われた仲間エルフの少女レフィーヤ・ウィリディスを救い出すと、武器を下ろし無手でアマゾネス達を鎮圧しだした。
「ティオナ達と最初に会った時を思い出すの」
闘国から巣立ったヒリュテ姉妹がロキ・ファミリアに所属したきっかけ。
それは当時レベル三だった姉妹は自分達を倒したファミリアに所属すると宣言しており、それを為したのがガレスとフィンであるからだ。
ロキ・ファミリア、人質開放に成功。
船上。
人質により誘い出されたヒリュテ姉妹は、ティオネは船上にてアルガナと儀式を行っていた。
儀式、即ち殺し合いにして食い合い。
つい先程埒外の巨女に敗れた、闘国の象徴ともいえるアマゾネスは、妹の笑顔を奪おうとする者達に激しく怒る『姉』と激戦を繰り広げていた。
アルガナは笑う、激化する戦いに。
彼女は、戦いを食い合いと称する彼女は実のところ勝敗に拘っていなかった。
同胞を殺しても何も思わないのかと問われたアルガナは、敗者の血肉を喰らいその命と溶け合ってずっと一緒にいると考えているのだから。
ゆえに敗北したとしても、ティオネが自らの命を食らうのであれば問題ない。
あんな色惚けバケモノガエルではない彼女ならばとアルガナは叫ぶ。
流石のアルガナもフリュネと溶け合うとか考えるのは嫌だったらしい。
「そうだ私は最強を取り戻す、お前を食らって、バーチェかティオナを食らってな」
「ブッ殺す!!妹の笑顔を奪うヤツはこのあたしが絶対許さねえ!!」
「本当にお前達は、変わり種のアマゾネスだ」
アレよりはマシだがな。
共食いで成り立つ闘国で、姉妹の絆を失わなかった二人にアルガナは笑みを見せる。
「そこまでにしよう」
そんなアマゾネスの儀式に割って入る声。
同時に激突する両者の間に黄金の穂先を持つ長槍が突き立った。
「しかし『彼』はあんなことまで出来たとはね。おかげで大分時間を短縮できたよ」
ラウルを背に乗せた珍妙な、珍妙な、本当になんだろうアレ、はティオネが船に乗せられ沖に出ていると察しリヴェリアの凍結魔法で『氷の長橋』を架けて渡ろうとしたフィンを制止すると、より早く到達する為に一つの提案をした。
「普通に話せるんじゃないすか」
その手段はボートに風魔法をぶち当てて空を飛ばして直進させるという荒業だった。
確かに時間短縮は出来るが、その吹き飛ぶボートから飛び降りるのは自分なんだがとフィンは思ったが。
しかし急ぐ必要と、個人的にボートが空を飛ぶ、という事象に興味が湧いたので採用した。
まあ、あの間の抜けた顔で「できないの?ぷぷ」と挑発されて意地になったことも要因の一つだが。
そしてボートに乗ったフィンをケンタウルスホイミの姿をしたゼノンが真空呪文バギマでこの船目掛けて吹き飛ばしたのだ。
なお、いつぞやのマトリフ同様に着地については考えてなかったとか。
「団長!!」
想い人の登場に怒りで我を忘れつつあったティオネが叫ぶ。
「大丈夫だ、ティオネ。ティオナの方には『彼』が向かった」
ケンタウルスホイミの姿であるが。
「さて闘国の戦士達。ここで手打ちにしないかい?っと言っても通じないし、納得しないよね」
神聖な儀式を邪魔する乱入者を排除しようとアマゾネス達は武器を振りかざし、四方八方から飛びかかる。
「そう来るなら僕も容赦はしない。なにせ君達は大切な仲間達を相当苛めてくれたみたいだからね」
立った場所を軸にして、長槍『フォルティア・スピア』が全方位に黄金の穂先を輝かせながら迎撃する。小人族最強の槍使いの槍捌きは間合いに侵入したアマゾネス達を殺すことなく弾き飛ばし、船外へと落下させた。
「残るは君だけだね」
「団長」
「ティオネ、君が僕達の為に動いてくれた事はわかっている。
その上で言おう、任せろと」
「はいっ!!」
怒りに呑まれ戦士に墜ちかけていた少女は想い人の言葉で、ロキ・ファミリアのティオネへと戻ったのだ。
「ふざけるな、ふざけるなよっ!!」
そこまで黙っていたアルガナは吠える。
戦いの狂気から醒めたティオネに叫ぶ。
「立てティオネ!!怒れ、儀式を続けろ!!こんな茶番で、『最強の戦士』への道が閉ざされてよいものか!!」
今のティオネの顔。
それはテルスキュラの戦士の顔ではない。
あれはただの少女の、女の、雌の顔。
あのバケモノガエルと同じ顔だとアルガナは憤る。闘国の儀式を知らぬアマゾネスなんぞと、自身が認めた戦士が同じ顔をすることがアルガナには耐えきれなかった。
「少しばかり変な風に拗れているようだね」
これも『彼』の影響かな?とフィンは思う。この時点でイシュタル・ファミリアの諸々は知らないとはいえ、ゼノンは居たらナニカをやらかす存在だと認識しているがゆえに。
「まあいい、全力で終わらせる」
フィン・ディムナ。
ロキ・ファミリア団長は切り札である魔法を発動し、その凶戦士の拳にてテルスキュラ最強を殴り飛ばす。
そして、
また一人アマゾネスが恋に堕ちる。
ロキ・ファミリア、ティオネ救出に達成。
海蝕洞。
波により造られた天然の洞窟にて、ティオナとバーチェもまた戦いを繰り広げていた。
カーリーとアマゾネス達が観戦する中での決闘。愛用の武器が手元にないティオナは毒を纏うバーチェと肉弾戦を強いられていた。
ダンジョンでの冒険で『耐異常』を発現させた彼女であっても、女戦士達の蠱毒の末に生み出された毒は防ぎきれない。
ゆえにティオナは、毒を喰らいながら攻撃を続ける。触れるだけで肉が腐り落ちる毒を受けようと、恐怖などせず笑いながら突き進む。
それがティオナ・ヒリュテの強さ。
そんな彼女だから、姉と共に闘国を飛び出して、人形と呼ばれたアイズの友になれた。
「ねえカーリー!」
そんな彼女が、闘国の神へと頼みを告げようとしたところで。
「ホイミミミーン!!」
ソレは現れた。
「ティオナさーん!!『大双刃』持ってきたっすよーー!!」
岩盤を蹴り破り飛び出す異形。
それは間の抜けたクラゲのような頭部に、無駄毛モサモサな筋肉質な上半身と馬の下半身、さらには地味な青年を乗せた、なんとも形容できない存在だった。
ケンタウルスホイミライダー、ここに見参。
「何アレ」
「何アレ」
「何アレ」
「え、ラウル?」
「なんか自分も混ぜられた気がするっす」
「つーか毒かソレ、大丈夫かティオナ」
「そして普通に喋るんすねゼノンさん。その顔、顔?で地声とか脳がバグるから止めて欲しいっす」
「解毒呪文キアリー」
ゼノン(ケンタウルスホイミライダー)は変色したティオナの肌に触れながら呪文を発動。
それだけでダンジョン下層モンスターをも上回る毒は綺麗さっぱり消失する。
「「「「「!?」」」」」
その事実に、バーチェとカーリーとアマゾネス達、そして毒を受けていたティオナが驚愕する。
「何者じゃお主」
間の抜けた顔の異形に、殺戮の神は問いかける。解毒する術が存在しないとは彼女とて思わない。だが闘国の妄念、食われることへの恐怖が産み出した毒がああもあっさり消え去るなどあってはならない。
そんな、テルスキュラの蠱毒など、大したことないと言わんばかりに。
「ホイミミミーン!!」
「いやもうそれで誤魔化せないっすよ」
「つってもよラウル」
「シャアアアア!!」
迫るバーチェの毒拳を片手で平然と受け止めるケンタウルスホイミ。同時に受けた毒のダメージでモシャスが解除されその姿をさらす。
褌姿ではない普段の格好で現れたゼノンは、レベル六のアマゾネスだろうと眼中にない。
それは当然のことだろう。なにせ彼が体得し皆伝を許された拳法は、毒を纏う戦士とは対極の、癒やしの力を纏う流派なのだから。
「寝ていろ」
拳一発。
倒すのに技を使うまでもない。
なにせ武神流とバーチェ・カリフ、ここまで相性が悪い組み合わせもそうは無いのだから。
「この場合、俺はなんて名乗れば良いんだ?」
この場合は、アバンの使徒と名乗るのも違うだろうにとゼノンは言う。
「凄い」
ティオナはゼノンの圧倒的武威にアマゾネスとして惹かれるものを感じ、呪文で癒やされた温もりに心が熱くなるのを感じていた。
「知り合いを好き放題してくれたんだ、覚悟できてんだろうなテメェら」
命を取る気はないのか腰に帯びた雷鳴の剣を抜く様子はない。
ガレスと同じように無手で戦う気のようだ。
尤も、武神流とアバン流牙殺法を極めたゼノンに無手であることはハンデになりはしないが。
「強い雄じゃのう、貴様を闘国まで連れて帰り子を作らせれば、あのフリュネを超える戦士を生み出せるであろう」
その強さにカーリーは欲求を抑えることができなくなった。神力を開放し、神威をもって連れて帰ると決意したところで、その意思は自身の横を通り過ぎた膨大なエネルギーの一閃が挫いた。
「無手アバンストラッシュ」
この場合はアバンストライクかもなとゼノンは続ける。
アバン流は全てアバンストラッシュへと至る。
大地を、海を、空を、全てを斬ることができるのであれば武器は選ばない。
だがカーリーが神意を挫かれたのはその恐ろしき技が理由ではない。
神を躊躇うことなく討たんとする、ゼノンの異質さに対してだ。
この世界の住人は、冒険者同士の戦いで一番有効な手段とわかっていても神に手を出すことをしない。
本能的にその行為に強い忌避感を抱くからだ。
あのオラリオの暗黒期ですら、絶対悪というカリスマがいてこそ実行できた手段なのだ。
「わかった妾の負けじゃ」
ゆえにそれを躊躇わぬゼノンにカーリーは戦慄し、今送還されてしまえば次はいつ下界に降りれるかわからないという理由もあり、カーリーは白旗を上げるのであった。
「なんや終わっとんたんか(ドキドキ)」
タイミングよく颯爽と登場しようとスタンバっていたロキだが、自身が潜んでいた通路脇を凄まじいエネルギーが通り過ぎたので内心かなりバクバクといっていた。
「ロキ、か」
「しっかし、本当にナニモンなんやろうなゼノンのヤツ。聞いたらあっさり答えてくれそうやけど、聞いたら胃痛になりそうで怖いんよな」
眼下にて、ティオナと風を纏って飛んできたアイズに飛びつかれているゼノンを見ながらロキはそう零すのであった。
警戒するべき圧倒的存在。
けれど今回の無関係なこの騒動に乱入した理由が知り合いが困っていたから、程度だとするならばその人間性から警戒する必要はない。
むしろ抱える秘密から要らんストレスを得てしまいそうなことが、怖く感じていた。
「ま、とにかく一件落着やな」
海蝕洞、ゼノン、ティオナ救出及びアマゾネス撃退に成功。
メレンの騒動、これにて終幕。
「あれ?自分が大双刃を運んだ必要って。いや途中からゼノンさんが運んだっすけど」
なお余談というか本日のオチ。
ラウルは超重量な大双刃運搬で腰を痛め、さらに珍妙なナマモノを乗りこなしメレンを駆けた、という風評被害を受けてしまうことになる。
さらにベート・ローガ達と交戦したイシュタル・ファミリアの戦闘娼婦達は無事に逃げ切り、時間ギリギリまでゼノンを探したが空が白みだした時点で諦めて歓楽街に帰還したそうだ。
メレンにも歓楽街の支部を作ることを主神に提案すると決めて。
駆け足気味ですがここまで。
メレン編はあと1話で終わりです。
ティオナヒロイン化(とはいえ、ゼノンの性格的にくっつくのはかなり大変ですが)を試みましたが、好感度が増した程度です。
ちなみに作者は前世ネタが苦手な為、前世の間柄をベル達に当て嵌める気なありません。
というか、ダンまちの前世関連は完成されすぎて、その関係性で話を作ってしまうと二次創作で改変する余地が無くなると感じてしまうからですね。
前世を主題にした完成度の高い二次創作の名作がハーメルンに幾つも存在するので、手を出すには気が引けるという理由もあります。
今話は、それぞれの場面を決着させる形で書きました。ただレフィーヤはアイズかベルが居ないとイマイチ動かしにくいなと感じました。おそらくゼノン相手だと萎縮して彼女らしさがでないので。
ティオネとアルガナは、フリュネがトラウマなアルガナと、バルジ島方式で乱入したフィンの話でした。ティオネ描写は原作が素晴らしいのでカットしました。
海蝕洞は、バーチェと武神流の相性が最悪ですね。ザボエラレベルの毒でもないとゼノンには効きません。
ティオナやアマゾネス達は無手アバンストラッシュに脳を焼かれたかな?という感じです。
ちなみにロキは危うく送還するトコでした。ゼノンも気づいてなく、登場した時にやべぇと思いました。
メレン編もあと1話。
早くアポロン編を書きたいです。
ちなみに原作時系列として、この夜に緋蜂亭でベル・クラネルはアポロン・ファミリアのヒュアキントスにボコられ、ベート・ローガはそれを止めた後にメレンまで駆けつけたそうです。