ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
今回はヘスティアサイドです。
そして神々の間でとんでもない勘違いが発生しています。
『世界で最も熱い都市』オラリオ。
未知という名の興奮、巨万の富、輝かしい栄誉、そして権威。全てが揃うこの都市に、夢に魅せられた大勢の者が集う。中には運命の出会い、平穏な日常を求める酔狂な存在も混じっていたりするが。
「あっ、あそこにいるのはド貧乏【ファミリア】代表のタケミカヅチ君じゃないか!おーいっ、フヒヒ」
「あっ、あの年がら年中幸薄そうな湿気た顔はタケミカヅチさんじゃないですか!おーいっ、フヒヒ」
「このクソ神どもがぁ・・・・・・!!」
よって必然のことながら、冒険者達よりも下界の人々よりも未知という存在に飢え、娯楽を求める存在『神々』が、この都市に身を置き集うのもまた然り。
そんな神々集う都市の、とある敷地内。
普段は勝手気まま好き放題に生きる彼ら彼女らが、群衆さながらに大きな団体を作り上げていた。
「よっす」
「おひさー」
そんな胡散臭いオーラを放つ神々の前にある建物。それは、数多の文化・神話が闇鍋の如く混在したこの巨大都市オラリオでも、さらに一際異彩を放っていた。むしろ奇怪を極めていた。
象の頭を持つ巨人像が白い塀に囲まれただけのただ広い敷地の中で胡座をかいている。
像のサイズは30メドルほど、自己主張激しく威風堂々と胸を張る姿は見る者もどう反応すれば良いか困り果てるだろう。
そしてこれは驚くことに建造物なのだ。神話問わず巨大神像の内部は制作工程もあり内部に入れる場合が多い、もっとも住居のデザインをこうするのは極めて珍しい事例だが。
そうこれは住居、数多の【ファミリア】がしのぎを削るオラリオにおいても上位に位置する【ガネーシャ・ファミリア】の本拠、『アイアム・ガネーシャ』である。
所属する構成員達の間でも不評であり、彼等は泣く泣く胡座をかいた股間の中心である入口を出入りしている。
なお、異世界で爆死しこの世界に迷い込んだ青年がこの建造物を見れば「これも動くのかね」と勇者に破壊された大魔王軍の移動要塞を思い出して遠い目をするだろう。
そんなネタにしても恥ずかしい建造物に笑いながら入れるのだから、神々とは只人と感性がまるで異なる存在なのだろう。
『神の宴』、下界に降り立った神達が顔を合わせる為に設けた会合。神話内の序列、神話間での対立もお構い無しの、主催したい神が開いて、宴に参加したい神が足を運ぶ、自由で奔放な集いである。
『本日は〜〜〜ガネーシャ〜〜フィリア祭〜〜〜』
建物の外見とは異なり落ち着いた内装の大広間にて、設けられたステージの上で主催者である巨大な象の面をした神物ガネーシャが馬鹿でかい肉声で挨拶を行っている。だが、ただ騒ぎたい、集まりたい、只飯にありつきたいだけの神々はそのスピーチを聞き流し、各々やりたい放題していた。
会場は立食パーティー形式であり、純白のテーブルクロスのかけられた元卓には色取り取りの料理が置かれていた。
『神の宴』の規模はそのまま【ファミリア】の実力を現す。集まった神々の数、宴のランクから見れば流石はオラリオ指折りの【ガネーシャ・ファミリア】である。
「あ、これも美味しい。給仕君この料理はなんて名前なんだい?」
そんな中、一昔前ならば卓上の料理をリスのように頬袋膨らませながらかきこみ、さらには持参したタッパーに日持ちしそうな料理を詰め込んでいたであろうヘスティアは、一口食べて気に入った料理の名前を尋ねるだけという別神レベルに大人しく過ごしていた。
ベル・クラネルと共に眷属となった青年ゼノン。食堂で働く彼により、少なくとも食生活には困っていない。料理名を訊くのもゼノンならば再現できるという確信があるからだ。
『あれ、ロリ巨乳来てんじゃん』
『ていうか生きてたのか』
『北の商店街でパートして子供を養ってんだよな』
『処女神が今じゃ、子の居る旦那持ちか』
(ん?)
何やら聞き捨てならない言葉が聞こえヘスティアがそちらを向けば、
「ヘスティア、こんなに立派になって」
燃えるような紅い髪の右眼に大きな眼帯をした麗人が、左眼から感動の涙を流しながらヘスティアを見下ろしていた。
「ヘファイストス!」
彼女はヘスティアの目的の神物にして神友、そして下界に降りてから散々迷惑をかけ倒した存在である。
「ええ、久しぶりヘスティア。こんな姿を見せてくれるなんて、旦那ができるとこうも変わるのね」
一人では何もできない駄目駄目な女神、略して駄女神の筆頭だった神友の変わりようにヘファイストスは嬉し涙を流し続ける。
「いや泣かれる程に駄女神だった、という事も気になるけど、旦那ってなんの事?」
ベル君とはまだ、まだそこまで進展してないんだけどとヘスティアは首を傾げる。
「惚けなくても良いわよ、そりゃ貴女には貸しばかりだけどお祝いぐらいはしてあげたのよ?」
「あのね、ベル君とはまだそこまで」
ナニカとんでもないことになってる。それを察してヘスティアは背筋が寒くなるのを感じていた。
そんな中、コツコツ、と靴を鳴らす楚々とした音がヘファイストスの後ろから近付いてきた。
「ふふ・・・・・・相変わらず仲が良いのね」
「え・・・・・・フ、フレイヤっ?」
現れたるは容姿優れた神々、女神達の中でも群を抜いた美貌の存在。
美に魅入られた神、フレイヤである。
「な、なんで君がここに・・・・・・」
「ああ、そこで会ったのよ」
どうやら元々はヘファイストスの連れらしい。都市最高の鍛冶ファミリアの主神と都市最強のファミリアの主神はその付き合いが長く深い。
「お邪魔だったかしら、ヘスティア?」
「そんなことはないけど、気になることを訊いてる途中で・・・・・・」
「ああ、貴女が黒髪の男性と同棲していて、連れ子の白い髪の子供を養っているって話でしょ?」
「いやーベル君とはまだそこまでは。あれ?」
「旦那は食堂で、貴女はパートで働いて、連れ子の男の子の夢を支えるなんて、本当に立派になったわね」
そこでようやくヘスティアは周囲から自分がどう思われているのか理解した。
今の自分は、旦那認識されてるゼノンと共に、連れ子認識されてる冒険者のベルをパートで支えてると思われているのだと。
「なんでそうなるのっ!?」
勘違いの要因は、ズバリ言って、ゼノンとベルの外見にある。
美形ではあるが、目つきが悪く鋭い眼差しのゼノンは実年齢より年を重ねているように見える。
そして、白兎のようでいてさらに仕草も子供らしいベルはその逆に若く、幼く見られたのだ。
一緒にオラリオに入り、同じタイミングでヘスティアの眷属となった二人を見て、周囲の者達は面白おかしく噂話を広めたのだ。
ロリ巨乳神ヘスティアが、子連れの男と同棲して夫婦として暮らしていると。
ここでゼノンがダンジョンに潜らないことが悪く働いた。眷属となって一切ダンジョンに潜らないのは珍しい例であり、そこに何か事情があるのではと推測(妄想)されたのだ。
またタケミカヅチを筆頭とした武神達がゼノンの身の運びから只者ではないと察し、元腕利きの実力者が冒険者を引退し連れ子と共に職を求めてオラリオに来たのだと話が広がってしまったのだ。
「あ、はははは」
どうすんのコレと、ヘスティアは顔を引き攣らせて頭を抱える。ヘスティアとてゼノンは嫌いではない。孤児という生まれもあり、神として司るものからなんとか支えて上げたい気持ちになる。
だが恋愛感情らしきものが向いているのはベル・クラネルに対してだ。
それなのに、想い人を連れ子認定とか、いったいどんな罰ゲームなのだろうか。
「ヘスティア?」
「もしかしたら噂って」
女神二柱が自分らの勘違いに気づきかけたその時に、
「おーい、ファーイたーん、フレイヤー、ドチビー!!」
「黙れ洗濯板の付喪神、今は君に構う精神的余裕がないんだよ」
現れたロキはヘスティアらしからぬ暴言にダメージを受けて崩れ落ちた(あと微妙に神力と威圧も漏れていた)。ヘスティアはヘスティアでロキにも訊ねたいことがあったのだが、そんな余裕はないようだ。
そんなやり取りをしているうちに時は流れ、フレイヤはヘスティアの眷属が白髪で赤い目の少年ヒューマンと、黒髪で鋭い目つきの青年のヒューマンであると確認したら去っていった。
そしてヘスティアは、
「お願いがあるんだヘファイストス。
ベル君に、ボクの【ファミリア】の子に、武器を作って欲しいんだ!」
この【神の宴】に参加した目的を実行した。
「旦那の分はいいの?」
「そんな事実は一切ないっ!!」
誤解はまだとけてないようだが。
「洗濯板、洗濯板の付喪神。うちは洗濯板」
譫言呟くロキに声をかける勇者もこの場にはいなかったそうだ。
今回は微妙かな?評価が怖いぜ。
ゼノンの冒険者らしからぬ行動が誤解を招いていました。なにせ一巻の時点では、迷宮都市内でダンジョンで生計を立ててないのは【ヘファイストス・ファミリア】だけらしいので。
ヘスティアはゼノンと共働きで、連れ子であるベルの夢を支える義理の母ポジになりました。
まあ神々のネタ話が原因ですが。