ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

56 / 119

 アポロン・ファミリア、神の宴。

 まで行きません!!
 
 本日は二段構成で、ゼノン視点と別の話を一緒にしてあります。
 多分今ぐらいしかできないお話でしたので書きました。(ロキ・ファミリアはクノッソスからシリアス連チャンなので)。
 


第56話

 

「『神の宴』の招待状か・・・・・・」

 

 夕食を終えた食卓の上にベルがギルド帰りに遭遇(待ち伏せ)してきた二人組から渡された招待状が置かれていた。

 ヘスティアはその招待状の送り主の名を確認し渋い顔をするもそのままじっと眺め続ける。

 空になった食器類はベルとバーチェが協力(役割を奪いあってるようにも見える)しながら片付けていた。

 

「ガネーシャの開いた『宴』から一ヶ月半くらい・・・・・・そろそろ誰かやると思っていたけど」

 

 ガネーシャ開催の神の宴。

 怪物祭の前あたりに開いたヤツかと、もう大分前に感じる出来事を思い出す。

 確か怪物祭に関する諸注意や協力呼びかけを兼ねて開催したんだよな。

『神の宴』は日付の決まったイベントではない。ファミリアを持つ神々が自主的に開くパーティだ。

 宴を開けるほどの自勢力の力を誇示(基本的に自ファミリアのホームで開催する為、ホームが無いと開けない)、自慢したりするそうだ。

 そんで二日後に『神の宴』を開くのが石像・彫刻のお得意様である【アポロン・ファミリア】。いやまあ知っていたがな、その日に料理人として依頼を受けてるわけだし。

【アポロン・ファミリア】は百人を超える眷属と、自ファミリアパーティだけで17階層のゴライアスを討伐した実績のあるギルドランクDの、いわゆる中堅大手ファミリアだ。あとは主神であるアポロンの趣味で、オラリオ外に長期間の眷属探しの外遊を行うのも特徴と言えば特徴だな。

 オラリオこそが下界の娯楽の中心地。

 一度下界に降りてからオラリオ外にでない神々の方が圧倒的に多いくらいだ。

 

「どうしましたか?」

 

 腕を組んで悩むヘスティアにベルが問いかけた。俺からしたら顔見知りの連中だがベルは付き合いがない。だからタダメシの機会を悩むヘスティアが不思議で仕方ないんだろう。

 

「う〜ん、参加しても良いと思うけど、ボクってアポロン苦手なんだよねえ」

 

「え、そうなんですか?」

 

 初耳だな、アポロンはかつて愛を語り合った知り合いだよとか言ってたんだが。

 つっても『処女神』であるヘスティアは性に奔放な神は基本的に苦手だと言うよな。性格やら付き合い以前に属性的に忌避感があるのかもしれん。

 けど、ベルへのアプローチを見てるとどこが『処女神』やねんと思うがな。

 普段からの抱きついたり布団に潜り込んだり添い寝したりのあの迫り方、ベルのように『神』という存在に一定の線引をしてるタイプじゃないととっくに手を出してるだろ。

 

「ああ・・・・・・天界で色々あってね」

 

 モニョモニョと言葉を濁すヘスティアに、ベルとバーチェは首を傾げていた。

 

「まぁ、それは置いといて・・・・・・今回の宴は普通の宴と違って、趣向が凝らされている」

 

 趣向?

 解体ショーについて書かれているのか?

 いや、それならヘスティアが招待状を見ながら笑ったりはしないか。苦手なヤツが開催するイベントで笑うなんて、本人が喜ぶ要素が無いとありえないしな。

 タダメシだけで喜びそうではあるが。

 招待状の内容をまだ読んでないベルが不思議そうにヘスティアを見る。

 

「参加しなきゃいけないのは決まってるようなものなんだ。ミアハ達にも届くだろうし、せっかくだ、みんなで一緒に出席してみよう」

 

 みんな、か。

 色々と準備が必要かもな。

 ただでさえ巨大魚の手配で忙しいのに。

 

  

 オラリオは春を迎えている。

 旅ばかりの俺の人生。実は季節の移ろいを実感する機会なんてそうは無い。

 年単位で同じ場所に滞在してないのだから当然のことだろう。

 拠点を変える理由は功績を得る為、修行の為と色々あったが、目的を果たしたらすぐに移動していたからな。

 だからオラリオで過ごした期間は、人生で一番長い滞在期間だったりする。

 幼少期のスラム街?

 街全体が定期的にガラリと様相の変わる場所を同じ場所に滞在したとカウントしたくないし、その頃も毎日のようにねぐらを変えていたからなあ。

 冬の重く垂れ込めていた雲が姿を消し、あらゆる草花が一斉に花を咲かせる季節。天候が安定し、移動やら野宿がしやすくなる点から都市を訪れる旅人や行商人の数も多くなる。

 そういえば俺がベルと出会い、オラリオにやって来たのも二ヶ月ほど前の季節の移り変わりの時期だったか。

 ダイとポップから黒の結晶を奪い取り空の果てで爆発したあの日。

 目を覚ますと見知らぬ森で、そこに蠍モンスターと戦うアルテミス・ファミリアがいた。

 モンスターの存在に死後の世界は地獄なのかと(死後は善行を積めば天国、悪行を積めば地獄に魂は運ばれると何かの本で読んだ。魂は循環していて生まれ直すという教えもあったが)勘違いした俺は、不快な感情のまま大暴れして蠍モンスター(アンタレスとやらの下僕だかなんだか)を撃退し、警戒するアルテミス・ファミリアからある程度事情を訊いてからアンタレス本体を全力で森ごと消し飛ばしたんだよな。

 その後、俺を運命の相手だとか迫ってくるアルテミスが怖くて(遭遇時は男だからと言う理由で警戒して弓すら向けていたのに掌返しで性格が反転したのかってレベルだった)逃げ出して、近場の村で装備を整え(雷鳴の剣作製)てとりあえずオラリオを目指していた時に行商人と行動を共にしていたベルと出会ったんだよな。 

 

 二ヶ月か。

 もうダイよりも長い時間をベル達と過ごしていたのか。

 やりたい事はやっているが、尽きぬ欲望から衝動のまま追い立てられるようにやっていた頃と違って楽しみながら過ごせている気がする。

 本当にあっという間だったんだな。

 

「ゼノン、そろそろだぞ」

 

「おう、了解」

 

 桜花の言葉に意識を切り替える。

 頭にねじりはちまきを巻いて極東風の純白の料理人装束を纏い同じ格好の桜花と共にアポロン・ファミリアの宴会場へと向う。

 宴のメインイベントであるダンスの前に招待客達を立食形式で食事を提供して胃を満足させる。

 俺と桜花はその場で料理を、メレン港街の汽水湖で取れた巨大魚の活造りをその場で拵える。

 生魚、しかも巨大魚は寄生虫や食中毒が怖いが採れたて新鮮の上、念の為に駆除呪文ニフラムをかけてあるから問題はない。

 メレンで醤油や薬味も仕入れてあるし、生食が無理な客の為に鉄板焼きをする準備もしてある。

 さあ、仕事の時間だ。

 

「いくぞ、桜花」

 

「極東の伝統食のお披露目だな」

 

 俺達は会場へと足を踏み出した。

 

「「「「「「何をやってんだお前ら!」」」」」」

 

 なんか知り合い連中からは見られる度に叫ばれたけどな。

 

 

 

 

 

 バーチェとティオナ、オラリオにて。

 

「こうして小さな勇者ダイはキラーマシンを倒し、レオナ姫を助けだしたのでした」

 

 オラリオに幾つか存在する孤児院。

 そこで子供たちに物語を読み聞かせる一人のアマゾネスがいた。

 彼女はバーチェ・カリフ。

 しばらくは観光でもしたらどうだい、とヘスティアに言われた彼女は(最初はゼノンについてまわって食堂で働こうとしたがゼノンに言い寄る女冒険者と揉めて追い出された)、転けて足を怪我した女の子を助けたことをきっかけに孤児院に顔をだすことになった。

 テルスキュラでは年下のアマゾネスの面倒を見させられる。いずれ殺し合わせる為ではあるのだが、共に過ごさせ戦い方の指導をさせる。

 バーチェとティオナの関係もそこからであり、それが先日の戦いと繋がっていた。

 物語の読み聞かせはかつてバーチェがティオナにしてやったことだ。  

 ティオナが拾ってきた『英雄譚』の欠片、破れた本を読んで欲しいとせがまれたことがきっかけだった。

 渡されたその場で彼女は読み聞かせることができなかった、バーチェはその時は『共通語』が読めず、かといって幼いティオナには恥ずかしいからその事を言えず、後日こっそりと主神であるカーリーに学んでから読み聞かせたのだ。

 血と戦いと死しかないテルスキュラにあった彼女の穏やかな一幕。だがそれはあっさりと終わる。

 ティオナに渡された断片でしかなかった『英雄譚』はすぐに読み終わり、ティオナが儀式の褒美に新品の本を強請りすぐに自分で読めるようになったからだ。

 自分で読めるようになったティオナの姿に何故か寂しさを感じたバーチェ。

 その想いは胸のどこかに残っていたのだろう。だからこうして孤児院の子供たちに、かつてティオナにしてやった読み聞かせをしていた。

 

「それで、それで、どうなっちゃうの?」

 

 そんな子供達に混じる一人のアマゾネスがいた。目をキラキラと輝かせる姿は昔とまるで変わらないな。といつの間に現れたティオナ・ヒリュテにバーチェ・カリフは思った。

 

「残念ながらここまでだ」

 

「「「「「え〜〜〜!!」」」」」

 

 不満の声を上げる子供たち(なお1名はこの世界では成人扱い)。

 物語の続きはまだない。

 バーチェがゼノンに英雄譚を知らないかと尋ねたら、彼はその場でここまでの話を書いてくれたのだ。

 実はヘスティア・ファミリアのホームには意外と本が多く、ベルもヘスティアも英雄譚には詳しいのだが(ベルは英雄オタク、ヘスティアは元ニート)、バーチェは敢えてゼノンが書いてくれたこの物語を読み聞かせたくなったのだ。

 ゼノンが優しい目をしながら、懐かしむように書いたこの物語を。

 

「ねえねえ、バーチェ?それなんて英雄譚?あたしも知らないお話なんだけど」

 

 昔みたいに読み聞かせてもらうのも良かったけど、自分も読みたいとティオナは言う。

 

「『ダイの大冒険』、ゼノンはそう言っていたよ」

 

 それはゼノンがダイ達から聞いた彼らの軌跡。バーチェに頼まれたゼノンは過去を懐かしみ、あの小さな勇者の物語を描いたのだ。

 あの輝きがこちらの世界も照らすように、そんな想いを胸のどこかに抱きながら。

 

「ねえ、また読み聞かせしてくれる?」

 

「自分でもう読めるだろうに」

 

「それでもさ、バーチェに読んで貰った事が、あたしが笑えたきっかけなんだよ」

 

 テルスキュラで、いずれ殺し合う未来が定められていた世界で育まれた絆。

 飛び出した果てで一度は絶たれたその縁も、彼女達はぶつかりあった先で、再びその絆を結び直すことができたのであった。

 

「続きが聞きたいよ〜」

 

「ゼノンは多忙なんだあまり急かしてやるな」

 

 なお、孤児院院長からは子供達の教育によろしくないから服装はアマゾネス衣装から改めてと言われたそうな。水着みたいな薄着だからね仕方ない。

 

 ちなみにもう一組のアマゾネス姉組だが。

 

「フィン〜♡」

 

「団長に纏わりつくなテメェ!!」

 

 ロキ・ファミリアホームでフィン・ディムナをとりあいぶつかり合い、ホームを壊しまくってるとか。

 

「修繕費はフィン持ちじゃな」

 

「それか責任取れ」

 

「勘弁してよ」

 






 ゼノンサイドでの宴開始前までです。
 オラリオに来て苦手そこらなのでアルテミスの件にも触れました。彼女の出番も近いです(あまり本編にら関わらないかもですが)。似た内容は何回か書いたかなと後日修正するかもです(感想返信と混同してる可能性もありまして)。

 後半はメレンで書けなかったんティオナとバーチェのエピソードです。
 ケンタウルスホイミインパクトで書く余裕がなかったので今回書きました。
 同じオラリオに住むのだから昔のように読み聞かせできる関係に戻りました。
 読み聞かせする物語の『ダイの大冒険』はゼノンがダイ達の話を纏めたものです。
 様々な想いを込めて書いたそうです。
 ちなみにゼノンサイドの話は子供に言えないドロドロの暗闘陰謀劇なので、ほぼダイの大冒険原作ですね。ゼノン登場からは少し変わるので、初期アニメ版みたいな感じです。
 ちなみに孤児院ではシスター服が義務付けられます、却ってエロさが際立つ気がしますが。
 なおそんなほっこりエピソードに比べ、アマゾネス姉組はもう。いや仲は良くなりましたが被害とフィンの胃が大変です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。