ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 繋ぎの回で一部ネタ回です。
 飛ばすか悩むシーンでしたが、原作を読んでない方も居ると知り(かつては作者もそうでした)、書きました。
 話は進みませんが、それでもネタはぶちこみます。




第57話

 

 着慣れない礼服に、いわゆる燕尾服を身に纏う僕はこれまた上品な革靴を鳴らして地面に降り立った。

 アポロン・ファミリアで開催される神の宴の日。アポロン・ファミリアが用意した仕立て屋さんに礼服やドレスを借りた僕達はそこから用意されていた馬車に乗り込み会場であるアポロン・ファミリアのホームへと出発した。

 ぎこちない動きで振り返り、次に降りてくる少女・神様へと手を貸す。

 嬉しそうに微笑みながら馬車から出てきたヘスティア様も正装のドレスに身を包み、普段よりずっと綺麗で華々しい。

 

「ありがとう、ベル君。ゼノン君から教えてもらっただけのことはあるね」

 

「い、いえ・・・・・・」

 

 神の宴開催までの僅かな期間に僕はゼノンさんからこういった着飾ったパーティでの作法を教えて貰っていた。ゼノンさんもお世話になったアバンという方から学んだらしいけど、身につけておいて損はないですよと言われたらしい。

 数時間程度で身につけたとは言えないけれど、それでもなんとか何をしたら良いかわからず硬直したり右往左往したりはならないようにはしなきゃと思っている。

 続々と集まる高級そうな箱馬車、正装している何人もの美男美女、とどめに大富豪の豪邸ーーいや宮殿かと見間違うほどの巨大な会場。

 本日【アポロン・ファミリア】が開催する『神の宴』は、眷属1名を引き連れての、神と子を織り交ぜた異例のパーティ。

 通常の『神の宴』では眷属は主催する側の給仕や警備しか認められていないけど、今回は主催するアポロン様が同伴を条件としているのだ。

 こういった新しい試みが大好きな神様達は面白がってその要求を呑み、自分の眷属・子供を自慢しようと選りすぐりの団員を伴って参加している。

 ファミリアの団長を連れてきた神様がいる、ファミリア内で容姿に優れた眷属を連れてきた神様もいる、ファミリア内で一番強い眷属や一番レベルが高い眷属を連れてくる神様と、連れてくる者は様々だった。

 完璧な容姿を誇る男神様女神様に引けを取らない美男美女な冒険者がいる反面、厳つい顔立ちの如何にも冒険者然とした筋肉隆々な人や気難しそうな職人のような人もいた。

 そんな中、田舎出身の農民が立派な服を着て、明らかに背伸びしている僕なんかは非常に浮いているのではないだろうか?

 この『神の宴』に参加すると聞いた時、僕はゼノンさんがついていくものだと思っていた。

 大人びてカッコいいゼノンさんが正装すれば男神様や王子様に負けない、そんな同伴者になると思ったからだ。

 ちなみにリリは眷属を1名同伴と聞いた瞬間に辞退した。この場合女同士はありえないのと、小人族は他種族混同なパーティは身長で悪目立ちするから避ける傾向があるそうだ。

 パーティお約束のダンスで、その意図がなくても恥をかくことになるんだそうだ(あとドワーフも気質に合わないとかで嫌がるらしい)。

 けどゼノンさんはその日、今日だけど仕事があって参加できないと言って、残った僕が参加することになったんだ。

 やっぱり場違いだよなあ。多くの英雄譚では慣れぬ礼服を着こなす英雄達ばかりなのに、僕は明らかに服に着られている。

 

「似合っているぜ、ベル君。恥ずかしがらなくて大丈夫さ」

 

 ソワソワする僕に神様は気楽そうに告げた。綺麗なドレスを着れることがよほど嬉しいのかとてもご機嫌そうだ(実際はベル・クラネルと参加できているから)。

 神様の衣装は、胸の谷間が強調されるデザインのレースとフリルをあしらった蒼海色のドレス。過激な衣装はアマゾネスのバーチェさんが居るおかげで慣れつつあるけど(感覚麻痺)、正直視線に困ることがしばしばだ。

 だからゼノンさんはどうなんですか?と訊いてみたんだけど、性的に見たい時は娼館に行くからそれ以外の時は女性を見てもなにも思わないらしい。

 感情というか感覚の割り切りと制御がとんでもない人なんだよね。

 

「すまぬな、ヘスティア、ベル」

 

 そう言いながら続いて馬車からミアハ様が眷属であるナァーザさんの手を引きながら現れた。

 ゼノンさんが紹介した仕事で寝る暇もないくらい多忙なミアハ・ファミリア。

 極貧からはそろそろ卒業しそうな稼ぎはあるけれど、多忙だからと参加を渋っていたところ「ナァーザ君の為にもたまには羽目を外した方が良い」とヘスティア様に説き伏せられたのだ。

 

「誘ってくれてありがとう、ベル」

 

「ナ、ナァーザさん」

 

 買い物以外で外に出るのは久しぶりだとナァーザさんは言う。

 ゼノンさんが紹介したハーフポーション(薄めたポーションの味を整えたヤツ)はフレイヤ・ファミリアとイシュタル・ファミリアで日々大量消費されている。

 いや、まだイシュタル・ファミリアはマシなそうだけど、フレイヤ・ファミリアの団員さん(治癒士)なんかは「コレ一箱で睡眠時間が増える」と血走った目で受け取りにくるそうだ。

 フレイヤ・ファミリアの大規模なダンジョン遠征とかは聞いたことはないけど、なんでそんなにハーフポーションを消費するんだろう?気になるけど知らないほうが良い気がしてきた(近い未来、身を以て知ることになる)。

 だから納期を遅らせることができないミアハ様とナァーザさんはものすごく忙しいそうだ。ミアハ様なんて最近は前みたいにポーションの配り歩きもしていないようだし。

 

「・・・・・・似合う?」

 

「はい、とても素敵ですっ」

 

 質素な服ばかりな綺麗なお姉さんが着飾ると普段とのギャップもあってより綺麗に見える。赤い生地の、右腕の義手を意識させない長袖のデザインもとても似合っていた。

 半分瞼が下りている彼女の表情はあまり変化しないけど、犬人の特徴であるふさふさな尻尾がパタッパタッと左右に振られていた。言葉や表情に出ないけど耳や尻尾に感情が出るトコが獣人の萌えポイントだとどこかで神様(某道化の神)が言っていたのを僕は思い出していた。

 

「では、そろそろ行くとするか」

 

「ああ。じゃあベル君、頼んだぜ?」

 

「は、はいっ」

 

 ミアハ様に促され、ヘスティア様が差し伸べた手を恐る恐る取る。

 眼の前にはこれから入る会場、豪華な宮殿。神様とミアハ様は「ガネーシャのトコじゃなくて良かったよね」「だったらナァーザは連れてこないよ」と話していた。

 英雄譚にも登場する『社交界』、冒険者になって活躍して有名になったらいずれはと夢想していた場所に僕は今日足を踏み入れる。

 ワクワクしていないと言ったら嘘になるけど、今回ばかりは緊張が勝ってしまう。

 ゼノンさんならどう思うのかな?

 そんなことを考えながら僕は周囲に倣ってヘスティア様をエスコートし、見上げるほど高い建物へと入っていった。

 

 

 ホールから思わず仰け反ってしまうほど豪奢な大階段を上がった先、建物の二階にパーティを行う大広間はあった。既に賑わっている大広間には多くの招待客が集い、高い天井にはシャンデリア型の魔石灯、沢山の長卓には上位階級の人しか口にできないような料理がズラリと並んでいた。

 日暮れが終わり外は宵闇に満ちている。此処は北のメインストーリート界隈、高級住宅街の一角の為、酒場や雑踏が奏でる夜の喧騒が遠い。同じオラリオなのに、区画によってまるで違うのが面白いところだと僕は思う。

 

「あ、あの人、見たことあります」

 

「あの冒険者は前から結構有名。あっちに固まっている派閥の連中はよくない、あのモヒカンは甘味好きで本も出してる」

 

 広間を進んでいくと名のしれた冒険者をチラホラ見かける。側に居るオラリオ生活の長いナァーザさんに色々な情報を教えて貰いながら、僕はつい周囲を見回してしまう。

 

「あら、来たわね」

 

「ミアハもいるとは意外だな」

 

「ヘファイストス、タケ!」

 

 隅の方に足を運ぶと僕達に声をかけてくれる神様達がいた。ヴェルフの主神であるヘファイストス様とゼノンさんと親しいタケミカヅチ様だ。個神的に親しい方々にヘスティア様は嬉々として駆け寄りミアハ様も混じえて話し出す。

 

「タケの同伴は命君か、この前はありがとう」

 

「い、いえっ、はっ、はいっ・・・・・・」

 

「ヘファイストスの子はどうしたのだ?見えないが」

 

「変わり者でね、私を置いて一人で散策してるわ」

 

 ヴェルフ、ではないよね。

 こういった場は必ず『魔剣』について話題を振られるから嫌いみたいなことを本人が言っていたし。

 先日『中層』まで助けにきてくれた一人である命さんは、今はガチガチに緊張している。僕だけじゃないことにすこしばかりホッとした。

 その後にヘルメス様も来たけど、なんか雑に扱われていた。

 

「ところで、さ」

 

「ああ」

 

「うむ」

 

「うん」

 

 僕達は揃ってゆっくりと会場の一角に目を向ける。大広間に入った時から気づいてはいた。

 けれどあえて反応しないように努めたその先には、

 

「我が『七星刀』は全ての食材を瞬断する」

 

「はっ、ほい」

 

 極東風料理人装束に身を包んだゼノンさんが、神様と同じくらいの大きさの巨大な魚を、タケミカヅチ様の眷属である桜花さんの補佐を受けながら大太刀みたいな包丁で捌いていたんだ。

 というか包丁なのかなアレ?

 バベルの武器屋で見た逸品にも見劣りしない代物だとこの距離からでも伝わってくるよ。

 瞬く間に解体され、腑分けされ、部位ごとに角の立った切り身にされる巨大魚は、これまた氷で出来た船(後で聞いたらゼノンさんが魔法で創ったらしい)に盛られる。

 調理台の直ぐ側に張り付いたヘファイストス・ファミリアの団長である男装した椿さんが「ふおおお」と反応する中、見事に完成。

 極東では舟盛りと呼ばれる豪華な料理らしい。

 

「何をやってんだアイツラ」

 

「今日は仕事とか言ってましたけど」

 

「よりによってここで仕事だったとはな」

 

 恐る恐る巨大魚の舟盛りに手を付けた神様達が「うーまーいーぞー!」と反応しだす。なんか光出す方々までいた。

 椿さんは調理を終えたゼノンさんにその包丁を貸して欲しいと纏わりつき、桜花さんはステーキ肉のように大きく切り分けた部位を横の熱い鉄板でじゅうじゅうと焼きだした。

 それを見て僕達も、ゼノンさんと話もしたいのもあり調理台へと向かうのであった。

 





 繋ぎ回です。
 次はダンスまで終わらせられるかな?

 貸衣装と場所。
 当作ではアポロン・ファミリアで仕立て屋を一軒貸し切って、希望者はそこから衣装を借りて馬車で会場に向かっています。
 あの衣装でオラリオ内を馬車の待合所まで向かうと目立つと思いまして。

 ミアハ・ファミリア。
 ハーフポーション(薄めて味を整えたヤツ)がフレイヤ・ファミリアで需要があり過ぎて、寝る暇がないくらい忙しいです。フレイヤ・ファミリアの治癒士達からはマシになったと感謝されています。
 
 七星刀。
 某中華料理漫画登場の血塗られた包丁。
 よく考えたらあの人(持ち主)が最初に作った鯛料理って中華料理では無い気がしますね。七つ包丁だけど一本は無関係な氷包丁、かつ消耗品。割と大刀で人に斬りかかったりもしている。なんか続編で刀鍛冶さんエピソードが追加された。
 ゼノンが解体ショー用に打った包丁だが、下手な武器より強い代物。

 土日はもっと話を進めたいですね。

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