ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 てっきり死んだと思ってたピロロですが、新アニメ版で逃亡に成功してたんですね。
 まあ、仮に続編があってもダイが皆といるから大丈夫ですね。
 なおこの作品で死んでます、ゼノンがさっくり介錯しました。
 


第65話

 

 都市は静かに熱を帯び始めていた。

 迫る戦争遊戯。

 神の力で一般人も観戦することのできる最高の娯楽。それはある意味で『怪物祭』以上の影響をオラリオに与えていた。

 始まる日は決まっている。

 けれど冒険者も、商人も、一般市民も、子供達も、神も、誰もがソワソワとやるべきことに手がつかなく、その日が来るのを今か今かと待ちわびていた。

 ただ、その中にはヘスティア・ファミリアを心配する声も少数ながらあった。

 ヘスティア自身がじゃが丸君の売り子としてイジられてはいたが商店街の人々に愛されていたし、ゼノンが働く食堂の店主や常連客は彼の身を案じていた。またそんな二人の義理の息子(勘違い)であるベルも、夢に向けて頑張る健気な少年としてそれなりに有名だったりする。いやこれはヘスティアとゼノンがベルの話をしまくるからではあるが。

 戦争遊戯で負けても都市からヘスティア・ファミリアが去ることはない。

 その告知があったから一般市民からの抗議や苦情は来なかったが、少しばかりアポロン・ファミリア眷族が一般市民から白い目で見られて居心地の悪い気分にはなったそうだ。

 アポロン・ファミリア眷族も9割はベル・クラネルに本心から同情しているのだが(なお1割はアポロン様から求婚とか超羨ましい)。

 

「このじゃが丸君、プレーン頼んだのにマスタード入りになってる」

 

「地味な嫌がらせを。いやマスタードなら新味か?判断に困るんだが」

 

「ま、悪いのは十割ウチだからな。他の連中もこんな目にあってるらしいぜ。食堂のピラフでグリンピースマシマシとか」

 

「むしろそれはご褒美だろ」

 

「俺は絹さや派なんで」

 

 アポロン・ファミリア眷族はそんなやり取りをしながら熱気の増すオラリオで籠城戦の準備の為に奔走するのであった。

 

 

 

 

 

 都市中央部にそびえ立つ白亜の巨塔。

 摩天楼施設『バベル』最上階、神の自室区画の一つ。そこに銀髪の女神フレイヤはいた。

 

「なんでロキ・ファミリアでやらせるのよ。いつもの場所なら見れるのに黄昏の館だと覗けないじゃない。全くゼノンはお弁当の件といい私の邪魔ばかり」

 

 いつもの艶然とした姿は鳴りを潜め、子供のように頬を膨らませ、不満を零していた。

 

「フレイヤ様、オッタルのあのような愚行を許してよろしかったのでしょうか?」

 

 そんな彼女に質問をする一人のエルフ。

 ヘディン・セルランド、金の長髪に鷹のような鋭い眼差しをした、フレイヤ・ファミリア随一の魔導士である。

 

「そうね。多分、周りから凄く文句を言われるわよね。ギルドにもギリギリまで伝えないつもりだし」

 

「あの豚エルフや愚民共がいくら騒ごうが知ったことではありませんが、最強の冒険者がレベル1に挑むということが不可解でなりません」

 

「そうね、ヘディンはまだ会ってないものね。あの異世界の英雄を」

 

「異世界の英雄ですか?」

 

「ええ、ヘルメスを締め上げて聞いたから間違いないわ」

 

 ベル・クラネルが怪物進呈され遭難した時のことをフレイヤはヘルメスから聞き出していた。

 魂の輝きから成長するナニかがあったのだと察し、救助隊で一番手荒に扱っても問題ない神物であるヘルメスを呼び出し問い詰めたのだ。  

 その際にヘルメスがベル・クラネルに勝手に試練を課したことを知り、少しばかり痛い目に遭わせたが。

 

「あのゼウスの犬がそのようなことを」

 

「下界の未知、と言ってしまえばそれまでだけど。向こうの神が何かをしたのかしら?」

 

 下界は一つではない、らしい。

 フレイヤ達が降りれる世界は此処だけだが、別の法則で廻る世界があっても不思議でないのだ。

 

「その者は、フレイヤ様の敵となる存在ですか?」

 

 ヘディンにとってゼノンの事情はどうでも良かった。ただ自らが認める最強が挑む相手が強者であるならば、オッタルの行為とて認める。

 だが、その存在が敬愛する女神に害をなすならばなんとしても排除するのみ。

 そんな決意を彼は発していた。

 

「どうかしら?・・・・・・あの子って妙に私を怖がってるの。だからシルも避けるし、『豊穣の女主人』にも殆ど来ないのよ」

 

 人は理解できない存在を恐怖する。

 ヤンデレと言う未知に遭遇したゼノンはフレイヤを怖がり接触を避けているのだ。

 単に面倒そうな女性と関わりたくない可能性もあるが。

 なお、『豊穣の女主人』を避ける理由は、実はシルではなくリューだったりする。

 

「どちらにしろ貴女に害を為すならば我々が総力を以て叩き潰します」

 

「やめときなさい」

 

 自身の眷族の忠誠心を知るがゆえにフレイヤはその行いを止める。

 

「せめてオッタルが挑んでからね」

 

 あの真円の魂を持つ英雄がどれほどの強さか、武神ではないフレイヤには測れない。

 だが幾多の魂を見てきた彼女だからこそ朧げながらに悟っていた。

 フレイヤ・ファミリアではゼノンに勝てないと。

 

「承知しました。

 しかし、他の幹部達がフレイヤ・ファミリアがアポロンの戦争遊戯に参戦したとなると余計な勘ぐりをされる恐れがあり、ゆえにオッタルの正体を隠すべきだと申しておりました」

 

「・・・・・・それはそうかも知れないけど」

 

「こちらがその変装着です」

 

【白妖の魔杖】に用意されたモノ、それは顔をすっぽりと覆う目元だけ空いたマントと一体化した緑のマスク、マスクと同色のパンツ、白の手袋とブーツ。

 のみである。

 

「随分剥き出しな衣装ね。オッタルには似合いそうだけど」

 

「かつて異界より迷いこんだと称したカンダタなる盗賊の衣装だとか。武器は斧を用意してあります」

 

「・・・・・・・・・・・・面白そうだけど、あの子も真剣だから今回は勘弁してあげて頂戴。面白そうだけど。面白そうだけど」

 

「ではこれは『次回』に」

 

「そうね、『次回』に」

 

 銀髪の女神と眼鏡のエルフはそう言って、都市最強の冒険者【猛者】オッタルの、アポロン側の助っ人として戦争遊戯に参戦する話を終えた。

 

 後日、戦い自体には満足したが別の機会にすれば良かったかなと後悔する猪人の姿があったとか。

 

 

 

「あぁ、待ち遠しいな」

 

 暗い部屋に差し込む月明かりの下、アポロンはワインの注がれたグラスを傾けながら呟いた。

 今回の戦争遊戯は『攻城戦』。

 舞台であるオラリオ東南『シュリーム古城跡地』はギルドとガネーシャ・ファミリアが手配、確認後に自身の眷族達が向かっていった。  

 ゆえに普段は賑やかなホームは今は静かなもので、その珍しい時間をアポロンは過ごしていた。

 

「アポロン様」

 

「どうしたヒュアキントス?」

 

 残った数少ない眷族。団長であるヒュアキントスはこの二人きりの時間にどうしても敬愛する主神に尋ねておきたいことがあった。

 

「なぜ、ゼノンと敵対してまでベル・クラネルを求めたのです?」

 

 ゼノンとアポロン・ファミリアの仲は良好であり、実はその実力とて知ってはいる。

 アポロン・ファミリア総掛かりでも相手にならないと理解しているのだ。

 戦争遊戯、そんなことをしても損しかないとヒュアキントスを始めとして察してはいたのだ。

 

「愛、さ」

 

 私の止められない性だ。  

 とアポロンは言う。

 

「たとえ勝ち目が無くとも、どうしても止まらない自身の熱。

 これを解き放たなければ私は私足り得ぬのだ。

 そう、恋愛とは敗色濃い難敵にこそ全霊を以て臨むことなのだ」

 

「アポロン様」

 

「相手が口説けそうだから好きになって、相手が靡きそうに無いから嫌いになる。

 それは恋愛ではない、ただの合理主義だ」

 

「アポロン様!!」

 

「やれるだけやろうヒュアキントスよ。

 やれるだけやってやりきった時、どうしようもなかったら共にニッコリと笑うのだ」

 

「このヒュアキントス、たとえどのような結末になろうとも、生涯アポロン様と歩むことを誓います」

 

「ヒュアキントスよ、頼んだぞ」

 

 そんななんか感動的なやり取り?をしている主従だが、きっかけがベル・クラネルにウサギコスさせた上で色々したいだけでしかないことを忘れてはいけない。

 

 

 

 

「ふぅ、こんだけ作れば足りるだろう」

 

 異世界の英雄ゼノン。

 彼はこの準備期間の全てを制作活動に当てていた。彫り上げた石像に暗黒闘気を注ぎ込みモンスター化したそれらを魔法の球にまとめて収納する。

 

「これで戦力は足りるな」

 

 殺さない為に、傷つけない為に、呪文一発で勝てる相手に気を配る。

 そんなことは昔の自分ならありえないなとゼノンは思っていた。

 

(後は皆と合流するだけかね)

 

 攻城戦。

 その為の戦略としてリリルカ・アーデが魔法でアポロン・ファミリア団員と成り代わり侵入する案もあった。

 だがこれだけ戦力があれば真正面からいけるだろうとゼノンは判断した。

 それにヘスティア・ファミリアに改宗してくれたヴェルフと命。助っ人として参戦してくれるリューの存在がある。

 まあなんとかなるだろう。

 そう呟いた時、

 

「ゼノンさん」

 

「おう」

 

「準備は済みましたか?というか何をしていたんですか?怖いのでリリに教えてください」

 

「なあに、大したことじゃねえよ(ダイ達なら一瞬で蹴散らせる戦力だし)」

 

「行こうぜ旦那」

 

「テメェの覚悟は尊敬に値するぞヴェルフ」

 

「全霊を尽くします」

 

「あんまり気負うなって命」

 

「・・・・・・・・・・・・頑張りましょう」

 

「参加シテクレテアリガトウ」

 

「それじゃあ皆、勝とう!!」

 

【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯。

 戦闘形式、攻城戦。

 勝利条件は、敵大将の撃破。

 イレギュラーが混じった戦争遊戯。

 いよいよ開幕。

 




 
 戦争遊戯開始前までです。
 ロキ・ファミリアのエピソードは書いたらきりがないのでやめました。
 フレイヤ様は白エルフと会話。
 オッタルは本番に備えて調整中です。
 なお終わったらカンダタコスをする羽目になりそうですね。 
 
 アポロンのセリフは色々他作品が混じってます。
 ハンターハンターのネテロ。
 されど罪人は竜と踊るのシザリオス。
 からくりサーカスの鳴海、の言葉を改変して書きました。
 いや負けるのなら諦めろって話なんですが。
 いよいよ戦争遊戯、予定より長くなって作者は焦っています。
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