ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 感想欄の推測が当たるの多くて焦りますね。二次創作でこれなんだから考察本のでてるワンピースとか凄い大変なんでしょうね。



第64話

 

 凶相の牙狼と風纏う剣の姫が、まるで競い合うように雷火放つ白ウサギに襲いかかる。

 牙狼・ベートの牙はその都市最速の一角と称された脚から放たれる蹴撃だ。

 本来は防具である脚部装甲を武器として用いるその一撃は多くのモンスターに風穴を空けるほどだ。

 武器を振るっても傷一つつかないモンスターすら屠るその足技は、現在一匹の白ウサギもとい一人の少年へと向けられていた。

 しかし、その攻撃はベート・ローガ本人が訓練だからと手加減しているのもあって、ベル・クラネルは辛うじてくらうことなく逃げに近い回避で凌ぐことができていた。

 ベル・クラネルの今までの冒険は相対する存在が格上ばかりだった。別世界の小さな勇者に比べたらマシな状況であるとはいえ、強者への立ち向かうことの経験はかなりのものである。

 

「えいっ」

 

「ぐはあっ!!」

 

 が、そうでもあったとしても回避した先に待ち構えていた剣姫に対応できる筈もない。

 鞘に収められたままの奇跡の剣がフルスイングされ、咄嗟にヘスティア・ナイフと牛若丸を交差して防ぐもレベル6の膂力から生み出されるパワーに堪えきれるわけもなく、防御ごと吹き飛ばされ訓練場の地面をゴロゴロズシャーと転がり、ドスンと壁にぶつかってようやく止まることができた。

 

「アイズさんに追加、と」

 

「ぶいっ」

 

 すると、(Vサインするアイズさんカワエエと内心で思っている)レフィーヤ・ウィリディスが用意されたボードに書かれたアイズの名前の下にまた一本線をひく。

 アイズの名前の横にはベート・ローガの名前。どうやらベル・クラネルを吹き飛ばすごとに追加していくルールのようだ。

 

「チッ、二点差がついちまった」

 

「フッ、これが連日ベルを気絶させ続けた格の差(ドヤ顔)」

 

「(二点差なんですけどねー)」

 

 ボードの片側、ベートサイドにはロキ・ファミリアのレベル2の治療士であるリーネ・アルシェが内心そんなことを思うが、同時にベル・クラネルが絡むとあの剣姫が随分と年相応の感情を見せるのだと驚いてもいた。

 

「祝福の杖よ〜この者の傷を癒やしたまえ〜」

 

 そんなロキ・ファミリアのやり取りの傍らで、ダメージによりピクリとも動かなくなったベル・クラネルにリリルカ・アーデがゼノンから渡された祝福の杖を振りかざしていた。

 道具として使えば中位治癒呪文ベホイミが発動する祝福の杖。ゼノンなどの大魔王の空中要塞に乗り込んだメンバーからすればベホイミ程度で傷が治るのかと首を傾げてしまうが、ベル・クラネル程度のステイタスであれば全回復するほどの回復量なのだ。

 なお唱えている文言は適当である。

 祝福の杖は鎧の魔剣のように発動する文言が必要ではなく握って祈るだけでベホイミは発動するのだが、さすがに百回を超えた辺りから無言で治す行為がしんどくなったのだ。

 最初は祝福の杖ではなくロキ・ファミリアの治療士達が魔法で治してくれたのだが、繰り広げられる訓練のダメージ量と吹き飛ばされる回数に、もとより希少で貴重な数少ない治癒魔法使い達の精神力はあっさり尽きてしまったのだ。

 リヴェリアなどのまだ使用できる人物もいるにはいるが、ベルの訓練の為に治療士の精神力を使い切るわけにはいかない。

 だからどれだけ使えるかの検証も兼ねて祝福の杖での回復に切り替えたのだ。

 

「リリ、僕は今ならボールと友達になれそうだよ。というか蹴られる、打たれるボールを庇いに走り出しそう」

 

 過剰な回復が意識までも覚醒させる。けれど意識はまだ混乱しているようだ。ポンポンポンポン蹴られ打たれ吹き飛ばされ続けたベル・クラネルは子ども達が遊ぶ丸いボールに同朋意識が生まれていた。

 

「あのお二人が教導役として適切なのかリリは疑問ですね。いえ、ベル様の動きが洗練されてるのもわかるのですが」

 

 ベート・ローガ、アイズ・ヴァレンシュタインの訓練方式はひたすら組手。

 戦争遊戯までの短期間で新たな技など身につくわけもなく(某少年なら勇者に成れるだろうが)、使いこなせぬ手札を得たとしても選択肢が増えたことで混乱しかねない。

 だから開きなおるように実戦形式での組手なのだ。既に身につけた手札をより研ぎ澄ます為に、凶狼と剣姫という荒すぎて硬すぎる砥石でリトルルーキーを磨きあげるのだ。

 

「おら、起きたんならとっときやがれ!!」

 

 一見すると弱者を嬲って愉しんでいるようなベート・ローガの嗜虐的な表情。

 だが付き合いのある一部の者達にはそれが、弱者を踏みにじることを愉しんでいるのではなく、やればやるほど成長するベルの姿を楽しんでいるのだとわかる。

 目に見えて成果が分かる。

 これほど面白く、続けたくなる事はそうない。

 

「はいっ!!」

  

 またベル・クラネルの目がベート・ローガには心地良かった。

 ロキ・ファミリア内でも他の団員に対して教導することはある。

 だがベート・ローガはロキ・ファミリア内でも恐れられる対象。教えを乞う者達の目には怯えと嫌気が常にあった。

 そうなるように振る舞っている自覚があるとはいえ、そんな連中相手にやる気がでるわけがない。

 だがベル・クラネルは違う。

 本心から強くなろうと、やり遂げてみせると熱い意思の感じるその眼差しは訓練を開始して三日たった今も揺るぎはしない。

 

「面白え。面白えぞウサギ野郎、テメェが折れるまで蹴り続けてやらぁ!!」

 

 その心が折れることはないと確信しつつも、彼の生来の性格ゆえにそのような言葉が口から出てしまうのであった。

 

「僕が折れない限り付き合ってくれるんですね。ありがとうございます!!」

 

 根が素直なベル・クラネルはなんとなく察してしまうようだが。

 

「ムッ(なんかぽっと出のベートさんと仲よさげ。師匠ポジを守る為にさらに打たないと)。ベルを吹き飛ばすのは私」

 

「くっ」

 

 頬を膨らませたアイズが、ベートより先にと接近し剣を振り下ろす。

 それを今度は防ぐことに成功する。

 

「そうだ、それでいいぞウサギ野郎。アイズの奇跡の剣を受け止めれるなら、野郎の波状剣なんざ余裕でさばける」

 

 性別と身体の大きさによる身体能力差を覆す神の恩恵によるステイタス。

 本来ならば男性で年上であるヒュアキントスの方が膂力が上である筈なのだが、実際は3つもレベルが上であるアイズの方が遥かに強い。

 ゆえにアイズの攻撃が凌げるようになればヒュアキントスの攻撃も凌げるようになる。

 

「甘い。風よ」

 

「へ?うわああああ!!」

 

「アイズさんに追加、と」

 

「祝福の杖〜」

 

「ランクアップをした冒険者はどんな魔法が発現しているかわからない。打ち合った時に使用されたら至近距離でくらうことになる。ベルも同じことができるんだから対処できるようになりなさい(キメ顔)」

 

「聞こえてねえぞアイズ」

 

 攻撃を受け止めた場所に風の爆発が起こり、再度吹き飛ばされるベル。その後の説明を聞いてる余裕は彼にはなかった。

 アイズやベルのように超短文詠唱の使い手はあまりいないのだが、別の力を加えて放つ攻撃は強力で効果的である。

 ちなみにゼノンだったらここで目と口を狙うようにとさらに容赦ないアドバイスをするだろう。

 こういったところが魔王軍の、ザボエラやキルバーンから評価されていた点なのだが(武人気質な面々は顔を顰めるかドン引く)、本人にその自覚は無かったりする。

 

「体術や足捌きはベートさんが、魔法を交えた戦い方は私が、うん完璧な訓練」

 

「訓練する側の容赦がない点だけが問題ですけどねー」

 

「なんか川の向こうで、しわくちゃのお爺さんと1つ目のピエロみたいのがお茶してたよ(そして毒入りだったのか血を吐いて倒れた)」

 

 他のファミリアの人間であるベル・クラネルへの指導。いくら取引があろうとロキ・ファミリアの団員は不満があった(ちなみに一部の男性団員は対価を知ってすぐに手のひら返しした)。

 気に入らないことを態度で示す為、また無様な姿を見ようと向かった先には、ダンジョンに潜る方がマシな訓練という名のリンチ。

 凶狼と剣姫によるフルボッコを治しては挑み、挑んでは治される姿に、見学者達は圧倒された。

 ベル・クラネルの目標は、レベルが上の冒険者を倒すこと。ジャイアントキリングを成し遂げること。

 その本気ぶりとひたむきな姿に、彼ら彼女らはかつて成りたいと思った、今も憧れる英雄達の姿を思い出していた。

 

「ダンジョン行こうぜ」

 

「だな」

 

「戦争遊戯の賭けにも種銭がいるしな」

 

 あそこに混じりたい。

 そんな気持ちも確かにあった。

 けれど邪魔をしたくもない、だから湧き上がった衝動はダンジョンで発散しよう。彼がそう思ったらもう身体は走り出していた。

 

「・・・・・・で、どっちに賭けるよ?」

 

「決まってんだろ」

 

「「「ヘスティア・ファミリア!!」」」

 

 ベル・クラネルへの悪感情はもう、すっかり霧散していた。

 

 

「貰いすぎだよね」

 

「そうだな」

 

 そんな団員達の姿を、年長者にして上役であるフィンとリヴェリアは微笑みを浮かべながら見ていた。

 ヘスティア・ファミリアからの依頼。

 ベル・クラネルを鍛えること。

 その対価はイシュタル・ファミリア特別優待券という、交渉の場を得られるものだけでも充分過ぎるのに、アイズの情緒の成長と団員達の意識改革、トドメにとんでもない治療士泣かせの逸品である祝福の杖まで得ることができた。

 対価を貰いすぎていつか返さなきゃマズイよね?と団長であるフィンはそのプレッシャーに血を吐きそうな程のストレスを感じていた。

 

「この英雄譚も興味深いな。知性ある魔物の子育て、魔物だらけの島で育った勇者の卵か、俄には信じがたい話だが」

 

「その英雄譚も面白いけど僕にはストレスの種だよ。読んだ冒険者、特にアイズはなんて反応するか」

 

 フィンはロキから巻き添えとばかりにゼノンの素性を伝えられていた。

 異世界だからこの世界とは違うと思うことはできるが、そんな存在がこちらにもいないと断言もできない。

 実際に、深層のモンスターや階層主には悪意に似た意図的な行動、知性ある攻撃をしてくる存在だっているのだ。怪人や新種も含め、今後はそれらも視野に入れて戦う必要がある。

 

「アイズなら意外と問題はなかったぞ。モンスターは魔王の影響で凶悪化している、だから黒竜が存在する限りは容赦する必要はないとな」

 

「そう・・・・・・思ってくれたか」

 

「ゼノンの書いた物語だから否定したくないだけかもしれんがな」

 

 複雑そうな表情でリヴェリアは呟いた。

 アイズのモンスターへの憎悪は変わってはいない、けど別の考えにも理解しようとしているように二人には思えたのだった。

 

「しかし、ゼノンにもこんな幼少期があったとはな」

 

「それは違うんじゃないかな?」

 

 ダイ=ゼノン。

 主人公名を置き換えた自伝だと勘違いするリヴェリアと雑談しつつ、フィンもベルの訓練に加わろうと訓練場に足を向けていた。

 戦争遊戯。

 ゼノンという規格外の戦力が居るにも関わらず、ヘファイストス・ファミリア、タケミカヅチ・ファミリアから団員が移籍した。

 さらにヘルメスが助っ人を連れてくるとのこと。

 ベル・クラネルの成長も合わせればヘスティア・ファミリアの勝利はほぼ確定だろう。

 

「けど、さらにナニかありそうな予感がするんだよね」

 

 そんな予感に、フィンは少しばかりワクワクと楽しみな気分になっていた。

 

 ちなみにバーチェ、ティオナ、ガレスの三名だが、フィンを取り合うティオネとアルガナを止める為に頑張っていたりする。

 それでステイタスが上がり、何やら複雑な気分だとか。





 ロキ・ファミリアでの訓練風景ですね。
 ひたすら組手でボロボロです。
 
 ダイの大冒険に対するアイズの反応ですが、黒竜を魔王だとしてモンスターは凶暴化しているのだと思い込むことにしました。
 ダンジョンのモンスターもダンジョンの手駒ですしね。
 これがゼノス編でどんな影響になるかはまだ未定です。
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