ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

66 / 119

 夢を、夢を見たんです。
 古城の塔に立つ私は、そこから景色を見ていたんです。
 籠城する百人を超える冒険者。
 そこに挑む、十人に満たない者たち。
 エルフが魔剣を振るって城壁を破壊しようとしていました。
 くノ一が魔法で団員達を拘束しました。
 小人族の少女がレンガの巨人の上で指揮をとっていました。
 白ウサギと赤髪のヒューマンが内部へと突貫していました。
 そして、『あの人』が最強の冒険者と戦っていたのです。
『アポロン様』の軍勢が、砕け、吹き飛ばされ、押しつぶされ、網に捕まりもがく中、
 破壊の雷と戦猪の残光がぶつかり合い、天地を揺るがすのでした。
 
「って感じ」
 
「そこまで予知されたらさすがに信じるから。というか逃げないと不味くない?」



第66話

 

 都市が賑わいを見せている。

 待ちに待った戦争遊戯当日。オラリオには熱気と興奮が溜め込まれていた。

 今日は全ての酒場が店を開き、路上には出店と広場には飲食スペースとしてベンチと椅子まで用意されていた。通りには無数のポスター、絵の内容だがそれぞれのエンブレム(ヘスティアは無いためウサギ)を書いた版と、全裸で椅子に腰掛け股間を太陽マークで隠したアポロン(ガネーシャフェイス版を刷った神はガネーシャ・ファミリアに処された)とじゃが丸君を両手に持ってファイティングポーズをとるヘスティアの姿が描かれたものだ。

 無駄に気合が入っているこの絵は暇神による力作。こういった芸術方面に力を入れる神はオラリオにはかなりいたりするのだ。

 今日ばかりはほとんどの冒険者達が休業し、酒場に集って観戦準備を整えている。休暇を取ることに成功した労働者達、一般市民や運良く聞きつけた行商人達も、大通りや中央広場に出て、始まるその時をワクワクしながら待ちわびていた。

 

『あー、おはようございますこんにちわ。今回の戦争遊戯実況を務めさせて頂きます【ガネーシャ・ファミリア】所属、喋る火炎魔法ことイブリ・アチャーでござ〜〜』

 

『俺が、ガネーシ〜〜』

 

 ギルド本部の前庭では仰々しい舞台が勝手に設置され、実況を名乗る褐色肌の青年が魔石製品の拡声器を片手に解説役のガネーシャと共にコントのようなやり取りをしていた。

 商人等と提携し都市を盛り上げる戦争遊戯は一種の興行である。だからこそ開催にあたりギルドとガネーシャ・ファミリアが様々な面で仕切り協力するのである。様々な恩恵ある戦争遊戯ではあるが、神の代理戦争の側面がある為、定期的に行えないことだけが問題なのである。

 

「おー、盛り上がっとる盛り上がっとる」

 

 バベル三十階、そこにはロキなどの神々が集まり観戦する。戦場には赴かない両主神ヘスティアとアポロンもこの場で待機していて、戦争遊戯展開によっては説明なども求められるだろう。

 他にも酒場で冒険者に混じったり、ホームで眷族達と見守ったりとそれぞれのスタイルで観戦する。

 

「頃合いかな?」

 

 ヘルメスが懐中時計を見れば時刻はまもなく正午。そろそろ開始時刻のため、宙に向かって話しかけた。

 

「ウラノス」

 

『許可する』

 

 ギルド本部の最奥に座す老神が重々しく響き渡る神威を込めた宣言を行う。

 それを聞いた神々が一斉に指を弾き鳴らした。

 瞬間、酒場や街角それぞれのホームにて、虚空に浮かぶ『鏡』が出現した。

 下界で行使が許されている『神の力』、『神の鏡』。千里眼を有し離れた土地にいても見通すことができる、企画された下界の催しを神々が楽しむために認められた唯一の特例である。

 オラリオから離れた場所で行われる戦争遊戯も、この『神の鏡』であれば観戦することができる。

 ちなみにこれを見たとある異世界人は「やっぱり悪魔の目玉って超便利だったんだな」と呟いていたとか。

 

『では鏡が置かれましたので、あらためて説明させて頂きます!今回の戦争遊戯は【ヘスティア・ファミリア】対【アポロン・ファミリア】、形式は攻城戦!!両陣営の戦士達は既に戦場に身を置いており、正午の始まりの鐘が鳴るのを待ちわびております』

 

『まあ攻城戦だからアポロン・ファミリアは開始してもしばらくは待つだろう』

 

『え?今普通に話しましたガネーシャ様?』

 

『俺がガネーシャだ!!』

 

『なんだ気のせいか』

 

 酒場や大通りなどの場所に合わせて大きさが異なる円形の窓には、太陽の旗を掲げた古城、そして平原が映し出されていた。

 中継映像に都市全体のボルテージが上がる中、実況が戦争遊戯の概要を話し始めた。

 

「もういいかぁー?!賭けを締め切るぞ!」

 

 戦争遊戯の楽しみの一つ。勝敗がどちらかをネタにした賭博である。

 これがもっと『二つ名』持ちが多ければ、誰が最後に決めるかすらも対象になるが、ヘスティア・ファミリアが少数であったため今回はない。

 

「アポロン派とヘスティア派、一対二十ってところか」

 

「【ヘスティア・ファミリア】の予想配当が二十倍、思ったより低いな。どこの馬鹿があの【ファミリア】に賭けてんだ?」

 

「ヘスティア様を応援したいからってんで、一般市民がかなり賭けてたぞ」

 

「・・・・・・冒険者に限定すべきだったか」

 

「あと神連中は大穴好きだからなあ」

 

 胴元冒険者は何やら嫌な予感を感じながら締め切るのであった。

 

 一方、別の酒場では。

 

「何だよ、アポロンに賭けるヤツしかいねえじゃねえか」

 

 神がいねえとこんなもんかよ。冒険しろよ冒険者だろと嘆く胴元。そんな愚痴るドワーフの前に、一人の髭面ヒューマン冒険者が歩み出て、金貨の詰まった袋を叩きつける。

 

「兎に十万!」

 

「「ありがとう」」

 

「泣くなよ胴元、酒場の店主」

 

 戦争遊戯中に賭けの無い酒場は盛り下がる。十万という大金をだし、賭けを成立させてくれた冒険者、18階層でベルにアレコレやらかしたモルドに感謝の言葉が送られていた。

 なお、歓楽街のイシュタル・ファミリアのアマゾネス達は本日の賭けに参加することを許されなかった。彼女ら全員が【ヘスティア・ファミリア】に賭けることは明白だからだ。

 歓楽街の元締めであるイシュタルは、同業者の領分に手を出したりしないのだ。

 盛況の一途を辿るオラリオ。神々のあのテンションも分かるというものだ。

 

「ヘスティア、勝たせてもらうよ」

 

「アポロン、本当に仕方ない子だね君は」

 

 賑わうオラリオを他所に、アポロンがヘスティアへとそう告げる。

 髪をかき上げ笑みを浮かべるアポロンに対し、椅子に座るヘスティアは苦笑しながら眼の前に出現している自分の『鏡』を見つめる。

 

「それが私なのさ」

  

 フッと笑いファサァと髪を揺らしながらアポロンは優雅な仕草で自分の席へと戻っていった。

 

『それではまもなく正午となります!』

 

 実況者の声がはね上がる。

 

「始まるわね」

 

 フフとフレイヤは笑みを浮かべる。

 彼女は皆が驚く瞬間を早くみたいと期待に似たワクワクを抱いていた。

 冒険者が、酒場の店員が、神々が、一般人が、廃教会で帰りを待つモンスター達が、全ての視線がこの時『鏡』に集まった。

 

『戦争遊戯、開幕です!』

 

 号令のもと、大鐘の音と歓声とともに、戦いの幕は開けた。

 

 

 

「そんじゃま始めるかね」

 

 あのくらいの古城ならイオナズンなら一発かもな、と思いつつゼノンは懐から魔法の球を取り出した。

 

「それは」

 

 リリルカはそれが以前ゼノンが渡してくれた、あの動く鎧を出したマジックアイテムだと気づく。

 ヴェルフがこの短期間で用意した二振りの魔剣を遊撃要員として動き回る予定のリューに渡して説明している中、ゼノンはソレを宙へと放り投げた。

 

「出てこいよ」

 

 なるほど、そうやって戦力差を補うのかとリリルカが納得していると。

 カッと光が差した次の瞬間、そこにはズラリと五十体を超えるポーズを決めるアポロン石像が出現していた。

 

「なんでですかーっ!!」

 

「フライングクロスチョップッ!?」

 

 それを認識したリリルカは躊躇わず両手を交差してゼノンへと突っ込んでいた。彼女は二重の意味で突っ込んでいた。

 

「えっ、と?」

 

 ベル達も、古城から見張るアポロン・ファミリア団員達もそれどころか視聴者の皆さんまでも固まる中で、彼女だけは動いたのだ。なおロキ・ファミリアのフィンさんは魔法の球の運搬性能のやばさに気づいて胃を擦りだしたとか。

 

「落ち着けリリルカ、ちゃんと意味はあるんだ」

 

 弁明するように突っ込まれた腹をさすりゼノンは説明しようとするが、リリルカ・アーデに容赦はない。

 

「せっかくの準備期間にまさかこれらを作る為に費やしたんじゃないでしょうね?」

 

「そうだけど」

 

 この短期間で彫るの大変だったんだが、とゼノンは零す。

 

「もっとやるべきことはあるでしょうと思いますが。こんなものがあるなら、私達の待機場所で出すのじゃなくて、古城の上空で出してくださいよ!!」

 

 そうすれば石像による落石攻撃プラスアポロン石像粉砕の精神ダメージを狙えたのに、とリリルカは言葉を続けた。

 

「エグいなっ!?」

 

 魔法の球のエゲツナイ使用法。その発想に創り出したゼノンの方が驚いてしまう。

 

「リリスケってそういうトコあるよな」

 

「とんでもない発想です」

 

「彼女を思い出しますね、同じ小人族ですし」

 

「アハハハ」

 

「なんでリリが引かれてるんですか」

  

 仲間達がこんな反応になるのも仕方のないことだろう。言われるリリルカからしたら心外ではあるが。

 

「ま、見てな。これは単なるアポロン像じゃねえ」

 

 ゼノンがパチンッと指を鳴らす。

 するとズラリと並んだアポロン像は、その両目をカッと光らせ、可動する筈の無い石の身体がまるで生物であるかのように動きだした。

 

「動くアポロン像だ」

 

「なんで動くんですかーっ!!」

 

「ジャンピングヘッドアッパー!!」

 

 ドヤ顔を決めたゼノンの顎へとリリルカが突っ込む。再度ゼノンは叫びながら吹き飛んだ。

 小人族、体当たりなどの体術は案外向いた種族なのかもしれない。

 

「石像をモンスター化、じゃなくて俺のスキルで自動人形的なマジックアイテムを作りだしたんだ。簡単な命令なら問題なくこなせるぞ。つーか落ち着けリリルカ、さすがの俺もヴェルフの魔剣は当たったら痛い」

 

 リューの持つ魔剣を受け取りゼノンへ向けて振り上げながら説明を求めるリリルカ。

 そして説明を聞いた命が一つ疑問を口にする。

 

「ならばなんで石像で、あそこまで凝ったモノを用意したのですか?木材でも良いのでは?」

 

「木を切って繋げるだけでも自動人形にはできるが、オラリオって木材の方が高いんだよ。燃料としても魔石の方が主流だしな」

 

 強度面の理由もあるが一番の理由はお金である。ダンジョンから切り出せる石材とは違い、大量の木材はコストが高いのだ。

 

「さあて、後はリューに魔剣で暴れさせて壊れた城壁へコイツラ突っ込ませて、空いた隙間からベル達が突貫し、リリルカと命がサポートと援護してヒュアキントスを目指す。

 この流れでオーケー?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

「戦力差はこれで殆どなくなりましたね」

 

「じゃあ、始めようか」

 

 再度ゼノンが指を鳴らせば、動くアポロン像達は一斉に同じ方向シュリーム古城跡地へと向いた。

 

 

 

 古城跡地内はアポロン・ファミリア眷族達は混乱の中にあった。

 別にゼノンがこっそり侵入してメダパニーマを唱えたわけではない。

 平原に突然ズラリと見慣れたアポロン石像が出現したかと思ったら、城壁に凄まじい衝撃が炸裂したからだ。

 アポロン・ファミリアからしたらヘスティア・ファミリアの初日から攻めは想定外であった。

 攻城戦であるから今回の戦争遊戯は戦闘期間を3日間と長く用意されていて、こちらの集中力が低下するだろう最終日まで本格的な攻めはないと予想していたからだ。

 なにせ向こうは城攻め。

 ヘスティア・ファミリアの人数は少なく、このシュリーム古城跡地の間取りとて知りはしない。

 ならば情報収集をして団長であるヒュアキントスの居場所を探るなどの動きになると踏んだのだ。

 だが、そうはならなかった。

 ヘスティア・ファミリアは初日から本格的に攻める気なのだ。

 

「正気かよアイツラ」

 

「つーかよく考えたらオラリオの連中、3日間騒ぎ倒す気なのかね?」

 

「短期決戦じゃねえとマズイじゃん」

 

 気づいたらイケナイことに気づいた団員二人が急いで城壁へと上がれば、長弓を持つ弓使い達と合流する。

 

「どうだ」

 

「魔剣だ。あの覆面、ヘスティア・ファミリアの助っ人はクロッゾの魔剣を使ってやがる」

 

 苦々しい表情で弓使いは吐き捨てる。

 それは弓使いが魔剣を忌み嫌うエルフだから、ではない。アポロン・ファミリアの、基本的な籠城戦において弓使いの役割とは近寄る者を射殺すだけではなく、城壁を破壊しようと長文詠唱する魔導士を狙撃することである。

『魔法』の威力、そして射程距離は原則として詠唱文の長さに比例する。さらに長文詠唱ともなれば発散される魔力が探知されやすい。

 弓使いはそんな城壁を破壊しようと長文詠唱をする魔導士を撃つ、あるいは詠唱の邪魔をすることが役割なのだ。

 だが、それが出来るのは集中し動くことができない魔導士に限る。

 いくら恩恵を刻もうと、動く獲物へ矢を当てることは至難でありそればかりは本人の技量頼りなのだ。

 高ランク冒険者らしき謎の人物が、一切動きを止めずに、詠唱の必要の無い魔剣を使用する。

 これを弓使い達が止めることは不可能である。またあの動きからして生半可な矢では躱されるか切り払われるのがオチである。

 

「チッ、どうしようもねえな」

 

 さらにアポロン・ファミリアには別の問題が発生していた。

 

「ああアポロン様が、アポロン様が、素晴らしきアポロン様がこんなにぃぃぃ!!」

 

 小隊長を任される狂信者組(コイツラに限ってレベルと実力が高い)が現れたアポロン石像に、さらには動き出したことに歓喜の涙を流し始めたからだ。

 

「どうすんだよアレ」

 

「ほっとくか」

 

 此処は楽園かと悶える狂信者組はさておいて、覆面による魔剣砲撃で揺れる古城へと動くアポロン石像の群れが駆けてくる。

 弓使い達が矢の雨を降らせて破壊と足止めを試みるも、走る石像には命中しても破壊にはいたらない。

 冒険者の膂力であれ、弓矢の威力は弓の性能に依存してしまう。

 ゼノンのように矢に闘気を纏わせたり、魔導士が付加魔法を施せば威力は上がるが彼らにその手段は無かった(また矢全てに付加魔法は多すぎて無理だろう)。

 

「効かねえよな石だし」

 

「爆薬を矢に付けるのは?」

 

「籠城側で爆薬なんか用意してるかよ。攻める側じゃねえんだぞ」

 

 また少数のヘスティア・ファミリア相手に爆薬は無駄な手段だ。

 ヘスティア・ファミリアに利用されるリスクも考えたら用意しない方が無難なのだ。

 

「瓦礫を集めてきてくれ、矢よりはマシだろう」

 

「わかった」

 

 こうなれば壁に取り付いたところに瓦礫を落として破壊するしかない、と城壁で守る者達は判断した。

 投げて当てるのは無理でも城壁へと張り付いたら落とすだけで命中させられる。

 

「待て」

  

 そこへ、悶えていた狂信者組のエルフ、リッソスが待ったをかける。

 

「どうした?」

 

「貴様らまさか、あの素晴らしい出来栄えの動くアポロン様像を破壊する気か?」

 

「「「そらするだろ」」」

 

 数はこちらが多いが広い古城内に散らばってしまい、小隊ごとの人数は少ない。

 戦えばあの石像の群れに飲み込まれてしまう。

 

「正気か貴様らぁ!!それでもアポロン様の眷族だと言うのか!!」

 

「「お前が正気か」」

 

「アホがファミリアの全資産を賭けてんだぞ」

 

 コレだから狂信者組はと白い目が向けられるリッソスだが本人は気付かず小隊長として命令を下す。

 

「捕縛用の網が用意してある筈。使うならば先ずはそれで動くアポロン様像を捕らえるのだ。あれらは全て戦利品として回収、ではなく破壊するよりも足止めになるだろう。というか今、アポロン様をアホって言わなかったか?」

 

「さて網、網っと」

 

「足止めするから頼んだぞ」

 

「あいよー」

 

「話を聞け貴様ら!!」

 

 本音はさておいて指示は的確だったため団員達は大人しく従うのであった。

 

 

 

 場所は変わってバベル三十階。

 神々が観戦するその部屋でロキがヘスティアへと声をかける。

 

「なあドチビ」

 

「なに洗濯板」

 

「ゴフッ、これはヘスティア・ファミリアとアポロン・ファミリアの戦争遊戯やろ?」

 

「うんそうだよ」

 

「ならなんでヘスティア・ファミリアの方がアポロンやねん」

 

 その当然過ぎる、オラリオ全体で騒がれてるそのツッコミに、ヘスティアは。

 

「・・・・・・なんでだろうね」

 

 煤けた表情で答えるのみであった。

 

「ゼノン君がさ。なるべく人死ださない穏便な手段でやる。っていうから聞かないでいたけど、聞いとけば良かったかなあ」

 

 もっともゼノンなら止められても聞かない可能性の方が圧倒的に高いのだが。

 

「あとあの自動人形の作成依頼とかできひん?便利そうやし欲しいんやけど」

 

「ロキの石像かあ、需要あるの?」

 

「ゴフッ、あるわ、めっちゃあるわ、きっとあるわ。でも一分の一自分フィギュアよりアイズたんの方が欲しいわ」

 

「自分にすら需要ないじゃん」

 

 とりあえず後で訊いとくね。

 とヘスティアは力無く返すのであった。

 なお対戦相手のアポロンであるが、城攻めする一分の一自分フィギュアの軍勢に大興奮していたとか。

 

 

 

「さて、リューが魔剣でこじ開けた穴に動くアポロン像が殺到し穴を広げる。そこからベル達が侵入と」

 

 荒野の岩山から戦場を眺めていたゼノンはそこでとある気配に気づいた。

 

「ゼノン様?」

 

 横でゼノンの補佐をしていたリリルカは目を細めるゼノンの様子に気づき訊ねる。

 

「悪いなリリルカ。コイツに乗って動くアポロン像の指揮を頼むわ。デルパ」

 

 そしてゼノンは懐から魔法の筒を取り出すとそこからレンガを積み重ねて出来た人形『ゴーレム』を出した。

 

「リリルカを任せた」

 

 ゴーレムは胸に手を当ててその言葉に答える。本当はキラーマシンが良かったが時間がなあ、とボヤキながら頭をガシガシと掻きその誘うように気配を放つ存在へと足を向ける。

 

「なんのようだ?オッタル」

 

 充分に距離が離れた荒野の端。

 そこにその男は居た。

 フレイヤ・ファミリア団長。

 オラリオ唯一のレベル7。

『猛者』オッタル。

 最強の冒険者がそこにいた。

 

「戦え、ゼノン」

 

 大剣、覇黒の剣をゼノンへと突きつけながらオラリオ最強は言う。そこには一歩も引き下がぬ不退転の決意が見て取れた。

 

「なにもこんな時にやるこたねえだろ」

 

 ハァ~と深くため息をつくゼノン。

 

「多忙なお前が今日以外に戦う時間など取れるのか?」

 

「う?!」

 

「責める気はない。

 掃除洗濯炊事、食堂で料理人としての仕事、彫刻家として石像を彫り、時折ミアハ・ファミリアでポーション作成を手伝い、ジャガ丸君販売にもヘルプが来れば応じ、ギルドへの提出書類をまとめ、ベル・クラネルへ稽古もしてやれば、リリルカ・アーデの相談もしてやり、仲間の為にアイテムを作り、タケミカヅチ・ファミリアにも顔を出し、自己鍛錬は欠かさず、イシュタル・ファミリア通いも続けている」

 

 我ながらよく働いているなあ。  

 と列挙された仕事量にゼノンは自分の事ながら感心する。イシュタル・ファミリア通いも報酬が出るので仕事扱いになりつつあるとか。

 

「誤魔化しや言い逃れならば、臆病者、卑怯者と見限っていた。だがゼノン、お前は本当に忙しかった」

 

 だから気を遣って差し入れしてくれたのか。最近はファミリアでもやりだして、戸惑われてるらしいな。とゼノンは他人事のように思った。

 

「今日、だけだ。

 お前と戦うには今日しか無かった。

 今日だけがお前の手が空く日なんだ」

 

「戦争遊戯当日ですけどっ!!」

 

「どうせお前のことだ。

 また忙しくなるだろう。ゆえにフレイヤ様にお願いして無理やり参加したのだ」

 

 どうりですんなり助っ人が認められるわけだと、ゼノンの中の疑問が氷解した。

 お互いに助っ人が許されていたから認められた。ただヘルメスからすれば娯楽好きな神々が面白くないからと勝ち確定なアポロンに肩入れしないと予想したのだろう。

 その穴をついたのが寄りによってオッタル(脳筋)だったわけだが。

 

「戦えゼノン。さもなくばベル・クラネル達を叩き潰す」

 

「しゃーねーな」

 

 スラリと雷鳴の剣を抜き放つ。

 そしてその切っ先をオッタルへと向け、

 

「来いよ、ベルが決着つけるまで相手してやる」

 

「ウオオオオオオオオ!!」

 

 最強は吠えた。

 そこに込められた感情は歓喜。

 腰の落ち着かぬ最強の玉座に押し込められた、誰よりも最強に焦がれる挑戦者。

 挑み続けた、苦渋に塗れた、痛みも屈辱も辛酸を舐めたあの日々の。

 最高に心躍った楽しかったあの日々のように、異世界の英雄へとその剣を振り下ろした。 

 

 ゼノン。

 アバンの使徒次兄。

 アバンの後継、光翼の勇者。

 自称頂点に辿り着けない二番手。

 事実上人類最強だった若き極才。

 

「さて、どうやるかな」

 

 殺すだけなら造作ない。

 最強の冒険者を前に彼はまだ充分過ぎるほどに余裕があった。

 そんな中、彼の首にかかるペンダント、卒業の証とは別のペンダントが輝いていた。

 まるで出番を待ち望んでいたかのように。

 





 今話は、戦争遊戯前のオラリオの反応から、戦争遊戯開始してオッタルと戦闘開始までです。
 原作のベル君関連のイベントはきちんと起こっていますし、エイナさんなどの反応、シルのお守りを渡すイベントもありました。
 ただ原作のままなのと、ゼノンとの関わりが薄いと描写を飛ばしてしまいますね。
 入れたい説明もありますが原作のままなのがなあ。

 ゼノンの用意。
 動くアポロン石像を五十体用意しました。自動人形と誤魔化しましたが普通にモンスターです。ただ魔力を補充すれば活動はできるのでマジックアイテムでもなんとかなるかなと。
 恩恵を得た冒険者なら破壊は可能ですが、石なので剣や槍は刃が痛みますし、矢だと弾きます。
 あくまで足止め、時間稼ぎの為の存在ですね。

 ゴーレムライドリリルカ。
 ドラクエトレジャーズみたいなノリです。
 ゴーレムは見た目の割に強度はイマイチで(ドラクエVII漫画版の倒され形参照)避けてましたが、暇なシャドー達にレンガを積み重ねさせて作りました。
 なお神々と子供達は「乗りたい乗りたい」と大騒ぎしています。
 そして魔導士達はゼノンをロックオンしました。

 戦争遊戯。
 あのお祭り騒ぎ3日間やる気だったのかな?(汗)。読み返したらかなり焦りました。攻城戦は観戦できるイベントではないですよね。

 オッタル。
 本当に忙しいゼノンと戦いたくて無理をした人物。後にカンダッタル化が確定しています。
 戦争遊戯中が唯一時間が取れる男に挑みます。
 なお今後動く石像作成でまた忙しくなるので、今挑まないと豊穣の女神編までオアズケでした。

 ゼノン。
 動く石像を見せたら依頼が増えると予想してなかったアホ。
 オッタルを仕留めるだけなら、レムオルで透明化してから閃華裂光拳。トベルーラから呪文爆撃、即死呪文を唱え続ける、エクセリオンブレードでたたっ斬るなどいくらでも手段はあります。
 剣で相手をする。
 それだけでオッタルに親しい証拠です。。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。