ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
都市最強のオッタルさんはどうする気なんでしょうね(目そらし)。
戦争遊戯が開催されるという知らせは、神々によって凄まじい速度でオラリオ中に広まった。神々は娯楽に飢えている、冒険者も娯楽に飢えている、都市民もまた娯楽に飢えていた。
確かにオラリオは世界の中心地だ。
確かにオラリオは世界で最も文明が発達し、文化の最先端をゆく都市だ。
だが、暗黒期を乗り越えたオラリオは安定した平穏な安定期ともいえる状況であり、つまるところ目新しい話題に飢えていたのだ。
アポロンから申し込まれた戦争遊戯を受けると決めたヘスティア・ファミリア。
主神たるヘスティアは戦争遊戯開催までミアハ、タケミカヅチ・ファミリアにて世話になりつつギリギリまで情報収集に徹し、眷族であるゼノンは戦力差を埋めるべく準備に走り、そして団長であり神アポロンが欲している存在であるベル・クラネルは、
「すいませんお願いします!!どうかロキ様にお取次ぎください!!」
ファミリア仲間であるリリルカ・アーデ、客分にして自称ゼノンの嫁であるバーチェ・カリフと共にオラリオ二大派閥の片翼、ロキ・ファミリアがホーム黄昏の館へと訪れていた。
「く、わかった。連絡するから少し待っていろ」
ロキ・ファミリアの門番を務める男女二名の冒険者達。近づくベル・クラネル達に警戒するも追い払うことはしない、否できない。
これが『リトル・ルーキー』ベル・クラネル一人ならば激昂し怒鳴り散らしただろう。
だが彼の横には一人のアマゾネスが、レベル6のバーチェ・カリフがいた。
神の恩恵ステイタスシステムにおいてレベル差は絶対である。
レベル差を覆した勝利、ジャイアントキリングはそれだけで偉業でありランクアップするきっかけとなる。つまり知識として広まってなお無理だから偉業なのだ。
ゆえに門番二名も他のファミリアでは一派閥の団長を務められるレベルでありながら、オラリオでも数少ないレベル6を前には素直に従うほかないのだ。
またそれだけが理由ではない。
まだバーチェ・カリフは知らぬことだが、ロキ・ファミリアへと改宗した双子の姉であるアルガナ・カリフなのだが、現在ロキ・ファミリア団長であるフィン・ディムナに懸想し子作りしようと連日迫り、同じくフィンへと惚れているロキ・ファミリア幹部ティオネ・ヒリュテと日々戦いを繰り広げているのだ。
第一級冒険者二名の激突はまさに吹き荒れる嵐の如く破壊を齎し、抗う術も実力もない団員達は巻き込まれぬように警戒して過ごしているのだとか。
ちなみに物理的に止められる実力者である、ガレス、ティオナ、ベートの三名は騒動の度に駆り出され生傷絶えぬ毎日を送っていたりする。
そんなわけで、レベル6のアマゾネスの恐ろしさを身に沁みて理解している門番達は警戒しつつも素直に主神へと取り次ぐのであった。
「ゼノン様がバーチェ様を連れて行くように言うわけですね」
その門番の反応にリリルカ・アーデは不快そうに呟いた。
オラリオ二大巨頭、そのファミリアに所属していようとより強い力の前には大人しく従う。
その現実があまりにもやるせない。
「まあ、仕方ないよ」
それはベル・クラネルも同じ気持ちではあった。特に彼はつい一月と少し前、ロキ・ファミリアへの入団を希望して門前払いを受けたのだから。
「安心しろ二人共、ゼノンに任されたからには目の前で睨みつけている連中が襲いかかってきたとしても私が守ってやる」
「依頼にきたんですけどね」
「むしろお願いなんだよね」
ベル・クラネル達がロキ・ファミリアに訪れた理由、それは強くなること。
助っ人が認められた戦争遊戯において付き合いのあるアイズを頼る事は可能だ。
だがそれでは意味がないのだから。
だから強くなる為に、オラリオ屈指のジャイアントキリングを為した人物、アイズ・ヴァレンシュタインに訓練をお願いしにきたのだ。
「おーおー、ベル坊やん。何しにきたん?戦争遊戯の助っ人なら駄目やでオモロないなるからな」
手をひらひらと振りながら立派な門から出てきた赤毛糸目胸無しの神物ロキ。
彼女は神会に参加し司会を務めていた為今回の件について理解の深い神物の一柱だ。
ゆえに助っ人は貸さないと牽制する。ただでさえゼノンという反則にバーチェというレベル6が居るのだ。結果がわかりきっているとはいえ、せっかくの戦争遊戯をよりつまらなくする気は、オラリオ屈指の遊び神にして趣味神である彼女には無かった。
「いいえ、助っ人をお願いする為に来たのではありません」
「ええっ!?」
もとよりロキ・ファミリアに助っ人を乞う気の無かったベル・クラネルはそう告げる。
すると完全武装し背中に何本もの魔剣(保管庫から勝手に持ち出した)を背負う、準備万端のアイズ・ヴァレンシュタインはショックを受けたように叫びを上げた。
彼女の実力を考えれば、アポロン・ファミリア相手にそこまで用意する必要はないのだが、彼女は弟子ウサギを守ろうと殺る気満々だったのだ。
「・・・・・・アイズたんは置いとくとして、他に要件あるなら応接室で訊いたるよ。ただ、バーチェたん」
「なんだ?ここで待っていろというなら従うが」
流石にホームに最高峰の実力者を入れるわけがないだろうと、待機するつもりのバーチェ・カリフであったが。
「ティオネとアルガナが揉めだしたら止めるの手伝ってな。ガレス達ももう疲れ切っとんねん(ベートはブチギレてる)」
「・・・・・・・・・姉がご迷惑おかけしています。本当にすいません」
自身も同じようにヘスティア達に迷惑をかけているのかと気にしながらバーチェは頭を下げる。
「ええんやバーチェたんは悪ぅない。悪いのはレベル6が増えたと喜んだウチと、手を出さんフィンなんやから」
謝罪するバーチェへとロキは力なく笑いながら気にするなと告げた。
そんなやり取りをしてベル・クラネル達は、黄昏の館へと足を踏み入れたのであった。
ロキ・ファミリア応接室。
オラリオ最大派閥となれば商人や貴族との付き合いもあり、交渉の場となる応接室は相応の豪華さを誇っていた。
金目の物に目の利くリリルカ・アーデは飾られている調度品の値段を推測し、絶対に触れて壊したりしないように気を配る。なおつい先日同価値の調度品がアマゾネスによる痴話喧嘩で破壊された事実を彼女は知らない。
その応接室にベル・クラネル一行と、ロキ・ファミリア幹部が集まり、対面する形で話をはじめた。
「んで、頼みたいことってなんやねん?ゼノンには世話になったし、ベル坊には普通に同情しとるから、対価があれば協力したるよ。ドチビはまあ、気に入らんけどしゃーないわな」
奸智に長けた女神。
そう聞かされていたロキのあまりに気安い態度にベル達は驚く。
話を聞いてもらえても拒否される可能性も高かったからだ。
「お願いしたいのは、僕を戦争遊戯開始まで鍛えてほしいことです」
ファミリア眷族の育成方法。
それは大手ファミリアにおいて掛け替えのない財産である。
それを伝えるのは身内のみ、それで強くさせるのは仲間だけ。
そうやって守り続けてきたのだ。
「腑に落ちないな」
ベル・クラネルの頼みにロキ・ファミリア団長であるフィン・ディムナが疑問の声をあげる。
「君の仲間であるゼノン。
鍛えるならば彼の方が最適ではないかな?実際、君がミノタウロスを倒せたのは彼の指導の賜物だろう?」
フィン・ディムナの疑問は当然のこと。未だに底の見えぬ実力者であるゼノン。けれど彼が手ほどきしたベル・クラネルの戦いぶりを一部のロキ・ファミリアメンバーは目撃した。
彼が修行をつければ良いにも関わらず、わざわざ頼みにくる理由がわからない。
「ゼノンさんは別件で手が離せない、という理由があります、それに」
「そら何をしでかすか楽しみやけど、アポロン・ファミリア相手にそこまで準備いるんかな?」
「冒険者同士の戦いならばロキ・ファミリアの方が遥かに経験がある。そうゼノンさんが言ったんです」
ロキ・ファミリアは意外と歴史の浅いファミリアである。なにせ、立ち上げメンバーの三人が現トップなのだから未だに代替わりすら一度もしていない。
そんな彼らのオラリオでの成り上がり、そこには当時のファミリアとの諍い、戦争遊戯がついて回った。
ゆえに、対冒険者戦闘においてロキ・ファミリアこそが長けているのだ。
だからこそ、ゼノンよりも学ぶべき点が多いと判断されたのだ。
「褒められて悪い気はしないけどね」
そうフィン・ディムナは照れくさそうに頬をかいた。
「強くなる必要なんざあんのかよ?」
すると今度は同席、壁に背を預けて腕を組んでいた狼人、ベート・ローガが口を開いた。
「あの黒髪に泣きついてなんとかしてもらえばいいんじゃねえのか?アイツラ如き、そこのアマゾネスでも充分だろうがな」
と何処かベルを嘲るようにベート・ローガは言う。そんな情けない真似をするのが弱者だろうと見下した態度で。
「いいえ」
かつて『豊穣の女主人』でベルの心を切り裂いたベート・ローガの鋭い言葉。
けれどベルは止まらない。
あの嘲りが称賛に変わることを彼は知っているのだから。
「僕が強くならなきゃいけないんです。
僕が力を示さないといけないんです。
僕がヒュアキントスさんを倒さないと、この戦争遊戯に意味なんてないんです」
「へえ」
ベート・ローガはその弱者の決意の言葉に、面白いモノを見つけたと口角をあげた。
「だったら俺が身の程を教えてやるよ。いくぞウサギ野郎」
ベート・ローガはそう言って、ベル・クラネルの腕を掴む。
普段のベート・ローガらしからぬ、彼的には稽古をつけてやる発言に身内であるロキ・ファミリアメンバーは驚く。ベートの過去と事情を知る者はある程度理解をしたようだが。
「待ってください」
しかしそんなベート・ローガを止める者がいた。
「ベルは私が鍛えます」
ベートとは逆の手を掴んだアイズは離すものかと自分の方へと引っ張る。
「はあ?鍛えねえよボコるだけだ。そこからナニかを学びとるのはウサギ野郎次第だけどな」
自身でも珍しいと思う行動を邪魔されてムッとした態度でベルを引っ張るベート。それによりさらにアイズは引っ張り、またベートも引っ張る。
「オラリオで一番ベルを気絶させたのは私です。私が一番ベルを上手くボコれるんです」
「待てアイズ、お前その子に何をしでかしたんだ」
「・・・・・・なら俺がその数倍ボコるだけだ」
「なら私はその十倍」
「百倍」
「せ」
「ベル様が死んじゃうから止めてくださいね」
何を張り合ってんだろこの二人、と呆れ果てながらリリルカ・アーデが我慢できずにツッコミを入れた。
訓練なのに危うくリンチフルボッコになりかけたがなんとか止まったようだ。
「それじゃあ二人にお願いするかな」
ため息をつきながらフィンはそう指示し、念の為監督役をリヴェリアへと頼んだ。
アイズとベートへとはっきりとモノを言える人物などロキ・ファミリアでも数少ないのだから。
「そんでもう始まってもうたけど、ヘスティア・ファミリアがウチに、ロキ・ファミリアに渡す対価ってのはなんや?」
先日の奇跡の剣を思い出せば期待できると、ワクワクしながら待つ。
見た所リリルカ・アーデは、布に包まれた杖のような長い棒を持っているが如何なるモノだろうか。
だがロキ達の予想を裏切り、リリルカ・アーデは懐から封筒をだし、それをロキへと手渡した。
「こちらです。
ゼノン様曰く、ロキ・ファミリアが今一番必要としているものだそうです」
「封筒?手紙かいな、なんか情報とか書いてあんのやろか」
ロキが渡されてすぐに封筒を開くと一枚のチケットが入っていた。どうやら手紙の類ではなさそうだ。
それが何なのか確認した時、ロキはニヤリと笑った。
「なるほど、コレは確かにウチらが今一番欲しいもんやな。了解やこの依頼受けたるわ」
ヒラリと指先で摘み揺らしたチケットには、『イシュタル・ファミリア特別優待券』と書かれていた。
「ロキ、それは」
フィンがそのチケットの意味を察し、ロキへと視線を向ける。
「ああ、これで堂々とイシュタルに接触できるわな」
表向きは男連中の慰安の為、ということにできるだろう。
けれど同時に闇派閥と自衛のためとはいえ関わりのあるイシュタルと接触できるということだ。
「なんちゅう読みや、おっそろしいの」
そんな謀を好むロキは楽しそうに嗤った。
そんなアレコレはあったが、戦争遊戯が開始するまでの期間、ベル・クラネル達はロキ・ファミリアに修行をつけてもらえるようになったのだ。
「それじゃあその包みはなんだい?」
「ゼノン様から渡された『祝福の杖』です。アイテムとして使うと回復魔法が発動するので、訓練で傷ついたベル様の回復を行えます」
「またとんでもない代物を」
「あ、訓練が終わったらロキ・ファミリアに差し上げるようにゼノン様から言われています」
「便利だけど、胃が痛い話だねえ」
欲しいといえば欲しいが、受け取ることが怖い代物なんだよなあとフィンは思った。
「ねえバーチェ、『ダイの大冒険』の続きとかない?」
「あるぞ、旅立ち編まで書かれている」
「それは楽しみだなあ。けど英雄譚に詳しい私も知らないけどいつ頃の話なのかな?」
「最近らしいぞ」
「このやり取りは前にもやった気がするけど、どれくらい前かな」
「大体半年前ぐらいだ」
「本当に最近だった!?」
ティオナはワクワクしながら驚くという器用な真似をするのであった。
ベル君が訓練するまでの流れです。
原作のように一芝居うってこっそりアイズと行う訓練ではなく、ロキ・ファミリアホームにて堂々と行います。
対価、優待券。
クノッソス編を控えるロキ・ファミリアにありがたい対価です。
次回でヴェルフと命のくだりを書くべきか悩んでいます。このまま飛ばして戦争遊戯もありかな?