ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
「やめたほうが良いような、そうじゃないような?」
「どうしたのよカサンドラ?また『夢』?」
「うん、兎さんが道化の下僕に虐められて奮起して、剣を手に取り太陽を下す夢」
「・・・・・・なんか、当ては嵌る単語があるから不安になるわね」
「でも、どちらにしろ、私には悪くない結果になる感じ?」
「ゼノンが肯定して真剣に分析するから、笑い飛ばせないのよねこの娘の『予知夢』。メルルに比べたらわかりにくいとボヤいてたけど」
「その娘には負けないもんっ!!」
「(妙に張り合ってるけど、弟分を命を捨てて守るくらい惚れてるって言ってたじゃない)」
「それでアポロン・ファミリアから『戦争遊戯』を宣戦布告されたわけですか」
神の宴、翌日。
ヘスティア・ファミリア本拠地、廃教会一階崩れた屋根から光さす広間。
俺は昨日あった神の宴での騒動を同じファミリアの眷族であるリリルカに説明していた。バーチェも聞いてはいるのだが、最高戦力がレベル3のヒュアキントスであると聞いた時点で興味を無くしているようだ。なにせ彼女からしたら、オラリオに辿り着いた頃の十歳そこらの妹分、ヒリュテ姉妹と同程度でしかないのだから。
「うん、ごめんねリリ」
申し訳なさそうに頭を下げるベル。
「いや、ベル様のせいではないでしょう」
「だな。むしろきっかけになったアイテムを持ち歩いていた旦那が悪い」
リリルカとダンジョンに潜るパーティメンバーだからと同席しているヴェルフがベルのせいではないと言う。まあそれはそうだな、関わりが碌にないヤツから愛をぶつけられるなんて、まるで可愛らしいことが悪いみたいな話だし。
「すまん。テントに置いておいて見られたらマズイかなって。一応防具やアクセサリーとしての効果もあるんだが」
ウサ耳バンドをヒョイとヴェルフに投げ渡しながらそう伝える。
「あのな、こんな髪留めにウサ耳をつけたもんに防御力なんてあるわけ・・・・・・下手な鉄の兜より耐久上がるなコレ、どんな作りだよマジックアイテムか?」
「フルセットバニー装備なら相乗効果でより強くなりそうですね、やはり一度ベル様の為に用意すべきでは?」
「それはお前が見たいだけだろリリルカ」
渡されたウサ耳バンドをマジマジと鑑定するヴェルフ。職人だけあって武器防具の目利きくらいはできるようだ。
そしてなぜこんな仮装防具で防御力が上がるかは創った俺自身もよくわからん。
なんか上がるから上がるんだよ、と世界がそう定めてる気がするのだ。
元の世界でも強力な兜なんて、鎧の魔剣の頭部か、どたまかなづちくらいだしな。
マトリフ師の帽子?は硬そうに見えてかなり変形していたし。今頃ポップはアレも後継者として引き継いでいるのかね?
そしてリリルカの言うフルセットバニー装備、実際にそうなりかねないから笑えない。
「そんで、ヘスティア様は今頃臨時の『神会』で話し合いか。ヘスティア・ファミリアとしては『戦争遊戯』を受ける方針なんだな」
どたまかなづちとどっちが俺の鎧に合うかね、と呟いてからヴェルフが確認するように問いかけた。
「ああ、ロキに受けとけと助言され、昨夜のうちにリリルカにも確認して納得してくれたからな」
「条件が破格ですし、ゼノン様が居られる以上は負けはありえませんからね」
あまりにも早い方針の決定。
だがそうすべき理由はある。
「アポロンの執着は凄まじいと評判だ、眷族の中には拒否したが国を超えて逃げても捕まったヤツもいるらしい。いらん騒動が起こされる前に受けると表明しておいた方が良いだろ」
アポロン・ファミリアで関わることの多いカサンドラとダフネがそのタイプらしい。
確かにあの二人の性格から、好んでアポロン・ファミリアに加入するとは思えないしな。
「娯楽に飢えてる神々も囃し立てますからね。『戦争遊戯』、一時期は毎月のように行われていたそうですが、暗黒期から今ではすっかり開かれなくなったみたいです」
一番記憶に新しいのでも、イシュタル・ファミリアと複数のファミリア連合による戦争遊戯らしい。
イシュタル・ファミリアとギルド、それらのファミリア連合との争いは被害も凄まじくかなり有名だとか。
ただ、そんな訳ありなきっかけがない限りはやらなくなってしまったらしい。
フレイヤ、ロキ・ファミリアが二大巨頭と呼ばれるようになってから、大手、中堅、下位とファミリアの区分がしっかりしてしまったようで、上に挑む気概を持つファミリアも暗黒期以降は減ってしまったらしい。
「まあ、『戦争遊戯』はファミリア同士の争い。パーティメンバーだけどヘファイストス・ファミリアのヴェルフに迷惑はかからないから安心して」
気にかけてくれる仲間にベルはそう言って笑いかける。ソーマ・ファミリアから改宗したリリルカはともかく、ヴェルフは他のファミリア所属であるがゆえに原則として参戦できないからな。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、だよな」
だが、そのベルの気を遣う発言にヴェルフはひどくショックを受けた表情になった。
当たり前のことを言われただけ、けれどヴェルフからしたら飲み込むことのできない言葉なのかもしれない。
「俺がいるから大丈夫。ってのはまあ否定しないが、戦争遊戯のルールは話し合いやらクジで決めんだろ?もし団長同士の決闘だったら今のベルだとヒュアキントスはまだ厳しいだろ」
戦力として俺を当てにしていても、その戦力を使わせないようにするのが戦略と策謀だ。
あの調子のアポロンなら姑息な手段はとらんと思うが、眷族が負けない為に動かないとも限らない。
「そっか、団長は僕だもんね」
「そしてゼノン様の見立てだと『まだ』厳しいんですね」
ヒュアキントスのヤツってば団長になってからアポロンの付き人ばかりであんまりダンジョンに潜らないらしいからな。
それはファミリアでは結構あるらしく、オッタルを筆頭に最高戦力が主神の傍に控えて成長が伸び悩むらしい。ロキ・ファミリア団長のフィンにしても遠征以外だと殆どダンジョンに潜れないのだとか。
これも神の大量送還のあった暗黒期を経た弊害の一つなんだとか。
「ベルに限らずちょっとしたきっかけで短期間で化ける例はあるからな」
どれだけ本人が本気かどうか、それが重要なんだよ。
「戦争遊戯を受けることのメリットとしては、他のベルを狙う神、ファミリアの牽制にもなる点だな」
「まさか、ベル様バニーをまだ狙う変態がそんなに居るとは」
「それはお前もだろリリ介。やっぱり世界最速ランクアップ記録があるからか?」
「ああ、成長性の高い低レベルの冒険者を欲しがる神もファミリアも多いらしい」
レベル1で生涯を終える者が大半だという冒険者。そんな中でランクアップの可能性が高いことはどれだけ貴重な存在なのやら。
俺からしたらきちんとした戦闘訓練もしないで、恩恵刻んですぐにダンジョンに突っ込んでたら成長しないで死ぬのは当たり前だがな。
下手したら農村出身で獣の解体経験あるベルと違い、そのやり方も知らないでダンジョンに挑戦するヤツまでいるらしい。
ギルドの講習に獲物の解体くらい入れておけよ。モンスターは魔石を引きずり出せば勝てるんだから肉の捌き方一つが命に関わるだろうに。
冒険者はすぐに死ぬとギルド職員は嘆いていたが、生きるか死ぬかで冒険者に成れるか篩いにかけてるようにしか見えない。
「僕は神様以外の眷族にはなりたくないですけどね」
あれだけ入団拒否しといてどの面下げて、とは思うよな。まあ『憧憬一途』なんてスキルが生えるとは誰も想像できないし。フレイヤがステイタスを見計らって試練を与えるからランクアップして当然なんだが。
「アポロンとの『戦争遊戯』は他のファミリアにヘスティア・ファミリアに挑んでも割に合わない、損しかない、と思わせるきっかけになると思う。
その為には挑む連中が勝てると思う要素を潰さないといけない」
総力戦と、団長同士の決闘。
その両方で実力を示すことが必須ではある。
ただまあ、付き合いのあるアポロン・ファミリア相手に人死とか後味悪い結果にはしたくない。
なるべく穏便に、かつオラリオ中に実力を示す形で勝利、か。
難易度高すぎだろオイ。
「僕が強くなることが重要なんですよね」
「結局、そこに尽きる」
被害が出ないからと推奨される形式が代表者同士の決闘だ。神々にしても『二つ名』付き冒険者の決闘は娯楽として楽しめるしな。
勝てるかどうかそこに不安を抱くベルに、やる気をださせる必要がありそうだ。
「ベルの成長しだいでは『雷鳴の剣』を譲ってやっても良いかもな」
「本当ですかっ!?」
俯いたベルが俺の言葉にパッと顔を上げる。
「ああ、そろそろ愛用の武器も修復が終わるから『雷鳴の剣』が無くてもなんとかなる。ただこんな手抜き品ではなくきちんと打ってやっても良いが」
「それがいいです!!ゼノンさんが使ってた剣が欲しいです!!」
村の鍛冶場より設備の揃っているオラリオの方が良い剣になるんだが、ベルはこっちが良いらしい。
「なら俺に成長した姿をきちんと見せてくれよ」
『戦争遊戯』が決闘方式なら、ヘスティア・ナイフより雷鳴の剣の方がヒュアキントスの波状剣には適しているだろう。
「はい!!」
このやる気なら決闘は問題ないな。
なら総力戦の場合は、どうするか。
ベギラマ、ヒャダイン、イオラ、駄目だアポロン・ファミリアメンバーだとすぐさまベホマラーしないと死ぬ威力だ。
なるべく穏便に、かつ死者はださず。
「人手がやっぱり足りないな。
かといってバーチェが改宗して加わって戦ったら」
「すまん、私の場合は殺さぬ自信がない」
手加減苦手みたいなんだよな。
発現した魔法が毒ってのも厳しいし。
「さて、戦争遊戯方式はどうなったことやら」
神会か、どうなったかね。
「『攻城戦』です」
「マジか」
「はい、すいません。ヘルメスのアンチクショウが引いたクジがそれでした」
項垂れるヘスティアの萎れた姿になんと声をかけたもんか。もろに数の差が出ちまう方式だな。
「辛うじて助っ人は認められたけど、誰に頼んだら良いのか」
助っ人、ね。
ちょいと気になる点があるな。
「ま、いいさ。
なんとかするだけだ」
数の差だけなら覆す手段はいくらでもある。ただその手段を取るには時間が必要だな。
「さあて、打つべき手をとるかね」
腹案はある。
あとはそれをやるだけだ。
俺がそう呟くと、ヘファイストス・ファミリア所属のヴェルフと、心配で様子を見に来ていたタケミカヅチ・ファミリア所属の命が、何やら決心したような表情となっていた。
バベル最上階一室。
「フレイヤ様。このオッタル、一生のお願いがございます」
「そう、言って御覧なさい」
一人の武人が己の願望の為、本人らしからぬ動きを見せていた。
原作アポロン・ファミリア襲撃イベントはありませんでした。
カサンドラはゼノンが懐かしそうに語るメルルに嫉妬してます、予言者としては実力が違いすぎですが。
バーチェさんかゼノンが居るから余裕な戦争遊戯。でもこれからを考えたら取るべき手段ではありません。
キラーマシンにライドオンしたリリルカで蹂躙する展開も悩んではいますが(笑)。
何やら動き出した都市最強。
オアズケし過ぎはいけないという教訓になりそうですね。