ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ゼノンがザオリクを覚えたのは、ダイの大冒険原作で『ポップが自分の眼の前でメガンテしたから』です。
 その後ザボエラにザオリクの魔導書を取引で譲りうけました。
 ザボエラは『妖魔司教』の名の通り、治癒系魔導書を収集しており、『ザオリク』は魔界では現存している設定です。
 ただ、長命の魔族は死後に遺体が残らない場合があるので蘇生が不可能で、また自分が使えても自分が死んだ時には無意味な為にあっさりくれました。
 バラン離脱後にゼノンとの関わりがあるのは利益があるからという理由もあります。



第72話

 

 戦争遊戯は俺達【ヘスティア・ファミリア】の勝利で幕を閉じた。

 俺達の戦いはオラリオ中で語り草になっており、古城跡地から帰還してからしばらく注目を浴びることになっていた。

 特に俺は都市最強の冒険者オッタルにレベル1なのに勝利した為、アレコレ憶測やらチートやら騒がれたが、フレイヤ、ロキ、イシュタルの大手ファミリアが手出し無用と宣言したことで手を出されることはなかった。

 個人的に警戒していたギルドの長であるロイマンなのだが、実は以前からイシュタル・ファミリアに警告と脅しがされていたらしい。

 また俺がフリュネを抱いていた事がかなり大きな利益があったことらしい。

 フリュネは『男殺し』の異名持つアマゾネス。有望な冒険者が幾人も襲われ被害が出ていた。

 だが俺が相手をしているうちはそんな被害は無くなるとのことだ。

 俺としてはタダで抱ける娼婦だから有り難いのだが、それもあってロイマンは今まで俺に介入してこなかったそうだ。

 またギルド長ロイマンの娯楽、遊興場所は歓楽街だ。そこの長、即ち世界随一の裏社会の支配者であるイシュタルと揉めたくなかったのだろう。

 そんな理由で懸念していたギルドからの介入は最低限となった。

 ただ後日、ギルド長ロイマンから直筆血文字で『オラリオの利益となる事をしてください』という要望書を送られることになる。

 現在彼はストレスで胃を殺られディアンケヒト・ファミリアの運営する病院に入院中。戦争遊戯でオッタルが暴露したフレイヤ・ファミリアの実態がトドメとなったらしい。

 都市最強ファミリアが、ダンジョン完全攻略に貢献しないことはそれほどまでにストレスの種だったそうだ。

 

 さて敗北した【アポロン・ファミリア】だが、本神の意思でファミリアを解散。財産引き渡しの手続きと眷族達の別れと退団の儀式を済ませた後、オラリオを去ることになった。

 引き止める者達が大勢居る中で、アポロンは今まで強引にファミリアに引き入れた者達の故郷に謝罪して回りたいと言った。

 今回の戦争遊戯、ベルを欲した戦いを経て、そう考えるようになったそうだ。

 贖罪の旅。

 そんな彼にレベル4へとランクアップした団長であるヒュアキントスをはじめファミリア内の特に心酔する者達。そして比較的常識人な者達も何人かついて行くと決めたそうだ。

【ヘスティア・ファミリア】はそんな彼らに差し出された資産の幾らかを活動費として分配し、さらに戦争遊戯で残った動くアポロン像達も餞別として譲るのであった(厄介払いともいう)。

 ちなみにリリルカ・アーデがライドしていた『ゴーレム』だが、ガネーシャ・ファミリアが引き取ることになった。

 ヘスティア・ファミリアで管理するにはサイズが大きく、また『乗りたい』というオラリオ民の要望に対処することが困難であったからだ。

 象の仮面を付けたゴーレム、オラリオが誇る闘技場の新名物となるだろう。

 

 

 

 

 巨大な屋敷の広い庭。

 そこでヘスティアが大きく宣言する。

 

「此処がボク達の新しいホームだ!!」

 

「「「おお〜〜〜っ」」」

 

 見上げる程の3階建ての大きな邸宅。中庭と回廊まで備わっており、敷地は背の高い鉄柵に囲まれており、花や庭木が植えられた広い前庭もある。

 

「さすがは百人以上の団員がいたファミリアだな」

 

 賃貸暮らしのファミリアも少なくない中でこれだけの邸宅を所有していたアポロン・ファミリア。

 中堅という位置付けだったが、あくまで所属する冒険者のレベル的な理由であり、ファミリアの規模はそれどころではなかったのかもしれない。

 

「ここがリリ達の新たな【家】ですか」

 

「そうだよ。これなら廃教会とは違って皆一緒に暮らせるね。そこっ!中庭にテントを設置しようとしないのっ!」

 

「ちっ、バレたか」

 

「どんだけテント暮らしが好きなのさゼノン君」

 

 今後ヘスティア・ファミリアは改宗したヴェルフや命を含めた全員で同じ敷地内に暮らすことになる。

 俺もテント暮らしからは卒業となるようだ。

 新たな【家】となる館を前庭から皆で眺め、俺達は今後の予定を決める。

 

「とりあえずアポロンから譲られた資産の残りで屋敷全体を皆の要望通りに改装しようと思う。ゼノン君が彫った石像は元アポロン眷族の子達が倉庫を借りたり、パトロンだった商人達が引き取ってくれるって」

 

「さすがに捨てるのは気まずいからなあ」

 

 眷族に成らずともアポロンに心奪われている一般人はかなりの数居たらしい。そんな彼らはこれからのアポロンの旅を支援したり、元ホームのアポロン由来の品の回収を申し出てくれた。

 回収にあたり買い取るとすら言ってくれたが、俺の作品の代金は一度貰っているので無料で譲った。撤去代が浮くので助かることに変わりはないしな。

 

「よ、要望(ハァハァ)、それはつまり館内に檜風呂や露天風呂のど、導入も」

 

 そういえば極東の人って風呂好きらしいな。俺も修行で山籠りする時は天然温泉のある山を選んでいたから気持ちはわかる(元の世界だと珍しかったが)。

 

「ヘスティア様ー!作業用の炉を造ってくれー!出来れば旦那の分も!」

 

 俺は鍛冶は偶にしかやらんから専用のは必要ないのだが。でも石像作りの為の作業場と資材置き場はいるな。ゴーレムを譲る際にガネーシャ・ファミリアから動くガネーシャ像の注文を受けてしまったし。アポロンのポロンをガネーシャにしてしまった件もあり断れないんだよな。

 

「では私はゼノンと同室で」

 

 命とヴェルフとバーチェがそれぞれ要望を告げる中、ヘスティアはまぁ落ち着いてと目をつむりながら手の平を向ける。

 

「ようやく胸を張って【ファミリア】を名乗れるようになったんだ、先にエンブレムを決めようと思います」

 

「「「確かに!!」」」

 

 主神の言葉に全員が揃って頷いた。特にベルは18階層の町で羨ましそうに見ていたからな。念願の【ファミリア】のエンブレムが掲げられることに、一際ワクワクしているみたいだ。

 屋敷の玄関前の階段に座りこむヘスティア、ゴソゴソと取り出した画材と画板に絵を書き始める。彼女を中心にして羊皮紙を覗き込む姿はまるで身を寄せ合う家族のようだった。

 

「へっへーん、ずっと前から考えていたんだー」

 

 淀みない動きで書き上げたヘスティアは、「じゃんっ!」と言って完成したエンブレムを見せつける。羊皮紙を受け取った皆はそれを眺める。

 

「これは、炎と・・・・・・」

 

「ヘスティア様の象徴は護り火なのですね」

 

「それにこれは鐘、ベルか?」

 

「むうー、ヘスティア様とベル様ということではないですか!!けどこの端のマークはいったい」

 

「ヘスティア、これは」

 

 描かれていたのは鐘に重なる守り火、そしてもう一つ端に・・・・・・。

 

「ドラゴンの紋章」

 

 以前俺がヘスティアに書いてみせた。

 色々な意味で思い入れのある刻印だ。

 

「へへん、この【ファミリア】はボクとベル君とゼノン君が始めたからね。ごめんねゼノン君、でも君の元の世界の証を入れたくてさ」

 

「なあに構わねえよ。俺が背負うには些か重い刻印だがな」

 

「だが、鐘と守り火を守護する竜。

 このファミリアにはピッタリな気もするな」

 

 流石にマトリフ師のベルトのバックルに刻まれた意匠だと抵抗あったな、と思っていたらバーチェがそんな事を言い出した。

 

「「「確かに!!」」」

  

 その発言に命、ヴェルフ、リリルカが一斉に同意した。

 ベルも渡された羊皮紙を見て嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「神様」

 

「さぁ、ベル君、皆。今日が本当の意味で、ボク達の【ファミリア】の門出だ!」

 

 ヘスティアは戻ってきた羊皮紙を頭上に高らかに掲げた。

 炎と鐘が重なり合いドラゴンの紋章が端に控える、そのエンブレムを。

 





 今話は原作6巻のエピローグとなります。

 前書きのザオリクのくだりはオリジナル設定です。当作品では人間界では権力闘争の末に失伝したザオリクが魔界の一部に残っている設定です。
 ハドラーやクロコダインなどの治療や復活ぶりからして厳密には違っても有り得そうだなと。
 ただ老齢の魔族は死体が残らないのでザオリクによる蘇生は不可能で、バーンが若い肉体の保存に拘るのもこれが理由の一つとしています。
 ザボエラが使えるのは『妖魔司教』だから治癒呪文に精通していてもおかしくはないかなと。
 まあ蘇生呪文を自分に『唱えてもらう』ことから他者を信じないザボエラにはあまり価値のない呪文ですが。
 
 アポロン。
 贖罪の旅にでました。ついて行った眷族は三十人ほどで更に二十体の動くアポロン像が同伴します。それ以外の眷族も戦争遊戯の活躍から引く手数多です。

 ロイマン。
 ストレス性胃炎で入院しました。
 なのでアポロンのオラリオ旅立ち眷族流出には関与できません。
 ゼノンに関しては知ってましたが、以前からイシュタルが圧力をかけてました。フリュネをけしかけると直接的な脅しもされてました。

 ホームのアレコレ。
 元眷族とパトロン達が回収しました。壁やら扉やらは改装担当するゴブニュ・ファミリアが取り外して引き渡します。

 ゴーレムその後。
 ガネーシャ・ファミリア行きです。
 でないとヘスティア・ファミリアにオラリオ民が押しかけてきますので。また警備用に動くガネーシャ像の大量注文を受けました。
 
 ヘスティア・ファミリアエンブレム。
 原作に加え左四隅にドラゴンの紋章が付きます。危うくマトリフの顔マークになるトコでした。
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