ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 繋ぎ回です。



第73話

 

 都市はざわめいていた。

 

 ギルド本部巨大掲示板に張り出された羊皮紙、そこに記載された二つの情報に。

 ある者は驚き。

 ある者は疑い。  

 ある者は畏れ。

 ある者は嫉妬し。

 ある者は悔しがる。

 そしてある者は祝福した。

 

 そして神々は、とある冒険者達の公式ランクアップの報せに、盛大にニヤけ、はしゃぎ回る。

 戦争遊戯の興奮が醒めやらない中、多くの者達、世界を騒がせる情報が駆け巡り、拡散される。

 

 オッタル、レベル8到達。

 

 ベル・クラネル、レベル3到達。

 

 現都市最強冒険者はかつての伝説の領域へとついに足を踏み入れ、新鋭の兎はまた世界最速記録を更新する。

  

 そして、そんな両者が語られると同時に、ある1人の存在が噂されることになる。

 現最強冒険者を無傷で降したレベル1。

 ゼノンという異端の強者を。

 

 

「くしゅん」

 

「ほれホイミ。あ、病気に効かねえんだったわ」

 

「過保護かいっ!!」

 

 くしゃみをして荷物を詰めた木箱を落としそうになったベルにすぐさま治癒呪文を唱えてやる。が使用後に病気には無意味だと気づく。

 そんな俺にヘスティアが鋭くツッコミを入れる。こっちの世界では治癒の魔法はそうほいすか使用できるものではない。だからくしゃみしたらホイミは過保護過ぎるとのことだ。

 

「風邪かい?じゃなければ誰かが噂してるのかもね?」

 

 とヘスティアが今度はベルに向かってそう話かける。ベルは、まさか、と言うが戦争遊戯にランクアップと噂されてもおかしくないだろうに。

 

「それよりベル君、ゼノン君、ほら、見ろよ!」

 

 テテテと勢いよく走り出したヘスティアの後を追うベル。俺はその後をのんびりとついていく。

 仕事でしょっちゅう来ていたから馴染深いこの道。それを今度は違う形で歩くのだと思うと感慨深いものだ。

 

「わぁ・・・・・・!」

 

「どうだい、今日からここにボク達が住むんだぜ」

 

 朝のうららかな日差しを浴びる美しい前庭の中で、荷物を下ろしたヘスティアとベルは眼の前の新居をまじまじと眺めていた。

 

「喜んでいるぞ」

 

 アポロンがこのホームを俺達に譲ったことに実は理由がある。売り払うことも付き合いのある商人に貸すことだってできたのにだ。

 

『ベル・クラネルが仲間達と一緒に生活することに憧れている』

 

 俺が何時だが言ったことをしっかりと覚えていたんだろう。

 

「なあ、アポロン」

 

 はしゃぐヘスティアとベルを見ながら、どこかに旅立った御得意様へと俺は語りかけるのであった。

 

 

 

 なお、当の本神は久方ぶりに再会した妹神に出会い頭の全力ハグを行った結果、怒り狂う妹神に射られながら追いかけ回されているそうな。

 

「相変わらず照れ屋さんな妹だ♡」

 

「そのようですねアポロン様」

 

「かすった、今、かすった!?」

 

「こうならないようについて来たのにな」

 

「あまりにも早すぎるトラブル。俺であっても見逃しちゃったぜ☆」

 

 贖罪の旅はどうやら前途多難のようである。

 

 

 

「ヘスティア、注文通りに済ませたぞ」

 

「ああ、サンキュー。ゴブニュ」

 

 正面の玄関口に飾られた【ヘスティア・ファミリア】を示すエンブレムを見ていると、改装を終えた作務衣姿の職人達【ゴブニュ・ファミリア】の面々が帰っていくようだ。

 色々と付き合いのある【ヘファイストス・ファミリア】と並ぶこのファミリアは鍛冶だけではなく建設作業も請け負う。

 たしか、オッタルの黒大剣やアイズのレイピア、ティオナの大双刀もこのファミリア製だったよな。

 傾向として、【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶師個人で一つの作品創るが、【ゴブニュ・ファミリア】は複数人の職人で仕上げるらしい。

 オッタルの黒大剣やティオナの大双刀はそうでもしないとその重量から打ち上げることすら終わらないだろうからな。

 なにせティオナの武器はレベル4のラウルでも運ぶだけで苦労していたのだから。

 その集団での仕事ぶりはとんでもなく改装の依頼をしてから僅か4日で終えたほどだ。

 支払いについてや屋敷の説明を終えた、どこかドワーフ然とした姿のゴブニュは、ヘスティアから踵を返すと俺の方へと向かってきた。

 

「・・・・・・なにか?」

 

「お前の鍛冶技術に興味がある。もし伝授してくれるならば相応の対価を払おう」

 

「悪いな、俺も見て覚えた口で人に教えることはできないよ」

 

「なるほどな。

 ならば機会があればウチで一つ作品を造ってくれ」

 

「・・・・・・そのうちな」

 

「あと」

 

「?」

 

「『どたまかなづち』をウチでも作り、取り扱ってもよいか?」

 

「俺のオリジナルじゃないから好きにしてくれ。これは全ての鍛冶屋に通達してくれたら助かる」

 

「承知した」

 

 そう告げてから鍛冶神は帰路についた。

 技術の伝授、ね。

 教えられるほど鍛冶に精通してねえんだよな。アバン先生のアイテム作りも参考にしてるからかなりごちゃまぜだし(鍛冶とアイテム作成の境界が曖昧)。

 しかし『どたまかなづち』。

 

「ずいぶん流行ってんだなあ」

 

「僕もまた装備したいですゼノンさん!」

 

「お願いだから止めてベル君!!」

 

 今はまだ【ヘファイストス・ファミリア】の専売だった『どたまかなづち』はこれを期に世界へと羽ばたくだろう。

 

「でもさすがはゴブニュだぜ、しっかりやってくれたみたいだ」

 

「あ、本当ですか?」

 

「うん。皆の要望通り、中にも外にも色んな部屋や設備を作ってくれたって」

 

「風呂やら鍛冶用の炉やらキッチンやら作業場やら、かなり要望付けたからな」

 

 いくらかかったのやら。

 アポロンから貰った資産はかなりのものだが、下手したら使い切ってないかと不安になってくるのであった。

 ちなみに以前生み出したモンスター達のいくらかはそのまま廃教会へと残してある。

 本人達もあそこを気に入っているようだしな。

 

「さて、さっさと済ませるか」

 

 確かこの後にヘスティアが、入団希望者を募る会合を企画していた筈。

 夜の転居祝いの料理の準備もあるし、急いで取り掛からないとな。

 

「手伝うぞゼノン」

 

「悪いなバーチェ」

   

 命とヴェルフとリリルカも既に中で作業している。なんとか間に合わせよう。

 

「すいませーん。お届け物でーす」

 

 すると柵の向こうから運搬業者から声をかけられた。

 

「注文した食材か?早いな」

 

 しかし渡された木箱は問屋からの物ではなかった。

 

「なんだこれ?とりあえず鑑定呪文インパス」

 

 物が分からん時はこれに限るよな。

 えっと、なになに?

 

【ベート・ローガの祝品は道具らしい。中は高級肉と果物の詰め合わせで仲間達に隠れてこっそり用意したらしい。この食材を食べると交友値と満腹度が上がるぞ。またリーネ・アルシェにバレると五百のダメージを与えるだろう。一回使ったらなくなってしまうらしい、もし店屋に売ろうとしてもこれには値段がつけられないだろう】

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 うん、皆には内緒にしておいてやるか。

 意外とマメなんだなアイツ。

 

 チラホラ人の集まる気配を感じてきたので俺は慌ててホームへと入るのであった。

 





 今話は7巻の開始と引っ越しのアレコレです。
 
 7巻に関しては改変がかなりあるのでかなりごたまぜになります。
 とりあえずは団員募集から、カジノイベント、ソードオラトリアの7巻も絡む感じでしょうか。
 飛び飛びになると作者が混乱するので、繋ぎ回をかなり挟みそうです。

 ちなみにアポロンのやらかしでアルテミスは少しばかりオラリオ到着が遅れそうです。

 祝品を送るベート・ローガ。
 やりそうかなと、フィンやロキにはバレバレでしょうが(笑)。
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