ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 いつも感想ありがとうございます。
 中には作者が言語化できなかったイメージをピタリと当てはめてくださる方もいたりして、日々の楽しみと勉強と参考になっています。
 


第59話

 

「なんでうちってこんな反応なんやろ?ロキ・ファミリアやで、オラリオを代表する二大ファミリアの主神やで、なんでフレイヤ登場と違ってこんな盛り下がるねん」

 

「だって君って威張るし、嫌味言うし」

 

「神としての性格に難があるからな」

 

「生産系ファミリア相手に必ず値切るじゃない」

 

「見た目だろう、圧倒的に」

 

 あまりにも差が有りすぎるオラリオ二大ファミリア主神の登場シーン。

 男装している朱髪糸目の女神様には嫌そうな顔をして距離を置く神様達はいても、銀髪の女神様のように集まる神様達はいない。

 隣りにいる眷族であるアイズさんを見たら歓声が上がるのに。

 他の神様達から叩かれまくっているロキ様は、早くも息も絶え絶えだ。

 

「えっと、ロキ様があんなことを言われてますけど大丈夫なんですかアイズさん?」

 

 神様同士の軽口の言い合いに下界の人に過ぎない僕達は口を出せない。

 それでも大事な神様を悪く言われたら不快になるのが普通なんだ。

 

「? ロキはファミリア内でも大体あんな感じであんな扱いだけど」

 

「言葉責めが日常っ!?」

 

「言葉だけじゃなく殴るよ(ムンッ)」

 

 腕を曲げて力こぶするアイズさんカワワ。

 というか主神様を殴れるファミリアって、ウチとは違う形で距離が近いファミリアなんですね。

 しかしアイズさん、胸もとと背中が開いたそのほっそりした肩まで剥き出しな薄い緑のドレス。精緻な刺繍や装飾が施されたデザインは派手な宝石を身につけるより彼女の美しさを引き立て、両腕の滑らかな生地の長手袋も似合っていた。

 付き合いがあるから挨拶は普通にできたけど、いざ直視したら胸が高鳴り過ぎて見てられなくなってしまう。

 

「どうしたの?」

 

 赤らむ顔を隠すように俯かせたらアイズさんに下から見上げるように顔を寄せられた。

 

「ハウアっ!?」

 

 驚いてなんか変な声がでてしまう。

 

「照れてるの?反応が面白いね」

 

 口元に手を当てて笑うアイズさん。その態度に年上の余裕とゼノンさんの影響(強調)がしっかりとみてとれた。

 

「アイズ君相手だと弟をからかう姉にしか見えなくて嫉妬できないよ。むしろアイズ君の情緒の成長を喜ぶボクがいる」

 

「うちの椿は人形と言って距離を置いていたけど、今はそんな風には見えないわね」

 

「ベルをからかうと愉しいのは否定できませんからね」

 

 フレイヤ様に見惚れた時の神様のツインテールスピアを警戒したけど今回は撃たれることはなかった。アイズさんってヘスティア様を『じゃが丸君の神様』って凄く尊敬して慕っているから、ホームに遊びに来た時も可愛がってじゃが丸君をあ~んしたりするくらいですからね。

 ヘファイストス様は鍛冶ギルドとしての付き合いがあるからか色々と思うところがあるようだ。そういえば『奇跡の剣』の前の愛用の剣はゴブニュ・ファミリア製らしいのもそこら辺になにかあるのかな?

 そしてナァーザさん、リリもそうだけど(あとシルさんにリューさんも)年上のお姉さん感を出してからかわれると男なら反応しちゃいますから。

 

「そんでその少年がドチビの眷族か」

 

 そんな風にアイズさんとやり取りしていた僕にロキ様が近づいてマジマジと見つめてきた。

 糸目を開き朱色の瞳で凝視され、観察するような見定めるようにじっくりと見られる。少々居心地が悪いけどじっとり見られることに何故か慣れてる自分が居ます。

 ややあって、

 

「年上受けしそうな見事なショタやなあ。ウチのフィンが行動と強さを外見ギャップで引き立てるショタおっさんなら、こっちは素直な反応で魅了する真正ショタか。女神(一部男神も)やらエルフ(ハーフ含む)の性癖に突き刺さること間違いなしやで」

 

 僕は何を見定められたんだろう。

 

「女神とエルフは一度嵌るとエグいくらい執着強いの多いから、気をつけるんやで(ポンッ)。大変やろうけど強く生きるんや」

 

 なんか凄く同情されて励まされてる!?

 

「「「「「「わかる」」」」」」

 

 そしてその評価に周りの皆様が納得しているんですけどっ!?

 

「せやドチビ、なんで連れてきたのがゼノンやのうてこの少年なん?良いショタやけど、場馴れしてなくて可哀想やん」

 

「招待状を貰ったのがベル君だったし、ゼノン君はほらあそこに」

 

 神様が指差した先では魔法で作り出した氷を女神様の氷像へと包丁で彫り上げるゼノンさんの姿が。ちなみにモデルはイシュタルって女神様らしい。

 

「アイツ何しとんねん。メレンでの礼を言いたかったけど忙しそうやな」

 

 ゼノンさんが神様のエスコート役にぴったりなのは僕もそう思った。ロキ様はヘスティア様よりもゼノンさんに用事があったみたいだ。そしてアイズさんはゼノンさんを見つけたら躊躇わずそっちにドレスが乱れない速度で向かっていった。気持ちはわかるけどロキ様が置いてけぼりに。

 

「・・・・・・・・・アイズたん。情緒の成長は嬉しいけど、前より扱いが酷くなっとるで(泣)」

 

「名前に『たん』を付けてるからそんな扱いなんじゃないかな?」

 

「「それはそう」」

 

「俺は良いと思うけどね、なあアスフィたん?」

 

「フォークを刺しますよ?眼球か尻に」

 

「二択がエグい!?」

 

 アイズさんとはもっと話したい気持ちもあったけど、夕食の時間にいつの間にか混じってたりもするからまあいいかと思う。

 でも、ゼノンさんの側に行くなりお刺身をあ~んで食べさせて貰うのは駄目でしょう。

 僕だってやってもらってないのにっ!?

 

「君はそれで良いのかいベル君?(色々悟った慈愛深き女神の眼差し)」

 

「あードチビ。ちょい時間貰えへん?ゼノンについて訊きたいことがな」

 

「ふっ、ロキよ。胃薬の貯蔵は充分か?」

 

「胃痛案件だと察する辺り苦労しとるんやな」

 

「良い子で、最高の眷族だけど。まごうことなき問題児だからね」

 

「せやな」

 

 神様とロキ様がそんなやり取りを終えてから、僕はヘスティア様に連れられて知人である神様達の前で挨拶をして回った。天界で付き合いのあった方やオラリオで親しくなった方たちもかなりいるみたい。

 神様だからといって全員が遊び呆けているわけではなく(下界に降りている時点でサボり極めているが)、ファミリアの事務会計や技術指導を行い多忙な方たちも存在する。

 そんな方たちと顔を合わせる機会なんて本当に無いから、この眷族参加の神の宴はありがたい機会だ。あちら側にしてもランクアップ世界最速記録の僕に興味があるようで実際に会えて良かったと言ってくれた。

 やがてパーティが始まり2時間ほど立つ頃、僕は一旦神様と別れて小休止をもらった。神様はロキ様とゼノンさんについて話をするそうだ、ゼノンさんについてなら僕も語れるけど神様同士の会話に混じるのはいけないよね。

 人の流れから外れて邪魔にならないように壁際へと移動する。

 一息ついたら膨らんだ風船から空気が抜けるように緊張が緩む。

 英雄譚で憧れた一幕に参加してるようで嬉しかったけどやっぱり疲れてはいたんだろう。田舎出身の僕にはこの綺羅びやかな世界はその場に居るのにどこか隔たれてるように感じてしまうのだ。

 あの日見た夢の世界に僕はいる。

 けれど此処は、未熟な僕にはまだ分不相応なのかちょっと息苦しいかな。 

 

 そんな時間を過ごすことしばし、やっぱりゼノンさんのトコに行こうかなと悩んでいると会場に流れる音楽に変化があった。

 どうやら舞踏が始まるらしい。

 大広間の中央で男女でペアを作り手を取り合い踊りだしていた。

 ダンスかあ。

 18階層の事件後の宴でやった、焚き火を中心に皆で円を作って踊り合うタイプならスッと混じれたけど、このタイプだと無理だよなあ。

 ゼノンさんがパーティ参加には必須だとダンス指導をしてくれたけど、踊る技術より女性を誘うことができません!!

 見てるだけで良いか。

 それだけでも楽しめるくらい美男美女ばかりの綺麗な舞台だし。本命を誘う勇気なんて僕には無いのだから。

 

「踊らないの?」

 

 だからその声を聞いた時、頭からウサ耳が生えそうなくらい驚いた(どんな驚き方だ)。

 

「あ、アイズサン」

 

「やほー」

 

 そこには軽く手を振るアイズさんがいた。

 馬鹿なっ!?貴女は親鳥に餌を貰う雛のようにゼノンさんから延々とお刺身を食べさせられていた筈だっ!?(超羨ましい)。

 

「ゼノンさんがウサギは一匹だと掴まってロワイヤル(ジビエ料理)にされちゃうから相手をしてやれって」

 

 ゼノンさんんんんん!?

 視線を送ればそこには女神様達にダンスを誘われてるけど仕事を理由に全て断るアンチクショウが。

 僕の視線に気づいた彼はグッと親指を立てて頑張れよ、と笑いかけてきた。

 気遣いで援護のつもりだろうけど、精神的に負担の大きなキラーパスです。

 

「踊らないの?

 踊りたい相手を誘う時に一緒に行ってあげようか?」

 

 なるほど一人で声をかけれないから付き添いに来たつもりなんですねアイズさん。

 誘いたい相手にそれされたら男の子は泣きたくなるくらい辛いのだと知ってください。

 ふふふ、ここまでされたらいくらヘタレと言われる僕だって覚悟(正しくはヤケクソ)を決めますよ!!

 

「僕と・・・・・・私と、踊って頂けますか?」

 

 それでも心臓はバクバクドキドキで、その声は力なく震えてしまったけど。

 オズオズと差し出した僕の手を、アイズさんは虚をつかれたのか目をパチクリさせて見てから、微笑みながら取ってくれた。

 

「良いよ、リードしてあげる」

  

 重ねられた彼女の細い手を、勇気を振り絞ってギュッと握る。

 数え切れないくらいモンスターを討伐してきたその手は、触れてしまえば繊細で柔らかい。

 指を絡ませた僕達は、ダンスホールとなっている広間の中心へと赴き、先に踊っている皆さんの中に加わる。腰と肩に手を添え合う円舞曲は魅せるよりも楽しむダンス。お互いに初めてのはずなのに、意外なことに息はピッタリと合っていた。これは相性が良いというより、

 

「ゼノンさんの指導?」

 

「ですね」

 

 僕達はなんだかおかしくなって笑い合う。緊張していたのになんかそんな共通点だけで気が抜けて楽になっていた。

 

『あー、胃が痛いわあ。なんつー秘密抱えとんねんアイツ。って何やっとんのやアイズたーーんっ?!!アベシッ!?』

 

『うるさいなロキ、胃に響くだろう。年頃の娘がダンスを踊るなんて当たり前でしょ、ってベル君は駄目じゃないかあああああ!?さてはゼノン君の仕業だな!?ユベシッ!?』

 

 広間の奥から放たれた絶叫にギョッとした。視界の端からは胃を押さえた神様達が僕達を見て怒髪天を衝くもヒュースコン、とどこからか拳の形をした氷の塊が飛んできて額に命中した。その衝撃に二柱の神様は犯人はゼノとダイイングメッセージを床に書き残して倒れた。

 

「無粋だ阿呆共」

 

 ゼノンさんの援護射撃(まんま)に僕とアイズさんはついほへーとなってしまう。

 

『・・・・・・オッタル、ここにミノタウロスの群れを連れてこれないかしら?』

 

『不可能です、フレイヤ様。それにせめて階層主の群れでないと1秒すら稼げないかと』

 

 ・・・・・・お、悪寒がさらに?

 

「初めて」

 

「えっ?」

 

「ゼノンさんに教わったけど、人前で踊るのは初めて」

 

 アイズさんはそう呟いた。

 

「子供の、ロキ達と出会う前には憧れていたけど、そんな気持ちすっかり忘れていた」

 

「アイズさん」

 

「だから、嬉しい。誘ってくれてありがとう」

 

 嬉しいのは僕の方だ。

 憧れている人と踊れていること、それだけじゃない。彼女がその気持ちを思い出してくれた。そのきっかけに成れたことが不思議と誇らしくて嬉しいんだ。

 

「ん、ゼノンさんみたくリードできない」

 

「僕もゼノンさんみたいに合わせられないです」

 

 胸から湧き上がる想い、共通の話題。美しい弦楽器の調べに合わせ、僕達は楽しい時間を過ごしたんだ。

 この神の宴最後の楽しい時間を。

 

 ダンスを終えた僕達はダンスホールから神様達の元へと戻った。

 こんなに楽しいものがあるのだと僕は初めて知ったんだ。良いダンスだったと褒められてアイズさんと揃って照れながら笑った。

 

「うちのプリティフェイスが凹んでまう」

 

「大丈夫さ、ロキ。むしろ腫れて膨れているから。胸に当たれば良かったのに残念だったね」

 

「なんやその発想、天才かお前」

 

「待つんだロキ!?全力で壁飾りにぶち当たろうとするな!!ボクサイズの胸になるほど腫れようとしたら衝撃で送還されるだろおおおおおお!!」

 

「ロキうるさい(ズバシ)」

 

 何やら気がついて実行しようとしたロキ様はアイズさんに首トンされて気絶した。大丈夫かなロキ様。

 一息ついて、まだ時間はあるし神様と踊ろうかなと思っていたら、

 

「諸君、宴は楽しんでいるかな?」

 

 主催者であるアポロン様が会場の中央に登場した。そして魔石灯が徐々に光量を落としていく。

 

「盛り上がっているならば何より、こちらとしても開いた甲斐があるというもの。

 ならばこそ、いよいよこの宴の真の目的。

 メインイベントを執り行う!!」

 

「し、真の目的ってなんだい?」

 

 ヘスティア様の震える声が会場に寒々しく響き渡る。会場の招待客の皆さんも理由がわからずに困惑している。

 そして、スポットライトが僕を照らす。

 薄暗い室内に僕と、一歩踏み出したアポロン様だけが照らしだされる。

 僕へと歩み寄るアポロン様の表情はまるで決戦に挑むのかと言わんばかりに真剣だった。

 

「ベル・クラネル。

 否、ベルきゅんっ!!!!!」

 

 ベルきゅん!?

 

「私アポロンは、太陽の神アポロンは君という可愛らしいウサギたんに惚れた!!!!

 私の愛を受け入れ、私のモノになってくれ!!」

 

 アポロン様は服を全て脱ぎ放ち「幻霧呪文マヌーサ」、全身全霊を込めて僕に告白してきた!?

 なお、見えちゃいけない箇所は何故かガネーシャ様の顔になっていて会場の招待客の皆さんに晒されることはなかった。

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

 そのインパクトあり過ぎる行動はその場の全ての者に衝撃を与え、時間が止まったかのように動きを静止させてしまった。

 

 後に『アポロンの全裸告白』という名でオラリオの歴史と神々と人々の記憶に刻まれるこの宴。

 この出来事は、ヘスティア・ファミリアを大きく躍進させ、オラリオ全てに異世界から来訪した英雄ゼノンの実力を知らしめるきっかけになったと、後の世に語り継がれることになる。

 

 

 

「ねえねえゼノン君?」

 

「なんだヘスティア」

 

「アポロンのガネーシャをガネーシャフェイスに見えるようにしたんだよね?」

 

「ギリギリ間に合ったぜ、フー」

 

「だったらさ、アポロンのガネーシャをガネーシャフェイスにするんじゃなく、服を着ているようにしたら良かったんじゃない」

 

 変態度増しとるがな。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その発想はなかった。咄嗟の出来事だったし」

 

 





 ダンスとアポロン告白までの今話。
 ここから戦争遊戯までどう繋げるかはお楽しみに。
 ロキのベル君評は大分変わっています。
 原作だと「ぱっと冴えない、アイズたんとは天地の差」という露骨に世界最速記録を超えられたことを気にしてました。
 当作品のヘスティアはアイズを気にかけてます、フィン達から後に主神より主神してると言われたりします。
 ヘルメスによるゼウスヘラファミリア、黒竜についてはカットしました。原作初見だと衝撃的な話でしたよね。
 アイズは順調に育ちお姉さんムーブを意識しています。
 ヘスティアとロキの会話は、次の話の前書きでサラッと書きます。
 アポロンの全裸告白。
 作者もこんな発想する自分の脳みそを一度綺麗に選択した方が良いかなと心配しました。
 アポロンのガネーシャをガネーシャフェイスに。
 ゼノンの目の前に居たからつい。モザイクよりはマシかなと。
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