ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 これにてメレン編おしまいです。
 予想より長くなったけど楽しかったです。



第54話

 

 東の空から朝焼けが始まる。

 戦いの夜は明け、血まみれの因縁に追いかけられた姉妹は二人ぼっちの世界の先に温かい仲間達のいる場所へと辿り着いたのであった。

 

 

 カーリー・ファミリアとロキ・ファミリアとの決戦から二日後。

 メレンの事件は収束を迎えていた。

 事後処理。怪我人の治療から瓦礫の撤去、ギルドへの報告など諸々とあった。

 ギルドの報告はロキが中心にやってくれたのでなんとかなった。

 その結果、ギルドは公式に『辺境より訪れし野蛮なアマゾネス国家【カーリー・ファミリア】の引き起こしたものであると判明した』と発表した。

 カーリーに対して損害賠償請求をした上で。

 メレンの街で出現し暴れた食人花は偶発的なものにする。実際は汽水湖で水棲モンスターを食わせて養殖してしまっていたのだが、それはまるっと隠蔽された形だ。

 ポセイドン去りし後にメレンに住むニョルズは善神の代表であり、またその目的も誰も対処してなかった水棲モンスターから漁師を守る為。

 街長であるマードックもその為に協力していただけ、ならば真実を広めてこの両者を責めれば反発されることは間違いない。

 また最後の協力者にして魔石の横流し報告の偽装を行い私腹を肥やしていたメレンの街のギルド支部長ルバート。ギルド全体でも幹部格の犯罪も公表する訳にはいかない理由の一つだ。

 なおルバートは責任を取らされ財産没収の上にギルドをクビになったとか。神格者であるニョルズはそんな彼に恩恵を刻み眷属(漁師)として引き取ったそうだ。  

 生粋の事務方で現場の人間を馬鹿にしていた男にはある意味で全うな罰かもしれない。

 

 さてそんな形に決着はついたのだが、まだ問題は微妙に残っていてそれがロキ・ファミリアの頭を悩ませていた。

 

「フィン、アタシと子作りしなさいよね」

 

「ゼノン、・・・・・・その・・・付いて行くからな」

 

「「「ガレス様ー♡」」」

 

「こんな見た目なんだ!!こんな雄を知らないか!!見かけなかったか!!」

 

 その悩みの名は『アマゾネスの性』という。

 

「もう闘国は終わりじゃ」

 

 カーリーの絶望の声は潮風混じるメレンに虚しく溶けていったそうな。

 

 

「それでゼノン、『なんとか』できないかな?」

 

 このままではオラリオに帰れないよ。

 疲れ切った声でロキ・ファミリア団長、小人族の勇者フィン・ディムナはカーリー・ファミリアの最強の片割れであるアルガナ・カリフに抱きつかれて、抱きついたアルガナを引き離そうと引っ張るティオネ・ヒリュテを付けたまま俺に相談してきた。

 

「だよなー、俺もいい加減帰りたいがこのままだと面倒だよな」

 

 俺は俺で、バーチェ・カリフに服の端を離さないとしっかり握られ、そんなバーチェをアイズとティオナがジト目で睨みつけ、そんなアイズの様子からレフィーヤが俺をジト目で見るというよろしくない状況だ。

『アマゾネスの性』。

 闘国テルスキュラでは男など繁殖の為の家畜に過ぎないのだが、男に戦闘で負けてしまうとその強さに惚れてしまう。

 結果、ティオネを救う為に船上でアルガナを倒したフィン、レフィーヤを救う為にアマゾネス達を倒したガレス、ティオナを救う為にバーチェを倒した俺、応援に駆けつけて戦ったロキ・ファミリア男性陣はラウルを除いてアマゾネス達に惚れられてしまったのだ。

 なお一部アマゾネスは俺がモシャスしたケンタウルスホイミを探している模様。

 ラウルは、うん。

 大双刃運搬の為に逃げ回っていてあとはケンタウルスホイミ(俺)に乗ってただけだからアマゾネス達からは「逃げ足だけの男は死ね」と蔑まれ、ケンタウルスホイミライダーとなっていた事でメレンの住人や仲間からもヒソヒソと言われる始末だ、哀れな。

 

「つってもなんとかってな。頼まれたからって俺はアバン先生みたくなんでもできるわけじゃねえぞ」

 

「そのアバン先生ならこの状況をなんとかできるのかい」

 

 信じられないと言わんばかりの態度のフィンだが、アバン先生にできない事なんてねえよ(曇りなき信頼)。

 

「ま、手はあるしやるだけやるか」

 

 上手くいけば一石二鳥の効果があるしな。

 アマゾネス達に迫られて服をひん剥かれながら壁に追いやられる男性陣の助けを求める涙混じりの視線も辛いし。

 ちなみにベート・ローガはとっくにオラリオに帰っていたりする。

 彼が相手にしたのはフリュネとイシュタル・ファミリアのアマゾネスのみでテルスキュラのアマゾネスとは戦ってないから惚れられてないのだ。

 

「すまない、頼んだ」

 

 別にアマゾネス丸ごとオラリオに連れて帰れば良いじゃないかと思うが、レベル3がゴロゴロいるアマゾネスの集団を引き入れるとギルドでかなり面倒な手続きがいるらしい。多分、アルガナ・カリフのロキ・ファミリア加入は避けられないが。

 

「さーて、テルスキュラのアマゾネス達!!ちょっとこっちに注目しろ!!」

 

 やるか『なんとか』を。

 メレンの一角、ロキ・ファミリア男性陣に惚れたアマゾネス達を掻き集めて、俺は全員が見渡せる台の上に立って視線を集める為に叫ぶ。

 これが弱者ならば歯牙にもかけないアマゾネス達だが、バーチェを倒したことから敬意を払う対象になってんだよな。

 視線が集まったのを確認したら俺はとある呪文を唱える。

 

「極大混乱呪文・メダパニーマ!!」

 

 俺から発せられた激しい光。

 それを眼球から呑み込みように取り込んだアマゾネス達は、ビクリと反応するとガクンと崩れ落ちた。

 

「何をしたんだい?」

 

 アルガナに抱えられたままのフィンがヒョコリと姿を現しながら問いかける。

 つーかアルガナはメダパニーマを受けてないのかよ、よく見たらバーチェもいねえじゃねえか(宿屋で帰宅準備を桜花としている)。

 

「あんまり使わない呪文だから不安だが、多分大丈夫な筈なんだ。きちんと発動したし」

 

「いまさら君が幾つ魔法を使えるのかはツッコまないが(リヴェリアはうるさいけど)随分と確証なさげだね」

 

 いやだって魔王軍との戦争だとコレ系の呪文使うくらいなら斬るなり消し飛ばす方が早かったんだもん。

 そんな風にフィンと話していると、メダパニーマを食らったアマゾネス達は同時にザッと立ち上がる。

 

「そうだ。 

 捕まえるのは男じゃない、魚介類だ。」

 

 立ち上がったアマゾネス達の目はメダパニ状態特有のグルグルとした正気を失った感じになっていた。

 

「乗りこなすのは、雄じゃない船だ」

 

 呟きながら一斉にグリンとある方向へと目を向ける。

 

「戦いを挑むのは、同胞ではなくこのどこまでも広がる大海原だああああああっ!!」

 

 そして全員で海へと駆け出して行った。

 

 ヒュー、カラカラ。

 そして誰もいなくなった一角に良い感じに風が吹いた。

 

「何をしたんだいゼノン?」

 

 スリスリとアルガナが頬ずりしてる状態でフィンは問いかける。

 俺もここまで効果覿面だとは思わなかったので、1から説明することにした。

 

「極大混乱呪文・メダパニーマ。

 混乱呪文・メダパニ系統の最上級呪文で、その効果は発した光を目で捉えた存在を混乱、主に攻撃対象を誤認させるようにしむけるものだ」

 

 変な行動を取ったりもするらしいが、戦闘中だとだいたい攻撃対象の区別がつかなくなる。

 

「1対多数の時とかに便利そうな魔法だね」

 

「逆にそれ以外だと味方を巻き込みかねないから使いにくいしな」

 

 あと耐性が強い存在もチラホラいるから成功する保障もない不便な呪文でもある。単純なアマゾネスには効くだろうと確信していたが。

 

「それでアマゾネス達の惚れた相手、攻撃対象とは違うんだが迫る対象という点では一緒だから、その対象を男から海へと切り替えたんだよ」

 

 ただのメダパニならこうはならない。

 だがザボエラから譲ってもらった魔導書に記された極大混乱呪文・メダパニーマは洗脳に近い効果のある禁呪に片足突っ込んだ呪文。

 効きやすいだろうアマゾネス達には効果あると踏んでいたが成功したみたいだな。

 

「なるほど、それで海へと」

 

「テルスキュラの女戦士は海と断崖絶壁に囲まれた陸の孤島だから漁の心得を持つ者も多いしな」

 

 フィンに引っ付いたアルガナがさらに補足してくれる。断崖絶壁とはいえ海へと繋がる洞窟はあり、そこに食料を取る為に漁船を用意してあるらしい。

 略奪だけで全員の食い扶持を賄えるわけがないだろうしな。

 

「とにかくこれで『なんとか』なったな」

 

 ロキ・ファミリア男性陣はアマゾネス達から開放されて、メレンの港街にレベル3がかなり居るアマゾネス集団が居着く。

 うん、一石二鳥だ。

 

「妾の眷属に何をしとんじゃオドレー!!」

 

 泣きながら俺の首元を掴みブンブンと振り回すカーリー。

 カーリー・ファミリア、テルスキュラの女戦士達は最強の姉妹はオラリオに行き、殆どのアマゾネスはメレンで海(正確には汽水湖)に挑む。

 もはや構成員は最低限帰還できる程度しか残っていない。オラリオの外にある突き抜けた戦力を誇った世界勢力の一つ闘国テルスキュラはたった数日でその座から転落したのであった。

 

「食人花が使えんようになっても、これならメレンも安泰やな」

 

「うむ、彼女らが望むならメレンは全員歓迎するぞ」

 

 ロキとニョルズのその一言がこのメレンの港街での騒動の締めとなった。

 

「妾は納得しとらんわーっ!!」

 

 

 

「ところでゼノン、あの魔法の効果っていつまで続くんだい?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シラネ」

 

「え?」

 

 メダパニ程度なら軽く叩けば正気に戻るけど、メダパニーマレベルだとわからない。

 効果時間にしても、戦争時はある程度同士討ちさせたら即座に殲滅してたからわからないんだよな。

 俺とフィンの間にそんな会話があったとか。

 

 

 

「イシュタル、か」

 

「ああ俺に食人花を提供してきた男が紹介してきたのがイシュタル・ファミリアだった。食人花の運搬にちょうどいいってな。仲間というより俺達同様取引相手の印象だったが」

 

「イシュタルは闇派閥と関係はあるが目的は自衛じゃよ。よほど信頼されておらぬのうロキ、ギルドもじゃがなクヒヒ」

 

「ギルドは歓楽街の利益を得ようと必死やからな。暗黒期の時は魅了まで行使して協力してくれたんやけど」

 

「主のファミリアは女とエルフが多い、歓楽街を毛嫌いする者ばかりじゃろう?勇者も体面から利用せんし、信頼関係など築けんわなあ」

 

「うぐっ。せやな男共も女達からの軽蔑の目が怖くて行けんと泣いとった。ウチくらいデカくなると周囲から目立つから行くだけで話題に上がってまうし」

 

「クヒヒ、まあイシュタルと取引するならゼノンという男に頼るがよかろ。あの男の言葉なら無下にはせんじゃろ」

 

「(あんまりゼノンに借りを溜めたくないけど仕方ないわな。このままイシュタルと揉めるよりは取引で済ませる方が吉や。イシュタルがウチらに不信感や反感持つのも当然やし)」

 

 神々の対談。

 それは舞台をクノッソス、妄念の人工迷宮へと導く。 

 そこに待ち受ける阿鼻叫喚の悲劇と絶望はどうなっていくのか。

 死神の笛が奏でる曲が、ロキ・ファミリアの冒険を彩る。

 





 敗北したカリフ姉妹は、このままオラリオについてきちゃいます。
 アルガナはベッタリ系。
 バーチェは寄り添う系です。カサンドラとタイプかぶるなヤバい。
 なおフィンにひっつくアルガナを引き剥がそうとするティオネと、ゼノンに寄り添うバーチェにアイズは頬を膨らませ、ティオナはジト目になるのは今後のお約束になります。
 どうしよ、バーチェ改宗したらアポロンとの戦争遊戯余裕じゃん(絶望)。

 メレン問題。
 アマゾネス達にメダパニーマかけて解決。
 あとゼノンがこっそり海にモンスター拵えて放流しました。
 彼女らは今後海女として生きてゆくことになるかもしれない。
 
 極大混乱呪文・メダパニーマ。
 効果はオリジナルです。とにかくメダパニの最上級系だと思っていただければ。アマゾネスの生態と噛み合って効果抜群でした。
 洗脳効果も最上級かつザボエラから譲られた魔導書から覚えたからですね。
 ちなみにメダパニの名前の由来が、目玉がパニック、からきてるらしいので、発動には光を受ける、目がグルグルすると設定を加えました。だから眼球のない、ゾンビ系物質系には効きにくい設定です。
 
 イシュタル・ファミリアとロキ・ファミリアが不仲な理由。
 本神自体より眷属が理由です。
 女性団員が多く、潔癖なエルフが多いロキ・ファミリアは歓楽街を良く思わない者達が多く、利用する男達を軽蔑したりします。
 リヴェリアなどは理解を示しますが、アイズの教育によろしくないので避けがちなので。
 フィンは『勇者』だから体面があり利用できません。下手したら童帝なのではこの方?
 ガレスは女より酒タイプ。
 ベートは過去の女を引きずってますから。
 なので接触する機会がなく、なんとなく不快な存在同士という距離感です。

 ソードオラトリア、クノッソス編はアポロン編後に短編のイベントを調べながら書く予定です。
 
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