ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
今回はオリジナル設定、原作改変がかなり増量した話なので閲覧注意です。
ちなみにカサンドラさんはヒュアキントスさんを突き飛ばした後に瓦礫の下で熟睡しています。
彼女は現在、予知夢の筈なのにゼノンとオッタルの戦いをリアルタイム視聴しています。
ある意味今回の戦争遊戯で一番可哀想なのは、参加者であるがゆえにゼノンVSオッタル戦を見れないベル君達かもしれません。
当然アイズはこの後、それをベルにドヤ顔で自慢します。
ベルとヒュアキントスの団長同士の一騎打ち。
そのなによりも心くすぐる、盛り上げるシーンに観客達は応援の叫びを上げる。
ここまで応援される戦争遊戯などそうはない。
勝者は全てを奪える。そして神々の代理戦争としての側面がある以上、その戦いはどこか陰のある、残酷で必死な要素を避けられないからだ。
当然、この戦争遊戯もその筈であった。
ベル・クラネルの改宗というヘスティア・ファミリアにとって大き過ぎるモノを賭けた決戦。
それがここまで盛り上げるなどありえない。
普段は善神だが、気に入った存在をなんとしても手に入れようとする時は迷惑極まりないアポロン。
それは一般人にすら知られていて、今回の件で彼らアポロン・ファミリアを応援する者などいるわけがない。
けれど、この戦争遊戯最終局面。
ベルとヒュアキントス、その両者に惜しみなく隔てなく応援の声が送られていた。
とある神は言う。
ここまで見ていて、観客に混じっていて気分の良い戦争遊戯はそうはない、と。
その応援が届いてる筈は無いのだが、ベルもヒュアキントスも不思議と力が湧き上がるものを感じていた。
民衆の支持を力に変える。
英雄を求める当世において、神の恩恵にそのような力があってもおかしくはないのかも知れない。
「ベル・クラネルよ。
貴様が我らアポロン・ファミリアに入団しなかったことを惜しく思う。
そうすれば今頃、共にアポロン様の寵愛を授かっていただろう」
「あの日神様に、ヘスティア様に手を引かれたことが僕の始まりです。
その出会いが今に繋がるならば、僕は何度選択の機会を与えられようと、ヘスティア様の眷族になります」
「そうか、その主神への想い誠に天晴。
ならばこそ、我が全霊打ち破り主神への想いを貫くが良い!!」
するとヒュアキントスは同時刻別の場所で繰り広げられる戦い同様に魔法の詠唱を行う。
「【我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ!】」
リューやオッタルのように並行詠唱を行う技量はヒュアキントスには無い。
足を止め、集中しなければ詠唱し魔法を発動することなど出来はしない。
「【我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ!】」
ヒュアキントスの切り札。
ベル・クラネルの超短文詠唱魔法の存在を知りながら無防備な姿を敢えて曝すその意味。
それを理解した時、ベル・クラネルもまた動き出していた。
ヒュアキントスの隙だらけの姿に攻撃を叩きこむ為ではない。
最後の一撃を放つ為に集中しだしたのだ。
雷鳴の剣を逆手に持ち、18階層で見た時から何度も練習したその構えを取る。
『アバンストラッシュを使いたい?いやアレは技を全部極めないとそこまで威力でないぞ』
ベルの脳裏によぎるのはゼノンとの会話。どうしても少しでも出来たらとお願いし続けたら、仕方ないかと今の自分にできることを考えてくれたんだ。
『まあでもダイだって未完成状態(竜の騎士+神の涙ブースト有り)でクロコダインを倒したしなあ。ヒュンケルも空の技未習得でも打てはしたんだよな』
それに未完成な技な状態を知れば、完成した時の真の威力をより実感できるかと、形だけではあるけど伝授してくれたんだ。
「【放つ火輪の一投!】」
だから、
(その技で僕は全力のヒュアキントスさんに真正面から勝つんだ!!)
「【来れ、西方の風!!】」
本来のヒュアキントスの魔法。
それは魔力により創り出された大円盤。
その高速回転する大円盤の投擲がヒュアキントスの切り札である魔法である。
だが、今創り出されたモノは違う。
本来の形とは異なり、魔力は大円盤ではなく、ヒュアキントスの回りを回転する光輪となった。
フレイヤ・ファミリアの副団長アレンの唯一の魔法とよく似たその形。
もっとも、この光輪は縦回転ではなく横回転であるが。
「【アロ・ゼフュロス!!】ベル・クラネルよ、我が光輪をその身に受けるが良い!!」
光輪を帯びたヒュアキントスはベル・クラネルへと駆ける。
魔法を纏った突撃。
それがヒュアキントス最後の一手。
その全力に対し、ベル・クラネルは、
自身も走り出すことによって迎え撃つ。
逆手に持った雷鳴の剣が輝きだす。
未だ拙いながらもベル・クラネルより発せられた闘気が刀身に輝きを生み出す。
その技は彼が18階層で見たモノとは同じ構え。
それは小さな勇者ダイがロモス王国で獣王クロコダインを打ち破った技。
そしてそれにベル・クラネル自身のスキル『英雄願望』が合わさり、その威力を増す。
両者の距離が零となった瞬間、ベル・クラネルはその技の名を唱えた。
「『アバンストラッシュブレイク!!』」
高速回転する光輪に雷と闘気を帯びた刀身が打つかり合う。ギャギャギャと激しい音が鳴った後に爆発が起こり、両者は激しい光に覆われた。
その光が晴れた後、立ち上がったのは果たしてどちらなのか。
「互角・・・・・・か」
「だな」
オッタルの黄金の残光とゼノンのアバンストラッシュアローは打つかり合い、激しい轟音と共に爆ぜたもののその威力を相殺しきり消えていった。
「加減しないで打ったんだがな。破壊の剣を装備した俺のアバンストラッシュアロー、これと同威力の技なんて向こうでもそう無いぜ」
ゼノンのアバンストラッシュアロー。それは小さな勇者ダイがフレイザードデッドアーマーに放ったモノよりも強力である。
ゆえにオッタルの斬光は、魔王軍六軍団長に届きうる域にあった。
「そうか。それは誇らしいな」
黒大剣を振り抜いた姿のまま、オッタルは満足したように笑う。
戦争遊戯も最早終盤。
残り時間を考えれば、全力の一刀を放てたこのタイミングで終えた方が良い。
そんなことをこのオラリオ最強の武人は考えたりはしない。
「ならば次は【獣化】を発動し残光を打つ。
それが俺のありったけだ」
次にいつあるかわからない全力を出せる戦い。
だからこそ全てを出し切り、人類最強の極才に挑むのである。
「わからないな」
その姿を見てゼノンは疑問に思う。
「これだけ強いお前がいて、なんでダンジョン攻略でフレイヤ・ファミリアはロキ・ファミリアに後塵を拝して居るんだ?見たところロキ・ファミリアの三首領が束になろうとお前には及ばないだろう」
ゼノンはフレイヤ・ファミリアとロキ・ファミリアの全てを知っているわけではない。
だが彼の見立てでは、オッタルの実力(ついでにミア)があって両者が二大派閥であることが不思議で仕方ないのだ。
そう、フレイヤ・ファミリア一強であってもおかしくはないだろうと。
「・・・・・・ダンジョン攻略に求められる能力は純粋な武力だけではない。あの絶え間なく襲いかかるモンスター、変動する環境、悪意ある罠、などを物資を抱えて帰還まで踏まえて挑むのには、群れを率いる才覚が必須なのだ」
「お前にはそれが無いと?」
「ああ、俺達フレイヤ・ファミリアは同朋でありながら女神の寵愛を求め、競い合い争う宿敵同士、いつもダンジョン攻略中に挑まれ、襲いかかられて攻略が一向に進まんのだ」
「お前らに比べたら魔王軍の方が遥かに規律がある組織だわっ!!」
魔王軍にも足の引っ張り合いとか(ザボエラが)、手柄をかすめ取ろうとしたりとか(ザボエラとか)、仲間へと謀略を仕掛けたりとか(やっぱりザボエラ)があったりしたが、それでもここまで酷くはなかった。
「団長としての能力で俺はフィンの足元にも及ばず。ダンジョン攻略でフレイヤ・ファミリアはロキ・ファミリアに勝てはしないのだ」
「明らかにお前に団長の適性がないから辞めちまえよ」
辛辣なゼノンのツッコミ。
けれどこの会話を『神の鏡』越しに見ていた観客達はフレイヤ・ファミリアにドン引きしつつもゼノンの言葉に同意するようにウンウンと頷いていた。
なおそのフレイヤ・ファミリアのダンジョン攻略が捗らない理由を知った某豚エルフはストレスのあまり血を吐いて執務机に突っ伏していた。
救世、黒竜討伐とダンジョン攻略に誰より真摯でもある武力無きギルドの長は、気を遣い、便宜を図っていた二大ファミリアの片割れのあんまり過ぎる実態に涙と血反吐を溢したのだった。
「フッ、向いてないとはよく思う。ミアのようにはいかんのだ」
なお彼女の場合は、オカンによる鉄拳制裁統治である。愛ある拳を防げるモノ無し。
同じことをオッタルが実行するのは間違いなく不可能だろう。
というかオッタルとてその強さに敬意は払うが、仲間達をあんまり好んではないのだ。
闇討ちと罵倒する者達を受け入れ、好意を抱ける者はそうはいない。
「ま、いいや。なんか聞いてて辛くなってきたし。お前が全力をぶつけてくるなら応えてやるよ」
アバン流の奥義はアバンストラッシュである。
アバン流にそれ以上の技はなく、それを上回るには竜の騎士のみが使える魔法剣を合わせるしかない。
無論ゼノンに魔法剣は使えない。
完全自爆技の疑似魔法剣は奥の手として存在するが、ここで打てばオッタルごと周辺一帯を消し飛ばしてしまうだろう。
ゆえに彼がオッタルの想いに応えて使用する技は、
「俺の奥義でな」
『ゼノンウィンザード』に名を連ねるゼノンが生み出した四大奥義、その一つである。
その言葉を聞いた瞬間、オッタルは己の獣性を解き放ち獣へと墜ちた。
『獣化』獣人と同系統の能力を持つ狼人であるベート・ローガをして強化ではなく化け物と化すと称した強化率。
レベル7を極めたオッタルがソレをなせば最早、かつてオラリオに君臨したレベル8へと並ぶ実力になるだろう。
【戦猪招来】、ランクアップと見紛うほどの上昇を齎すそのスキルには当然欠点も存在する。
だがオッタルは『最強の挑戦者』は躊躇わない。己のありったけを全て込めると決めたのだ。
「戦いが楽しいなんて、はじめてかもな」
ゼノンにおいて戦いとは利益を得る為の作業に過ぎない。
強くなることは好きだ。
学ぶことは好きだ。
修行することは好きだ。
渇望による飢えを忘れられるその瞬間をゼノンは心地良いと感じていた。
ゼノンの強さは『極才』にこの衝動が噛み合った結果至ったものである。
だからこそ強さを証明するだけの戦いは、渇きが増すだけで苦痛でしかなかった。
けれど、
直向きなまでに女神の為に強くなろうとありったけを絞り出す武人を前に、応えてやりたいと今ならば思えるのだ。
「『破壊の剣』よ、我が剣よ」
「【銀月の慈悲、黄金の原野】」
ゼノンの奥義が一つ。
それは彼の欲望の境地。
勇者に英雄に成りたかった彼は、当然のように『真の勇者』の証である雷撃呪文デインを求めた。
だが『真の勇者』ではなく『竜の騎士』専用の呪文である雷撃呪文をゼノンは契約することができなかった。
「今、我が暗黒闘気をその身に喰らえ」
「【この身は戦の猛猪を拝命せし】」
そしてその現実をゼノンは受け入れることができなかった。
後に勇者らしき力『エクセリオンブレード』を創り出すことで溜飲は下がったが、それでも彼は満たされなかった。
だから彼は『勇者の雷』が手に入らぬなら、『雷』を手に入れようとした。
モンスターの特技である『いなづま』を再現できる『雷鳴の剣』はその一つである。
「喰らいて地獄より喚び寄せよ」
「【駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】」
だがゼノンはその程度では満足出来ず、ついには地獄の底にあるとされる力へと目をつけた。
呪文契約では実現できなかった招雷禁呪。
本来不可能であるソレをゼノンの『極才』と『渇望』はロン・ベルク直伝の武具創造技法に組み込むことで成し遂げた。
『勇者の力』に似たモノを得る為なら『地獄の雷』にすら手を伸ばす。
大魔王バーンと冥竜王ヴェルザーが敵であるゼノンをそれでも腹心に欲するのは至極当然のことだろう。
ゼノンのその構えはカール王国騎士剣術『正統の構え』によく似ていた。
大地に突き刺された、限界まで暗黒闘気を注ぎ込まれた『破壊の剣』が刀身の髑髏の目を紫色に輝かせ、その唯一の力を発動する(モンスター化による意思の発生と修復機能は想定外の副産物)。
招来禁呪は地獄の雷を召喚し、その刀身へと纏わり宿る。
「ジゴスパーク」
「【ヒルディス・ヴィーニ】」
それは下段から突き上げられる斬撃。
同時に地獄より引き摺りだされた破壊の雷が解き放たれる。
天より降り注ぐ裁きの雷と対を為す、地より噴き上がる蹂躙の雷。
本来不可能であるオッタルの【戦猪招来】と【黄金猪の毛皮】の同時発動。
溢れ出る闘志と尽きること無き挑戦心により成し遂げたオッタルありったけの最強最大の一撃。
黄金戦猪の極斬光。
とでも称されるその絶技と衝突し、打つかり合い、絡み合い、競り合い、そして押し切った。
「・・・・・・・・・・・・届かぬか。
だが、良いものだ。
挑みし強者が、乗り越える壁が、昇りつめる頂きがあるということは」
限界まで、限界を超えて力を振り絞ったオッタルはゼノンの放つ破壊の雷へ呑まれていった。
今話は、ベルVSヒュアキントス、ゼノンVSオッタルの決着です。
ヒュアキントスは魔法を身に纏い突っ込み、ベルは未完成のアバンストラッシュブレイクにスキルを合わせて放ちました。
ゼノンの奥義はジゴスパークでした。オッタルのオリジナル最強技と打つかり合い勝ちました。
ヒュアキントスの魔法の変形とオッタルの獣化と魔法の併用は当作の原作改変です。原作ではそれができるかはわかりません。
ちなみにゼノンのジゴスパーク採用は。
破壊の剣→デザインは漫画版ドラクエ6→骸骨が動いた→迅雷の魔王スカルデーモン→ドラクエヒーローズでそういえばテリーの技がジゴスパークだった。という連想の流れでした。
ゼノンの四大奥義。
ゼノンウィンザード
才牙エクセリオンブレードの光の闘気を極限まで高めた単体攻撃最強技。個人への攻撃では最高の威力だが破られがち。
ジゴスパーク
破壊の剣に暗黒闘気を大量にぶちこむことで発動する最強放出技。威力自体は下の技に劣るが暗黒闘気放出によりなんかスッキリして身体に良い技。
豪魔軍師ガルヴァスはこれをくらい蒸発した。
アルテマソード
疑似的に魔法剣を再現した最高威力最大範囲を誇る完全自爆技。エクセリオンブレードにマダンテをぶちこむことで発動する才牙完全粉砕が前提の技。使用後は才牙粉砕によるダメージフィードバックと魔力と闘気の完全枯渇するという、即死しない斬撃状のメガンテ。
アンタレスに使用して森と配下ごと斬り滅ぼした。
ギガクロスブレイク
ゼノンウィンザードとジゴスパークを同時に放つゼノンの最強技。発想は理解できるが実現できる身体がおかしいと仲間達はドン引きした。
真大魔王バーンとのタイマンで使用したが、ダイのアバンストラッシュクロスを見られていた為、攻略法を編み出され返り討ちとなった。
バーンがダイと超魔ハドラー戦を観戦していなければ片腕を消し飛ばせれた技。
次話、戦争遊戯決着とエピローグ。